地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

D級戦艦の問題点と土星会戦

 いわゆる『カラクルム落下事件』から始まったとされるガトランティス戦役開始の前後に量産、配備が本格化したD級戦艦の前期生産型(この項では中期生産型と呼ばれるA3型戦艦もこれに含む)であるが、艦隊側からは「戦艦として攻防性能と速力、運動性は十分であり、艦隊戦列の中核を成すに申し分ない性能を有する」と高く評価されている。
 ただ、防衛軍が抱える慢性的な人員不足というやむを得ない事情があったとはいえ、艦各部において重要箇所の運用を相当にAIに依存していること、機関および兵装の制御を中央コンピュータによって一括して行うというシステムについては「コンピュータに何かしらの損傷が発生した状況において、艦の戦闘、航行能力の発揮について多大なリスクを伴うのではないか?」と不安視されていた。

 更に重大な問題とされたのは、D級戦艦が搭載している一式41cm集束圧縮型陽電子衝撃砲の散布界に関してだった。これは艦隊に十分な数の戦艦が配備されていれば問題は少ないとされていたが、一個戦隊(3隻)のみによって主砲の一斉射撃を行った場合、特に遠距離砲戦における散布界は許容範囲を超えており、敵艦に対して有効な射撃が困難であると評価されていたようである。
 A3型戦艦から装備され、それ以前に建造された艦にも追加された主砲の発砲遅延装置は散布界問題への対処の一環だったが、同装置を搭載してもなお「D級戦艦の主砲散布界問題は解決したとは言えない」と艦隊側は考えていた。そのため艦政本部および技術本部は更なる主砲射撃管制用AI並びにコンピュータの改良を継続して行うこととし、艦隊側のほうも、戦況に応じて主砲を一斉打方ではなく独立打方(D級戦艦の場合、三連装砲の右砲ないし左砲から0.2秒程度の間隔を開けて射撃することを指す)による射撃を行い、これによってエネルギー弾発射時の衝撃波の相互干渉を抑制する工夫を行っている。

 だが、D級戦艦に付きまとうこれら問題点については、ガトランティス帝国との交戦が本格化した戦時下ということもあり、抜本的な対策は行えないままとなっていた。こうした状況で、地球防衛軍はその歴史においても最大級となった艦隊戦である土星会戦を迎えることとなる。

 会戦勃発時、D級戦艦は地球防衛艦隊に各タイプ総計で42隻が配備されており、このうちほぼ同時期に十一番惑星宙域において生起した艦隊戦に参加した『出羽』以下の5隻と、土星基地から地球へと後送される輸送船団護衛の任に当たった『ボロディノ』を除く36隻が、土星本星宙域における決戦に参加した。
 土星宙域での艦隊戦において、D級戦艦は当初期待されていた艦隊の中核を成す戦列艦、並びに波動砲艦として存分な働きを見せたのだが、戦後に各艦隊から提出された戦闘詳報から、先述したD級戦艦の問題点がこの会戦において様々な方面から噴出したことが伺える。

 それらに曰く、

 ・主砲の散布界が、特に遠距離砲戦において著しく過大。そのため有効命中弾数が過少となり、仮にアウトレンジ射撃を行った場合においても敵艦を短時間で撃破することが困難。特に艦隊の戦艦数が少なく、濃密な弾幕を形成できない場合においてこの傾向が顕著である(なお、この問題は土星会戦における第6艦隊(ヒペリオン艦隊)の早期壊滅の原因の一つとされている)
 ・主要火器および機関を中央コンピュータによって一括して艦橋から管制するため、艦橋ないしコンピュータに損害を被ると即座に戦闘不能となる状況が発生し、その復旧を戦闘中に行うことがほぼ不可能。また、砲塔内に要員が配置できず照準機構も搭載されていないため、非常時に砲側照準による射撃を行うことができない
 ・近接対空火力の不足により、敵航空機およびミサイルに対する有効な迎撃手段が十分とは言い難い
 ・砲塔の構造に起因する問題として、特に天蓋の防御力が不十分

 また、会戦の最終段階で連合艦隊はガトランティス都市帝国の攻撃によって壊滅的な被害を受けたのだが、このときの戦闘に関する波動砲の運用についての所見が残っている。それには「拡散波動砲は対艦戦闘における破壊力は極めて大なるも、集束モードに変更して射撃を行った場合、要塞など大型の固定目標に対しては次元波動爆縮放射機(ヤマトに搭載されたの波動砲のこと)に比して威力が劣る。対艦戦闘に特化した結果として、その他の目標に対する攻撃能力が不十分である」と記述され、艦隊に所属していた波動砲艦の総力が、拡散波動砲を搭載した戦艦と威力の低い集束型波動砲しか持たない巡洋艦であったことを悔いるような表現がされている。

 筆者としては、さすがにガトランティス都市帝国のような大規模な移動要塞が襲来してくるとこの時点で想定するのは極めて困難と判断するしかなく、当時の軍備に不備があったとは言い難いように思う。なお、これらの戦訓は当然、その後の防衛軍の軍備に大きな影響を与えることになるのだが、詳細は以降その他の記述に譲ることとしたい。


損傷修理および戦訓への対応工事

 ガトランティス戦役終結時、残存していたD級戦艦(この時点で戦艦籍から除かれていた艦は含めない)は以下の通りである。

 A1型d 『出羽』
 A2型   『ドイッチュラント』『デラウェア』『デュプレスク』
 改A2型a『リヴェンジ』
 改A2型b『相模』
 A3型   『薩摩』『エマニュエレ・フィリベルト』

 (他にA2型戦艦『河内』とA3型戦艦『オルデンブルク』が土星周辺の衛星にそれぞれ擱座していたが、この2隻は防衛軍が土星宙域を回復した後の調査で復旧不能と判断されたため、解体された)

 戦役に参加したD級戦艦が34隻もの損失を生じ、戦艦戦力が激減したという事実は、他にヤマト及びD級戦艦に近い火力を持つ航空母艦3隻も残っていたとはいえ、土星以遠の太陽系宙域にガトランティス残存軍が跳梁している状況下とあっては、地球防衛軍の焦燥を駆り立てるには十分な苦境だった。
 そうした事情から、また生き残った8隻のD級戦艦も大半は大規模な修理が必要だったこともあり、防衛軍は戦力補充のためD級戦艦の『後期生産型』となる新造艦の建造に着手することを決定する。後期生産型の詳細は後に譲ることとするが、同時期に残存するD級戦艦への修理と共に、ガトランティス戦役の戦訓へと対応させるための改装工事が行われている。

 艦によって改装の規模や詳細は異なるのだが、共通する点として主砲散布界の減少、中央コンピュータ損傷時におけるリスク分散、対空兵装の増強などを目的とする工事が行われた。一例として『薩摩』の改装状況を以下に挙げる。

 ・主砲を一式一型改41cm集束圧縮型陽電子衝撃砲に改造、発射時の衝撃波を減圧して散布界の向上を図る
 ・砲側照準を行うため主砲塔内に小型レーダーおよび測距儀を搭載、要員の座席も配置
 ・主砲以外の各種兵装および機関も、非常時に乗員の操作によって制御可能なように改修
 ・中央コンピュータ室の装甲および隔壁を強化
 ・両舷側の九八式短魚雷発射管を全門撤去し、同所に砲座を設け76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて4基装備
 ・主砲塔天蓋に増加装甲を追加

 これらの工事には主砲の射程および貫通力の低下、雷撃戦能力の減少、主砲最大仰角の低下など代償を伴ったが、ガトランティス戦役における戦訓への対応としては十分なものと評価されることになる。特に主砲の改造によってD級戦艦の主砲散布界の問題はほぼ解消されており、このことは艦隊側からも大いに歓迎された。
 なお、残存艦で唯一48cm陽電子衝撃砲を搭載していた『相模』の散布界は特に問題ないとされていたが、修理の際に発射速度向上のため、主砲を当時のヤマトと同じ九八式二型48cm陽電子衝撃砲へと換装している。

 一方で「規模に優る敵艦隊に対処するため、艦隊内に一定数必要である」とされた拡散波動砲搭載艦について、防衛軍はD級戦艦の前期生産型をもってこれに充てるとし、対要塞砲として集束モードを強化した波動砲の搭載は後期生産型の艦へと行われることに決定された。そのため改装された前期生産型の各艦はこの時点で就役時に搭載していた拡散波動砲を継続して搭載しており、波動砲関連の目立った改造は行われていないようである。

 更にこの時期、後続の後期生産型を含めてD級戦艦は一部で塗装の変更が行われている。特に火星基地に配備された赤色塗装の艦や月面基地(本国艦隊)所属艦の青色塗装などが知られるが、就役時の灰紫色塗装を継続して使用した艦もあるなど必ずしも防衛軍全体で統一された規格は存在していないようで、これらのバリエーションについては今後の調査が待たれるところと言えるだろう。


後期生産型の計画と建造

 広義において『D級戦艦の後期生産型』とは、その派生型であるヒュウガ級戦闘空母やアスカ級補給母艦・強襲揚陸艦も含むのだが、これらは当初から想定された任務が戦艦とは異なるし、後に別のクラスとして分類され直されたものなのでここでは扱わない。あくまで『戦艦として』建造された後期生産型について記述していきたいと思う。

 後期生産型の計画、設計にあたって、要点となったのは以下の通りである。

 ・減少した戦艦戦力の早急なる補充により、仮想敵が有する大型艦への対処
 ・対要塞砲として集束型波動砲の搭載、ないし艦隊最前衛を担うべく防御力の大幅向上を視野に入れた波動砲の撤去
 ・多用途の任務に対応させるべく艦型、装備の再検討(この項目がヒュウガ級戦闘空母やアスカ級補給母艦・強襲揚陸艦の建造に繋がっている)
 ・今後の新型戦艦量産を踏まえた実験的要素、特に開発中の新型波動砲(後の拡大波動砲)を最優先とした新型装備の追加、実用試験

 これらを踏まえ、D級戦艦の後期型は地球防衛軍が標榜するところの『地球の規模に見合った軍備の最適化』を目指す新たな軍備の代表としてその建造計画が立案されている。なお、これらD級戦艦の後期建造型の予算については、土星会戦後に様々な理由から建造中止となっていたA3型戦艦の予算と準備された資材の一部を転用して行われることとなった。

 当時の防衛軍の仮想敵はあくまでガトランティス残存軍であり、かつてのガミラスあるいはガトランティス帝国ほど強大なものとは判断されていなかったことが当時の資料から伺える。そのため(一応)戦時下とはいえガトランティス戦役開始直後におけるA3型戦艦の急造ほどは後期生産型の増備は急がれておらず、戦艦戦力補充のため先行して起工された各種タイプ9隻(戦闘空母型や補給母艦・強襲揚陸艦型は含まない)を除いた艦の建造はやや遅れて開始された。これは時間的余裕があるという理由もあったようだが、地球周辺などに浮遊していたガトランティス帝国軍の艦艇の残骸から希少金属を再利用しての建造が予定されていたため、それらの回収に期間を要したという側面もあると考えられている。

 戦艦として建造されたD級戦艦の後期生産型は4タイプ、17隻からなるが、その詳細については次項に譲りたく思う。

量産性向上と戦訓に応じた改設計

 A型駆逐艦の量産性向上について、艦政本部が早期に出した結論は「武装の削減」というものだった。これは単に建造のための工数を減らすこともあったが、船体規模に対して過大気味だったA型駆逐艦の武装を削減することで、艦隊側が問題視した運動性や継戦能力の低さを改善することも目標としていた。
 まず真っ先に、艦政本部は波動砲とそれに関連する機材の撤去を提案している。船体の半分ほどの面積を占有する波動砲の撤去は量産性向上のため確実な方法だったが、当然のこと波動砲搭載艦の建造を推進していた防衛軍首脳部は難色を示した。だが艦隊側、特に連合艦隊司令部がA型駆逐艦を波動砲艦として有効利用することの難しさを強硬に進言したこともあって、改設計初期の段階で波動砲の撤去が決まることになる。

 波動砲以外の武装については極力、A型駆逐艦に搭載されたものを維持するという方針が立てられたが、製造能力に限界があって量産のためには不足をきたしていた主砲塔も、1隻あたりの使用数を減少させるため上甲板にある2番砲塔が撤去された。なお、これら武装の削減に対応する形で雷装は艦隊側からの要望もあって強化されることになり、三連装だった324mm宇宙魚雷発射管は四連装に変更、艦首下部の53cm宇宙魚雷発射管も倍の4門に強化された。
 また、撤去された2番砲塔跡の甲板上に亜空間爆雷投射器が8門装備され、対空兵装は改設計された艦橋側面に13mm連装対空パルスレーザー砲が片舷あて2基搭載された。これと同時に、艦橋構造物の容積が減少されたことに伴って四連装対空ミサイル発射管が代償として撤去されている。

 その他の装備については、A型駆逐艦で搭載された波動砲発射のための探知機器が多く降ろされており、これら波動砲関連の機材を撤去した空きスペースは予備魚雷の追加搭載と居住スペースの拡大に用いられた。同時に艦橋もより小型のものへと変更され、その後方の大型アンテナも撤去されている。また、艦首の波動砲口跡には亜空間用ソナーと波動防壁発生装置がコーン状のキャップ内に搭載され、特に後者はA型駆逐艦で不足とされた防御力を補う装備として重宝されたようだ。

 こうしてまとめられた設計案は防衛軍に承認され、この際に『B型駆逐艦』という制式名称が与えられた。なお本型はA型『護衛』駆逐艦のように任務が制式名称には組み込まれなかったが、既にA型駆逐艦が実戦において護衛のみならず艦隊型駆逐艦として幅広い任務に従事していたこと、一部艦隊士官たちが「任務を制式名称に組み込むと、実戦において運用が硬直化する可能性が高くなる」と意見したこともあって、見送られたようである。


B型駆逐艦の特徴と評価

 ここで、改設計されたB型駆逐艦の諸元を示す。


全長    113.8m
全幅    18.5m

主砲    Mk.42 12.7cm連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 2基4門

その他兵装 Mk.33 76mm連装パルスレーザー砲 4基8門(艦尾全周)
      Mk.32 324mm宇宙魚雷四連装発射管 4基(艦前部全周)
      零式53cm宇宙魚雷発射管 4基4門(艦首下部)
      九九式13mm連装対空パルスレーザー砲 4基8門(艦橋側面)
      零式四連装対艦グレネード投射機 2基(対空兼務 船体側面)
      零式亜空間爆雷投射器 8門(上甲板)

主機    艦本式次元波動機関 1基

搭載機   一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』1機
      (連絡、偵察用。戦闘装備での搭載は不可)
      救命ボート複数

乗員    40名(戦時定数 33名程度で戦時運用が可能)


 波動砲とその関連機器、一部兵装の増減などが目を引くが、船体構造や搭載兵器など大まかな仕様はA型駆逐艦とほぼ共通していた。
 そして艦政本部の思惑通り、波動砲の撤去は量産性と機動性の向上双方に大きく寄与し、この点はA型駆逐艦の問題をほぼ解消していた。一方で波動砲と主砲1基の削減による火力低下は一部艦隊士官から懸念の声もあったが、設計当初のB型駆逐艦は単独ではなく艦隊での運用が前提となっていたことからか、実戦で特に大きな問題は発生しなかったとされる。

 一方で雷装の強化は艦隊側、特に宙雷閥の士官からは大いに歓迎され、一部の士官からは『B型駆逐艦は磯風型駆逐艦の後継として理想の突撃駆逐艦である』との声も上がったという。反面、A型駆逐艦に続いて対空兵装に関しては(対空砲兼務の主砲が削減されたこともあって)更なる強化が求められたものの、こちらも単艦ではなく艦隊内で護衛艦として用いるに大きな不足ないと判断され、少なくとも建造開始当時はさほど重大な欠陥とはされなかったようだ。

 総じて艦隊側のB型駆逐艦に対する評価は『機動性と雷装強化による継戦能力の向上により、全般として駆逐艦の任務を全うするにふさわしい艦となった』というものであり、防衛軍首脳部がこだわっていた波動砲が撤去されたことについての批判はそれほど起こらなかったらしい。だがガトランティス帝国軍との戦闘が拡大していく中で量産が開始されたB型駆逐艦は、再び防衛軍首脳部と宙雷閥との間の論争に巻き込まれることとなるのである。


質か量か

 B型駆逐艦の初期量産は、A型駆逐艦建造の中心となっていた北米管区ではなく、この当時比較的建造能力に余裕があった極東管区が担当することになった(北米管区規格の兵器は極東管区へ供給が行われることとなっていた。なお、量産が本格化した後は極東管区が提供した設計図を基に各管区がそれぞれ兵装などを製造して艦の建造を行っている)。そのため極東管区で完成した一番艦『綾波』がクラス名になったが、極東管区でB型駆逐艦が10隻ほど完成した頃、地球連邦を震撼させる事件が勃発する。いわゆる『カラクルム落下事件』である。
 この事件の結果、地球はその座標をガトランティス帝国に露呈することとなった。そのため太陽系が直接その侵攻を受ける可能性が高まり、それに対応すべく防衛軍はD級戦艦など大型艦の追加建造を決定することになる。

 そのため、当初相応に確保されていた中小型艦、特に駆逐艦はその予算を削られることになってしまう。また予算の制約がある中で、防衛軍首脳部の多くは再びA型駆逐艦の量産を行うことを考えるようになった。これは一にも二にもA型駆逐艦に波動砲が搭載されているということに起因していたが、今後太陽系にカラクルム級戦艦を含む大型艦が襲来した際に対応するためという意味では、この考えにも大義名分はあったといえる。
 一方、先述した通り宙雷閥の強硬派はB型駆逐艦を理想の突撃駆逐艦であると考えていたから、防衛軍首脳部の考えに真っ向から反対した。そのため戦時にも関わらず再び不毛とも言える論争に発展する危機が生じたのだが、大規模な議論に発展する前に、連合艦隊司令部の意見具申がこの問題に決着をつけた。

 『現状、護衛艦としての駆逐艦の不足を補うことが喫緊であり、それにはB型駆逐艦の量産で対応するのが最善である。波動砲艦についてはD級戦艦、そして運用によって補うことを前提にA型巡洋艦、あるいは波動砲を追加装備した金剛型宇宙戦艦の現有兵力で事足りる』

 当時の連合艦隊司令長官である土方竜宙将が特に強く主張した意見だったと伝わるこの具申は、防衛軍首脳部のみならず突撃戦法に固執していた宙雷閥の強硬派をも黙らせる効果があった。波動砲を搭載することによって量産性を落としているA型駆逐艦の建造に固執する防衛軍首脳部、B型駆逐艦を護衛艦ではなく突撃駆逐艦として『のみ』用いることを考えていた宙雷閥の強硬派の双方が『量産性に優れたB型駆逐艦を汎用性のある駆逐艦』として幅広く運用するなど考えていなかったのである。
 この両者の近視眼的な視野は後年、更なる問題を引き起こすのだが、ここでは本題から外れるので触れない。ともあれB型駆逐艦は極東管区のみならず他の管区でも建造体制に入り、ガトランティス帝国の太陽系侵攻に備えた量産が行われることになった。


必要を満たせなかった建造数

 だが、B型駆逐艦の登場はわずかに『間に合わなかった』ものかもしれなかった。それは太陽系に舞台を移したガトランティス戦役初期、外惑星での小規模な戦闘に参加したある高級士官の言葉からもうかがえる。

 「適切な兵力配備をしようにも、艦の不足でできない状況になっている」

 この『艦の不足』という問題はこの士官のみならず多くの艦隊士官が痛感していたようで、前線において敵艦隊に即応できる機動力のある、また兵站線を確保するべく輸送船団を護衛すべき艦艇が必要であるのに、各基地および艦隊に配備されたA型、B型駆逐艦の不足は相変わらずで、必要とされる数量は満たせないままであった。
 D級戦艦の増勢のために一度は予算をそちらに振り分けた防衛軍首脳部であったが、さすがにこの事態を看過することもできず、艦艇増勢のために準備された戦時予算の大半をB型駆逐艦の量産に集中投入する措置を取った(D級戦艦の中期生産型であるA3型戦艦の建造数が18隻に縮小したのは様々な要因があるが、この予算振り分けの変更も一因である)。

 だが、予算の問題を解決しても、建造ドックや兵装など装備の確保を行う時間はこの時期の地球には残念ながらそれほど残されておらず、結果的にガトランティス戦役における最大の艦隊戦となった土星沖会戦においても、宙雷戦隊の中核、および艦隊主力の護衛艦という任務を担ったB型駆逐艦(少数だが、基地駐留艦隊に配備されていたA型駆逐艦も参加している)は100隻を少し超える程度にとどまっている。

 ガトランティス戦役におけるA型、B型駆逐艦の戦歴については、次項で触れたいと思う。

波動砲搭載を要求された駆逐艦

 艦政本部から提出された新型護衛駆逐艦の試案には、将来の発展を見込んで小型ながらも設計に相応の余裕があったとされる。だが、当時波動砲艦隊の整備に邁進していた防衛軍首脳部は「艦内の余剰空間を整理し、確保したスペースに既存の波動砲を小型化して搭載すべし」という命令を下したのである。
 当時の技術力であっても、量産が開始されたばかりのA型巡洋艦が搭載していた集束型波動砲を小型化して搭載することはさほど困難ではなかった。だが波動砲を搭載すれば当然のこと、その関連設備に限られた容量しかない駆逐艦用の小型波動機関のリソースを振り分けねばならなくなる。それでは防御面で波動防壁への依存が大きくなることを避けられない駆逐艦の防御力が不足するのではないか。そして、そのようなリスクを冒してまで駆逐艦にまで波動砲を搭載することに意味があるのか、という意見も艦隊側から出されていた。

 この問題は、それまで新型駆逐艦の建造について対立していた防衛軍首脳部と宙雷閥の強硬派の士官たちのみならず、宙雷閥の穏健派やその他の兵科の士官まで巻き込んだ論争に発展した。新型駆逐艦への波動砲搭載を反対する士官たちは、こうした決戦兵器を搭載することによって運用側が護衛艦としての本分を忘れて波動砲使用に傾斜することを恐れていたようである。
 だが最終的にこの議論は、防衛軍首脳部の「敵カラクルム級戦艦に対して有効な打撃を与えるため、小型であっても波動砲は必要である」という主張に押し切られる形となった。実際、艦隊側もガトランティス帝国軍のカラクルム級戦艦に難渋している現状、それに対抗するために必要だと言われれば、反論も困難になり沈黙を余儀なくされたのだった。
 (それでも一部の宙雷閥の士官や艦隊士官たちは「護衛艦への波動砲搭載は運用の硬直に繋がる」と主張していたが、最終的にこれらの意見は無視される形となった)

 2201年末、波動砲を搭載した新型『護衛』駆逐艦の設計が以下のようにまとめられた。なお、今回の護衛駆逐艦の量産、および搭載兵装の供給については北米管区が中心になって行うことが早期に決まっており、それに伴い、これ以前に建造された多くの艦艇が極東管区(日本)で整備された兵装を装備していたのに比して、北米管区が設計、製造した兵器の搭載が増えているのが特徴と言える。


全長    113.3m
全幅    18.5m

波動砲   零式タキオン波動集束砲改一型 1門
主砲    Mk.42 12.7cm連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 3基6門

その他兵装 Mk.33 76mm連装パルスレーザー砲 4基8門(艦尾全周)
      Mk.32 324mm宇宙魚雷三連装発射管 4基(艦前部全周)
      零式53cm宇宙魚雷発射管 2基2門(艦首下部)
      一式四連装対空ミサイル発射管 2基(艦橋基部側面)
      零式四連装対艦グレネード投射機 2基(対空兼務 船体側面)

主機    艦本式次元波動機関 1基

搭載機   一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』1機
      (連絡、偵察用。戦闘装備での搭載は不可)
      救命ボート複数

乗員    44名(戦時定数 35名程度で戦時運用が可能)


 波動砲を搭載すべきか否かで論争があった新型駆逐艦ではあったが、波動砲以外の兵装は「村雨型と同等の戦力を維持する」という当初の要求を概ね満たすもので、艦の規模に対して相当な重武装艦としてまとめられた。他方、特に前方に集中した主砲と魚雷兵装は防衛軍首脳部と艦政本部、そして宙雷閥との妥協の産物と言うべきもので、突撃戦法を考慮したものと(少なくとも表向きは)説明された。これを受けて、宙雷閥の士官たちもいったんはその不満を鎮静化させることになったのである。


A型駆逐艦の特徴

 設計がまとめられた後、この新型駆逐艦には『A型護衛駆逐艦』という制式名称が付与された。その一番艦は北米管区で建造された『フレッチャー』だったため、クラス名は『フレッチャー級』とされたのだが、本稿では『A型駆逐艦』の名称で通すことをご了承いただきたい。

 A型駆逐艦はタイプシップとなった『神風』型駆逐艦と同様の紡錘形船体を持ち、武装の配置は主砲塔が一基増えた以外はほぼ共通していた。ただ『神風』型は対空能力が不足しているという評価があったため、A型駆逐艦ではヤマトに装備された12.7cmパルスレーザー砲を集束圧縮型陽電子衝撃砲に改設計したMk.42 12.7cm連装砲が搭載された。この砲の特徴はその長砲身であり、貫通力と発射速度を重視しそのエネルギー弾の総量で敵艦を圧倒することを主眼に置いていた。もちろん原型がパルスレーザー砲ということもあって、対空兼用の両用砲としても高く評価されている。また補助砲(副砲と対空砲を兼務するもの)として76mm連装パルスレーザー砲を装備して艦後方への備えとした。

 魚雷兵装は、波動砲を装備したことにより大型魚雷の搭載スペースが減少したため、北米管区が開発したMk.32 324mm宇宙魚雷の三連装発射管が4基装備された。この魚雷はガミラス大戦末期に開発された零式53cm宇宙魚雷より威力で劣ったが、敵軽艦艇に対抗するには十分な威力があると判断され、対空ミサイルと兼用という形で採用が決まった(なお、大型艦艇については艦首下部に装備された53cm魚雷で対応することとされた)。また、対艦グレネードおよび小型の対空ミサイルも必要最低限の装備が施されている。

 波動砲は、当時A型巡洋艦が装備していた波動砲を小口径化した「零式タキオン波動集束砲改一型」が搭載されている。この砲の威力は1門の斉射ではカラクルム級1隻の撃破までは困難とされる程度だったが、代わりに当時の波動砲としてはエネルギーチャージの時間がやや短く、また一個駆逐隊(3~4隻)の一斉射撃であればカラクルム級1隻を確実に撃破できると判断されたため、艦隊単位の波動砲戦においてはその火力が期待されていたことが当時の記録からもうかがえる。また波動砲搭載艦ならではの特徴として、このクラスの小型艦としては波動砲射撃時の測距などに必要な探知機器が比較的充実していたことも挙げられる。

 なお、本艦は連絡機としてコスモタイガーⅡを1機搭載することができたが、格納庫のスペースが不足し戦闘状態での搭載は不可能で、またコスモタイガーⅡの慢性的不足から、連絡機としては他の旧式の機材を搭載したり、任務によっては救命ボート以外の搭載機を有さないことのほうが多かったようである。


量産、実戦投入と問題点の発覚

 設計が完了、承認されて間もなく、A型駆逐艦は北米管区を中心とした各地の管区で量産体制に入った。いかに威力が劣るとはいえ、防衛軍首脳部が「絶対数が不足している」としていた波動砲搭載艦ではあったから、A型戦艦やA型巡洋艦を護衛する、あるいは波動砲艦としてそれらを補完する戦力として、このA型駆逐艦にかけられた期待は、少なくともこの時点では決して小さなものではなかった。

 そうして量産されたA型駆逐艦群は続々と完成し、逐次ガトランティス帝国軍との戦闘に投入されたのだが、ここでA型駆逐艦は艦隊側から猛烈な批判にさらされることになった。以下にその一部を抜粋する。

 ・新鋭駆逐艦であるにもかかわらず、機動力が村雨改型巡洋艦に対して大きく優越しておらず、敵巡洋艦および駆逐艦を機動力で圧倒できない。総じて運動性が駆逐艦としては低いと言える
 ・波動砲艦としては明確に防御力が不足しており、他艦に比して短いチャージ時間の間すら持ち堪えるのが困難。また、通常戦闘時においても波動防壁の耐久時間が短すぎる
 ・波動砲を搭載したことで予備魚雷を配置するスペースが不足し、継戦能力に問題がある

 こうした問題から、いったんはその不満を収めた宙雷閥の強硬派からも「この艦で突撃戦法を行うのは困難を極めるため、至急の改善を望む」という声も上がり、再び防衛軍首脳と宙雷閥との間で緊張状態が生じることとなってしまった。
 (ただし、一部の宙雷士官はA型駆逐艦について「戦機を見るに敏である必要があるが、状況が許せば本艦の性能があれば突撃戦法は不可能ではない」という評価を下していたという)

 また、こうした実戦面での問題に加え、A型駆逐艦の波動砲を含めた重武装についても問題になっていた。小型の船体に最大限の武装を施すというコンセプトを採用したことにより、建造費用が駆逐艦という艦種としては高価なものとなってしまっていたのである。また多数の武装を採用したことにより、駆逐艦として必要な隻数を揃えるための武装の生産も間に合わず、A型戦艦やA型巡洋艦に建造枠や予算が圧迫されたこともあり(これは当時の防衛軍首脳部がいかに波動砲搭載の大型艦を重視していたかがわかる話と言えよう)、艦隊側からは「性能の問題を忍ぶとしても、現状まずは純粋に艦の数が足りない」という声が上がるようになっていた。

 (筆者は2202年中期の艦隊内におけるA型駆逐艦の充足率に関する資料を目にしたことがあるが、数字に多少の変動があるとはいえ、概ね必要な隻数のおよそ5割程度しか満たせていなかったようである)

 純粋に駆逐艦の数が足りないということに関しては、正直なところ、波動砲艦隊の建造に注力していた当時の防衛軍首脳部の多くがどれだけ深刻にとらえていたか疑わしいもののように思う。だが一部の首脳たち、特に2202年になって設立された地球防衛軍連合艦隊司令部がこの事態を重く見たこともあって、さすがに防衛軍首脳部の総意としても、何らかの対策が必要と判断するに至った。

 ガトランティス帝国軍という敵と交戦中の現在、彼らが出した結論は「より戦時に適応させた、量産性の高い駆逐艦を建造、配備する」というものであった。

磯風型駆逐艦の後継艦

 A型護衛駆逐艦フレッチャー級、およびB型駆逐艦綾波型は、特に前者は『護衛』という任務をクラス名に冠しているとはいえ、ガミラス大戦時に量産された磯風型突撃宇宙駆逐艦の後継と見るべき艦艇である。
 しかし厳密に言えば、波動機関への更新による性能向上に限界があり、早期に艦隊戦列の第一線から退いた磯風改型駆逐艦の代替として配備が決まったものではなく、特にその建造開始に至るまでに、波動砲艦隊を推進したい防衛軍首脳部と、艦隊側、特にガミラス大戦時における磯風型駆逐艦の大量生産によって拡大した突撃戦法を重視する宙雷閥との確執に巻き込まれたこともあって、なかなかに難産となった艦としても知られている。

 本稿ではその数奇な誕生から多彩な戦歴まで可能な限り、フレッチャー級および綾波型について紹介していければと思うので、お付き合い頂ければ幸いである。


神風型駆逐艦とガミラス大戦後の磯風型駆逐艦

 本題に入る前に、先に建造が開始されたフレッチャー級護衛駆逐艦のタイプシップとなった、神風型駆逐艦について少々語っておくことにする。

 その一番艦『神風』はガミラス大戦末期、ヤマトが竣工する直前から極秘裏に建造が開始された艦で、当初は『駆逐艦A』と呼ばれていた(『神風』という艦名は乗員の公募によって非公式に命名されたもので、星還作戦(ヤマトの帰路確保と太陽系宙域の奪還を目的とした作戦)の開始直前に司令部から追認された)。艦の形状はフレッチャー級より後に設計された綾波型のほうに酷似していたが、最終的にガミラス大戦終結までに同型艦3隻が追加建造され、この4隻の駆逐隊は新たに装備された中口径ショックカノンと空間魚雷の威力をもって、星還作戦の成功に大きく貢献したのである。
 だが、この神風型駆逐艦は大戦末期における戦時急造のため設計が未成熟で運用に難しい面があり、同時に星還作戦における酷使で船体各部を大きく消耗させたことも手伝い、4隻とも戦後の戦力としては用いられず、各々特務艦などに艦種類別が変更されて第一線を退いた。

 また、戦中において突撃戦法による戦果の代償として大損害を出した磯風型駆逐艦も、大戦を潜り抜けた僅かな艦が残存してはいたが、こちらも戦時急造に伴う粗製乱造のため第一線任務に耐えられる艦は限られており、一部に波動機関への換装工事が施された以外はやはり予備役ないし後方任務への転属を余儀なくされている。(波動機関を搭載し)新たに量産、配備して再編成されると目されていた宙雷戦隊の中核に、という声も上がったのだが、磯風改型駆逐艦(波動機関を搭載した磯風型駆逐艦は任務、用途を問わずこのクラス名で総称されている)では攻防性能の不足から再び艦隊戦力に組み込むのは困難と防衛軍首脳部は判断したようで、磯風改型駆逐艦は後日、拠点防衛用の雷撃艇やレーダーピケット艦に改設計された艦が追加建造されたにとどまり、金剛改型戦艦や村雨改型巡洋艦ほど多数の追加建造が行われることはなかった。


防衛軍首脳部と宙雷閥の対立

 2201年夏、この時期の防衛軍首脳部は新型戦艦(後のD級戦艦)の計画が控えていたことなどから、新戦艦の量産が軌道に乗り次第、金剛改型戦艦を巡洋艦相当、村雨改型巡洋艦を駆逐艦相当にそれぞれ格下げさせることを考えていたとされる。これによって金剛改型戦艦を旗艦とする村雨改型巡洋艦によって「波動機関を搭載した艦によって構成される」宙雷戦隊が編成されることが構想されたのだが、この構想自体が一部の艦隊側士官には「防衛軍首脳部が艦隊型駆逐艦の整備を放棄した」と映ったもののようである。

 そのため、特に艦隊士官の中で宙雷閥に属する者たちの一部が、首脳部の決定に強い不満を抱くことになった。先にも述べたが、地球防衛艦隊の宙雷閥というものは、ガミラス大戦時における磯風型駆逐艦の大量投入とその魚雷、ミサイルなどの実弾攻撃によって相応の戦果を残したことで拡大した派閥であったから、新たな艦隊型駆逐艦を整備して新鋭の宙雷戦隊を編成すべしと考えていたのだ。

 一方で防衛軍首脳部、あるいはその上にある連邦政府上層部としては、まず波動砲艦たる戦艦の兵力を充足させることで、当時交戦中だったガトランティス帝国、あるいは同盟国であるガミラスに互する艦隊戦力を整備したいという軍事的、政治的双方の思惑があったから、正直なところ限られた造船資源を用いて新たな艦隊型駆逐艦を整備することに意味を感じていなかった。もちろん、先のガミラス大戦において突撃駆逐艦部隊が大損害を出したということも、人的資源が極度に不足していた当時の地球にとっては無視できる要素ではなく、新たな艦隊型駆逐艦(宙雷閥が求めた新型突撃駆逐艦、と言ったほうが適切かもしれない)を整備するのに二の足を踏む理由も十分にあった。

 この時期、防衛軍首脳部と宙雷閥の士官たちによる議論は、後者に属さない艦隊士官たちも交えて継続して行われていたのだが、その主張は平行線のままで一向に進展しなかった。双方の思惑が異なりすぎるため無理からぬことであったのだが、結局、このまとまる気配のない議論に決着をつけたのは、ガトランティス帝国軍と交戦中の前線からもたらされた村雨改型巡洋艦の問題点の指摘、そしてその解決を目指して整備が決定された新型巡洋艦(後のA型巡洋艦)の計画によってもたらされた状況の変化だった。


急遽決定された新型『護衛』駆逐艦の整備

 村雨改型巡洋艦の前線における問題点を一言で言ってしまえば、それは「搭載する兵装の数量と威力の不足」というものだった。これらは、もともと20cm砲という比較的小口径の短砲身ショックカノンや搭載数の限られた宇宙魚雷を装備していた村雨改型においては避けられない問題であり、ガトランティス帝国軍のラスコー級巡洋艦やククルカン級駆逐艦に対してはほぼ単独で対抗可能だったものの、それ以上の戦艦級の艦艇と交戦すると一個戦隊(この時期は通常4隻編成)をもってしても対処がほぼ不可能になるというのは、さすがに艦隊戦力の一翼を担うべき艦として力量不足が過ぎるという見方が、防衛軍首脳部および艦隊側双方から強いものがあった。
 (この問題への対処として武装強化改装を受けた村雨改型巡洋艦も一定数存在していたが、必要な費用や工数に対して効果が限定的とされ、一部の艦への施工にとどまっている)

 そうしたこともあり、防衛軍は既に就役していたパトロール巡洋艦の武装を強化したA型巡洋艦の建造を決定した。この新鋭巡洋艦は艦隊全体の戦力底上げを図ると同時に、当時D級戦艦を建造、運用する能力を持たなかった中小国家にとっても宇宙艦隊の基幹戦力になると期待されていたのだが、こうした構想が具体化する過程で別の問題が生じたのである。

 それは、A型巡洋艦を中心とする艦隊の外周を固めるべき適当な艦種が、当時の地球防衛軍には存在していなかったことだった。この任務に村雨改型巡洋艦を充てる、ということも考慮されたようだが、A型巡洋艦の予定建造費よりは安価な村雨改型とはいえ、一定規模の艦隊を編成するところまで量産するための工数その他はA型巡洋艦に比してさほど軽くなるとは言えず、費用対効果が悪いと判断されるに至ったのだ。
 こうしたことから、地球連邦を構成する主に中小国から防衛軍に、A型巡洋艦と共に艦隊を構成することが可能な小型艦艇の建造が要望された。そして、それに乗じる形で防衛軍内部の宙雷閥も新たな小型艦(当然のこと、彼らが建造を想定していたのは「新型駆逐艦」だった)の建造計画発案に動き「新たに小型軽快なる艦艇を設計、即時量産すべき」という意見が日々高まることとなった。

 防衛軍首脳部の多くはこの提案に乗り気ではなかったようだが、国家レベルの要望を無下にするというわけにもいかなかったし、宙雷閥を別にしても艦隊士官の多くから「現有艦艇で艦隊を構成する場合、その質的あるいは量的にも不足は否めない」という意見が出されている現状からも、やはり何らかの対策が必要との最終結論に至ったようである。そのため、A型巡洋艦の設計を終えた艦政本部に対して、ただちに「新型『護衛』駆逐艦の設計を行うべし」との下命があった。

 この『護衛』という、任務を限定した文言が要求に組み入れられたことに関しては、現在に至るまで謎が多く真相は諸説あって定かではない。ただ筆者の推測になるが、防衛軍首脳部の考えるところの新型駆逐艦は「A型巡洋艦(もしくはD級戦艦)の護衛艦」であって、宙雷閥が要求した突撃駆逐艦ではないことを明確にしたかったのではないかと思われる。実際、この『護衛』という文言を組み込むことに宙雷閥の士官の多くは反対を示していたことから、信憑性はそれなりにある説だろうと考える次第である。

 さておき、新型護衛駆逐艦建造を命ぜられた艦政本部だが「最低でも村雨改型巡洋艦に匹敵する戦闘力を維持すること」という防衛軍からの難題に直面しつつも、先に述べたガミラス大戦末期に建造された『神風』をタイプシップとして選定したことにより、その設計を比較的早期にまとめ上げることに成功した。
 だが、設計案が提出された段階で防衛軍首脳部から「ある要求」が付け加えられたことにより、この護衛駆逐艦の建造は直前になって再びいくつかの派閥を巻き込んだ論争を招くことになったのだが、そのあたりは次項にて説明していきたいと思う。

 安全圏に離脱した『薩摩』は、不安定な主機を騙し騙し動かしながら木星ガニメデ基地へと向かっていたが、その途中、思いもよらない事態に遭遇した。

 「早瀬機、帰還しました。着艦の許可を求めていますっ!」

 報告に、堀田は驚いた。戦場を離脱する際、敵旗艦を偵察するために出撃させた早瀬機には艦載機用の小型無線を用いて『本艦は戦闘不能、戦場を離脱するので着艦は他艦もしくは土星鎮守府へ行うように』と指示を出していたのだが、何故か許容範囲を超える飛行時間を費やしてまで『薩摩』を追いかけてきたのである。

 早瀬機を着艦させてから、堀田ら主だった乗員は格納庫でこれを出迎える。疲労の極に達していたのだろう、早瀬は立ち上がれない様子であったし、後方銃座の偵察員に至っては意識を失っているようだった。

 「早瀬君、無理をさせてすまなかった。しかし、何故本艦を追いかけてきたのか?」

 堀田が聞くと、早瀬は息も絶え絶えに答えた。

 「……どうしても、艦長に報告せねばならないことがありまして。私の口からよりも、これを」

 偵察機用の映像媒体のユニットを堀田に手渡すと、早瀬はそこで気絶してしまう。堀田は偵察員共々彼らを病室へと運ぶように命じた後、その媒体の内容を幹部乗組員全員で確認することにした。


 「何てことだ……」

 映し出された映像を見終えた『薩摩』幹部乗組員たちは、言葉を失った。

 確かに、地球防衛軍連合艦隊は敵艦隊を全滅させた。白色彗星のガス体を、拡散波動砲の一斉射撃で取り払うことにも成功した。
 しかし、そのガス体が消えたところから現れたのは、ガトランティス帝国の本拠と思われる都市要塞だった。そして、その猛攻によって連合艦隊は壊滅。タイタン鎮守府の地上施設も破壊され、果たして戦場から離脱できた味方艦艇がどれだけいるか、いや、そもそもそのような艦が存在するのかすらわからない状況だった。

 何より『薩摩』幹部乗員、そして堀田に衝撃を与えたのは、総旗艦『アンドロメダ』の最後だった。

 『アンドロメダ』は敵都市要塞に砲撃を繰り返していたが、艦橋への被弾により恐らく操舵不能になったのだろう、そのまま都市要塞の外縁に激突して爆発、沈没したのである。映像を見る限り、脱出した乗員は一人もいなかった。

 「かん……」

 三木が言いかけて、しかし黙ってしまった。堀田にとって『アンドロメダ』に座乗していた土方司令長官がどういう存在か、彼のみならず『薩摩』乗員で知らないものはいない。その土方の壮絶な最期に言葉を失ってしまった堀田に対して、誰かが何か声をかけることなど、できるはずもなかったのである。

 「……大丈夫だ」

 堀田が呟くように言ったが、何が大丈夫なのか、本人にすらわかっていなかった。

 「副長、本艦は予定通りガニメデ基地へ向かってくれ。本艦が沈んでいない限り、まだ戦いが終わったわけではない。今は連絡を取ることができないが、離脱した味方艦や第十一、第十六艦隊も残っているだろう。とにかく、今は本艦を戦える状態に戻すことだ」
 「りょ、了解しました」
 「頼む。……二十分だけ、時間を貰いたい。その間の指揮は任せる」

 そう命じて自室に引き取った堀田だったが、泣かなかった。泣けるわけがない。地球と人類の運命はこれからの自分たちの戦いにかかっているのだ。今、涙など見せたらあの世の土方に会わせる顔などない。
 だが、それでも忸怩たる思いを消すことは出来ないのである。土方を連合艦隊司令長官にしたのは、間違いなく自分なのだから。

 (私は、恩師を死に追いやってしまったのか……)

 軍人である以上、こういうことが起こらないと限らないのは事実である。しかし、後悔がないと言えば嘘になるのも確かなのだ。
 だが、ここで心を折るわけにはいかないのだ。堀田はこの時、映像に紛れていた土方の最後の通信を思い出していた。

 「生きているなら……最後まで、戦え。そして、未来を……掴め」

 それは、自分に向けられた言葉でもあるような気がする。少なくとも堀田はそう思っていたのである。


 ガニメデ基地へ何とか到着した『薩摩』だったが、艦の主要部である中枢コンピュータが大きく破損してしまっていたため、修理には相応の時間が必要とされた。
 堀田は修理の指示を出しつつ艦内を一通り見て回ったが、乗員たちの士気は一見すると高いように見受けられる。まだ諦めていない、それが本心からであることも事実だろうが、同時に別のことも感じ取っていた。

 (無理もないことだが……恐怖で腰が引けてしまっている)

 『薩摩』乗員が表に出さないその雰囲気を、堀田は敏感に感じ取っていた。既に連合艦隊が壊滅したことは乗員たち全員に知らせてあったから、ここで『薩摩』一隻が復旧できたところで何ができるのか? 恐らく、乗員たちはそれが疑問なのであろう。無理からぬことではあったが。

 ところが、修理を開始してから数時間後、再び思わぬ事態が生じることになる。

 「か、艦長っ!」

 艦橋にいた堀田のところへ、艦外で作業していた乗員が駆け込んできた。

 「どうした、何かあったか?」
 「は、はい。外を、すぐに外を見てくださいっ!」

 言われて堀田が外を見てみると、そこには見慣れた、そして今の状況においてはこれ以上なく心強い艦の姿があった。

 「ヤマト……無事だったのか!」

 後に聞くこととなる話だが、ヤマトは土星会戦の中途にワープアウトしてきた白色彗星の衝撃波で艦の各部に大損害を受け『薩摩』と同様に戦場を離脱していた。ガニメデ基地に比較的近い宙域に吹き飛ばされたのが幸いして、こうして修理のため基地にたどり着くことができたのだという。

 (ヤマトが無事なら、まだ戦って勝つ見込みはある)

 量産艦である『薩摩』ならともかく、ヤマトはイスカンダルへの航海でただ一隻でガミラスの妨害を振り払った武勲艦だ。それと共に戦えるのであれば、少なくとも『薩摩』一隻で戦うより遥かに勝算は高く見積もれるはずだ。そして、内心で腰が引けている乗員たちにとっても大きな勇気となるに違いない。
 ともかく、ヤマトは今後どうするつもりなのか、それを確かめなければならない。既に地球防衛艦隊の指揮系統は壊滅しており、むやみに地球へ通信を送るのが危険である以上、誰に指示を仰げる状況でもないからだ。

 まずはヤマト乗組員たちの意志を確かめようと、堀田は一人でヤマトを訪れた。

 「堀田艦長! ご無事でしたか」

 出迎えた古代がそう言ってくれた。しかし、古代にとっても土方は恩師である。その死が堪えていないはずはない。

 「……ああ、生き残ってしまったよ。だが、だからこそまだ諦めるわけにはいかない」
 「はい、自分も同じ想いです」
 「艦内を見せてもらったが、さすがにイスカンダル帰りの乗員たちだ。誰も諦めている様子はなかったし、うちの若い乗員たちのように腰が引けた様子もない。正直、心強いよ」
 「先程、乗員たちを集めて意見を纏めました。本艦、ヤマトは都市要塞に対して徹底抗戦を決めました。艦長『薩摩』はどうするおつもりですか?」
 「……頼ってしまって申し訳ないが、言ったようにうちの若い乗員たちは意気込みはあるが内心で腰が引けている者も多い。『ヤマトがいるから勝てる』と言わせてもらうしかないが、許してもらえるだろうか」
 「共に戦っていただけるのでしたら、ヤマトでお役に立てるのなら是非」
 「すまない、これからよろしく頼むよ」

 古代の敬礼を受けて『薩摩』に戻るや、堀田は全乗員を講堂に集めた。士気を阻喪しているとは言えないまでも、やはり青ざめている者が少なからず見受けられた。

 「艦長に敬礼っ!」

 三木の声と共に敬礼を交わし、堀田は全員を着席させてから口を開いた。

 「先に通達した通り、連合艦隊は壊滅し、ガトランティス都市要塞は地球に向かっている。諸氏もそれぞれ思うところがあるだろうが、本艦の艦長として、私は徹底抗戦を主張したい」
 「……」

 乗員たちは沈黙を保ち、堀田の次の言葉を待った。

 「無論、戦うのは我々だけではないという点で勝算があってのことだ。ここにヤマトがいる。連絡は取れていないが第十一、第十六艦隊や土星会戦を生き残った艦もいるからだ。もちろん高い勝算とは決して言えない。だが、今度の敵は降伏して許されるような相手ではない。戦うしかないと覚悟してもらいたい」

 これには根拠があった。この戦役の序盤、第十一番惑星に駐屯していた小規模の警備艦隊がガトランティス艦隊と交戦した際、あまりに一方的な戦いに艦隊司令は降伏を申し出た。だが、ガトランティス側からは信じられない回答があった。

 「降伏? 降伏とは何だ? 戦いを終わらせたければ戦って死ね」

 そして、警備艦隊は一艦残らず沈められたのである。偶然に近い形でヤマトが救援に向かっていなければ、地上部隊も恐らく最後の一兵まで殺され尽くしていただろう。今回の敵、ガトランティスには「降伏」という行動が通じないのである。だからこそ負けるわけにはいかないと、土方以下土星に集結した将兵たちは承知していたのだが……。

 ここで、堀田は軽く深呼吸した。

 「……ただ、もう戦いたくないと思っている者もこの中にいたとして、私はそれを責めはしない。勝算はあると言ったが、藁にも縋るようなものでしかないと私も承知しているからだ。ここで終わりにしたいという者は、この部屋から退室してもらいたい。ヤマトの修理が完了次第、本艦はヤマトと共に出撃する。往くも残るも、諸氏の自由だ」

 言い終えて、黙然と立ったまま目の前の乗員たちを見つめる。そのまま5分ほどが経過したが、退室したものは誰もいなかった。

 三木が立ち上がった。

 「……艦長。本艦の副長として申し上げます。艦長が私の命を預かって下さる以上、私も艦長にこの身を預けるのみと覚悟を決めています。これからの戦い、最後までお供させていただきます」

 この言葉につられたかのように『薩摩』の乗員たちは続々と立ち上がり『戦います!』『やりましょう、最後まで』『地球を、人類を救いましょう!』と大声を上げ始めた。

 その乗員たちの姿に、堀田はただ帽子を取って、静かに頭を下げる。そして、改めて命じた。

 「では、残る修理作業を至急、進めてくれ。先に述べたように、本艦はヤマトの修理が完了次第、共に地球に向けて出撃する。……相手は強大だが、諦めることは許されない。最後まで、共に戦い抜こう!」
 「オーッ!」

 握りこぶしを突き上げて、堀田の言葉に応える『薩摩』乗員たちであった。


 それから数時間後、ヤマトの修理が完了したのを受けて、同艦と『薩摩』はガニメデ基地を出撃した。

 (範さん……第十一、第十六艦隊は無事だろうか)

 当然のことながら、今は自主的に無線封止をしなければならない地球側である。奇襲効果を最大限に生かしてこそ、あの強大な都市要塞との戦いを僅かでも有利にできるからだ。そのため、両艦隊が現在どうなっているかなど知る由もなく、共同して戦いに臨めるかどうかすらわかったものではない。
 しかし、降伏を許さない相手にもはやそんなことは言っていられない。それに地球の一般市民に被害が及ぶことは何としても避けなければならない以上、もうこの両艦隊をあてにすることは出来ないと言ってもよいのである。

 (後は、ガニメデでまだ修理中の艦がどれだけ間に合うか……)

 都市要塞が地球に迫っているため置き去りにしてしまったが、ヤマトと『薩摩』の修理中に、土星会戦を生き残った艦が数隻、ガニメデ基地に不時着していた。彼らも修理完了と同時に出撃、合流する予定だったから、微々たるものだが戦力として期待できる面もあろう。

 そんな僅かな期待を堀田は持っていたのだが、しかしそれを覆してしまうような事態がここで生じた。

 「艦長、後方……ガニメデ基地の更に外縁に敵艦隊ですっ!」
 「何だとっ!」

 沢野の報告に、堀田は愕然とした。このガトランティス艦隊がガニメデ基地を攻撃してきたら、地球は唯一といっていい艦艇の修理ができる外惑星基地を失うことになる。そうなれば現在この基地で修理を行っている艦が失われるのはもちろん、第十一番惑星から急行しているはずの第十一、十六艦隊も補給基地を喪失することになる。
 そして何より、ガニメデには基地要員はもちろん、土星などから避難してきた民間人も残っているのである。このままこの敵艦隊を無視すれば、必然、彼らを見殺しにすることになってしまう。

 (どうする……しかし、これから先の戦いをヤマト一隻では)

 ガニメデに迫る敵艦隊に対処するとしたら、拡散波動砲を装備する『薩摩』のほうが適任であろう。しかし、そうなれば当然ここからガニメデに引き返すことになるし、悪くすれば都市要塞との戦いに間に合わない恐れがある。そうなれば地球はどうなってしまうのか。ここはガニメデを犠牲にしてでも、ヤマトと行動を共にし続けるべきではないか?

 (『味方を見捨てる戦いは、地球防衛軍にはない』)

 かつて、自分はそう口にした。だが、それを口にした時とはあまりに状況が違い過ぎる。このとき、堀田の心に大きな迷いが生じていた。

 「艦長、ヤマトから通信です」

 はっとしてスクリーンを見上げると、そこには古代の顔があった。

 「堀田艦長、ガニメデ基地に向かっている敵艦隊は?」
 「……探知している。しかし」
 「わかりました。……艦長、いえ教官」

 古代が、僅かに表情を緩めたように見受けられた。

 「都市要塞への攻撃は、まずヤマトが行います。『薩摩』は敵艦隊を排除した後、至急ヤマトに合流してください」
 「……しかし」
 「『味方を見捨てる戦いは、国連宇宙軍にはない』ですよね。教官」
 「……っ!」

 確かに教官時代、古代たち生徒にそう教えたのは間違いない。しかし今の苦境においても、古代はその通りにしろというのである。
 それは無謀だ、と言いかけて、しかし堀田はやめた。ここまで成長した教え子なら、甘えるようで申し訳ないが地球を救った武勲艦なら、遅れを最小限にすれば何とかしてくれると信じられるように思えたのだ。

 「……すまない、古代艦長代理。至急、敵艦隊を殲滅し、援軍を集めてこちらも地球に向かう。それまでの戦い、申し訳ないが任せる」
 「了解しました、教官もどうかご無事で」
 「そちらもな、頼んだぞ」

 古代の顔がスクリーンから消えると同時に、堀田は澄んだ声で命令を下した。

 「これより本艦は、ガニメデ基地に向かう敵艦隊を迎撃、これを撃滅する。反転180度、最大戦速!」
 「了解っ」

 航海長の初島が応じると同時に『薩摩』は反転してガニメデ基地を狙う敵艦隊へと向かう。地球と人類の危機、それが収束する目途は、未だ全く見えるところのない状況であった。

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