地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

初陣

春蘭の初陣としてよく語られるのが、就役して間もなく行われた試験航海の途上で発生した第二次シリウス沖海戦である(これより以前に、極秘裏にイスカンダル動乱に参戦していたという説があるが、具体的な証拠が存在せず、また就役時期との矛盾も生じる為ここでは扱わないものとする)

西暦2205年2月11日、人類領域に突如として襲来した暗黒星団帝国(デザリアム)は、瞬く間に太陽系の要所を無力化した後に地球へと侵攻、これを占領した。ここまで電撃的な侵攻を許した原因として、デザリアムが保有していた重核子爆弾によって各基地の駐留艦隊が迎撃行動を行う前に基地ごと無力化されたことや、唯一重核子爆弾の影響を受けなかった無人艦隊が運用ミスによって本来の実力を発揮しえないまま敗北してしまったことがあげられるが、ここでは詳細には触れないものとする。
当然ではあったが、デザリアムは太陽系のみを攻撃目標としていた訳ではなかった。太陽系外の地球の拠点、そして艦艇なども彼らの攻撃目標であった。そしてその中には、春蘭率いる第七艦隊も含まれていた。

異変を最初に察知したのは、元々防衛艦隊の旗艦として運用されることが想定されており、また無人艦隊の指揮統制も行わなければならないため、防衛軍艦艇の中で最も通信能力の高い春蘭であった。
春蘭の通信機器は、つい一週間ほど前に自分達が停泊していたシリウス星系の防衛軍基地からの通信が途絶したこと。そして太陽系内に謎の勢力が侵入し、現在防衛軍はこれと交戦中であること。この二つの情報と、それを裏付ける通信を傍受した。
これを聞いた第七艦隊司令長官の山南修宙将は、即時試験航海を中断し、艦隊をシリウス星系の防衛軍基地へと帰還させようとした。
しかし、突如として第七艦隊の正面に総数百隻以上もの大艦隊が出現した。そして大艦隊は、何の警告も無しに第七艦隊への攻撃を開始した。最初の攻撃でドレットノート級主力戦艦アイダホと陽炎型突撃宇宙駆逐艦子日が轟沈、また改ドレットノート級主力戦艦・丙型のイリノイと、妙高型宇宙巡洋艦羽黒が被弾した。
この攻撃を受け、山南宙将は所属不明の大艦隊を敵と断定、各艦に自衛戦闘の開始を下命した。
だが、第七艦隊の戦況は芳しくなかった。元々二十隻程度の小規模な艦隊だったことに加え、どの艦も就役してから日が浅く乗組員が艦に習熟していないこともあり、第七艦隊は艦の数を減らしつつ徐々に追い詰められていった。
山南艦長のとっさの機転により何とか小惑星帯の一角に身を隠すことには成功したものの、残存艦は春蘭を含め九隻、しかもどの艦も満身創痍であった。それに隠れられていた時間もそう長くはなかった。敵艦隊は第七艦隊の驚くべき奮戦によって三十隻前後(無傷な艦に絞れば二十隻程度)にまで減らされていたが、もはや戦う力の残っていない第七艦隊からしてみれば、まさに死神にも等しい存在であった。そして、小惑星帯に隠れていたところを遂に敵艦隊に発見され、山南以下第七艦隊の将兵達が覚悟を決めた

その時であった。
イカロス基地から飛び立ち、途中にて雪風改以下二隻を指揮下に置いたヤマトが戦場に到着したのである。ヤマトは敵に察知される可能性があるにも関わらずビーコンを作動させた上に、波動砲によってヤマトと第七艦隊との間に広がっていた小惑星帯を一掃し第七艦隊の退路を作り出した。また敵も第七艦隊を捜索する為に艦隊を分散していたことが災いして、ヤマトを発艦したコスモタイガー隊によって各個撃破されていった。
このようにして、春蘭以下第七艦隊は間一髪のところでヤマトに救われた。春蘭からしてみればいささか不本意な初陣かもしれなかったが、春蘭の乗組員達はそう思っていなかったようである。このことは、この戦いが終了した直後に山南宙将が発したと言われている「かつて俺はヤマトを助けた。今、その時の恩返しをされたってわけか。」との言葉が示している通りである。

だが、春蘭の戦いはまだ始まったばかりであった。
そもそもの混乱の発端は、急に地球から四十万光年も離れた場所まで遠征し、そこにある敵の母性と重核子爆弾の制御装置を破壊するという話になったからである。
これを聞いた生き残りの将兵達の内、主に航海科や主計科の面々から反対の声が多く上がった。
まず航海科の主な反対理由としては、未知の宙域、ましてや敵地でもある場所を手探りで往復八十万光年分も航行するのは危険が大きすぎるというものであった。そして主計科の主な反対理由は、長期間の航海が予想されるにも関わらず途中一切の補給を受けられないということから、艦隊将兵への給仕に責任が持てないというものであった。加えてヤマトなどの一部の艦艇を除き、地球防衛軍の艦艇は基本的には太陽系近辺で使用することを前提として建造されており、長距離航海には必須の装備ともさえ言えるOMCSや艦内工場も装備していない艦がほとんどであった。

しかし、最終的に第七艦隊は往復八十万光年もの遠征を行うことを決定した。これは山南宙将が将兵達に話した演説による効果が大きかったとされているが、詳細はここでは述べない。
そして遠征の準備が始まった。準備とは言っても、地球が占領下にある状況を考えると悠長に進めるというわけにはいかない。まずは戦闘終了後に急いでシリウス星系の防衛軍基地に帰還し、そこで積み込めるだけの水、食料、弾薬、それに補修用の資材などを積み込んだ。
また、基地内の修理施設を最低限度の修理が自動で可能になるようになるまで回復させ、そこに第七艦隊の残存艦艇と基地に停泊中に敵の攻撃を受け損傷した艦船を入渠させた。そして入渠させた艦船には修理が終了次第直ちに出撃し第七艦隊と合流せよ。との命令を下した。
ここまでの準備を行う為にかかった時間は約一日、その間、艦隊将兵各員は往復八十万光年もの大遠征についての期待と不安を胸に抱きながら作業に当たった。
そして準備が整った第七艦隊各艦は、慌ただしく基地を出港し大遠征へと旅立っていった。地球が敵の占領下にあり地球市民全員の命が人質となっている中、艦隊には一刻の猶予もなかったからである。軍楽隊の演奏もなく、見送りは入渠中の艦船の乗組員だけという何とも寂しい出撃であったが、将兵達の士気は高く艦内はこれまでにないほどの覇気で埋め尽くされていたという。

今回の出撃はほとんどの将兵が初めて経験する敵国領内への大規模遠征であり、これまでに防衛軍が何度も経験していた太陽圏内での迎撃戦とは意味合いが異なるものであった。やはり人間というものは“守勢”よりも“攻勢”を好む生き物であった。また、艦隊の中にはこれまで幾度となく地球の危機を救って来たヤマトも含まれており、そのことが将兵達の士気をより一層高めた(既にヤマトが幸運艦だということは防衛軍内では常識となっていた)
この大規模遠征中にて、春蘭はその能力をさまざまなところで発揮し続けた。知将ミヨーズ大佐の罠にかかり波動エンジンを停止して使用する波動砲が使用不可能になった時などは、双発という利点を生かし片方のエンジンで航行しつつもう片方のエンジンで拡散波動砲を充電し発射するという離れ業をやってのけた。
またブラックホール近辺での戦いになった時などは、敵の操舵干渉によって一旦ブラックホールに引きずり込まれるという珍事に見舞われるものの、ヤマトの艦内工場にて急遽製造された瞬間物質輸送機によって無事救出されている(このため、春蘭の乗組員には戦後報道関係者からの取材が殺到したという)

そして敵の母星での戦闘では、母星内部に突入したヤマトと雪風改を援護するべく第七艦隊の指揮を執り敵母星の北極の制宙権確保に専念した。その後ヤマトが敵母星内核の破壊に成功、そこから生じた星団規模の大爆発から逃れるため、春蘭以下の第七艦隊は無差別連続ワープを行った。この為各艦はバラバラの位置にワープアウトしたが、最終的には全艦が春蘭の下に集結した後に地球へと帰還している(この時、春蘭に装備された強力な通信設備が大いに役立ったとされる)
銀河大戦
デザリアム戦役後、春蘭は地球防衛軍聯合艦隊総旗艦となり第一艦隊に配属された。
そして西暦2206年7月30日、ボラー連邦の支援を受けた反ガミラス統治破壊解放軍の星間テロ攻撃(後の7.30事件)によって惑星間弾道弾が太陽に着弾、その結果太陽の核融合反応が異常な程促進されるという、所謂“太陽危機”が発生した。
当初、地球はガルマン・ガミラス帝国とガミラス共和国の二ヶ国に太陽の活動抑制作業への協力を要請、三ヶ国合同の技術団が結成され太陽の活動抑制作業に当たった。だが、太陽の活動抑制作業は失敗した。そして技術団は乗船していた船がプロミネンスの直撃を受け多くが帰らぬ人となった。

これにより、連邦政府は太陽の活動抑制作業を断念、地球防衛軍に所属している艦船の中でも長距離航海に適した艦が選抜され、太陽の暴走によって居住不能になると思われた地球の代わりとなる移民先を探す探査船団の護衛が行われた。
既にビーメラ4など人類の移住に適した惑星はいくつか発見されていたものの、今後またこのような事態になった時のリスク分散という意味合いもあり、移住先は出来るだけ多く見つける必要があった。
当初、デザリアム戦役時に長距離遠征の経験がある春蘭も船団護衛艦隊の編成艦候補となったが、きたるべきボラー連邦軍との決戦の為に春蘭は太陽系内で温存されることとなった。

やがてガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦という二大星間国家による大規模戦争(後の“第一次銀河大戦”)が勃発すると、地球もその惨禍に巻き込まれていくこととなった。旧ガミラス帝国時代からの同盟関係とあっては、ガルマン・ガミラス帝国からの参戦要請は断れなかったのである。
しかし、第一次銀河大戦が始まって以降ボラー連邦が地球領内に本格的な侵攻を仕掛ける事態は起こらず(これは、地球とボラー連邦とが直接国境を接していなかったことが大きかった。)探査船団の護衛艦隊や植民地惑星の守備艦隊、更には義勇軍としてガルマン・ガミラス帝国領内へと派遣されている艦隊から次々とボラー連邦との交戦報告が送られてくる中、春蘭の乗組員は銀河の命運をゆだねた戦いに参戦できない自らの不幸を呪った。
しかし、そんな春蘭にも大きな変化が訪れた。第一次銀河大戦終了間際に発生した“太陽沖海戦”である。


太陽沖海戦

第一次銀河大戦末期、永世中立国であるシャルバート王国から、地球は太陽の活動抑制を可能とするハイドロコスモジェン砲の入手に成功する。そしてハイドロコスモジェン砲を搭載した宇宙戦艦ヤマトが地球に帰還した後、太陽の活動抑制作業が直ちに始まった。
しかし、ボラー連邦がそのような行動を黙って見過ごすはずが無かった。彼らも地球がガルマン・ガミラス帝国にとって重要な同盟国であることは十分承知しており、その地球の国力を大いに低下させられる太陽の核融合異常促進を止めるような行為は、何としても阻止する必要があったからである。(この理由のほかにも、ボラー連邦がこの時期に太陽系への侵攻作戦を行ったのは、ベムラーゼ首相の保身とデスラー総統と決戦を行う為に太陽系に侵攻したという説があるが、ここでは詳細には触れない)

その為、ボラー連邦はベムラーゼ首相自ら機動要塞ゼスパーゼに搭乗し、温存していた親衛打撃艦隊一個を率いて太陽系へと侵攻して来たのであった。
戦いの発端は、太陽の活動抑制作業の準備を行っていたヤマトへ、ワープアウトして来たボラー連邦の部隊が奇襲攻撃を行ったことであった。ヤマトを護衛していた地球防衛軍第一艦隊は直ちに迎撃行動を開始し、ボラー艦隊と戦闘状態に移行した。
当初、戦局が大きく動くことはなかった。第一艦隊は全く戦闘に参加できないヤマトという護衛対象を背負っていたものの、地球防衛軍選りすぐりの艦艇や将兵が配備されている第一艦隊は、艦隊司令長官山南修宙将の巧みな指揮もあり、ボラー連邦の親衛打撃艦隊相手に互角以上の戦闘を繰り広げていた。
一方ボラー側の思惑としては、通常部隊よりも装備の質や将兵の練度で優っている親衛打撃艦隊で奇襲攻撃を仕掛ければ、地球艦隊など鎧袖一触だろうと楽観していた。しかし敵対した地球艦隊が思いのほか強力で、ボラー側としては想定外の苦戦を強いられることとなった。辛うじて物量という利点を生かして何とか均衡状態を保っていたものの、地球側が波動兵器の使用に踏み切れば均衡状態が一気に崩壊し艦隊が壊滅する恐れがあった。

その状況を見かねたベムラーゼ首相は、味方艦隊と敵艦隊が戦闘を行っている宙域にブラックホール砲を発射するよう命令した。このブラックホール砲の発射によって地球側の戦略大量破壊兵器(具体的には波動砲)の使用を封じ、更には味方将兵への示威的な意味も含まれていた。味方艦隊の後方からブラックホール砲を撃ち込むことによって、厭戦気分が蔓延している将兵達の士気を恐怖で今一度鼓舞しようと考えたのであった。
そして、地球艦隊とボラー艦隊との丁度中間地点にブラックホール砲が叩き込まれた。突然出現した人工ブラックホールを前に両軍ともブラックホールへの対処で精いっぱいで、とても戦闘を継続できる状態ではなくなってしまった。
まずブラックホール砲を自艦隊越しに撃ち込まれたボラー親衛打撃艦隊側としては、警告もなしにいきなりブラックホール砲が撃ち込まれたことにより、艦隊の最前列にて戦闘を行っていた艦艇数隻が発生した人工ブラックホールに巻き込まれた。そしてその怒りは後方の機動要塞、ひいては陣頭指揮を執っているベムラーゼ首相に向けられた。厭戦気分は確かに払底された。ただし、心の中での攻撃対象が変わってはいたが。

一方、本当に何も知らなかった地球防衛軍側の状況はもっと悲惨であった。そもそもブラックホール砲自体、初めて使用されたのがこの戦いであり、地球どころか二つのガミラスのデータベースにも載っていなかった兵器であった為、対策の施しようがなかったのである。
まず、敵艦隊に対し近接雷撃戦を挑もうとしていた巡洋艦阿武隈以下第一宙雷戦隊(一宙戦)がもろに直撃弾を食らった。一宙戦は、全艦艇が発生した人工ブラックホールのシュヴァルツヴァルト境界面の内側にいたのである。阿武隈とその配下の八隻の駆逐艦は、全艦が重力の井戸に飲み込まれ艦体が圧壊した。
そしてシュヴァルツヴァルト境界面の外側にいた艦艇も無事では済まなかった。
一宙戦を支援しようと戦隊を前進させていた巡洋艦アストリア以下第六巡洋戦隊の四隻は、人工ブラックホールの重力場に捕まり身動きが出来なくなったところを辛うじて統率を保っていた敵一個戦隊に滅多打ちにされた。四隻の内、旗艦のアストリアとシカゴはボラー艦隊の集中砲火を浴びて轟沈、そしてヴィンセンスとペンサコーラは、機関部を撃ち抜かれたことで出力が低下してブラックホールの重力場に抗えず吸い込まれていった。

こうして、第一艦隊は一瞬のうちに五隻の巡洋艦と八隻の駆逐艦を失ったのであった。ブラックホール砲が撃ち込まれる直前、第一艦隊は一宙戦を先頭に攻勢へと転じようとしていたが、もはや攻勢どころの話ではなかった。各艦ともに自らを守ることで精一杯であり、艦隊の統制力はほぼ失われていた。
そしてボラー艦隊の中で指揮統制が回復した一部の部隊が、人工ブラックホールを迂回して第一艦隊に差し迫って来た。第一艦隊が突破されれば、太陽の活動抑制作業の為全く動けず哀れな標的艦と化したヤマトと、それを支援する支援艦数隻が敵艦隊の門前に晒される。しかし第一艦隊は既に組織的な戦闘行動を行えるような状態ではなく、むざむざボラー艦隊にヤマトを生贄として献上することになろうとしていたその時であった。

突如接近中だった敵艦隊が紅色の閃光に包まれ消滅したのであった。第一艦隊の将兵達は、一体敵艦隊に何が起きたのかを理解できず首を傾げた。「あの閃光はどう見ても“あの兵器”だ。しかし、あれを搭載した艦は僅かだったはず。それに、こんなところまで来るような艦ではないはずだが?」
将兵達の疑問はすぐに解決した。忽然とワープアウトして来た艦隊から第一艦隊宛てに通信文が届いたからである。

《我、ですらー総統配下親衛部隊ナリ。貴艦隊トノ統制げしゅたーる・ばむ戦ヲ希望ス。ガーレガミロン。ガーレテロン。》

出現した艦隊は、ガルマン・ガミラス帝国の総統デスラー直属の親衛艦隊であった。
第一艦隊の将兵達は思わぬ援軍に涙が溢れるほど感謝し、その気持ちをそのまま通信文にして旗艦デウスーラⅢ世に送信した。

《了解、共ニ地ガ連合軍ノ誉ヲ見セン。》

ガルマン・ガミラス帝国軍が到着したことによって、戦局は一気にボラー側にとって不利になった。敵艦隊の編成は、旗艦デウスーラⅢ世以下、デスラー砲搭載の新鋭戦艦三十隻、及び随伴艦約百隻。依然として数ではボラー側が優っているものの、波動砲とほぼ同じ威力を発揮するデスラー砲を搭載した艦艇三十隻が問題であった。現に彼らは、ワープアウト直後に行った一斉射でボラー艦隊の二割前後を消滅させていたからであった(ワープ直後に迅速なデスラー砲発射が行えた原因として、地球側が供与した波動砲チャージャーの存在が大きかった)

再び不利な状況に置かれたボラー側からしてみれば、もはやなりふり構ってはいられなかった。そしてボラー側は、星系内でのブラックホール砲無差別使用という禁断の手段に訴えてしまった。
ベムラーゼ首相の下令と共に、機動要塞ゼスパーゼはその砲口をガルマン・ガミラス帝国艦隊へと向けた。しかしガルマン・ガミラス側の方が、対応が素早かった。波動砲チャージャーによって迅速にデスラー砲のエネルギー充電を完了させたガルマン・ガミラス帝国艦隊は、間髪入れずに第二射をゼスパーゼに向けて放った。
しかし、ゼスパーゼの強力なエネルギー偏向フィールドは、三十発以上のデスラー砲ですら受け付けなかった。お返しと言わんばかりに、ゼスパーゼからブラックホール砲が放たれた。放たれた砲弾はガルマン・ガミラス帝国艦隊の中心部にて炸裂、デスラー砲発射の為に密集隊形をとっていた艦隊は、そのほとんどが発生したブラックホールに吸い込まれていった。

そして何とか生き残った残存艦艇へも、ゼスパーゼは容赦なくブラックホール砲を叩き込んだ。結果として、四つ目のブラックホールが発生した時点でガルマン・ガミラス帝国艦隊は戦力の九割以上を損失しており、生き残りはデウスーラⅢ世以下十数隻だけというありさまであった。
第一艦隊は未だに統制が回復しておらず、頼りになる援軍だったはずのガルマン・ガミラス帝国艦隊は満身創痍、地ガ連合軍の誰もが負けたと思い、ボラー連邦の誰もが勝ったと思っていたが、一人の日本人の提案によって、事態は思わぬ方向へと進んでいくこととなった。

「山南司令、我が艦隊と敵さんとの間に発生したブラックホールを利用してスイングバイを行い、敵要塞に肉薄してみてはいかがでしょうか?」

そう提案して来たのは、一人の日本人戦隊司令官であった。彼は新鋭の夕張型軽巡洋艦二隻を率いており、また当時「宙雷の神様」との異名で呼ばれている堀田真司宙将補の教え子でもあった。そして彼の率いている夕張型二隻には、新型の波動魚雷が搭載されていた。
確かに波動カートリッジ弾よりも波動エネルギー量の多い波動魚雷なら、エネルギー偏向フィールドを無視して敵要塞にダメージを与えられるかもしれない(事実デザリアム戦役時、彼と春蘭自身が波動カートリッジ弾によって暗黒星団帝国のゴルバ型浮遊要塞を撃破していた)しかし、敵要塞の前面に展開している敵艦隊は、数は減っているとはいえ未だに半数は健在である。いかにスイングバイで加速しているとはいえ、たった二隻の軽巡洋艦に突破できるものだろうか?
その疑問に対する答えは、山南自身がすぐに思いついた。今こそ、春蘭の双発エンジンと大火力の見せ所であった。

かくして戦局は新たな局面へと移り変わった。機動要塞への突撃を慣行するのは、夕張型軽巡洋艦の夕張と名張、そしてそれを支援する春蘭と、直掩のエクスカリバー級自動超弩級戦艦二隻(トライデントⅢ&トライデントⅣ)の計五隻、これらで臨時の挺身隊が編成された(他の艦艇は、機関出力が不足しておりブラックホールの重力に対抗できない可能性があったのと、未だに指揮統制が回復しておらず、厳密な艦隊運動が行えないと判断されたので編成から外された)
そして春蘭は、機動要塞前面に展開している敵艦隊を突破する為、片方の波動エンジンで航行しつつもう片方の波動エンジンで拡散波動砲を発射するという離れ業をやってのけた。この戦法自体はデザリアム戦役時に経験済みではあるものの、今回はブラックホールでスイングバイを行った直後の発射であり、危険が大きすぎると警告の声が上がったものの、最終的には山南自身の判断によって実行されることとなった。
スイングバイ直後に発射された拡散波動砲は、狙い通りボラー艦隊のど真ん中で炸裂し、敵艦隊の中央部に大きな風穴を開けた。そして春蘭以下五隻の挺身隊は、一発の敵弾を受けることもなく敵艦隊を突破し、機動要塞へとたどり着いた。ボラー側は、挺身隊の速度があまりにも早すぎて挺身隊の艦船を捕捉することすらできなかった。
機動要塞前面にたどり着いた挺身隊は、まず加速中のエクスカリバー級二隻をそのままブラックホール砲の砲口へと突っ込ませた。全長四百メートル以上の巨大な質量弾頭と化した二隻のエクスカリバー級は“聖剣”の名に恥じぬ威力を発揮した。直撃を受けたブラックホール砲の砲口は一瞬にして崩壊し、その無残な姿を挺身隊の眼前にさらけ出した。

この機を逃すなと言わんばかりに、春蘭、夕張、名張の三隻は機動要塞に対して全面攻撃を開始した。春蘭の五一サンチ砲からは一発辺り二トン以上もの波動カートリッジ弾が、そして夕張型の六式魚雷発射管からは試製七式波動魚雷が発射され、それらすべてが機動要塞に向けて撃ち込まれた。
さしもの機動要塞ゼスパーゼも、連続して叩き込まれる波動カートリッジ弾と波動魚雷を前には抗いきれなかった。要塞各所から火の手が上がり、頼みの綱であったエネルギー偏向フィールドも機能を停止した。その為、通常の波動兵器でもゼスパーゼにダメージを与えることが可能となったのであった。
それを見逃さなかったのが、デスラー総統座乗のデウスーラⅢ世であった。ノイ・デウスーラと同様の複合式ゲシュタム機関を搭載したデウスーラⅢ世は、ブラックホールの重力場から難なく脱出することに成功していた。そして搭載しているハイパーデスラー砲(地球の拡大波動砲とほぼ同じ性能を保有するもの)をゼスパーゼに向けて撃ち込んだ。
既に波動カートリッジ弾と波動魚雷によってかなりの打撃を受けており、エネルギー偏向フィールドも機能しなくなったゼスパーゼにこれを防ぐすべはなく、機動要塞はハイパーデスラー砲のエネルギー奔流によって崩壊し、座乗していたベムラーゼ首相も要塞と運命を共にした。

ボラー連邦にとっては正に決戦兵器と呼ぶにふさわしかった機動要塞ゼスパーゼの損失とベムラーゼ首相の戦死、同時に起こったあまりにも重大すぎる二つの出来事は、ボラー連邦軍将兵達に大きな動揺を与えた。その動揺に乗じて一気に勝敗を決すべく、地ガ連合軍は総攻撃を開始した。両軍共に残存兵力はほぼ無いに等しかったが、挺身隊やデウスーラⅢ世が奮闘している間に何とか指揮統制を回復することに成功し、敵機動要塞を撃破したことによって士気が最高に高まっている第一艦隊とデスラー直属親衛艦隊を止められる者は、ボラー側には存在しえなかった。
地ガ連合軍は縦横無尽の活躍を見せ、遅れて戦闘に参加した他艦隊の強力もあって、統制が失われていたボラー艦隊を完膚なきまでに叩きのめした。逃亡と降伏どちらも含めても、ボラー側で生き残れた艦は二十隻程度であった。戦闘開始前の艦艇数が六百隻であったことを考えると、実に九割五分以上の艦船が沈められたこととなる。それほどまでに、地ガ連合軍は精強であった。

こうして後に“太陽沖海戦”と呼ばれることになる戦いは終結した。地球側は敵の大部隊が領宙内に侵入するという愚を犯してしまったものの、駆け付けたデスラー総統率いるガルマン・ガミラス帝国艦隊と共同して侵入した敵部隊の撃破に成功した。
一方ボラー連邦は、偉大なる指導者と残存していた戦力を一度に失ったことから求心力が一気に低下し、その結果地方の属国が次々とボラー連邦に反旗を翻し独立を宣言した。そして太陽沖海戦から一年後に発生した“銀河交錯事件”がボラー連邦に止めを刺した。一時は銀河の半数以上を支配していた巨大な星間連合国家は、遂にその歩みを止めたのであった。


あとがき

本来は春蘭の就役直後からその最後までを一つにまとめ上げようと考えていたのですが、あまりにも文章が長くなりすぎたのでここで一旦文章を分割しました。
現在は完結編から復活編までの、所謂空白の17年間(この文章の設定元にしているA-140さんの年表を元にしますと空白の12年間になりますが)での春蘭の活躍に関して執筆している最中です。
こちらも完成次第A-140さんのブログに掲載させてもらいますので、どうかもう少しだけ待っていただけると幸いです。
さて、今回は主に“宇宙戦艦ヤマトⅢ”の内容を中心に書かせてもらいました。“ヤマトよ永遠に”時代の春蘭の活躍に関しましてはPS2版にて存分に描かれていますので、私の文章では「PS2版のその後」を中心に書かせていただきました。
とは言っても、中心となったのは宇宙戦艦ヤマトⅢでいう第二十五話に当たるシーンで、本来は書かなければいけない第一次銀河大戦についてはほぼ書けなかったのが少し心残りです。
第一次銀河大戦に関しては今後別の作品でもう少し詳しく書きたいと考えていますので、こちらも気長にお待ちいただければ幸いです。
最後に、この文章を掲載してくださったブログ主のA-140さんと、この文章を読んでくださった読者の皆様に、改めて感謝の意を申し上げます。

 土方に連合艦隊司令長官への就任を説得することを決意した堀田だったが、これまで、彼は高石や山南といった面々に比べて、土方への説得を熱心に行っていたわけではない。いや、それどころかしばらく土方と直接会うことすら避けていたのである。だが、これには理由があった。

 「堀田、しばらくお前は俺に関わるな」

 他でもない、土方からそう言い渡されていたのだ。

 あくまで土方の評価であるが、堀田真司という人物は一見温和で実際そうなのだが、内に秘めたものは間違いなく「地球を守り抜く」という確たる信念だった。そして、そのためには上官に噛みつくなど物ともしない剛直さも持ち合わせていると見極められていた。
 堀田は政治的な派閥には興味を示さない人物だったが、その言動からいわゆる「藤堂派」と呼ばれる、防衛軍の中では穏健、かつ少数な派閥に属するものと見なされていた。これは間違いなく土方の連合艦隊司令長官就任を望む集団でもあったから、土方があくまで「波動砲艦隊」に反対を唱えつつ軍の要職に留まれば、堀田もまたそれに死ぬ気で付き合うだろう。恐らく自分が左遷、あるいは予備役にされても何とも思うまい。

 だが、それでは現在の地球防衛軍ではただでさえ不足している、実戦経験が豊富で部下の気持ちを理解できる貴重な人材を失うことになる。もうすぐ還暦になる自分と違い、堀田はまだ若いのだ。これからの防衛軍を背負ってもらうためにも、土方としては「自分と道連れにする」ことは何としても避ける必要があった。もちろん、これは堀田に対してだけではなく、沖田の遺志を尊重し波動砲艦隊に反対し続けるヤマト乗組員たちにも同じことが言えたのだった。


 だから、もうすぐ辺境の部隊に左遷されるだろうと思っていた土方としては、堀田が何の連絡もなくいきなり面会を求めてきたときは少々驚いた。自分の言いつけを守らない堀田というものを見たことがなかったのもあったが、彼の顔を見たとき、明らかにいつもの堀田真司とは別の心構えをした人間をそこに見出したからである。

 「何をしに来た? 連絡もなしに」
 「お願いがあって参りました。聞きたくないと仰られても帰るつもりはありませんので、そのお覚悟で聞いていただきます」

 いきなり大上段から斬り付けるような、堀田の口ぶりだった。

 「俺に連合艦隊を率いろ、とでも言うつもりか?」
 「そうです」
 「……相変わらず遊びのない言い草だな。俺は沖田の遺志を尊重したいだけだ。その話は受けられないぞ」
 「いえ、沖田さんの遺志を尊重していただくためにも、提督には連合艦隊を率いてもらわなければならないのです」
 「……?」

 これまで、このような形で自分を説得しに来た士官は存在しなかった。ほぼ全員が「沖田さんの遺志はわかりますが……」と言葉を濁しつつ説得をしてくるのが常だったから、この堀田の言い方には土方も疑問を禁じ得なかった。

 「どういう意味だ?」
 「その前に、率直にお聞きします。今の地球防衛軍の戦力で、波動砲なしで再びガミラスと同程度の敵と戦うことになった場合、地球を守り切ることができますか?」
 「守ってもらわなければ困る。またガミラス戦役の悲劇を繰り返すつもりか?」
 「艦隊士官の一人としてお答えします。現有戦力とそれを指揮する人材では、全くおぼつかないことと私は見ております」

 また、土方に疑問が生じた。戦力が足りないというのはわかるが、それを指揮する人材に問題があるという指摘は、少々意表をついていた。

 「山南や高石、それにお前がいる。多いとは言えないが人材はいると思うが?」
 「私はともかく、山南さんや高石ら、艦隊を率いる指揮官級はまだいいでしょう。問題はその上です」
 「……何が言いたい?」
 「今の防衛軍の上層部、それも波動砲に傾斜している連中に、まともに地球を守る戦略など立てられるはずがない、ということです」

 非公式の場とはいえ、仮にも上官の前で堂々と防衛軍上層部を批判したのである。土方にその気があれば、舌禍を理由に堀田を処罰できてしまうような言葉だ。もちろん土方にそんな気はないのだが、恩師と教え子という関係に甘えているのだろうか?という気になって、いささか口調を強めた。

 「お前、自分が何を言っているか理解しているのか?」
 「もちろんです」
 「俺がその気になれば、今の言葉を取り上げてお前を処罰できるというのも承知しているな?」
 「無論です。そうしたければ、どうぞお好きになさってください」

 投げやりもいいところな返事であるが、ここで土方は気づいた。自分も正直、波動砲艦隊のことで上層部に不満もあるし、そのことで苛立ちを感じているのは確かだ。しかし、どうやらその苛立ちを、目の前の堀田は上回るほどの不満を爆発させようとしているように見受けられた。

 「……何があった? 説明しろ」

 そう土方が聞いたところで、堀田は少し口調を柔らかくした。

 「その防衛軍上層部の無能のせいで、私は恩人と教え子を一人ずつ、失いました」
 「……品川と武田のことか」
 「ご存じなら話が早い。上層部にまともな判断力があれば、あの二人は死なずに済んだかもしれません。ゆえに今の私は、藤堂長官を除いたおおよその防衛軍の上のほうに、敵に対して以上の憎しみを禁じ得ずにいます」
 「……」
 「同時に、こうも思うのです。もし提督が艦隊編成の全責任を担っていたら、このような事態は避けられていたと。あなたに連合艦隊を率いてほしいと願う、それが理由です」
 「その話はわかった。だが、沖田の遺志を尊重するため、というのはどういう意味だ?」

 土方の問いに、堀田は一つ深呼吸してから答えた。

 「……現状、波動砲搭載艦なしで地球連邦の勢力圏を維持するのは困難である、と私は見ます。これは将兵の数と練度の不足ゆえですが、それが解決できない以上、スターシャ女王との『約束』は棚上げにするしかないと考えます」
 「それでは沖田がやったことが無駄になる」
 「そうでしょうね。女王との約束を『棚上げ』ではなく『反故にする』気でいる今の上層部なら、そうなるのは必然でしょう」
 「……それで?」
 「今すぐに、スターシャ女王との約束を履行することはできない。しかし、いつかその約束を果たすために我々は生きるための戦いを続けなければならない。そして、そのためには上層部と時にやりあってでも、実情に見合った防衛兵力の整備ができる人が必要だということです。そうでなければ、いつまで経っても女王との約束は守られず、波動砲に偏った艦隊が膨張していくだけです」
 「それはわかる。だが、だからこそお前や高石が協力して、山南を補佐しそれを阻止すべきではないか?」
 「私が言うべきことではありませんが、山南さんや高石にそれを成す能力は十分にあると見ます。ですが、今の両者には残念ながら軍人としての『格』が足りません。能力に階級が伴わないので上から軽く見られるからですが、それは今はどうしようもありません。ですから……」

 ここで、堀田は言葉を切る。そして、じっと土方の目に向ける視線は明らかに「これ以上は言わせないでほしい」と語っていた。

 (それができるのは俺しかいない、と言いたいわけか)

 そう土方は悟ったが、それと承知であえて口を開いた。

 「……あくまで俺が嫌だと言ったら?」
 「失礼ながら、この場で提督を刺して私も腹を切ります。私は、あなたが全てを投げ出して埋もれていき、ろくでもない人間がろくでもない世界を作っていく未来など見たくはありません。そんな世界で生きている意味もないでしょう」
 「お前、俺を脅迫する気か?」
 「そう取っていただいて結構です。無論、ここまで言い切って提督だけに泥を被せるつもりはありません。私も戦場で責任を取らせていただきます」

 堀田自身も戦場で責任を取る。土方が聞きたかったのは、その言葉だった。

 しばらく、沈黙が二人の間に流れる。それが途切れたのは、土方の重々しい声だった。

 「……わかった」
 「はい?」
 「お前は、俺ならお前が見たくない未来を作らないと買ったわけだな? それなら、俺はそれを受けてやるとしよう」
 「提督っ!」
 「ただし」

 土方が、いつにも増して厳しい視線を堀田に向けた。

 「お前は『戦場で責任を取る』と言ったな。ならば、死ぬ気でそれを果たせ。そして生き残れ。少なくとも、俺より先に死ぬことは絶対に許さん。それだけは覚えておけ」
 「……全力を尽くします」

 堀田の「戦場で責任を取る」という言葉は、必然、実戦の場で自分の命を懸けるということである。それは二人とも承知していたから、無論、堀田が先に戦場で命を落とす可能性もなくはない。それを「絶対に許さない」ということは、堀田は今よりなお増して、自分と自分の率いる将兵たちを生き残るための戦いに全力を尽くす義務が生じたことになる。土方に覚悟を強いた代償、それがこれだった。

 だが、同時に二人ともわかっていた。彼らには死ぬための戦いなど存在しない、泥水をすすっても生き残り、地球のために戦い続ける。国連宇宙軍士官学校で知り合って以来、土方はそのために堀田を教育し、堀田もまたそれに応え続けてきたからである。


 それからしばらくして「土方竜宙将、連合艦隊司令長官への就任を了承」というニュースが、驚きと共に防衛軍内部を駆け巡った。特に波動砲艦隊を推進する派閥は焦ったはずである。土方には政治的な繋がりは乏しかったが、彼には藤堂長官と艦隊に所属する士官という「見えざる後ろ盾」があるのだ。その彼が多少は妥協するにせよ、波動砲に偏重した艦隊を受け入れるはずはない。あくまで連合艦隊司令長官の座を拒み続けるであろうと、正直ほくそ笑んでいたくらいだったから、この人事は受け入れられるものではなかったかもしれない。
 しかし、そこは土方との長い付き合いゆえか、防衛軍統括司令長官である藤堂平九郎は何も言わず、副統括長官の芹沢虎鉄もあえて口を挟むようなことはしなかった。何よりこの人事は艦隊の将兵たちから大いに歓迎されたから、前線でガトランティスと戦っている、あるいは後方で練成に励んでいる将兵たちの士気はこの報で大いに上がったと伝えられている。

 だが、これはあくまで新しい戦いの始まりであって、そして自分はますます「死」というものに逃げることが許されなくなった。つまり、文字通り退路が断たれたということを、堀田は改めて覚悟する必要に迫られることとなったのである。

 土方の説得を終えた直後、死ぬ気で張りつめていた緊張の糸が切れてしまった堀田は、ある場所へと足を運んでいた。

 (奈波さん。どうやらまだ、そっちには行けそうもない。許してほしい)

 復興した地上に改葬したかつての婚約者の墓前で、そんなことを思うのだった。

(この文章は旧作、リメイク版問わず公式とは無関係です。ただ、創作のベースとしては2199と旧作2以降、PSゲーム版を用いています。筆者の趣味と本編内の用語、およびアニメ内の描写から推定して書いておりますので、時に矛盾も生じる可能性もありますが、何かありましたらコメントなどでご指摘頂ければ幸いです)

陽電子衝撃砲と集束圧縮型衝撃波砲

 この二つは性能差が基本的にないので混同されがちなのだが、発射プロセスに相違点がある。それぞれの過程を書き出すと以下のようになる。なお、エネルギー弾として使用される圧縮された陽電子を供給するのが各艦の搭載する主機関(ヤマト以降は波動機関となる)であることは共通している。


陽電子衝撃砲

・機関に直結する陽電子発生装置は砲身尾部に装備されている
・陽電子発生装置によって生成された陽電子塊をレールガンの要領で撃ち出す
・集束圧縮型衝撃波砲に比べ(特に初期のそれは)散布界が小さく、砲身への負担が少なく砲身命数に余裕がある。ただし、全般に必要な機材が大型化しがちで砲塔の小型化が困難という欠点を有する

集束圧縮型衝撃波砲

・陽電子発生装置が砲身尾部に加え、砲身中心部に補助エネルギー発生装置と加速器が追加装備されている
・砲身尾部の発生装置によって形成される陽電子塊は陽電子衝撃砲より小さいが、砲身中央部で形成されたエネルギー塊と撃ち出される途中で融合することにより、陽電子衝撃砲と同等の陽電子塊を撃ち出すことが可能。そのため、威力に関しては砲口径に準じてほぼ同等と評価される
・砲身にエネルギー発生装置を追加したことにより、砲塔内に大規模な機材を置く必要がないため砲塔の小型化が容易。また、改良前の陽電子衝撃砲より発射速度に優れるが、砲身命数が短くなるのと戦闘中の砲身の破損に弱いのが難点。また、初期の集束圧縮型衝撃波砲は高発射速度への対応が不十分で散布界が過大という問題を抱えていた(2207年現在は改善済み)

 以上の違いを踏まえて、ここではヤマト以降に搭載された戦艦級の大口径砲各種について書いていきたい。


九八式48サンチ陽電子衝撃砲の系列砲

九八式48サンチ陽電子衝撃砲→九八式一型48cm陽電子衝撃砲

 竣工時のヤマトが搭載した陽電子衝撃砲。イスカンダル王国から波動機関の技術がもたらされ、旧来の陽電子衝撃砲が現在の波動砲のような決戦兵器ではなく、汎用兵器として使用できる目途が立ったことによりヤマトの主砲用として開発された砲である。
 その威力は絶大で、ガミラスのメルトリア級航宙巡洋戦艦までなら三連装砲塔の一斉射で撃破可能だった。ガミラス戦役中、唯一通用しなかったのはドメル司令が座乗したゼルグート級一等航宙戦艦の正面装甲のみであり、これも側面装甲は容易く貫通できる相手であった。

 また、エネルギー供給が停止した場合に備え、三式融合弾などの実弾の発射が可能となっていたのも特徴の一つであり、この砲弾がガミラス戦役の多くの戦場で有効に活用されたことから、以後の地球防衛軍の大口径衝撃砲は実弾発射を前提に設計されることとなる。

 地球連邦の成立による地球防衛軍の再編、および2201年から開始された大改装でヤマトの主砲が換装されたことにより、砲の完成時の「九八式48サンチ陽電子衝撃砲」から「九八式一型48cm陽電子衝撃砲」に制式名称が変更されたが、ヤマトが主砲を換装したため、制式名称変更後にこの砲を搭載した地球防衛軍の艦艇は存在しない。


九八式二型48cm陽電子衝撃砲

 2202年末に大改装完成したヤマトが装備した改良型陽電子衝撃砲。当初は51cm集束圧縮型衝撃波砲への換装が計画されていたが、51cm砲を搭載するには艦内容積が不足していたため、旧来の一型砲に大幅な改良を加えたこの砲が搭載された。

 元が大口径の陽電子衝撃波砲であることを生かし、新技術を用いて各種機材の出力を強化。集束圧縮型衝撃波砲とほぼ同等の発射速度と従来の48cm陽電子衝撃砲を上回る威力を両立させている。
 2202年当時、この砲を上回る威力を持つと判定されたのはアンドロメダが装備した二式51cm集束圧縮型衝撃波砲のみであり、それはかつて有効打を与えられなかったゼルグート級航宙戦艦の正面装甲にすらダメージを与えられるほど強化されていた(ただし、その際に交戦したゼルグート級がいわゆる「ドメラーズⅢ」と呼ばれるドメル司令の旗艦と同等の防御能力があったかは不明とされる)。また、当初の集束圧縮型衝撃波砲が悩まされていた散布界問題がこの砲には存在しなかったため、艦隊側からもその性能は絶賛されていた。

 ガトランティス戦役後、一式40cm集束圧縮型衝撃波砲の砲身不足問題が発生した際、実験用およびヤマト用の予備として準備されていたこの砲の砲身が改A3型戦艦に転用され連装砲塔に装備、搭載されている。また、時期は不明だが砲のエネルギージェネレーターを強化してアンドロメダの51cm砲に威力を近づける試験が行われた形跡がある(ガトランティス戦役末期のヤマトで実施、実戦投入された説あり)が、砲の各装備への負担が大きすぎるため、最終的にこの試みは放棄されたようだ。


九八式三型48cm陽電子衝撃砲

 九八式二型陽電子衝撃砲をベースとし、新型の四式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)に対応するための改造を行った砲。2204年に完成した第二次改装後のヤマトと、デザリアム戦役後に残存していた改A3型戦艦がこの砲への換装工事を行っている。
 砲の各種機器が改良されエネルギー弾の威力も向上していたが、改造の重点は三式融合弾より大重量な四式波動徹甲弾に対応した揚弾、装填機構を装備することに置かれていた(なおこの砲に限らず、揚弾機構が強化されていない艦で四式波動徹甲弾の運用を行うことは不可能だった)。

 ちなみに、2205年以降に建造が開始されたB型戦艦も初期案ではこの砲が搭載される予定だったが、諸事情により変更されている。


五式48cm集束圧縮型衝撃波砲

 B型戦艦が主砲として装備した砲。分類上は集束圧縮型衝撃波砲であるが、ベースが九八式三型陽電子衝撃砲であるため、こちらに記載する。先述した通り、B型戦艦にも当初は九八式三型陽電子衝撃砲が搭載される予定だったが、砲塔を小型化し船体規模を縮小するために、同砲を集束圧縮型衝撃波砲に改造したこの砲が採用された。
 砲塔内部の機材を小型化し、集束圧縮型衝撃波砲の特徴である砲身部のエネルギー発生装置が追加された以外は九八式三型陽電子衝撃砲との差異はなく、試験の際にも性能は誤差程度の違いしかなかったとされる。現状、華々しい戦果に恵まれていないB型戦艦ではあるが、この砲自体は艦隊側から「概ね十分な性能を有している」と評価されているようだ。

 ただ、2207年現在の仮想敵であるボラー連邦の艦艇は重装甲を誇るため、九八式三型48cm砲も含めて、防衛軍の戦艦が装備する大口径衝撃波砲の威力強化は愁眉の急とされている。そのため、今後どのような改良が施されるか注目したいところである。


集束圧縮型衝撃波砲系列

一式41cm集束圧縮型衝撃波砲→一式一型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 A型(ドレッドノート型)戦艦の前期建造型が主砲として搭載した砲。集束圧縮型衝撃波砲のシステムは先述の48cm砲と異なり、威力不足を補うため砲身中央にエネルギー増幅器を装備していた20.3cm以下の中小口径陽電子衝撃砲のそれを大口径化したため、技術の系譜としては大口径陽電子砲とは差異が認められる。
 エネルギー弾の質量は48cm砲に劣るが、高初速砲ゆえに貫通力に優れ、ガトランティス戦役においてその威力を十分に発揮している。ただ散布界過大が艦隊側から常に指摘されており、発砲遅延装置の搭載など改良が続けられたが、戦役終結まで根本的な解決はできなかった。

 ガトランティス戦役終結直後、この砲は初速を減じる改造が行われたため、後述するように制式名称が変更された。しかし、ガトランティス太陽系残存軍との戦闘に参加したA型戦艦の残存艦も主砲改造を戦闘前に行っていたため、名称変更後にこの砲を搭載して敵と交戦した艦は存在しない。


一式41cm集束圧縮型衝撃波砲(改)→一式一型改41cm集束圧縮型衝撃波砲

 先の一式41cm集束圧縮型衝撃波砲の初速を低下させ、散布界問題の根本的解決を図った砲。貫通力は低下(艦隊側曰く「砲口径なりに」)したが、散布界は劇的に改善され、改A3型戦艦を除く後期建造型のA型戦艦やB型巡洋艦に主砲として搭載された。2207年現在も大改装を控えた一部のA型戦艦や残存するB型巡洋艦に搭載され現役である。


一式二型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 一式一型改41cm砲を四式波動徹甲弾に対応させる改造を行った砲。改造の規模は48cm砲ほど大掛かりではなく、揚弾、装填機構以外の諸元は一式一型改41cm集束圧縮型衝撃波砲と同じである。
 四式波動徹甲弾は希少金属を多用するため生産量の確保が困難で、地球防衛軍はこの砲弾を48cm砲弾中心に生産することに決定したため、本砲を装備した艦はかなり少ない。


一式三型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 一式一型41cm集束圧縮型衝撃波砲の砲身を強化(詳細は機密のため不明だが、砲身生成の方法と使用金属が変更されたと言われる)、散布界問題を解決しつつ従来の貫通力に加え、発射速度の大幅強化を図った砲。発射機構も大幅に変更されたため、新たに制式名称が付与されている。
 最初に搭載したのは「防空駆逐艦」と呼ばれたC1型駆逐艦で、発射速度はディンギル戦役における第二次冥王星会戦の映像を見る限り、2秒に1発と推定される。その威力はボラー連邦の重装甲艦にも通用すると高く評価されたが、対空砲としては「威力過剰」と評価され、特にC型駆逐艦の初期建造艦において門数不足が問題になっている。なお、四式波動徹甲弾の運用能力は当初から付与されていない。

 それでも、既存の一式一型改41cm砲と互換性があるため、大改装後は宙雷戦隊の支援任務に充当される予定のA型戦艦の現存艦にも装備される予定である。


二式51cm集束圧縮型衝撃波砲

 これまで「アンドロメダ」のみが装備した、2207年現在の地球防衛軍で最大口径の艦砲。元々は先述したヤマトに装備が検討された砲だったが、搭載不可と判断されたためアンドロメダに転用された。

 エネルギー弾の質量は48cm砲を大きく上回り、集束圧縮型衝撃波砲ゆえに貫通力も高く、文字通り地球防衛軍最強の艦砲と現在も評されている。ただ、同時期の41cm砲ほどではないが散布界の広さが問題になっており、ガトランティス戦役の土星会戦が生起する直前、発砲遅延装置の装備と射撃指揮統制用コンピュータの改良によって散布界を許容範囲にまで収める改造が行われ「概ね解決した」との評価に落ち着いた。

 その後に建造が予定された戦艦にも幅広く搭載すべしという意見もあったが、他の量産艦と規格が異なる大口径砲で運用面に難点が多く、ガトランティス戦役後に建造された自動戦艦用の主砲として装備されたのを除き、有人艦でこの砲を搭載した艦は建造されていない。


 以上が、2207年現在地球防衛軍が運用した大口径衝撃砲となる。なお、ボラー連邦艦艇に対する大口径砲の威力不足の問題は、間もなく就役が予定されているC型戦艦に搭載される新型砲(詳細は不明)で何か動きがあると期待されているのが現状である。

(本作にはお世話になっている八八艦隊さん、島(178cm)さんの作成したオリジナルキャラが登場します。今後も活躍していただく予定です。お二方、ありがとうございます。なお、これらオリジナルキャラの設定は八八艦隊さんの「高石範義 経歴書」、島さんの「明星、瞬いて」「明星の残光」というpixivに投稿されている作品をお読み頂くとより楽しめます)

 2201年初頭、地球連邦とガミラスの友好条約の締結によって月面に建設されたガミラス大使館。ここに駐在する武官たちの間で、地球防衛軍のある一佐について話題になることが多くなっていた。

 「地球にも、随分とできる士官がいるようだ」

 ガミラス軍は、伝統的に航空戦や宙雷戦といった、機動力を生かして敵を翻弄する戦闘を好んでいた。そのため地球に駐在する武官にもこの方面のエキスパートと言える人材が何人かいたのだが、その中で宙雷戦を得意とする武官たちが、地球防衛軍士官学校で宙雷科の教頭を務める「とある士官」を高く評価していたのである。
 もちろん、士官学校で一科の教頭を務めている以上、この士官は現在ガトランティス帝国と行われている地球、ガミラス連合艦隊の戦闘に参加したことがない。それでもなお高く評価されていたのは、彼がガミラスの士官たちと行った戦術シミュレーションにおいて、如何なる不利な状況からでも必ず引き分けまでには持ち込み、文字通り不敗を誇ったこと。そして、そんな力量があってもなお、たまにガミラス大使館を訪れて武官同士で戦術論に花を咲かせたり、過去のガミラス艦隊の戦闘記録、特にドメル司令のそれを熱心に学ぶ姿勢が、自分たちの専門分野に関しては誇り高いガミラス軍人たちから好意的に受け入れられていたからである。

 しかし、その地球の士官が一切口にしないので誰も知らなかったが、彼がガミラスとの戦いで婚約者と多くの教え子を失い、それでもガミラスを憎む気になれない自らの心理に疑問を抱きながら日々過ごしていることをもしガミラスの武官たちが知ったら、果たしてどんな事態になったろうか。
 だが、それは恐らく永遠の謎となるであろう。話題の防衛軍の一佐、堀田真司はそんな自分の過去を話す気を一切持たずにガミラス人と分け隔てなく付き合っていたのだから。


 「今のままでは、地球が再び焦土になる可能性も低くはない」

 これは堀田のみならず、彼の同期である高石範義、あるいはこの二人と互いに能力を高く評価している山南修という二人の宙将補などを含め、多くの地球防衛軍の士官が共有する危機感であった。
 確かにガミラスとの戦争は終わった。だが、そのガミラスと和平を結ぶ過程で、やむを得ない事情とはいえ今度はガトランティスという敵を新たに作ることになってしまった。まだ敵の正体が判明しない現状であったから、いつ太陽系が再び戦場になるかわかったものではなかったのである。

 堀田が自分の過去に触れないのは、それ自体を思い出したくないという個人的な事情もあったが、自身が恨み言を口にしてガミラスとの関係を悪化させることを懸念したということもあった。そういう意味では、堀田自身の言葉を借りれば「自分は生き残ったというだけで不相応に偉くなりすぎた」ということなのかもしれない。
 それに、過去を振り返る余裕は正直なところ、今の堀田にはなかった。彼には自分が所属する組織である地球防衛軍に大きな懸念があり、それを解決するには自分の力だけではどうすることもできない。だから、追放同然に閑職に回されることを受け入れようとしている恩師を、無理やりにでも再び表舞台に押し出さなければならないという課題があったのだ。


 ある日、堀田はその件で高石と二人きりで話をしていた。階級は上の相手だが、同期ゆえの気楽さか二人だけのときはいつも通りの口調で会話するのだった。

 「範さん、どうだろう。説得できそうだろうか?」
 「……難しいな、やはり沖田さんの約束を守りたいという気持ちが強すぎる」

 話題の人は、地球防衛軍の次の連合艦隊司令長官と目されながらも、ヤマト艦長である沖田十三がイスカンダルの女王スターシャと結んだ「波動砲は二度と用いない」という約束を守るためにその人事を受け入れようとしない、堀田の士官学校の教官時代からの恩師でもある土方竜だった。

 「土方さんは信念の人だ、確かに誰であってもそう簡単に動かせるわけはない。それに、地球の恩人であるスターシャ女王との約束を尊重したいというのもわかるが……」
 「真さん。俺もそう思わないでもないが、それで今の地球が守れると思うか?」
 「……」

 堀田は返事ができなかった。

 ガミラスとの戦争が終わり、波動機関という強力な動力源を得た地球防衛軍は、現在凄まじい勢いで軍拡を行っていた。これには「二度とガミラス戦役の悲劇を繰り返してはならない」という官民共同の意識があったから誰も反対するものはなく、堀田個人としても艦隊戦力を必要相応に準備することを否定する理由はない。問題はその内実だった。

 「防衛軍の首脳部は、波動砲に依存しすぎているのではないか?」

 堀田にはそんな疑問と不安があった。地球防衛軍が主力戦艦である「A型(ドレッドノート型)戦艦」の量産に手を付けたのは割と最近だが、それ以前に建造された巡洋艦や、果ては駆逐艦にまで波動砲が搭載されて建造されていたのである。

 艦隊戦術、特に機動戦を研究する宙雷科の士官である堀田は、この状況に危惧を抱いていたのだ。これまでの戦訓の検討や戦術シミュレーションの結果、波動砲は威力は絶大だがエネルギー充填に時間を取られるなどして、決して柔軟な運用に向いた兵器とは判断できなかったからである。実際、堀田は駆逐艦への波動砲搭載には強く反対したし、その際に、または宙雷科の士官や学生にすら一部見られるようになった波動砲へ傾斜する人々に対し「ガミラスは波動砲がなくても強かった」と口癖のように言うことを余儀なくされていた。
 とはいえ、艦隊戦というシステムの中において、時に波動砲によって数的劣勢を覆すことが必要な局面があることは、堀田も砲術の専門家である高石との交流で理解するところではあったから、波動砲を全面的に否定するという考え方もなかった。スターシャとの「約束」も守れるならそれに越したことはないが、現状の地球防衛軍でそれが許されるのかと言えば、これまた甚だ心もとないというのも承知していた。

 「もし防衛軍の首脳部がもっとバランスの良い艦隊を志向してくれるなら、土方さんの志を曲げさせる必要もないんだが……」
 「……そうだな、だが難しいだろうな」

 高石が答える。もし土方が連合艦隊司令長官を辞退すれば、その座は恐らく山南に回ってくるだろうと予想されていた。だが山南、あるいは同じ宙将補である高石は能力は土方に劣るものではないが、やはり「格」という点で見劣ってしまうのは、当人らの責任ではないが致し方ない。ゆえに防衛軍の上層部と真っ向からやり合って、艦隊を率いる実戦担当の士官たちの意見を通すことは難しいだろう。そうなれば最悪、今後は波動砲を搭載した戦艦の数を増やせば十分、などという偏向した軍備がまかり通ることになりかねない。堀田や高石、そして立場上公言はしていないが山南もまた、そのことが心配で土方に表舞台に返り咲いてほしいと考えていたのである。

 しかし、当面はどうすることもできない。そんな話になって高石が去ったところで、それを待っていたかのように鳴り出した自分のデスクの電話を、堀田は手にした。
 だが、それは悲しい事実を知らせるものだった。会話を終えて受話器を置いた堀田はしばし呆然となり、そして傍目から見ても明らかにわかるほど肩を落としてしまっていたのだった。


 それから数日後。堀田は士官学校教員の制服に喪章をつけた姿で、かつての教え子の葬儀へと足を運んでいた。

 (武田君……これからという時に、こんなことになってしまうとは)

 武田夕莉。堀田にとっては彼女の父に士官学校候補生時代に世話になり、自らが士官学校の教官になってからその娘を指導する立場になるという縁もあって、他の生徒と差が出ない程度に「ほんの少しだけ」目をかけてきた生徒。そして、その堀田の指導に応えていつしかガミラス戦末期には艦列を並べて共に戦う「戦友」となった、有能でどこか人を惹きつける魅力のあった若き女性士官。
 その彼女が「輸送船団護衛任務の際に、ガトランティスの攻撃により戦死した」との知らせが入ったのが、ちょうど数日前の電話であった。

 武田が戦死した際の状況を自分の伝手で聞いたとき、堀田は激怒を禁じ得なかった。

 「旧式の戦艦だけで護衛部隊を編成するとは、司令部は何を考えているのか!」

 思わず大声でそう口にしていた。彼女たちの部隊は波動機関に換装されたとはいえ、もはや旧式で第一線の任務には不適当な金剛型宇宙戦艦が四隻だけ。しかも機動力を有する駆逐艦などの支援もないという、艦隊任務を担当する士官からすれば非常識に過ぎる状況だったのだ。これでも二隻は輸送船団の全艦と帰還できたというのだが、それは堀田からすれば武田と、これまた自分にいささか縁のあった、このとき同時に戦死した品川幾二三佐の功績だったとしか言いようがなかった。
 本来なら品川の葬儀にも出席したかったが、子を授かったばかりで夫に死なれた彼の妻が「軍人なんてもう見たくない!」と取り乱してしまっていると聞いたので、遠慮したのである。

 儀式としての葬儀が一通り終わってから、堀田は人込みをかき分けて……これだけの人数が集まったのは明朗快活な武田の人柄が偲ばれると言うべきだが、その葬儀のまとめ役を務めていた女性士官の元へと歩み寄った。
 やはり、というべきなのだろうが、その女性士官の顔には生気が全く見受けられなかった。

 「藤堂君……」
 「……」

 やっとの思いで堀田は声をかけたが、返事はなかった。

 「藤堂君、今度のことは……」
 「教官、何も仰らないでください」

 ようやく返ってきたのは、弱々しいがきっぱりとした拒絶の返事だった。

 藤堂早紀、防衛軍三佐。

 堀田にとっては、士官学校の教官時代に武田と同じようにその能力を評価し、また彼女が独自に研究していたAIによる自動艦隊に関して、戦闘記録の提供や実戦士官として意見を述べるなど協力した教え子の一人だった。
 だが、正直なところAIによる自動艦隊に関しては堀田はさして興味はなく、あえて言うなら当時の校長だった土方から「彼女のような有能な士官を、むざむざ潰したくない」と告げられたこと。そして彼女の母親が恐らくまともな死に方をしておらず、そのことが早紀にとって心の重荷になっていることが目に見えてしまっていたから、せめて自分だけでも当時誰にも見向きされなかった彼女の研究にささやかながら協力しようと決めたのである。

 つまり、もちろんAI艦隊という未来の一つの可能性を広げるという意味合いもあったが、あえて言うなら藤堂早紀という個人のために付き合ったような話であった。これは堀田らしくない「ひいき」と言えなくもなかったろうが、早紀とのこれまでの付き合いで彼女が有能な士官であり、藤堂平九郎・現地球防衛軍統括司令長官の娘であるという事実を無視した上で、潰してしまうには惜しい人材だと承知してのことでもあるのだ。
 そんな彼女がここまで落ち込んでしまっているのは、無理からぬこととはいえ堀田としては居たたまれなかった。武田は早紀の士官学校時代の後輩で数少ない友人であり、その関係は姉妹のようなものだったのだから、こうなってしまうのはやむを得ないとわかっていてもである。

 「藤堂君、聞きたくないだろうが言わせてもらうよ」

 心を鬼にして、堀田は口を開いた。

 「どういう状況でこんなことになったかは、およそは知っている。あえて言う。君の指揮に問題があったからではない。指揮官に何のミスがなかったとしても、人が死んでいく。それが戦場だ」
 「……」
 「だから、君らを生かすために犠牲になった人たちに報いたいと思うなら、これからも自分の役割を全うすることだよ。今すぐには無理でも、君がいつか立ち直ってくれる。私はそれを待っているよ」
 「……」

 これが、単に教官任務しか経験のない士官の言葉だったら戯言だろう。だが、堀田はガミラス戦役においても地獄のような「カ号作戦」を初陣とし、その後は太陽系内でのガミラスとの戦闘を戦い抜いた歴戦の士官でもある。その言葉は、恐らく今の防衛軍の同年代の士官に比べればよほど重かったろう。
 だが、早紀は表情を曇らせたまま、黙って堀田の言葉を聞いているだけだった。

 (これ以上は、追い詰めるだけにしかならないか……)

 堀田はそう判断して、敬礼してその場を去った。早紀とはその後しばらく会う機会がなくなり、次に再会するときは驚くべき事態になっていたのだが、もちろんそんなことをこの時点で想像することなど不可能であった。


 「堀田さん、早紀が失礼しました」

 早紀の前を去り、式場を後にしようとしたその時、堀田は耳慣れた声に呼び止められた。

 「……永峰君か。こんな時に不謹慎だが、君や藤堂君だけでも生きて戻ってきてくれたのは、正直よかった」
 「いえ、俺もあの時は何もできませんでした。悔しいです」

 永峰祐樹一尉。先の作戦で早紀が座乗していた戦艦「明星」の副長で、彼女とは士官学校時代の同期生である。戦術科の士官だから堀田の教え子の一人であるし、ガミラス戦役時の日本艦隊旗艦「キリシマ」の砲雷長と砲術士官という関係でもあった。

 「少し、お時間をいただけますか?」

 永峰の問いに、堀田は「構わないよ」と答え、式場から少し離れた人気のない場所へと足を運んだ。

 「早紀のことですが……大丈夫でしょうか?」

 やはりそのことかと、堀田は思った。

 「初の実戦で妹同然の後輩を失った。いくら軍人だとはいえ、心理的に焼き切れたとしても批判することはできないよ。私が教えていた頃から……いや、恐らくそれよりずっと以前から、張り詰めた気持ちで生きてきたとしか思えないから」
 「教官もそう思われましたか……」
 「嫌でもわかってしまうよ。そして、よりによって長官の娘ということで政治的に利用しようと群がる人間もいる。その中でよく理性を保っていると褒めてあげたいくらいだよ」
 「……」

 永峰が黙ってしまうあたり、状況が深刻だと堀田は理解するしかなかった。永峰ほど早紀と付き合いが長く、その性格をよく知る同僚を堀田は知らない。その彼が明らかに「自分にはお手上げだ」という顔をしているのである。

 「教官、お願いがあります」

 そう切り出した永峰の顔が、引きつっているように思えた。

 「あいつが……早紀にこれから何があっても、教官は早紀の味方でいてあげてもらえませんか? あいつが士官学校でやってこれたのも、教官が誰も見向きしてくれなかった早紀の研究に協力してくれたからです。だから……」
 「永峰君」

 静かな、堀田の声だった。

 「別に藤堂君に限ったことではないと断っておくが、私は教え子に閉ざす扉を持ち合わせてはいないつもりだ。今は職場も違うし何もできることはないだろうが、何かあれば堀田真司という個人は決して悪いようにはしない。それだけは約束させてもらおう」
 「……その言葉を聞けただけで、少なくとも俺には十分です。ありがとうございました」

 少しだけほっとしたような表情を見せた永峰に、こちらは表情を消したままだったが堀田も少し安心したのだった。
 時間を取らせて申し訳ありません、と告げて去った永峰の背中を見送りながら、堀田はしかし考え込んでいた。

 (所詮、防衛軍全体としては一士官の死など、小さい出来事だろう。だが、今度のことは避けられた悲劇ではなかったのか。それはよく考えるべきことだが、それを考えられる人が、今の上層部に果たしてどれだけいるのか……)

 そこが心もとないだけに、堀田は自分の無力さもまた痛感していたのである。

 (ここは、やはりあの人に戻ってきてもらうしかない)

 これまでは、正直なところ「嫌と言っている」人間に何かを強要するのは好むところではなかったから、本腰を入れて堀田は土方に「連合艦隊を率いてください」と言ってこなかったように思う。しかし、こうして自分の縁ある人々が死に、そして苦しんでいる姿を見て、自らの甘さというものを改めて思い知らされる日となった気がした。

 「本気でやってみよう。こうなれば、刺し違えるくらいの覚悟をしてだ」

 自らも古流剣術の心得がある堀田はこのとき、そう心に決めたのだった。

自分の記事としてはお久しぶりです。地球防衛軍艦艇史も「とある士官と戦艦と地球防衛軍」も止まった状態で「新作?」と思われるかと存じますが、この両方に関わりのあるお話になります(その意味では、厳密には「新作」とは言えないかもしれません)。

題名は「とある士官と戦艦と地球防衛軍 2202」となります。

現在、このシリーズはガミラス戦役の部分で話が止まっていますが、ガミラス戦役の地球関連は原作にヤマト以外のシーンの描写がないためほぼ一からの創作になり、難易度が高くなっていること。また、話の後半に大規模な(といってもガトランティス戦ほどではないですが)艦隊戦を挿入した結果、それに関連して他の方とあるプロジェクトを進めることが決まったため、文章で表現する設定を超えたものを準備する必要も生じました。このため腰を据えてかからないとならず、現状申し訳ないのですが手に負えなくなっています。

そのため、このたびヤマト2202が完結し、それでガトランティス戦役を私なりにどういった方向で創作するか大よそ決まった(これに関しては後述します)ので、とりあえず取り掛かれるこの作品を書くことにしました。これは私が旧作で特に2を好んでいるという理由もあります。

気分屋で申し訳ないのですが、しがない二次創作者ということで、ご容赦頂ければ幸いに存じます。なお、第一話は土曜夜に公開予定ですので、あまり期待せずに、それでも楽しみだと思ってくださる方はお待ちいただければありがたく思います。

なお余談ですが、題名が「2202」なのに、第一話は2201年から始まる予定です。いきなりおかしいではないかと思われるでしょうが、見逃していただければと(笑)


一部独自設定の説明

簡単に「とある士官と戦艦と地球防衛軍 2202」の基礎設定というか、ある種の「前提」についてお話させていただきます。これがないと何でこんな描写になるかわからない、それどころか急にどうしてこんな話に?ということにもなりかねませんので、この説明を設けます。「それでもわからない」ということが万一ありましたら、コメントかツイッターにて質問を頂ければと思います。

・ベースは「旧作2」とし、そこに「2202」の要素を加える

これは「筆者は基本は艦艇マニアである」「人間ドラマに関しては2202以上のものは書けそうもない」というのが理由です。旧作2はヤマトシリーズにしては珍しく、比較的艦隊戦(土星会戦)が戦前の駆け引きから詳しい(ヤマト以外の)戦闘の描写があることから、これを膨らませてみるのが面白いと判断したこともあります。筆者のツイッターを読んでいただいている方には、前から「この方向でいきたい」とツイートしていますので、今更という感はあるかと思いますが一応お話しておきます。

・筆者の脳内設定と他の方の二次創作の設定は有効に利用する

「とある士官と戦艦と地球防衛軍」のガミラス戦の部分については、書ける状態ではありませんが筆者の頭の中にはどんな流れになるかおよそ固まっています。そのため作中ではこの頭の中の設定を(多少ぼかして)使うことが多々ありますので、主人公を始めとしてキャラたちが「こういうことをガミラス戦ではしていたんだな…」と想像して読んでいただければと思います。現状、筆者としましてはこの部分で致命的な破綻は生じないだろうと考えております。

また、ツイッターのDMにおいて筆者が参加しているヤマト二次創作の集まりでは、アイディアを出し合って様々な創作が行われ、私もいささか感想やご意見など差し上げたりもしています。
そんなこともあり、他の方が作られた二次創作の設定のうち(もちろん作者様のご許可はいただきます)、使える部分は使わせていただくことにしたいと思います。また、作中にてどの方のどの作品を参考にさせて頂いたかは、その都度後書きなどで明記させていただきます。

他に現状、少し細かいことで決まっていることを列記すると、

・本作の世界には時間断層が存在しません。そのため艦艇数は概ね「さらば」「2」準拠となります
・ガミラス戦役とその後の設定は「2199」「2202」のものを用います。そのため地球はガミラスと共にガトランティスと戦争中です
・本格的な戦役勃発前に、アンドロメダ級の量産は行われません。これは拙作の地球防衛軍艦艇史「アンドロメダ その1」に準じます(空母型が出てくるかはかなり怪しいです)。また、アンドロメダと主力戦艦(D級前衛戦列艦)のサイズを独自設定に変更しています。ヤマトのサイズに関しては2199設定の333mです
・重力子スプレッドですが、万能すぎるので創作では扱い切れない(本作の後で対戦するはずの敵に対しても有効性が高すぎる)ため、省略します。のみならず他の一部兵器も2202の設定を「なかったことにする」場合がありますが、ご了承ください

今のところはこんなところかと思います。このあたりの設定は動かすと作品全体を練り直すことになりかねませんので、動かし難くなりそうですが他の決まってないことに関しては様々な可能性を探りながら創作していこうと考えています

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