地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

https://twitter.com/a140yamato/status/1069240517551042560

ツイッターにて再びアンケート実施中です、こちらの記事をご覧になった方々にはご協力のほど、よろしくお願いします

第一次火星沖海戦、国連宇宙海軍が計画したオペレーション・マルス(カ号作戦)に基づき火星を絶対防衛線と設定。火星沖に集結した国連宇宙軍連合艦隊と、侵攻してきたガミラス帝国艦隊の間にて発生した戦闘である。結果は知っての通り、参加した兵力の八割を失った国連宇宙海軍の敗北に終わった。
この戦いにおいて、ウォースパイト級は六番艦のレパルスを残して全艦が沈没した。我々は、幸運にも彼女らの最期を看取った者と接触、そしてインタビューを行うことに成功した。彼女らは一体、どのように戦い、そして沈んでいったのか。それらの謎を解き明かす貴重な証言を得られたことに感謝する。

西暦2210年11月10日 J・L

西暦2193年 国連宇宙海軍 極東方面軍所属 イズミ・カオル一佐(当時)

はあ、私に話せることでしょうか?私よりも、他の方をあたった方がよろしいかと思います。何せあの艦は欧州方面空間戦闘群の所属ですし、私はあの艦の最期の瞬間を看取っただけで、それ以外のことはよう知らんのですが?えっ、それでも構わないって。分かりました。では話をさせてもらいましょう。
第一次火星沖海戦、この呼び名が広まったのはガミラス戦後です。ですから、当時の私どもはあの戦いを“カ号作戦”と呼んでおりました。そちらでは“オペレーション・マルス”なんていう名前で呼んでいたらしいですね。まあ、名前なんかどうでもいいんです。我々があの戦いで負けたという事実は変わりませんですから。
あの戦いは、正に総力戦でした。使える艦を片っ端からかき集めて、それに若造を乗せて火星に送り込んだっていう話ですから。まだ士官学校を卒業したばかりの奴らですよ?ですが、この時はまだ志願者だけだった分、まだ戦争末期よりはましだったのかもしれませんね。メ号作戦の時なんか、普通の大学生を「学徒動員だ!」って言って軍隊に引っ張って行ったらしいですから。そうやって連れていかれた若者は皆死んでいきました。生き残ったのはほんの一握りです。ですが、この時の地球はこうせざるを得ないほどに追い詰められていたのです。地球が崖っぷちに追い詰められたのは、ガミラスが遊星爆弾を地球に落とし始めるようになってからだという人がいますがあれは間違いです。2193年の時点で、地球は既に崖っぷちに立たされていたのです。
外惑星でガミラスとの圧倒的な力の差を見せつけられた国連宇宙海軍は、もはやなりふり構ってはいられない状態でした。そのため通常では考えられないような戦術を採用したのです。それは“徹底的な持久戦”でした。そしてそれは即ち大規模な消耗戦に陥ることを意味していました。でもそうするしか無かったのです。ガミラスと当時の地球との戦いぶりは、正に神様と虫けらの戦いでした。虫けらが神様に勝てる方法はただ一つ。大勢の仲間を集めてきて、たとえ仲間が何人死のうとも、神様があきれて返るまで戦いをやめないことでした。
味方が五隻沈んでも、敵を一隻沈められればそれでいい。たとえ全ての武器弾薬を消耗し、国連宇宙海軍の将兵全員が火星に墓標を立てることになっても、ガミラス軍を倒せればそれでいい。ガミラス軍に対して我々が唯一優っていた“数”という利点を最大限に生かした戦い方でした。これで来年度の予算がゼロになっても構わない。この戦いに負ければ、我々は来年度を迎えることすらできないのだから。国連宇宙海軍は本気で、この戦いで全戦力をすりつぶす気でした。
そしてカ号作戦が始まりました。手始めに、火星沖に500隻以上の艦艇が集結しました。開戦以降に就役した艦艇こそ少数でしたが、第二次内惑星戦争後予備役となり保管されていた艦艇が月面基地より大挙して出撃していきました。その中には、当時私が艦長を務めていた巡洋艦利根の姿もありました。
村雨型宇宙巡洋艦利根、二度の内惑星戦争を受けて大量建造された村雨型ですが、第二次内惑星戦争終結後は多数が予備役となりました。それらは地球を含む各惑星及び衛星、小惑星に置かれている基地にて保管されました。中でも一番保管数が多かったのが月面基地でした。月には地球と比較的近いという利点がありました。加えて大気が無いので艦体が錆びることもありません。そういった理由で、月面基地には200隻以上の艦艇が保管されていました。利根もその中の一艦でした。こうして私は、実に十三年ぶりに利根の艦長に就任した人間となったのです。
冥王星での攻防戦にて、私の乗艦が旗艦の比叡と共にガミラス軍に大損害を与えたことが評価されて、カ号作戦の直前には一佐に昇進することが出来ました。まあ、司令官の土方宙将を左遷してしまいましたから、せめて配下にて戦った者には良い思いをさせてやりたいみたいな上層部の思惑なのでしょうけど。その時は、こんな私でも一佐になれたことに感謝していました。一佐になれば普通は戦艦の艦長に就任するのですが、あの頃は戦艦なんてほとんど残っておりませんでしたから、私は艦長兼戦隊司令官ということで利根に配属されました。こうして、最低限の訓練を月面沖にて済ませた後に、私どもは三隻の僚艦を従えて火星沖へと向かいました。
あの時火星沖には、実に500隻以上の艦艇が集結していました。あれを見た時は心底驚きましたね。「一体地球圏のどこにこんな大艦隊が眠っていたんだ?」と。それに、集結した艦艇も選りすぐりの艦ばかりでした。戦艦だけでも、北米方面空間戦闘群所属のヴァージニア級五隻、極東方面空間戦闘群所属の金剛型二隻と火竜型四隻、欧州方面空間戦闘群所属のウォースパイト級三隻とリュッツオウ級三番艦アドミラル・グラーフ・シュペー、ノルマンディー級二番艦のリシュリュー、カイオ・デュイリオ級一番艦カイオ・デュイリオ。他にも南米とか南亜方面の空間戦闘群の戦艦もおりましたから、全部合わせたら二十隻くらい居たと思いますね。それに加えて200隻以上の巡洋艦と、300隻近い突撃駆逐艦。もう負ける気がしなかったですよ。
そちらのウォースパイト級であの戦いに参加したのは、確かウォースパイト、レナウン、レパルスの三隻だったかと思います。バーラムとマレーヤは天王星で、ヴァリアントは冥王星でそれぞれ沈んでいましたからね。でも、あの戦いまでで半数も残っていたら上出来だと思いますよ。他なんて軒並み二割から三割くらいしか残っておりませんでしたから。酷いところだと、初戦で艦隊が全滅していましたから。そうして全軍の配置が終了し、いつでも戦闘に入れる準備が整ったところにガミラス軍はやって来たのです。
とは言っても、私どもは最初から戦闘には参加しませんでした。別にさぼっていた訳じゃないんです。私どもはいわゆる“予備兵力”というやつでした。カ号作戦において、国連宇宙海軍の方針は徹底的な持久戦でした。敵を撃退するまで何日も戦うつもりでした。ですが、兵士もまた人間ですから、24時間戦いっぱなしというわけにはいきません。食事だってとらなきゃいけないし、睡眠だって必要です。そこで、三~四割程度の戦力を常に後方に待機させておき、ある程度時間が経過したら前線の艦と交代させる。前線で戦っていた艦は後方で簡単な修理と整備、それから乗員の休憩などを取ってから、また前線へと赴く。ローテーションってやつです。そうやって常に前線にいる艦の状態を最善に保ちつつ、攻撃の手を絶やさないようにしたわけですな。本当は前線にいる艦と後方にいる艦の比率を逆にした方がより良いのですが、何せ我々とガミラス軍の間には圧倒的な力の差がありましたからねぇ。ちょっとでも多くの艦を前線に張り付けておかないと気が気でなかったんでしょう。
とにかく、私どもは火星の衛星フォボスの宇宙港(第二次内惑星戦争時に建設された火星軍のフォボス要塞の跡地を転用したもの)にて、戦局を艦内に設置されたテレビの前で見守っていました。無論、命令があればすぐに出撃できるようにしていたのは言うまでもありません。最初の攻撃はガミラス軍からのものでした。まるで生き物のような姿をしている緑色の艦から幾つものビームが放たれました。しかし、紅色のビームは全て手前のデブリ帯にて青白い光を放って消滅しました。直前に展開が完了したばかりのビーム攪乱膜の効果が早速発揮されていたのです。これを見た私どもは皆歓喜し、艦内は歓声で溢れかえりました。当然の反応でした。今まで数多くの仲間を死地に追いやって来たビームが、今こうして自分の目の前にてその無力さをさらけ出しているのですから。ガミラス艦がビームを放てば放つほど、私どもの歓声はより大きくなっていきました。
しかしこれで終わりではなかったのです。業を煮やした何隻かのガミラス艦が、デブリ帯を突破しようと試みて来たのです。ですがその目論見は、デブリ帯内で待ち構えていた航空隊と宙雷戦隊によってあっけなく潰えました。艦内テレビに流れていた映像には、その決定的な瞬間がバッチリと映っていました。中継映像の視点が、後方に待機している巡洋艦のものから、デブリ帯内に潜んでいる突撃駆逐艦のものへと変わりました。そしてそこには、デブリの山を掻き分けて接近してくるガミラス艦が映っていました。彼らは、その鋭い牙をむいて敵に襲い掛かりました。
まず航空隊の攻撃機がガミラス艦に対して対艦ミサイルによる攻撃を行いました。しかし、航空機に搭載可能な大きさのミサイルでは、敵艦をひるませることはできても、沈めることはできません。ですが勇猛果敢な宙雷屋達が、この一瞬の隙を見逃すはずがありませんでした。突如デブリの陰から何隻もの駆逐艦が飛び出し、ガミラス艦に対して砲弾や魚雷を次々と叩き込んでいきました。撮影していた艦もその突撃に加わり、敵の駆逐艦に対して二発の砲弾と三発の魚雷を一斉に発射しました。砲弾が敵艦に吸い込まれ、敵艦の姿勢が崩れた直後に、そのどてっぱらに散発の魚雷が直撃しました。更に行きかけの駄賃と言わんばかりに、すれ違いざまに上下の高圧増幅光線砲を駆逐艦の艦橋部に撃ち込みました。その後敵駆逐艦はカメラの範囲外となってしまいましたが、轟沈とまではいかないにしても、あれだけの砲雷撃を受けた駆逐艦が無傷であるとは思えませんでした。そして後続艦から「敵駆逐艦一大破。」との報告が入り、それがテレビ前に居る私どもの耳に入った瞬間、私どもはこれまでにないほど歓声を上げました。あちこちで万歳三唱が唱えられ、感激のあまり泣きながら抱き合っている者もいました。たった一隻の駆逐艦、それも撃沈したわけじゃないのにも関わらず、艦内はまるでお祭り騒ぎのようでした。
こうして、私どもの間には早くも厭戦ムードが漂っていました。「行ける!これは勝てるぞ!」なんていうのはまだ序の口で、ひどい者だと「勝った!俺達は遂に勝ったぞ!」と、もうすでに敵に勝利したと勘違いしていたりしました。ですが、そう思いたい気持ちもわからなくはなかったですし、何より当の私ですらそのムードに飲み込まれつつあったのです。しかし、この時の私どもはまだ知らなかったのです。真の絶望、そして本当の敗北が差し迫っているということを。
突如、ガミラス艦隊の背後に、何十個もの紫色の光点が風車状に出現したのです。そしてその光点の中から、見たこともない形式のガミラス艦が次々と湧き出てきました。あれがワープアウトというものだというのは、この戦いの後に知りました。当時はただ、何もないところから敵艦が次々と現れているくらいにしか思っていませんでした。ですが、そのくらいの認識でも今私どもに差し迫っている脅威を理解するには十分でした。見たこともない形式(おそらく新型艦でしょう)が多数出現する。軍事知識が少しでもある者なら、敵の増援(それも数や艦隊の構成的にこちらが主力部隊)が到着したのだと考えるでしょう。この考えに至った時、私どもは先ほどまで高揚していた気分を、一気に奈落の底にまで叩き落されました。自分達があれだけ苦労して戦っていた奴らは、実は敵の一部でしかなかった。その一部ですらあれだけ脅威なのに、あんなに沢山の敵が一斉に攻撃して来たら、自分達は一体どうなってしまうのだろう?そう思ったその時、私どもは今自分達が何をすべきかに思い当たったのです。
私は全艦に警報を発し、直ちに全乗組員を配置につかせました。そして艦内各部のチェックを慌ただしく終えると、すぐに艦を出港させました。司令部から命令は出ていませんでしたが、命令を待っている余裕はありませんでした。何より、当の司令部も混乱の極みにあったのでまともな命令を下せない状態でした。私の乗艦である利根は、同じように慌ただしく出港して来た僚艦の最上、三隈、熊野の三艦と単縦陣を組んでから戦闘宙域へと急行しました。当時フォボスは戦闘宙域とは正反対の位置にありましたが、全速力で航行すれば三十分ほどで到着するはずでした。しかし私どもが戦闘宙域に到着した頃には、既に前線の艦隊は壊滅寸前でした。艦隊総旗艦のヴァージニアは沈み、各艦は個別にガミラス軍と戦闘を行っていましたが、それもガミラス軍の圧倒的な力によって殲滅されていきました。そのような状況の中、戦場に到着したばかりの私どもに悲劇が襲い掛かって来ました。
私どもは、同じように前線に向かいつつある艦同士で臨時に艦隊を組んでいました。とは言っても、別に統一された指揮系統があるわけではなく、ただ艦が集まっているだけでしたが。それでも味方と一緒に航行しているというのは、とても心強かったです。ですが、それは敵にとって格好の標的でした。
最初は、前方を航行していたピケット艦(確か艦名は白雪だったかと思います。)が「前方ニ敵艦見ユ。」との通信して来たのを最後に、通信が途絶したのが始まりでした。その報告から数十秒後、光学観測にて前方から接近してくるガミラス艦を捉えました。運が悪いことに利根の電探は故障していて、上手く敵艦を捕捉できなかったようです。利根が敵艦を捉えた時には、先に電探にて敵艦を捕捉していた艦が既に迎撃準備の為移動を開始していました。ですが各艦が勝手に移動している為、陣形は思うように変更できずに、ただ崩れていくばかりでした。そこにガミラス軍は襲い掛かって来たのです。
ガミラス軍が最初に狙いを定めたのは、艦隊の最前列にて航行していた中国軍の戦艦遼寧でした。遼寧は接近中のガミラス艦に対して、僚艦の蘭州級巡洋艦と共に猛烈な砲雷撃を浴びせました。しかし、ガミラス艦はそれをものともせずに接近し、すれ違いざまに陽電子ビームを遼寧に叩き込んだのです。遼寧の艦腹は赤黒く切り裂かれ、次の瞬間には艦体が風船のように膨らみ、そして周囲一帯に大量の破片をまき散らしながら破裂しました。そして遼寧の後に引っ付いていた四隻の蘭州級巡洋艦にもガミラス艦は容赦なかったのです。大量の空間魚雷を浴びせられた四隻の蘭州級巡洋艦の艦体は、瞬く間にくの字状に折れ曲がって爆発しました。私どもは丁度中国艦隊の右側を航行していましたから、中国艦隊の惨状はよく見えました。あれに襲われたら自分達もこうなる。そう悟った艦は次々と艦隊から離脱していきました。もはや秩序も何もあったものではありませんでした。そこに、ガミラス艦がまた襲い掛かって来たのです。
今度狙われたのは私どもの戦隊でした。私は無駄だと分かっていながら各艦に応戦と回避行動を取る様に下令しました。そして、接近中の敵巡洋艦に対して主砲による牽制射撃を行い、同時に四発の魚雷も放ちました。案の定、主砲は命中した全弾が敵艦の装甲にはじき返されてしまいましたが、幸運にも魚雷の方は一発も迎撃されることなく全弾が命中しました。これによって、ガミラス艦は大きく体制を崩しました。私はその一瞬を見逃さず、艦を敵陽電子砲の死角に滑り込ませました。
ガミラス艦といえども無敵ではありません。彼らが使用している無砲身砲塔には、ある重大な欠陥がありました。それは一切仰角や俯角が取れないことでした。これが戦艦型だと側面の砲身付き陽電子砲がある程度死角をカバーしているのですが、そういった装備がない巡洋艦型なら比較的死角に潜り込むことは容易でした。あの時敵は五隻ほどの艦隊を組んで互いの死角を減らすよう心掛けていたようでしたが、それでも完全に死角が消えたわけではありませんでした。利根は敵艦隊の死角を上手くついて、見事に敵艦隊を突破することに成功したのでした。
しかし、僚艦は利根ほど幸運ではありませんでした。まずは隊列を離れ、戦場から離脱しようとして大きく回頭していた巡洋艦最上が、陽電子ビームに艦尾を撃ち抜かれました。最上は一切の推力を失って宇宙を漂い始めました。しかし最上が漂って行った先には、同じ戦隊の巡洋艦三隈がおりました。二隻の乗組員は、おそらく最後の一秒まで衝突を回避しようと努力したのでしょう。しかしその努力も虚しく両艦は衝突、そこを陽電子ビームが串刺しにして二隻とも轟沈しました。艦列の最後尾でその光景を見ていた巡洋艦熊野の艦長が、果たしてあの時何を思ったのかは分かりません。ですが、彼が取った行動は実に日本人らしい行動でした。彼は乗艦である熊野の艦首を敵艦に向けると、そのまま全速力で突っ込んだのです。熊野の艦体には何発もの陽電子ビームが直撃し、たちまち火だるまと化しました。普通ならもう沈んでいてもおかしくないのにも関わらず、熊野はまるで乗組員の執念が宿ったかのように動き続け、そして敵艦に体当たりしました。いくらガミラス艦の装甲が強固とはいえ、150メートルもの金属の塊にぶつかられて耐えられる道理はありませんでした。熊野とガミラス艦の艦体を閃光が覆い隠し、続いて両艦は爆炎に飲み込まれました。こういった特攻や自爆攻撃を美化しているわけではないのですが、熊野の行動には一種の尊ささえ感じられました。そして私の頬には一筋の涙が走っていました。
こうして、利根に随伴していた全ての僚艦が沈みました。一隻戦場に取り残され途方に暮れていましたが、次の任務はすぐに見つかりました。味方艦からの援護要請があったのです。「こちらはHMSユリシーズ、敵駆逐艦が陣形内に侵入した。誰でもいい。誰か迎撃してくれ!」勿論すぐに急行しました。加えて要請があった宙域は私どもがいる宙域の隣でしたから、数分で要請宙域に到達出来ました。しかし、私どもが到着した頃には、既に敵駆逐艦はある艦への砲口を向けようとしているところでした。そして敵駆逐艦が砲口を向けていた艦というのが、あの戦艦ウォースパイトだったのです。
それにしても、敵駆逐艦の操艦は実に見事でした。思わず「あれなら私の部下としてもやっていけるのではないだろうか?」と思ってしまいました。しかし今こちらに向かって突撃している駆逐艦は味方ではなく敵でした。私は勇敢な敵駆逐艦を葬り去らなければなりませんでした。私は敵駆逐艦への砲撃を命令しましたが、部下は発砲しようとしません。「何故撃たん?」「今撃てばウォースパイトに当たります。」そう、射線上にウォースパイトが居たため、この瞬間に撃てば敵駆逐艦ではなくウォースパイトに当たる可能性があったのです。一瞬私は躊躇いましたが、すぐに迷いを吹っ切りました。「構わん、向こうは戦艦だ。」そう言った後、私は撃てと部下に命令しました。利根の主砲から緑色の光線が敵駆逐艦に向かって放たれます。しかし、光線が向かった先には既に敵駆逐艦はおらず、光線はただ虚空を切り裂くに終わったのです。そして利根の攻撃をよけた敵駆逐艦はウォースパイトに狙いを定めると、そのどてっぱらに陽電子ビームを叩き込んだのです。ウォースパイトの艦腹はショートケーキのように簡単に切り裂かれ、やがて破孔から炎が噴き出しました。炎はウォースパイトの全身を這いずり回り全てを焼き尽くしました。私どもは、その光景をただじっと眺めているしかなかったのです。
ウォースパイトが撃沈されてもなお戦闘は続きました。司令部(あの時まだそんなものが残っていたどうかは分かりませんが、話がややこしくなるのでここではこう呼びます)からの命令に従い、私どもはこの宙域から撤退しなければなりませんでした。逃げるだけなら簡単だと思われるかもしれませんが、実は戦闘で一番被害が大きいのは撤退戦なんです。秩序を失って逃走する軍隊というのは、それだけ脆いものなのです。こうして私どもの悲惨な撤退戦が始まりました。
最初はまず、利根に通信をくれた巡洋艦ユリシーズと合流しました。ユリシーズの艦体には若干の損傷が見られたものの、特に戦闘行動に支障はないようでした。この時はまだ名も無き普通の巡洋艦であったユリシーズですが、後にガミラス戦役時の三大幸運艦の一隻に数えられるだけのことはありますね。その幸運は、既にこのころから付きまわっていたのでしょう。そして利根とユリシーズの周りには次々と味方艦が集まって来ました。艦体に幾つもの破孔がある黄金色の戦艦、見事に艦橋を撃ち抜かれている紅白色の巡洋艦、装甲翼が半分欠けている赤白黄三色の突撃駆逐艦、集まって来た艦は皆どこかしら損傷していました。そして集まった十数隻の艦艇に、帰るべき基地を失った数十機の航空機が加わって、敗走艦隊の編成が完了しました。後は一目散にここから逃げるだけです。そう思ったその時でした、ガミラス艦隊がこちらに向かってきたのは。
分かっていたことではあるのですが、ガミラス軍がこのような格好の獲物をみすみす見逃してくれるわけがありませんでした。しかも敵艦隊の先頭には、今回の戦闘で初めて確認された敵の超弩級戦艦がいました。そいつの右隣にも同じ型の艦がおり、左隣には冥王星や天王星にて私どもを散々苦しめてきたあの超弩級戦艦がいました。ざっと見ただけでも超弩級戦艦が三隻、戦艦が十隻以上、巡洋艦と駆逐艦は合わせて約五十隻、到底勝てる相手ではありませんでした。この時私の脳裏には、ある一つの考えが浮かんでいました。それは「この利根を生贄として差し出せば、他の艦は逃げられるのではないか?」というものでした。無論、利根の乗組員全員を望まない英雄にはしたくありませんでした。しかし、どうせ誰かが死ぬのであれば、死ぬ者はより多くを生かす為に死ぬべきではないでしょうか?私はそう思い迷った挙句、乗組員に自分の考えを伝えようとしたその時でした。
突如、利根の右舷側を航行していた手負いの黄金色の戦艦が、急に敵艦隊に向かって行ったのです。その艦こそが、ウォースパイト級戦艦五番艦のレナウンでした。レナウンの艦長は、きっと私と同じ事を考えていたのでしょう。そして迷わず乗組員にその意思を伝え、行動に移したのでしょう。レナウンがやろうとしていたことは明白でした。しかし、私どもがそれに続くわけにはいきません。今ここで私どもが後に続けば、彼らの意思を踏みにじることになってしまいます。死ぬのは自分達だけで十分だ。そう思ったからこそ彼らは動いたのです。決して、他の仲間まで死地に引きずり込みたいわけではありません。この意志は他の如何なることよりも尊重されなければならないほど尊いものでした。
しかし、そんな彼らの意思に背いた一団がいました。艦隊の周りを飛んでいた航空隊の面々です。この戦いが終わった後に、私は無粋にもレナウンに付き従わず生還した搭乗員に「何故彼らは突撃したのか?そして何故君達はそれに加わらなかったのか?」と尋ねました。その言葉を耳にした搭乗員は、目に怒りの涙をにじませ、時々嗚咽を漏らしながら答えました。「あいつらの機体には燃料がもう無かったんだ。だからどうせ地球に帰る途中で死ぬのであれば、せめて敵に一矢報いて死にたい。そう思ったんだ。自分達だって突撃したかった。でも隊長がそれを許さなかった。隊長は生きろと言った。それは命令だった。隊長の命令は絶対だ。だから自分達は生きなければならない。どんな恥をかき、どんな屈辱にまみれても、自分達は生き延びなければならない。それが死んでいった戦友達への供養であり、最後の頼みでもあるのだから。栄光に呑まれて死んでいくのは、あの人達だけでもう十分だ。」その言葉を聞いた私は、何も言い返すことが出来ませんでした。
こうして、第一次火星沖海戦最後の地球側の攻撃が始まりました。七十隻近い敵艦隊に対し、突撃するのは満身創痍の戦艦一隻と、弾薬の尽きた航空機が約十機、傍から見れば自殺行為にしか思えなかったでしょう。でも彼らはやり遂げました。レナウンは見事、敵の超弩級戦艦に突入し、自身の質量と核融合炉の誘爆によって敵艦を呑み込みました。航空機も、何機かは敵艦への体当たりに成功した模様です。私どもは彼らとの距離を増しながら、それを遠くからじっと眺めていることしかできませんでした。せっかく彼らが生かしてくれた命です。自分達だけが生き残ってしまった悔しさはありましたが、これで私どもは何としてでもこの戦争を生き残らなければならなくなりました。
思えば私は、迷いによって生き残れたはずの命を見殺しにし、もうとっくに散っていたはずの命を生き残らせていたのかもしれません。私が迷わずに撃っていれば、ウォースパイトは救われたのかもしれない。私が迷わず突撃していれば、あの時死んでいたのは利根の乗組員だったかもしれない。歴史に“もしも”はありませんが、いつもそういうことを考えてしまうのです。でもそれが人間だと私は思います。人間は誰もが迷い、そして間違えます。でもそれは人間だからこそなんです。人間が迷うことをやめた時、それは自分達が人間であることを止めた時です。私どもは機械ではありません。機械には“意志”というものはありませんが、人間にはあります。そして人間は、死んでいった者達の“意志”を受け継ぐことができ、またそうする義務があります。過去にしか生きられなかった者達の“意思”を未来へと受け継ぐことが、生き残った人間の使命なのですから。


あとがき
初めまして、筆者の八八艦隊です。女王陛下のウォースパイト号シリーズも遂に三章まで終了いたしました。第二次内惑星戦争、天王星沖海戦、そして第一次火星沖海戦と、本編に一切描写がない戦闘ばかり扱ってきた本シリーズですが、ブログ主さん曰く結構好評らしいので、私としてはとても嬉しい限りです。この小説をブログに載せてもらったことに対して、改めてブログ主ことA-140さんに感謝の意を述べたいと思います。そして読者の皆様、今後とも私の作品をよろしくお願いいたします。

https://twitter.com/a140yamato/status/1066692967841226753

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 「砲雷長」
 「は、はい」

 堀田に声をかけられて、林は振り向いた。

 「君は主砲の射撃に専念してくれ。悪いが、対空機銃と魚雷のスイッチはこちらが貰うよ」
 「了解しました、お願いします」

 「神風」には、メ号作戦で「ゆきかぜ」が使用した新型の空間魚雷が配備されていた。しかし今回は訓練ということで実弾は発射管4門にそれぞれ1発ずつしか搭載されておらず、かつこの魚雷自体が貴重品なので使わないに越したことはない。
 また、雷撃戦を得意とするガミラス艦に対しては、その魚雷を破壊するための対空機銃も重要な兵器だ。しかし「神風」は駆逐艦のため対空兵装は貧弱で使いどころが難しい。この戦いは「神風」にとって初陣であるから、この二つは堀田が扱ったほうが確かによかったろう。

 「操艦は航海長が航海士に指示を。船務長、敵が主砲の射程に入る一分前に砲雷長へ伝達。射程は今までの艦より長い、十分に注意してくれ」
 「「わかりました」」

 三木と沢野が答えると、堀田は敵艦が映し出されたモニターを再度確認した。

 (ガミラスの巡洋艦か。戦艦級ならともかく、この相手ならば)

 「神風」が搭載する4門の15.5cm陽電子衝撃砲でも対処は可能なはずだ。少なくとも計算上は、だが。

 「有効射程まで、あと一分」
 「了解!」

 沢野の声に林が答える。緊張が感じられるが、無理もないことである。彼女は戦場の経験はあるとはいえ、ショックカノンを撃つのは初めてなのだから。

 「落ち着け、砲雷長。いつも通りに狙って撃てばそれでいい」
 「はいっ」

 堀田が声をかけてやると、林もいくらか落ち着いたようだ。

 「敵艦、射程に入った。砲撃準備よし」
 「撃ちー方ー始めっ!」

 堀田の号令一下、林が主砲の引き金を弾く。「神風」の艦首上下に取り付けられた連装砲塔2基から青白いエネルギー流が4本生じ、敵艦へと向かっていった。

 「照準修正。砲雷長、次は君のタイミングで撃て」
 「了解!」

 その直後、最初の一斉射が敵巡洋艦を直撃。艦首が爆発して砕け散り、速力が一気に低下した。

 (全弾当てたか、いい腕をしている)

 内心、そう堀田は林を称賛したが、当の彼女や他の乗組員たちは驚いていた。今まで自分たちが乗って見てきた、あるいは話に聞いていた限り、これほど簡単にガミラス艦に打撃を与える艦など存在すら信じられなかったからである。何しろ彼ら彼女たちは「ヤマト」を知らないのだから。

 「砲雷長、一気に沈めてくれ」
 「はっ、はい!」

 我に返った林が照準を修正、今度は「自分のタイミングで撃て」と言われている。

 「主砲、発射!」

 再び4本のエネルギー流が敵巡洋艦を襲う。また全弾命中、ガミラス巡洋艦はたちまち爆発四散した。
 その光景を見た艦橋の乗員たちは、堀田を除いて呆然としていた。三木ですら唖然としている。今までのガミラス艦への常識からすれば、駆逐艦どころか巡洋艦級など絶望的な相手であったはずなのに、駆逐艦である「神風」はたった主砲二斉射で、相手に何もさせずに沈めてしまった。自分たちの乗っている艦がこのような威力を発揮するなど、実は表向き冷静さを保っているように見える堀田ですら驚きを禁じ得なかった。

 (これが、波動機関の威力か)

 しかし、驚いてばかりはいられない。まだ戦闘は終わっていないのだ。

 「右舷の駆逐艦、発砲!」

 沢野の声を聞き、三木が初島に指示を出す。

 「航海士、面舵30」
 「お、面舵30、よーそろ!」

 これも波動機関の威力なのだろう、これまでの磯風型駆逐艦すら上回る速度で「神風」は右舷から迫る敵駆逐艦に艦首を向ける。その船体ぎりぎりを、敵の砲撃がすり抜けていった。

 「主砲二番、テーッ!」

 堀田が指示し、林が撃つ。今度は軽快な駆逐艦が相手だったからか回避されたが、この回避運動は堀田と林の双方が計算していた。

 「一番、テーッ!」

 今度の砲撃は敵駆逐艦を捉え、爆散させる。残るは一隻だ。

 「後方、魚雷迫るっ!」
 「当たらないよ、進路そのまま」
 「わかりました」

 沢野の報告に、堀田と三木は慌てることなく応じる。すると、確かに発射された敵の魚雷四本は「神風」の両舷を通過していった。

 「前進、第一戦速!」
 「了解。航海士、速度を上げつつ進路反転180度」
 「よ、よーそろ。増速、反転180!」

 「神風」は敵駆逐艦を振り切るかのように速度を上げる。何せ主兵装が艦首に集中している「神風」だから、いったん敵を振り切って艦首を向け直さないと反撃ができない。そして幸いなことに「神風」の急加速を敵は予測していなかったようで、一気に距離が開いた。
 しかし、敵もさるもの。再び装填したらしい魚雷を発射、今度は正確に「神風」を捕捉していた。

 「砲雷長、主砲で魚雷を撃ち落とせ」
 「え、えっ?」
 「聞こえなかったのか、君ならできるはずだ!」
 「わ、わかりましたっ」

 主砲塔二基が左舷に急旋回し、突き進む魚雷を照準器が捉える。

 「撃てっ!」

 一番砲塔、僅かに遅れて二番砲塔が射撃する。林の腕は確かだったようで、四本の魚雷のうち三本はこれで破壊できた。しかし、一本は撃ち漏らしている。

 「魚雷、回避できませんっ!」
 「……」

 沢野が悲鳴のような声を上げたが、堀田はこの時は何も指示しなかった。

 「魚雷、命中まであと200っ!」
 「対空防御、始め!」

 ようやく堀田が対空パルスレーザー砲の発射ボタンを押す。限界まで引き付けていたこともあって「神風」の貧弱な対空砲火だったが見事に魚雷を撃破した。
 そして、程なく「神風」は敵駆逐艦に艦首を向け切っていたが、敵は先ほどの魚雷攻撃を機に砲撃戦へと持ち込むつもりだったのだろう。加速して正面から突っ込んできた。

 「機関長」

 機関室の来島を、堀田は呼び出した。

 「機関全力、まだ行けるか?」
 「今のところは大丈夫でしょうが、あんまり無茶させないで下さいよ。まだ先があるんでしょう?」
 「あと一回だけだ、頼む」
 「しゃーないですな、了解です」
 「すまない」

 マイクを置くと、今度は林に声をかける。

 「砲雷長、すまないが主砲も貰うぞ。航海士は舵を航海長へ頼む」
 「「は、はいっ」」
 「両舷全速、舵そのままで敵艦正面へ突撃! 船務長、敵との相対距離をこちらに送ってくれ」
 「了解しました!」

 「神風」は再び加速し、しばらくして全速に達する。一方で敵艦も全速で正面から挑んでくるらしく、程なく砲撃を開始する。しかし、それを初島から舵を受け継いだ三木が絶妙の操艦で回避していく。

 「距離、千五百!」

 沢野の声が響いた。

 「主砲二番、撃て!」

 船体下部の二番主砲が発射されるが、敵は急上昇でこの射撃を回避する。しかし、堀田はこの瞬間を待っていた。

 「主砲一番、最大仰角……撃てっ!」

 一気に敵艦の下方に飛び込んだ「神風」が上方へ主砲一閃。これが敵駆逐艦の下部中央を貫通して大爆発。その爆炎の中を「神風」は全速で駆け抜けていた。

 「……敵艦隊、全滅を確認」

 レーダーを見届けていた沢野が、呟くように報告した。

 「よし。各部、被害状況を報告せよ」

 堀田が指示すると、程なくして「被害なし」という知らせが入った。

 「ふう……」

 三木がため息をついた。他の乗員たちも安心したような表情を見せる。完成して最初の航海が戦闘になるとは誰も思っていなかったから、こうなるのは致し方ない部分ではあったろう。

 「こら」

 強い口調ではないが、堀田が口を開いた。

 「一度の戦闘が終わったからといって、そんなにほっとされても困るぞ。船務長、再度周囲に敵影がないか、確認してくれ」
 「は、はいっ」

 沢野が再びレーダー画面を確認し、一分後に言った。

 「レーダー探知圏内に、本艦以外の艦影は認められません」
 「そうか」

 ここでようやく、堀田も軽く深呼吸する。そしてマイクを手に取り、艦橋に居る要員を含めた全乗員に声をかける。

 「皆、よくやってくれた。本艦は初陣を飾り、その威力がガミラス軍に対抗できることを証明した。しかし、本当の戦いはこれからだ。厳しいものになるだろうから、覚悟しておいてほしい」

 そう重めの口調で言ってから、今度は少しだけ軽めに付け加えた。

 「だが、とにかくみんなよくやった。これより各部の点検のためいったん地球に帰還する。通信長、その旨を本部に打電してくれ。それと、手の空いている者は少し楽にしてよろしい」
 「はい」

 河西が通信を送り終わったところで静かになった艦橋が、しかし次の瞬間、突然騒がしくなった。

 「艦長、艦長!」

 声の主が、凄い勢いで艦橋に飛び込んできた。その声の主を見たとき、堀田は「ああ、来たか」と思った。

 「何つー無茶してくれやがるんですか! こちとら完成したばかりの艦であれこれ調整が大変だってのに、何かあったらどうしてくれたんですか、いったい!?」
 「……すまない」

 一言だけ、堀田は謝った。相手は技術長の菅井貴也二尉。今度の航海では「神風」の機器に異常が発生しないように目を配るのが仕事だったが、その最初の航海でいきなり戦闘を始めるなど、確かに無茶もいいところである。
 しかもこの菅井という人物、技術科に身を置いているのにも関わらず、妙に口調が荒く上官に対しても遠慮がないのだ。もっとも技術者としての腕はヤマトの副長でもある真田志郎が認めるほどであり、何より彼を見込んで自分の艦に引っ張り込んだのは堀田なのだ。それだけに素直に謝るしかない。

 「まあ、でも戦闘でこの艦の威力を発揮できたのは上出来だったし、何より君のおかげもあって艦に異常もない。ここはまず、それでよしとしよう」
 「言ってくれますね……まあ、いいですけど」

 菅井はぶっきらぼうに答えたが、上官にはこうでも同僚や部下にはざっくばらんで気取らない性格で人望はあるし、堀田も彼を見込んだのはそうした面があるからでもあった。

 「とりあえず、念のために重要箇所だけもう一度点検を頼む。細かいところは地球に戻ってからやろう」
 「へいへい、わかりましたよ。あ、でも一つだけちょっと見てもらいたいもんあるんで、ちょいといいですかい?」
 「わかった。副長、しばらくここを頼む」
 「わかりました」

 堀田と菅井が艦橋を出ていくと、三木が口を開いた。

 「どうしたんだ? みんなぼんやりしているようだが」
 「……」

 確かにこの場の全員が驚いていた。これまでの核融合反応機関とは全く違う、波動機関とそれによって汎用兵器に変貌を遂げた陽電子衝撃砲に。だが、三木を除いたメンバーの驚きはそれだけではなかった。

 「あの……」

 林がおずおずと口を開いた。

 「艦長は宙雷が専門とお聞きしていましたが、魚雷を一発も使わないでここまで冷静に戦われるとは……正直、驚きです。あれなら最初から艦長が全ておやりになったほうがよかったような、その」

 林は砲術が専門だけに、その驚きは大きかったようだ。その疑問に、三木は静かに答える。

 「それが堀田さんという人だよ。一度部下とした人間には、最後の責任を背負って任せてくれる。そして、及ばないところがあれば手助けしてくれる。私も士官学校時代、あの人にどれだけお世話になったか知れない」
 「……」
 「だから、任せてもらった分だけ頑張って報いればいい。艦長は特にそうやって、君たち若い者が成長するのを見るのを楽しむ人だからね」

 自分も顔はともかく、そんなに歳は食っていないはずだがな……と三木は思ったが、口にはしなかった。

 「だからみんな、これは先任士官としての私からのお願いだが、あの艦長は盛り立ててあげて欲しい。これから苦しい戦いだろうが、あの人とならきっと乗り越えられるはずだから」
 「「はいっ!」」

 「神風」の若い艦橋要員たちは声を揃えた。今の戦闘は自艦がガミラス軍艦艇に引けを取らないことを証明したのも収穫だったが、若い艦長がそれ以上に若い乗組員たちから信頼を勝ち得たのが一番大きかったのではないか。そう、堀田を第一に補佐するべき立場の三木は心から思ったのだった。


 「神風」はいったん出撃した坊の岬沖のドックへと戻り、再度各部の総点検を行う。異常がないことが判明した翌日、堀田は技術長の菅井と機関長の来島とドック内の一室で話していた。

 「そうか……そこまで長くは持たない、ということだな」

 堀田の声は重い。あまりいい話ではなさそうだった。

 「はい、まあ何せ扱ったことのないもんですから確実に言い切れはしませんが、あんまり無茶を続けると波動コアが駄目になる、というのは間違いないでしょうな」
 「だーから、初陣からあんな無茶をしちゃいかんと言ったんですよ……と言いたいところですがあれは大して関係ないようですね。ですが、今後はそこらのことを踏まえて艦を動かしてもらわないとならんわけです」

 来島と菅井が言う。彼らの話題は「神風」が搭載しているガミラスから鹵獲した波動機関のことについてだった。
 元々、ガミラス艦の波動コアはイスカンダルから送られヤマトに搭載された本格的なものより簡略化されていたから、条件さえ整えば地球でも一定数のコピーを行い、それで波動機関を製造することは可能という目途は立っていた。しかし、冥王星基地がまだ存在していたつい先日までは、必要な物資収集を行おうにも警戒は厳重で不可能だったし、何より絶望的に何もかも足りていない現在の地球では、当然ながら物資を集めるための船舶もそれを護衛する軍艦も、多くは整備不良で動かせるものは不足を極めていた。

 それ故にこそ「神風」建造が強行されたわけだが、そこは敵から鹵獲した機関の転用である。調査の結果、搭載されているガミラス製波動機関の波動コアは、来島と菅井の見るところ「あと数度の出撃で寿命が尽きる可能性がある」という状態のようだった。
 この報告を受け、仕方なく堀田は宇宙空間での「神風」の訓練を断念し、今は各々が航行中の状況を見立てて艦内で訓練をしている。しかし、このような状況が長く続けば、せっかく初陣の勝利で高まった乗員たちの士気にも悪影響は免れない。

 (調査船団の護衛、それが本艦の任務だが……司令部からは未だに何も言ってこない。船や乗員が集まらないのかもしれないが、このままぐずぐずしていては)

 何しろ、敵はもう「神風」の存在を知っているのだ。極端な話、その「神風」を脅威として太陽系に残っているガミラス艦が一斉に地球に押し寄せてきても不思議ではないから、調査船団を編成して出撃するなら早いに越したことはない。

 「艦長」

 そこへ三木がやってきた。

 「本部から命令を伝達しに、連絡要員の一尉が参りました。艦長に直接、命令書を手渡したいとのことです」
 「わかった、すぐに行こう」

 席を立った堀田だが、このとき、これから会う相手が自分に少なからず関わりのある人間であるということを、もちろん夢にも思ってはいなかった。

(筆者よりお断り:本創作においては、ヤマト2202で重要な設定である時間断層と重力子スプレッドを、諸般の事情から「ないものとして」扱っています。そのため旧作2に寄せつつ2202の設定を取り入れたものとなっていますので、ご了承ください。いずれ筆者がどのような前提で自分のヤマト世界を構築しているかはご説明しますので、しばらくの猶予を頂きたく思います)


地球防衛艦隊の拡張と連合艦隊司令部問題

 2201年。地球の復興は順調に進み、同時に地球防衛艦隊も整備されその規模を拡大させていった。そして、A2型巡洋艦やA2型駆逐艦といった後のガトランティス戦役において主力となる艦艇の整備も進み、やや先送りにされていた主力戦艦となるA型戦艦も量産型であるA2型戦艦の建造が開始されたこの頃、防衛軍参謀本部と地球防衛艦隊司令長官である土方竜宙将を始めとした艦隊側の主だったスタッフとが、ある議論を交わしていた。
 それは、もし太陽系にガトランティスなど他星系の国家が侵略してきた場合、世界各国から集められた艦艇で編成される「連合艦隊」を、どこでどのように指揮するかという議論であった。

 防衛軍に所属する艦艇は、ガミラスとの共同作戦でガトランティス帝国との戦いに赴く艦隊以外は、通常は戦隊単位で各外周、内周艦隊に振り分けられるか、個艦あるいは小規模な艦隊、戦隊単位で各惑星ないし衛星基地に分散配置されて駐屯艦隊を編成するかのどちらかであった。この場合、ガトランティス戦に出撃する艦隊も含めて、それぞれの部隊の規模はさほど大きいものとはならないため、各艦隊の司令部はそれぞれの所属基地、あるいは一定の旗艦設備を有するA2型戦艦から麾下の艦艇を指揮すれば問題なかった。
 しかし、話が連合艦隊となるとそうはいかない。連合艦隊が編成されるとはすなわち、太陽系内に大規模な敵艦隊(この時点では、移動要塞などが襲来してくることは想定されていなかった)が侵入し、この時期は土星軌道に設定されていた絶対防衛圏において敵艦隊に決戦を挑むという状況が前提だったからである。それには太陽系内あるいはその周辺に点在する戦力すべてを結集することになっていたから、所属や国籍を問わず大量の艦艇(この議論の際、見積もられた連合艦隊の最大艦艇数はおよそ300~350隻程度とされている)を一括して指揮することが必要であった。

 もちろん、通常のA2型戦艦ではこのような大規模艦隊を指揮統率するのは不可能である(A2型戦艦に続いて建造されたA3型戦艦は旗艦設備が強化されたが、これでも無理と判定された)。そのため参謀本部はヤマトに大改装を施してこの任務に充当することを考慮したようだが、当時、ヤマトには同艦以外には不可能な別の任務をと土方長官が構想していたため彼が異議を唱え、また実際にヤマトを大改装しても300隻規模の艦隊を統率することは不可能と判断され、この案は破棄されている(ただし、大規模な旗艦設備の追加を除いたヤマトの改装は、土方長官ら艦隊側も賛成したため実施されている)。
 その後、改A2型戦艦(後の通称「パトロール戦艦」)の建造によってこの任を補うことも考えられたが、結局これでも連合艦隊旗艦には不足であると判明したため、最終的にこの議論において、参加者は三つの案を考え出した。

1 地球上の基地から指揮を行う
2 太陽系内の惑星ないし衛星、この場合は絶対防衛圏である土星の衛星タイタンに司令部施設を建設し、そこから指揮を行う
3 旗艦用大型戦艦(会議中にもそう呼ばれている)を新たに建造、最前線にあって全艦隊を統率する

 しかし、地球上の基地から指揮を行う場合、どうしても現場と司令部との意思疎通がうまくいかず、時に取り返しのつかない事態を招来しかねないという不安があった(当時、重要機密であったガミラスとのファースト・コンタクトの際の当時の国連と国連宇宙軍の失敗を、この会議のメンバーは当然把握していたはずである)。また、土星軌道に絶対防衛圏を設定しておきながら、そこから遠く離れた地球で全艦隊を指揮するというのは、どうしても艦隊乗員に「自分たちばかり安全な場所に居て」と不満を与えることは避けられないという艦隊側の意見もあり、この三案の中では比較的早期に否定されている。

 また第二案だが、これは土星の衛星タイタンに連合艦隊司令部となり得る設備を持った大規模な基地を建設することは決定されたものの、参謀本部と艦隊側の双方から「タイタンに配置した連合艦隊司令部」について以下の問題点が指摘された。

1 タイタンに基地を設けてそこから全艦隊を指揮する場合、基地が直接攻撃され万一司令部が全滅するなどの事態が生じれば、連合艦隊の指揮系統は瞬時に壊滅する。そしてガミラス戦役の戦訓を考慮すると、遊星爆弾や惑星間弾道弾に類似した戦略兵器によって基地が直接攻撃される可能性は決して低くない
2 仮に地下基地として敵の攻撃に耐え得る防御を施したとしても、遠距離通信用のアンテナなどの設備は地上に配置するしかない。これが破壊されれば、例え司令部が無事でもやはり指揮系統が麻痺することは避けられない
3 土星軌道は絶対防衛圏ではあるが、状況が許せば連合艦隊を以て更に地球より遠い地点で敵艦隊の迎撃を行う可能性があり、本来はそのほうが望ましい。その状況で連合艦隊司令部がタイタンから動けなければ、地球ほど遠くないとはいえ広大な太陽系外縁において即応性を欠く場合が考えられる

 ゆえに、タイタンの基地は「鎮守府として連合艦隊の集結場所、あるいは作戦会議室として用いる」ことしかできない。これを艦隊側、特に土方長官が強く主張したため、この「連合艦隊司令部問題」を議論していた会議は一つの結論に達した。

 「連合艦隊総旗艦となる得る能力を持った『旗艦用大型戦艦』を、1隻でよいから建造する」ということである。


政治に求められた建造計画

 300隻単位の艦隊を指揮する旗艦には何が必要か。それは戦場全体を把握し、かつ所属部隊や国籍が異なる艦や部隊を一括して統御できる指揮能力と、遠方の味方艦にも適切な指示を与えることができる強力な通信設備だった。そしてそのためには、そうした高度な情報処理が行える大規模な管制コンピュータの搭載が絶対に必要な条件だった。
 連合艦隊旗艦用の大型戦艦を設計せよ、と命じられた艦政本部は、まずその管制コンピュータがどれだけの規模になるか、担当する技術本部と何度もやり取りを繰り返した。そして必要とされる容量を持つコンピュータを搭載した状態で、かつ前線で全軍の旗艦として簡単にその能力を失わないだけの重厚な防御力と必要最低限の武装(艦隊側はこの大型戦艦に関し「防御力は最大限必要だが、武装は戦艦として戦列を担うに足る兵器を搭載すれば十分」と提案していた)を施した艦の規模を試算したところ、結果は「全長360m以上、重量12万トン程度」というものになった。
 この当時、地球最大の戦艦であったヤマトを超え、量産されていたA型戦艦を100m近く上回る大型艦という試算に、参謀本部も艦隊側も驚きを隠せなかった。しかし、どう考えてもこの大型戦艦は「建造する必要がある戦艦」であったからどうしようもなく、防衛軍首脳部は地球連邦政府に対して当時の担当者に言わせると「恐る恐る」この戦艦案を提示し予算請求を行った。

 だが、予想に反してこの予算請求は地球連邦議会をすぐ通過し、それどころか秘密裡にであったが「多少の予算オーバーは許容するので、ヤマトを上回る最大最強の戦艦を建造してほしい」と政府側から打診されたのである。

 これには、盟友関係にあったガミラスとの政治的な力関係が理由であった。いくらヤマトというガミラス軍を寄せ付けなかった強力な戦艦を有しているとはいえ、当時の地球防衛軍の戦力ではガトランティス帝国に対する共同作戦でもガミラスの力に依存することが多々あり、地球連邦政府はそれを苦々しく思っていた。このような状況が長く続けば、いずれガミラスに外交の主導権を奪われかねないからだ。
 ゆえに、彼らは「ガミラス軍が手に負えなかったヤマトをも上回る超大型戦艦を建造し、地球連邦政府の象徴としたい」という思惑を持っていた。そこに来て防衛軍から「旗艦用大型戦艦を建造するための予算請求」が来たのだから、この申し出は文字通り渡りに船であったのだ。

 この政府からの返答を受け、防衛軍首脳部は艦政本部に「現状、使用可能な最新鋭の兵器と技術を結集し、防衛軍最大最強の戦艦を建造せよ」と下命した。一方、この状況に艦隊側は「旗艦用大型戦艦は必要だが、そこまで特別な装備を施した戦艦を建造する必要は認められず、単に予算の無駄遣いである」と反対意見を述べているが、防衛軍首脳部の大半と艦政本部にすれば、自分たちで好きなように大戦艦を建造できる話を蹴とばすつもりは毛頭なかったため、艦隊側の意見は全く無視された。
 そして、艦政本部は改めて、自分たちの培ってきたあらゆる技術と兵器を用いて建造する旗艦用大型戦艦の設計を開始したのである。


困難を極めた設計

 「連合艦隊総旗艦」であると同時に「地球防衛軍最大、最強の戦艦」であることを求められた旗艦用大型戦艦だが、その設計は非常に難航することになった。ヤマトやA型戦艦という過去の建造例があるとはいえ、これら過去の戦艦から飛躍的に性能を向上させた艦を設計するのは、当時の地球の技術力では困難を極めたからである。
 船体構造については、概ねはヤマトとA型戦艦のそれをほぼ踏襲しているが、参考としてガミラス軍の超大型戦艦である「ゼルグード級一等航宙戦闘艦」の防御構造も取り入れているとされる。ただし、ゼルグード級から主に参考としたのは艦内の防御構造や隔壁の配置であったとされ、両者の外見から共通性を窺い知るのは難しい。
 ただ、実戦で示した堅牢さから「確かにゼルグード級を参考にしたのは間違いない」というのが現状の評価であり、後述する大出力波動機関の恩恵もあり、その波動防壁も極めて強力なものとなっている。

 兵装については、波動砲は後に譲るため主砲から話を始めるが、当時はヤマトの48cm砲、A型戦艦の41cm砲を上回る大口径砲が制式兵器として存在しなかった。そのため、艦隊側はそのどちらかを搭載すればよいと主張したが、政府から「既存戦艦を上回る大口径砲を搭載せよ」と横やりが入り、この前提で砲の選定が行われることになった。
 艦政本部が選んだのは、ヤマトの大改装時に主砲強化案として一度考慮され、砲塔の機構の問題から「換装は不可」と判定され棚上げされていた「試製一式51cm陽電子衝撃砲」だった。しかし、陽電子衝撃砲では砲塔内に陽電子集束器を搭載する必要があり砲塔がヤマトよりも大型化することが避けられなかったため、同砲の砲身にエネルギー集束器を巻き付け式に装備してこの問題を解決した。この砲は艦の設計中に行われた試験の後に「二式51cm集束圧縮型衝撃波砲」として制式採用、本艦には三連装砲塔が4基搭載されることになった。なお、2208年現在に至るまで、この砲は地球防衛軍の艦艇が搭載した最大口径の砲である。

 その他の兵装も新型兵器が多数装備され、新たに採用された速射魚雷発射管、A型戦艦に続いて搭載された対艦グレネード投射機、亜空間魚雷発射管、多連装ミサイル発射管が装備されている。他にも従来の短魚雷発射管と垂直軸(下方)ミサイル発射管も装備されており、ヤマトに迫る充実した雷装が施された戦艦となっている。一方で対空兵装はこの時期の防衛軍の艦艇らしくやや少な目で、速射能力を高めた新型対空パルスレーザー砲を40mm三連装と25mm三連装砲塔をそれぞれ2基ずつのほか、艦各部に埋め込み式25mmパルスレーザーを装備したのみだった。

 主機関の選定にも問題があった。当初はA型戦艦の1番艦「ドレッドノート(初代 後の「プロメテウス」)」が搭載した新型機関を実用レベルにまで改良して搭載することになっていたが、当時の地球が有するこの最強の機関を以てしても、船体が大型化することによって出力不足が明らかとなったからである。
 これは推進力の問題もさることながら、主砲へのエネルギー伝達量の不足、更に連合艦隊旗艦として最も重要な管制コンピュータを稼働させるエネルギーが足りないという大問題を内包していたから、艦政本部は当初はA型戦艦の機関を双発にして搭載することを考慮したが、これでは船体の幅が大きくなりすぎるため廃案となっている。
 結局、この問題は主機には新型機関を採用し、同時にA2型巡洋艦が装備していた機関を「主補機」(設計案の原文ママ)として搭載、波動炉心を3基装備する波動機関を新製することで決着を見た。このため機関の構成が複雑となりメンテナンスに必要な人員が増加するという別の問題が生じたため、この部分はAIを用いた自動化によって乗員の過剰な増加と負担を防ぐ対策が取られている(なお、やろうと思えば乗員によるフルメンテナンスも不可能ではなかったとされる)。
 補機については、A2型戦艦以降が搭載したケルビンインパルス機関をそのまま搭載したが、本艦は大型化と同時に波動機関停止時に備え、A型戦艦の倍となる4基を搭載。また、A型戦艦のそれより大型の懸吊式補助機関も2基装備された。

 そして、この主機関の波動炉心が3基となることには思わぬ副産物を伴った。それは、後方に大型炉心1基、その前方に中型炉心2基を搭載することになったため、装備予定の拡散波動砲を連装化することが可能になったのである。そのためA型戦艦では砲身内部に搭載されていた板状のスプリッター(エネルギー噴流分割整流板)が不要となり、より高い効率、かつ大出力波動機関による大エネルギー量によって、地球最強の戦艦に相応しい極めて強力な拡散波動砲を搭載することが可能となった。なお、A型戦艦とは同じ拡散波動砲でもやや異なるシステムであったため、兵器としての制式名称は「一式タキオン波動連装拡散砲」となっている。

 また、本艦の最大の目的である連合艦隊を統制するための管制コンピュータは、後に「タイタン基地の連合艦隊司令部にほぼ劣るところがない」と評されるほど強力なものが搭載された。このため連合艦隊総旗艦としては何ら問題なく使用でき、その優れた統制能力はガトランティス戦役の土星会戦において大いに発揮されている。

 だが、こうした兵装と機関の強化。そして旗艦としての能力を最大限高めた結果、船体は艦政本部の当初の試算より更に大型化し、結局、以下の要目で設計案が纏められた。


全長     389m
全幅     91.8m
船体重量   14,6000トン
乗員     200名(戦時最大定数。他に司令部要員25名)
主機     大型タキオン式次元波動機関 1基 中型タキオン式次元波動機関 2基
補機     大型ケルビンインパルス機関 4基
       懸吊式補助機関 2基
波動砲    一式タキオン波動連装拡散砲 1基2門
主砲     二式51cm三連装集束圧縮型衝撃波砲 4基12門
対空兵装   一式40mm三連装パルスレーザー砲 2基6門(艦橋構造物両舷)
       一式25mm連装パルスレーザー砲 2基4門(艦橋両側面)
       埋め込み式25mm単装パルスレーザー砲(艦各部)
ミサイル兵装 零式四連装対艦グレネード投射機 2基8門(艦中央よりやや前方)
       二式速射魚雷発射管 単装4基4門(艦首)
       一式亜空間魚雷発射管 連装4基8門(船体両舷)
       一式多連装ミサイル発射管 16門(船体両舷)
       九八式二型短魚雷発射管 16門(船体両舷)
       九九式二型垂直軸ミサイル発射管 単装10基10門(艦底部)
搭載機    一式一一型空間艦上戦闘機「コスモタイガーⅡ」15機
       (このうち3機は偵察機仕様の複座型)
       九八式汎用輸送機「コスモシーガル」3機
       救命艇3機、その他救命ボートなど


 いかに予算に糸目をつけなかったとはいえ、ヤマトを上回る全長、A型戦艦の2.5倍という船体重量はさすがに関係者の大半を驚かせたが、当時の地球連邦政府としては「大型戦艦であればあるほどよい」という考え方だったから、この案は防衛軍首脳部から連邦議会に通されて問題なく予算が可決され、地球防衛軍の極東管区にて建造が決定された。


艦名の由来

 当初、この艦は「旗艦用大型戦艦A」いう仮称艦名がつけられたが、主力戦艦であるA型戦艦と紛らわしいこと。また、その存在自体が国内や同盟国ガミラスへの宣伝効果を期待されていたこともあり、波動砲に関しては秘匿されたが「地球防衛軍が大型戦艦を建造している」と喧伝するため、比較的早期に艦名が決定、公表されることとなった。
 (なお、この処置にも艦隊側は反発しているが、やはり無視されている)

 最終的にはご存知の通り「アンドロメダ」(艦籍番号はFBB-01 Flagship=旗艦と戦艦のBBを合わせたもの)という艦名に決まったわけだが、これには「銀河系より最も遠い銀河の名称を使用したい」という意見があったこと、そして仮称艦名に「A」の文字が使われていたことから単に有名なアンドロメダ銀河の名が選ばれたという二つの説があるが、どちらか、あるいは両方であるかは筆者の調査では判然としなかったため、今後の調査に期待したいところである。
 いずれにせよ「アンドロメダ」という艦名は遠く宇宙に想いを馳せるにはちょうどよい名前であったからか、完成後の市民からは好意的に迎えられ、艦隊側は「やや誇大妄想的とも言える」という声もあったが大きなものではなく、自然とこの艦名を受け入れたと伝えられている。


官民の期待と軍からの酷評

 「アンドロメダ」の建造は先述の通り極東地区が担当したが、これは同地区がヤマトを建造したことで、A型戦艦を上回る大型戦艦の建造経験があったことが理由とされている。実際、これほどの大型艦でありながら工事は順調に進み、起工からおよそ1年8か月にあたる2202年9月には工事を終え、公試終了後の翌月に艦隊へと編入された。
 艦隊編入の直前、首都で行われた完成式典において、地球連邦大統領はこう述べている。

 「宇宙の平和。それをもたらし、それを守る力となるのは、我が地球とガミラスの同盟であります。その重責を担うシンボルとして、私は最新鋭戦艦『アンドロメダ』の完成をご報告するものであります」

 連合艦隊総旗艦を担う重責ある艦とはいえ、わざわざ大統領の演説まで行われたあたり、この「アンドロメダ」に対する官民の期待は、実際に同艦を運用する軍のそれを遥かに上回るほどであったと言えるだろう。

 だが、実は完成前の「アンドロメダ」に対する防衛軍、特に艦隊側からの事前の評価は決して高いものではなかった。連合艦隊司令長官たる土方宙将は沈黙を守っていたが、司令部の一部からは「政治の横やりで無駄に大きくなった木偶の坊」という批判の声すら出る有様で、その他の艦隊所属の士官たちからも「これなら同額の予算でA型戦艦を数隻建造したほうがましだった」とする意見が多かった。
 しかし、確かに否定的な意見の多い船出となった新鋭戦艦「アンドロメダ」だったが、その後の運用において徐々に弱点を克服し、その力量を示していくことになる。そして多くの読者がご存知であろう華々しい戦歴とその壮烈な最期に関しては、次の機会に譲りたいと思う。

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