地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

 「砲雷長」
 「は、はい」

 堀田に声をかけられて、林は振り向いた。

 「君は主砲の射撃に専念してくれ。悪いが、対空機銃と魚雷のスイッチはこちらが貰うよ」
 「了解しました、お願いします」

 「神風」には、メ号作戦で「ゆきかぜ」が使用した新型の空間魚雷が配備されていた。しかし今回は訓練ということで実弾は発射管4門にそれぞれ1発ずつしか搭載されておらず、かつこの魚雷自体が貴重品なので使わないに越したことはない。
 また、雷撃戦を得意とするガミラス艦に対しては、その魚雷を破壊するための対空機銃も重要な兵器だ。しかし「神風」は駆逐艦のため対空兵装は貧弱で使いどころが難しい。この戦いは「神風」にとって初陣であるから、この二つは堀田が扱ったほうが確かによかったろう。

 「操艦は航海長が航海士に指示を。船務長、敵が主砲の射程に入る一分前に砲雷長へ伝達。射程は今までの艦より長い、十分に注意してくれ」
 「「わかりました」」

 三木と沢野が答えると、堀田は敵艦が映し出されたモニターを再度確認した。

 (ガミラスの巡洋艦か。戦艦級ならともかく、この相手ならば)

 「神風」が搭載する4門の15.5cm陽電子衝撃砲でも対処は可能なはずだ。少なくとも計算上は、だが。

 「有効射程まで、あと一分」
 「了解!」

 沢野の声に林が答える。緊張が感じられるが、無理もないことである。彼女は戦場の経験はあるとはいえ、ショックカノンを撃つのは初めてなのだから。

 「落ち着け、砲雷長。いつも通りに狙って撃てばそれでいい」
 「はいっ」

 堀田が声をかけてやると、林もいくらか落ち着いたようだ。

 「敵艦、射程に入った。砲撃準備よし」
 「撃ちー方ー始めっ!」

 堀田の号令一下、林が主砲の引き金を弾く。「神風」の艦首上下に取り付けられた連装砲塔2基から青白いエネルギー流が4本生じ、敵艦へと向かっていった。

 「照準修正。砲雷長、次は君のタイミングで撃て」
 「了解!」

 その直後、最初の一斉射が敵巡洋艦を直撃。艦首が爆発して砕け散り、速力が一気に低下した。

 (全弾当てたか、いい腕をしている)

 内心、そう堀田は林を称賛したが、当の彼女や他の乗組員たちは驚いていた。今まで自分たちが乗って見てきた、あるいは話に聞いていた限り、これほど簡単にガミラス艦に打撃を与える艦など存在すら信じられなかったからである。何しろ彼ら彼女たちは「ヤマト」を知らないのだから。

 「砲雷長、一気に沈めてくれ」
 「はっ、はい!」

 我に返った林が照準を修正、今度は「自分のタイミングで撃て」と言われている。

 「主砲、発射!」

 再び4本のエネルギー流が敵巡洋艦を襲う。また全弾命中、ガミラス巡洋艦はたちまち爆発四散した。
 その光景を見た艦橋の乗員たちは、堀田を除いて呆然としていた。三木ですら唖然としている。今までのガミラス艦への常識からすれば、駆逐艦どころか巡洋艦級など絶望的な相手であったはずなのに、駆逐艦である「神風」はたった主砲二斉射で、相手に何もさせずに沈めてしまった。自分たちの乗っている艦がこのような威力を発揮するなど、実は表向き冷静さを保っているように見える堀田ですら驚きを禁じ得なかった。

 (これが、波動機関の威力か)

 しかし、驚いてばかりはいられない。まだ戦闘は終わっていないのだ。

 「右舷の駆逐艦、発砲!」

 沢野の声を聞き、三木が初島に指示を出す。

 「航海士、面舵30」
 「お、面舵30、よーそろ!」

 これも波動機関の威力なのだろう、これまでの磯風型駆逐艦すら上回る速度で「神風」は右舷から迫る敵駆逐艦に艦首を向ける。その船体ぎりぎりを、敵の砲撃がすり抜けていった。

 「主砲二番、テーッ!」

 堀田が指示し、林が撃つ。今度は軽快な駆逐艦が相手だったからか回避されたが、この回避運動は堀田と林の双方が計算していた。

 「一番、テーッ!」

 今度の砲撃は敵駆逐艦を捉え、爆散させる。残るは一隻だ。

 「後方、魚雷迫るっ!」
 「当たらないよ、進路そのまま」
 「わかりました」

 沢野の報告に、堀田と三木は慌てることなく応じる。すると、確かに発射された敵の魚雷四本は「神風」の両舷を通過していった。

 「前進、第一戦速!」
 「了解。航海士、速度を上げつつ進路反転180度」
 「よ、よーそろ。増速、反転180!」

 「神風」は敵駆逐艦を振り切るかのように速度を上げる。何せ主兵装が艦首に集中している「神風」だから、いったん敵を振り切って艦首を向け直さないと反撃ができない。そして幸いなことに「神風」の急加速を敵は予測していなかったようで、一気に距離が開いた。
 しかし、敵もさるもの。再び装填したらしい魚雷を発射、今度は正確に「神風」を捕捉していた。

 「砲雷長、主砲で魚雷を撃ち落とせ」
 「え、えっ?」
 「聞こえなかったのか、君ならできるはずだ!」
 「わ、わかりましたっ」

 主砲塔二基が左舷に急旋回し、突き進む魚雷を照準器が捉える。

 「撃てっ!」

 一番砲塔、僅かに遅れて二番砲塔が射撃する。林の腕は確かだったようで、四本の魚雷のうち三本はこれで破壊できた。しかし、一本は撃ち漏らしている。

 「魚雷、回避できませんっ!」
 「……」

 沢野が悲鳴のような声を上げたが、堀田はこの時は何も指示しなかった。

 「魚雷、命中まであと200っ!」
 「対空防御、始め!」

 ようやく堀田が対空パルスレーザー砲の発射ボタンを押す。限界まで引き付けていたこともあって「神風」の貧弱な対空砲火だったが見事に魚雷を撃破した。
 そして、程なく「神風」は敵駆逐艦に艦首を向け切っていたが、敵は先ほどの魚雷攻撃を機に砲撃戦へと持ち込むつもりだったのだろう。加速して正面から突っ込んできた。

 「機関長」

 機関室の来島を、堀田は呼び出した。

 「機関全力、まだ行けるか?」
 「今のところは大丈夫でしょうが、あんまり無茶させないで下さいよ。まだ先があるんでしょう?」
 「あと一回だけだ、頼む」
 「しゃーないですな、了解です」
 「すまない」

 マイクを置くと、今度は林に声をかける。

 「砲雷長、すまないが主砲も貰うぞ。航海士は舵を航海長へ頼む」
 「「は、はいっ」」
 「両舷全速、舵そのままで敵艦正面へ突撃! 船務長、敵との相対距離をこちらに送ってくれ」
 「了解しました!」

 「神風」は再び加速し、しばらくして全速に達する。一方で敵艦も全速で正面から挑んでくるらしく、程なく砲撃を開始する。しかし、それを初島から舵を受け継いだ三木が絶妙の操艦で回避していく。

 「距離、千五百!」

 沢野の声が響いた。

 「主砲二番、撃て!」

 船体下部の二番主砲が発射されるが、敵は急上昇でこの射撃を回避する。しかし、堀田はこの瞬間を待っていた。

 「主砲一番、最大仰角……撃てっ!」

 一気に敵艦の下方に飛び込んだ「神風」が上方へ主砲一閃。これが敵駆逐艦の下部中央を貫通して大爆発。その爆炎の中を「神風」は全速で駆け抜けていた。

 「……敵艦隊、全滅を確認」

 レーダーを見届けていた沢野が、呟くように報告した。

 「よし。各部、被害状況を報告せよ」

 堀田が指示すると、程なくして「被害なし」という知らせが入った。

 「ふう……」

 三木がため息をついた。他の乗員たちも安心したような表情を見せる。完成して最初の航海が戦闘になるとは誰も思っていなかったから、こうなるのは致し方ない部分ではあったろう。

 「こら」

 強い口調ではないが、堀田が口を開いた。

 「一度の戦闘が終わったからといって、そんなにほっとされても困るぞ。船務長、再度周囲に敵影がないか、確認してくれ」
 「は、はいっ」

 沢野が再びレーダー画面を確認し、一分後に言った。

 「レーダー探知圏内に、本艦以外の艦影は認められません」
 「そうか」

 ここでようやく、堀田も軽く深呼吸する。そしてマイクを手に取り、艦橋に居る要員を含めた全乗員に声をかける。

 「皆、よくやってくれた。本艦は初陣を飾り、その威力がガミラス軍に対抗できることを証明した。しかし、本当の戦いはこれからだ。厳しいものになるだろうから、覚悟しておいてほしい」

 そう重めの口調で言ってから、今度は少しだけ軽めに付け加えた。

 「だが、とにかくみんなよくやった。これより各部の点検のためいったん地球に帰還する。通信長、その旨を本部に打電してくれ。それと、手の空いている者は少し楽にしてよろしい」
 「はい」

 河西が通信を送り終わったところで静かになった艦橋が、しかし次の瞬間、突然騒がしくなった。

 「艦長、艦長!」

 声の主が、凄い勢いで艦橋に飛び込んできた。その声の主を見たとき、堀田は「ああ、来たか」と思った。

 「何つー無茶してくれやがるんですか! こちとら完成したばかりの艦であれこれ調整が大変だってのに、何かあったらどうしてくれたんですか、いったい!?」
 「……すまない」

 一言だけ、堀田は謝った。相手は技術長の菅井貴也二尉。今度の航海では「神風」の機器に異常が発生しないように目を配るのが仕事だったが、その最初の航海でいきなり戦闘を始めるなど、確かに無茶もいいところである。
 しかもこの菅井という人物、技術科に身を置いているのにも関わらず、妙に口調が荒く上官に対しても遠慮がないのだ。もっとも技術者としての腕はヤマトの副長でもある真田志郎が認めるほどであり、何より彼を見込んで自分の艦に引っ張り込んだのは堀田なのだ。それだけに素直に謝るしかない。

 「まあ、でも戦闘でこの艦の威力を発揮できたのは上出来だったし、何より君のおかげもあって艦に異常もない。ここはまず、それでよしとしよう」
 「言ってくれますね……まあ、いいですけど」

 菅井はぶっきらぼうに答えたが、上官にはこうでも同僚や部下にはざっくばらんで気取らない性格で人望はあるし、堀田も彼を見込んだのはそうした面があるからでもあった。

 「とりあえず、念のために重要箇所だけもう一度点検を頼む。細かいところは地球に戻ってからやろう」
 「へいへい、わかりましたよ。あ、でも一つだけちょっと見てもらいたいもんあるんで、ちょいといいですかい?」
 「わかった。副長、しばらくここを頼む」
 「わかりました」

 堀田と菅井が艦橋を出ていくと、三木が口を開いた。

 「どうしたんだ? みんなぼんやりしているようだが」
 「……」

 確かにこの場の全員が驚いていた。これまでの核融合反応機関とは全く違う、波動機関とそれによって汎用兵器に変貌を遂げた陽電子衝撃砲に。だが、三木を除いたメンバーの驚きはそれだけではなかった。

 「あの……」

 林がおずおずと口を開いた。

 「艦長は宙雷が専門とお聞きしていましたが、魚雷を一発も使わないでここまで冷静に戦われるとは……正直、驚きです。あれなら最初から艦長が全ておやりになったほうがよかったような、その」

 林は砲術が専門だけに、その驚きは大きかったようだ。その疑問に、三木は静かに答える。

 「それが堀田さんという人だよ。一度部下とした人間には、最後の責任を背負って任せてくれる。そして、及ばないところがあれば手助けしてくれる。私も士官学校時代、あの人にどれだけお世話になったか知れない」
 「……」
 「だから、任せてもらった分だけ頑張って報いればいい。艦長は特にそうやって、君たち若い者が成長するのを見るのを楽しむ人だからね」

 自分も顔はともかく、そんなに歳は食っていないはずだがな……と三木は思ったが、口にはしなかった。

 「だからみんな、これは先任士官としての私からのお願いだが、あの艦長は盛り立ててあげて欲しい。これから苦しい戦いだろうが、あの人とならきっと乗り越えられるはずだから」
 「「はいっ!」」

 「神風」の若い艦橋要員たちは声を揃えた。今の戦闘は自艦がガミラス軍艦艇に引けを取らないことを証明したのも収穫だったが、若い艦長がそれ以上に若い乗組員たちから信頼を勝ち得たのが一番大きかったのではないか。そう、堀田を第一に補佐するべき立場の三木は心から思ったのだった。


 「神風」はいったん出撃した坊の岬沖のドックへと戻り、再度各部の総点検を行う。異常がないことが判明した翌日、堀田は技術長の菅井と機関長の来島とドック内の一室で話していた。

 「そうか……そこまで長くは持たない、ということだな」

 堀田の声は重い。あまりいい話ではなさそうだった。

 「はい、まあ何せ扱ったことのないもんですから確実に言い切れはしませんが、あんまり無茶を続けると波動コアが駄目になる、というのは間違いないでしょうな」
 「だーから、初陣からあんな無茶をしちゃいかんと言ったんですよ……と言いたいところですがあれは大して関係ないようですね。ですが、今後はそこらのことを踏まえて艦を動かしてもらわないとならんわけです」

 来島と菅井が言う。彼らの話題は「神風」が搭載しているガミラスから鹵獲した波動機関のことについてだった。
 元々、ガミラス艦の波動コアはイスカンダルから送られヤマトに搭載された本格的なものより簡略化されていたから、条件さえ整えば地球でも一定数のコピーを行い、それで波動機関を製造することは可能という目途は立っていた。しかし、冥王星基地がまだ存在していたつい先日までは、必要な物資収集を行おうにも警戒は厳重で不可能だったし、何より絶望的に何もかも足りていない現在の地球では、当然ながら物資を集めるための船舶もそれを護衛する軍艦も、多くは整備不良で動かせるものは不足を極めていた。

 それ故にこそ「神風」建造が強行されたわけだが、そこは敵から鹵獲した機関の転用である。調査の結果、搭載されているガミラス製波動機関の波動コアは、来島と菅井の見るところ「あと数度の出撃で寿命が尽きる可能性がある」という状態のようだった。
 この報告を受け、仕方なく堀田は宇宙空間での「神風」の訓練を断念し、今は各々が航行中の状況を見立てて艦内で訓練をしている。しかし、このような状況が長く続けば、せっかく初陣の勝利で高まった乗員たちの士気にも悪影響は免れない。

 (調査船団の護衛、それが本艦の任務だが……司令部からは未だに何も言ってこない。船や乗員が集まらないのかもしれないが、このままぐずぐずしていては)

 何しろ、敵はもう「神風」の存在を知っているのだ。極端な話、その「神風」を脅威として太陽系に残っているガミラス艦が一斉に地球に押し寄せてきても不思議ではないから、調査船団を編成して出撃するなら早いに越したことはない。

 「艦長」

 そこへ三木がやってきた。

 「本部から命令を伝達しに、連絡要員の一尉が参りました。艦長に直接、命令書を手渡したいとのことです」
 「わかった、すぐに行こう」

 席を立った堀田だが、このとき、これから会う相手が自分に少なからず関わりのある人間であるということを、もちろん夢にも思ってはいなかった。

(筆者よりお断り:本創作においては、ヤマト2202で重要な設定である時間断層と重力子スプレッドを、諸般の事情から「ないものとして」扱っています。そのため旧作2に寄せつつ2202の設定を取り入れたものとなっていますので、ご了承ください。いずれ筆者がどのような前提で自分のヤマト世界を構築しているかはご説明しますので、しばらくの猶予を頂きたく思います)


地球防衛艦隊の拡張と連合艦隊司令部問題

 2201年。地球の復興は順調に進み、同時に地球防衛艦隊も整備されその規模を拡大させていった。そして、A2型巡洋艦やA2型駆逐艦といった後のガトランティス戦役において主力となる艦艇の整備も進み、やや先送りにされていた主力戦艦となるA型戦艦も量産型であるA2型戦艦の建造が開始されたこの頃、防衛軍参謀本部と地球防衛艦隊司令長官である土方竜宙将を始めとした艦隊側の主だったスタッフとが、ある議論を交わしていた。
 それは、もし太陽系にガトランティスなど他星系の国家が侵略してきた場合、世界各国から集められた艦艇で編成される「連合艦隊」を、どこでどのように指揮するかという議論であった。

 防衛軍に所属する艦艇は、ガミラスとの共同作戦でガトランティス帝国との戦いに赴く艦隊以外は、通常は戦隊単位で各外周、内周艦隊に振り分けられるか、個艦あるいは小規模な艦隊、戦隊単位で各惑星ないし衛星基地に分散配置されて駐屯艦隊を編成するかのどちらかであった。この場合、ガトランティス戦に出撃する艦隊も含めて、それぞれの部隊の規模はさほど大きいものとはならないため、各艦隊の司令部はそれぞれの所属基地、あるいは一定の旗艦設備を有するA2型戦艦から麾下の艦艇を指揮すれば問題なかった。
 しかし、話が連合艦隊となるとそうはいかない。連合艦隊が編成されるとはすなわち、太陽系内に大規模な敵艦隊(この時点では、移動要塞などが襲来してくることは想定されていなかった)が侵入し、この時期は土星軌道に設定されていた絶対防衛圏において敵艦隊に決戦を挑むという状況が前提だったからである。それには太陽系内あるいはその周辺に点在する戦力すべてを結集することになっていたから、所属や国籍を問わず大量の艦艇(この議論の際、見積もられた連合艦隊の最大艦艇数はおよそ300~350隻程度とされている)を一括して指揮することが必要であった。

 もちろん、通常のA2型戦艦ではこのような大規模艦隊を指揮統率するのは不可能である(A2型戦艦に続いて建造されたA3型戦艦は旗艦設備が強化されたが、これでも無理と判定された)。そのため参謀本部はヤマトに大改装を施してこの任務に充当することを考慮したようだが、当時、ヤマトには同艦以外には不可能な別の任務をと土方長官が構想していたため彼が異議を唱え、また実際にヤマトを大改装しても300隻規模の艦隊を統率することは不可能と判断され、この案は破棄されている(ただし、大規模な旗艦設備の追加を除いたヤマトの改装は、土方長官ら艦隊側も賛成したため実施されている)。
 その後、改A2型戦艦(後の通称「パトロール戦艦」)の建造によってこの任を補うことも考えられたが、結局これでも連合艦隊旗艦には不足であると判明したため、最終的にこの議論において、参加者は三つの案を考え出した。

1 地球上の基地から指揮を行う
2 太陽系内の惑星ないし衛星、この場合は絶対防衛圏である土星の衛星タイタンに司令部施設を建設し、そこから指揮を行う
3 旗艦用大型戦艦(会議中にもそう呼ばれている)を新たに建造、最前線にあって全艦隊を統率する

 しかし、地球上の基地から指揮を行う場合、どうしても現場と司令部との意思疎通がうまくいかず、時に取り返しのつかない事態を招来しかねないという不安があった(当時、重要機密であったガミラスとのファースト・コンタクトの際の当時の国連と国連宇宙軍の失敗を、この会議のメンバーは当然把握していたはずである)。また、土星軌道に絶対防衛圏を設定しておきながら、そこから遠く離れた地球で全艦隊を指揮するというのは、どうしても艦隊乗員に「自分たちばかり安全な場所に居て」と不満を与えることは避けられないという艦隊側の意見もあり、この三案の中では比較的早期に否定されている。

 また第二案だが、これは土星の衛星タイタンに連合艦隊司令部となり得る設備を持った大規模な基地を建設することは決定されたものの、参謀本部と艦隊側の双方から「タイタンに配置した連合艦隊司令部」について以下の問題点が指摘された。

1 タイタンに基地を設けてそこから全艦隊を指揮する場合、基地が直接攻撃され万一司令部が全滅するなどの事態が生じれば、連合艦隊の指揮系統は瞬時に壊滅する。そしてガミラス戦役の戦訓を考慮すると、遊星爆弾や惑星間弾道弾に類似した戦略兵器によって基地が直接攻撃される可能性は決して低くない
2 仮に地下基地として敵の攻撃に耐え得る防御を施したとしても、遠距離通信用のアンテナなどの設備は地上に配置するしかない。これが破壊されれば、例え司令部が無事でもやはり指揮系統が麻痺することは避けられない
3 土星軌道は絶対防衛圏ではあるが、状況が許せば連合艦隊を以て更に地球より遠い地点で敵艦隊の迎撃を行う可能性があり、本来はそのほうが望ましい。その状況で連合艦隊司令部がタイタンから動けなければ、地球ほど遠くないとはいえ広大な太陽系外縁において即応性を欠く場合が考えられる

 ゆえに、タイタンの基地は「鎮守府として連合艦隊の集結場所、あるいは作戦会議室として用いる」ことしかできない。これを艦隊側、特に土方長官が強く主張したため、この「連合艦隊司令部問題」を議論していた会議は一つの結論に達した。

 「連合艦隊総旗艦となる得る能力を持った『旗艦用大型戦艦』を、1隻でよいから建造する」ということである。


政治に求められた建造計画

 300隻単位の艦隊を指揮する旗艦には何が必要か。それは戦場全体を把握し、かつ所属部隊や国籍が異なる艦や部隊を一括して統御できる指揮能力と、遠方の味方艦にも適切な指示を与えることができる強力な通信設備だった。そしてそのためには、そうした高度な情報処理が行える大規模な管制コンピュータの搭載が絶対に必要な条件だった。
 連合艦隊旗艦用の大型戦艦を設計せよ、と命じられた艦政本部は、まずその管制コンピュータがどれだけの規模になるか、担当する技術本部と何度もやり取りを繰り返した。そして必要とされる容量を持つコンピュータを搭載した状態で、かつ前線で全軍の旗艦として簡単にその能力を失わないだけの重厚な防御力と必要最低限の武装(艦隊側はこの大型戦艦に関し「防御力は最大限必要だが、武装は戦艦として戦列を担うに足る兵器を搭載すれば十分」と提案していた)を施した艦の規模を試算したところ、結果は「全長360m以上、重量12万トン程度」というものになった。
 この当時、地球最大の戦艦であったヤマトを超え、量産されていたA型戦艦を100m近く上回る大型艦という試算に、参謀本部も艦隊側も驚きを隠せなかった。しかし、どう考えてもこの大型戦艦は「建造する必要がある戦艦」であったからどうしようもなく、防衛軍首脳部は地球連邦政府に対して当時の担当者に言わせると「恐る恐る」この戦艦案を提示し予算請求を行った。

 だが、予想に反してこの予算請求は地球連邦議会をすぐ通過し、それどころか秘密裡にであったが「多少の予算オーバーは許容するので、ヤマトを上回る最大最強の戦艦を建造してほしい」と政府側から打診されたのである。

 これには、盟友関係にあったガミラスとの政治的な力関係が理由であった。いくらヤマトというガミラス軍を寄せ付けなかった強力な戦艦を有しているとはいえ、当時の地球防衛軍の戦力ではガトランティス帝国に対する共同作戦でもガミラスの力に依存することが多々あり、地球連邦政府はそれを苦々しく思っていた。このような状況が長く続けば、いずれガミラスに外交の主導権を奪われかねないからだ。
 ゆえに、彼らは「ガミラス軍が手に負えなかったヤマトをも上回る超大型戦艦を建造し、地球連邦政府の象徴としたい」という思惑を持っていた。そこに来て防衛軍から「旗艦用大型戦艦を建造するための予算請求」が来たのだから、この申し出は文字通り渡りに船であったのだ。

 この政府からの返答を受け、防衛軍首脳部は艦政本部に「現状、使用可能な最新鋭の兵器と技術を結集し、防衛軍最大最強の戦艦を建造せよ」と下命した。一方、この状況に艦隊側は「旗艦用大型戦艦は必要だが、そこまで特別な装備を施した戦艦を建造する必要は認められず、単に予算の無駄遣いである」と反対意見を述べているが、防衛軍首脳部の大半と艦政本部にすれば、自分たちで好きなように大戦艦を建造できる話を蹴とばすつもりは毛頭なかったため、艦隊側の意見は全く無視された。
 そして、艦政本部は改めて、自分たちの培ってきたあらゆる技術と兵器を用いて建造する旗艦用大型戦艦の設計を開始したのである。


困難を極めた設計

 「連合艦隊総旗艦」であると同時に「地球防衛軍最大、最強の戦艦」であることを求められた旗艦用大型戦艦だが、その設計は非常に難航することになった。ヤマトやA型戦艦という過去の建造例があるとはいえ、これら過去の戦艦から飛躍的に性能を向上させた艦を設計するのは、当時の地球の技術力では困難を極めたからである。
 船体構造については、概ねはヤマトとA型戦艦のそれをほぼ踏襲しているが、参考としてガミラス軍の超大型戦艦である「ゼルグード級一等航宙戦闘艦」の防御構造も取り入れているとされる。ただし、ゼルグード級から主に参考としたのは艦内の防御構造や隔壁の配置であったとされ、両者の外見から共通性を窺い知るのは難しい。
 ただ、実戦で示した堅牢さから「確かにゼルグード級を参考にしたのは間違いない」というのが現状の評価であり、後述する大出力波動機関の恩恵もあり、その波動防壁も極めて強力なものとなっている。

 兵装については、波動砲は後に譲るため主砲から話を始めるが、当時はヤマトの48cm砲、A型戦艦の41cm砲を上回る大口径砲が制式兵器として存在しなかった。そのため、艦隊側はそのどちらかを搭載すればよいと主張したが、政府から「既存戦艦を上回る大口径砲を搭載せよ」と横やりが入り、この前提で砲の選定が行われることになった。
 艦政本部が選んだのは、ヤマトの大改装時に主砲強化案として一度考慮され、砲塔の機構の問題から「換装は不可」と判定され棚上げされていた「試製一式51cm陽電子衝撃砲」だった。しかし、陽電子衝撃砲では砲塔内に陽電子集束器を搭載する必要があり砲塔がヤマトよりも大型化することが避けられなかったため、同砲の砲身にエネルギー集束器を巻き付け式に装備してこの問題を解決した。この砲は艦の起工直後に行われた試験の後に「二式51cm集束圧縮型衝撃波砲」として制式採用、本艦には三連装砲塔が4基搭載されることになった。なお、2208年現在に至るまで、この砲は地球防衛軍の艦艇が搭載した最大口径の砲である。

 その他の兵装も新型兵器が多数装備され、新たに採用された速射魚雷発射管、A型戦艦に続いて搭載された対艦グレネード投射機、亜空間魚雷発射管、多連装ミサイル発射管が装備されている。他にも従来の短魚雷発射管と垂直軸(下方)ミサイル発射管も装備されており、ヤマトに迫る充実した雷装が施された戦艦となっている。一方で対空兵装はこの時期の防衛軍の艦艇らしくやや少な目で、速射能力を高めた新型対空パルスレーザー砲を40mm三連装と25mm三連装砲塔をそれぞれ2基ずつのほか、艦各部に埋め込み式25mmパルスレーザーを装備したのみだった。

 主機関の選定にも問題があった。当初はA型戦艦の1番艦「ドレッドノート(初代 後の「プロメテウス」)」が搭載した新型機関を実用レベルにまで改良して搭載することになっていたが、当時の地球が有するこの最強の機関を以てしても、船体が大型化することによって出力不足が明らかとなったからである。
 これは推進力の問題もさることながら、主砲へのエネルギー伝達量の不足、更に連合艦隊旗艦として最も重要な管制コンピュータを稼働させるエネルギーが足りないという大問題を内包していたから、艦政本部は当初はA型戦艦の機関を双発にして搭載することを考慮したが、これでは船体の幅が大きくなりすぎるため廃案となっている。
 結局、この問題は主機には新型機関を採用し、同時にA2型巡洋艦が装備していた機関を「主補機」(設計案の原文ママ)として搭載、波動炉心を3基装備する波動機関を新製することで決着を見た。このため機関の構成が複雑となりメンテナンスに必要な人員が増加するという別の問題が生じたため、この部分はAIを用いた自動化によって乗員の過剰な増加と負担を防ぐ対策が取られている(なお、やろうと思えば乗員によるフルメンテナンスも不可能ではなかったとされる)。
 補機については、A2型戦艦以降が搭載したケルビンインパルス機関をそのまま搭載したが、本艦は大型化と同時に波動機関停止時に備え、A型戦艦の倍となる4基を搭載。また、A型戦艦のそれより大型の懸吊式補助機関も2基装備された。

 そして、この主機関の波動炉心が3基となることには思わぬ副産物を伴った。それは、後方に大型炉心1基、その前方に中型炉心2基を搭載することになったため、装備予定の拡散波動砲を連装化することが可能になったのである。そのためA型戦艦では砲身内部に搭載されていた板状のスプリッター(エネルギー噴流分割整流板)が不要となり、より高い効率、かつ大出力波動機関による大エネルギー量によって、地球最強の戦艦に相応しい極めて強力な拡散波動砲を搭載することが可能となった。なお、A型戦艦とは同じ拡散波動砲でもやや異なるシステムであったため、兵器としての制式名称は「一式タキオン波動連装拡散砲」となっている。

 また、本艦の最大の目的である連合艦隊を統制するための管制コンピュータは、後に「タイタン基地の連合艦隊司令部にほぼ劣るところがない」と評されるほど強力なものが搭載された。このため連合艦隊総旗艦としては何ら問題なく使用でき、その優れた統制能力はガトランティス戦役の土星会戦において大いに発揮されている。

 だが、こうした兵装と機関の強化。そして旗艦としての能力を最大限高めた結果、船体は艦政本部の当初の試算より更に大型化し、結局、以下の要目で設計案が纏められた。


全長     389m
全幅     91.8m
船体重量   14,6000トン
乗員     200名(戦時最大定数。他に司令部要員25名)
主機     大型タキオン式次元波動機関 1基 中型タキオン式次元波動機関 2基
補機     大型ケルビンインパルス機関 4基
       懸吊式補助機関 2基
       ケルビンインパルス式加速ブースター 4基
波動砲    一式タキオン波動連装拡散砲 1基2門
主砲     二式51cm三連装集束圧縮型衝撃波砲 4基12門
対空兵装   一式40mm三連装パルスレーザー砲 2基6門(艦橋構造物両舷)
       一式25mm連装パルスレーザー砲 2基4門(艦橋両側面)
       埋め込み式25mm単装パルスレーザー砲(艦各部)
ミサイル兵装 零式四連装対艦グレネード投射機 2基8門(艦中央よりやや前方)
       二式速射魚雷発射管 単装4基4門(艦首両舷)
               同 単装8基8門(艦尾両舷)
       一式亜空間魚雷発射管 連装4基8門(船体両舷)
       一式多連装ミサイル発射管 16門(船体両舷)
       九八式二型短魚雷発射管 16門(船体両舷)
       九九式二型垂直軸ミサイル発射管 単装10基10門(艦底部)
搭載機    一式一一型空間艦上戦闘機「コスモタイガーⅡ」15機
       (このうち3機は偵察機仕様の複座型)
       九八式汎用輸送機「コスモシーガル」3機
       救命艇3機、その他救命ボートなど


 いかに予算に糸目をつけなかったとはいえ、ヤマトを上回る全長、A型戦艦の2.5倍という船体重量はさすがに関係者の大半を驚かせたが、当時の地球連邦政府としては「大型戦艦であればあるほどよい」という考え方だったから、この案は防衛軍首脳部から連邦議会に通されて問題なく予算が可決され、地球防衛軍の極東管区にて建造が決定された。


艦名の由来

 当初、この艦は「旗艦用大型戦艦A」いう仮称艦名がつけられたが、主力戦艦であるA型戦艦と紛らわしいこと。また、その存在自体が国内や同盟国ガミラスへの宣伝効果を期待されていたこともあり、波動砲に関しては秘匿されたが「地球防衛軍が大型戦艦を建造している」と喧伝するため、比較的早期に艦名が決定、公表されることとなった(なお、この処置に艦隊側は反発しているが、やはり無視されている)。

 最終的にはご存知の通り「アンドロメダ」(艦籍番号はFBB-01 Flagship=旗艦と戦艦のBBを合わせたもの)という艦名に決まったわけだが、これには「銀河系より最も遠い銀河の名称を使用したい」という意見があったこと、そして仮称艦名に「A」の文字が使われていたことから単に有名なアンドロメダ銀河の名が選ばれたという二つの説があるが、どちらか、あるいは両方であるかは筆者の調査では判然としなかったため、今後の調査に期待したいところである。
 いずれにせよ「アンドロメダ」という艦名は遠く宇宙に想いを馳せるにはちょうどよい名前であったからか、完成後の市民からは好意的に迎えられ、艦隊側は「やや誇大妄想的とも言える」という声もあったが大きなものではなく、自然とこの艦名を受け入れたと伝えられている。


官民の期待と軍からの酷評

 「アンドロメダ」の建造は先述の通り極東地区が担当したが、これは同地区がヤマトを建造したことで、A型戦艦を上回る大型戦艦の建造経験があったことが理由とされている。実際、これほどの大型艦でありながら工事は順調に進み、起工からおよそ1年8か月にあたる2202年9月には工事を終え、公試終了後の翌月に艦隊へと編入された。
 艦隊編入の直前、首都で行われた完成式典において、地球連邦大統領はこう述べている。

 「宇宙の平和。それをもたらし、それを守る力となるのは、我が地球とガミラスの同盟であります。その重責を担うシンボルとして、私は最新鋭戦艦『アンドロメダ』の完成をご報告するものであります」

 連合艦隊総旗艦を担う重責ある艦とはいえ、わざわざ大統領の演説まで行われたあたり、この「アンドロメダ」に対する官民の期待は、実際に同艦を運用する軍のそれを遥かに上回るほどであったと言えるだろう。

 だが、実は完成前の「アンドロメダ」に対する防衛軍、特に艦隊側からの事前の評価は決して高いものではなかった。連合艦隊司令長官たる土方宙将は沈黙を守っていたが、単艦での戦闘能力がヤマトやA型戦艦に重量比で大きく優越していると判断されなかったことから、司令部の一部からは「政治の横やりで無駄に大きくなった木偶の坊」という批判の声が出ており、その他の艦隊所属の士官たちからも「これなら同額の予算でA型戦艦を数隻建造したほうがよかったのではないか」とする意見が多かった。
 しかし、こうした否定的な意見の多い船出となった新鋭戦艦「アンドロメダ」だったが、その後の運用において徐々に弱点を克服し、その力量を示していくことになる。そして多くの読者がご存知であろう華々しい戦歴とその壮烈な最期に関しては、次の機会に譲りたいと思う。

西暦2191年、外宇宙より飛来したガミラス帝国の艦船と、国連宇宙海軍の艦船が天王星沖にて初めて接触した。最初は友好的な関係を築けるものと期待されていたが、結果として交渉は決裂、両国は戦争状態に突入した。後に“ガミラス戦役”や“ガミラス戦争”などと呼ばれる戦争の開幕である。
当初、国連宇宙海軍上層部は太陽系内に侵入してきたガミラス軍など簡単に撃滅できると信じていた。敵の数は、多く見積もっても50隻。一方、我の兵力はすぐ戦線に投入可能な艦だけでも300隻(これは第二次内惑星戦争後、各地でゲリラ戦を行っている火星軍残党を討伐するため、一時的に多くの艦が現役とされていたのが大きい)6倍の戦力差というのは、通常の戦争では必勝を確信できるほど圧倒的な差である。
直ちに、国連宇宙海軍は討伐軍を派遣した。討伐軍の主戦力となるのは、当時の二大強国であった米国と中国である。彼らの艦隊だけで、討伐軍の6割を占めた。投入される艦艇は、火星軍残党の地球襲撃を警戒し月面基地及び地球各所に配備されていた艦艇群である。戦闘艦艇だけでも160隻、更に今回は史上初めての外惑星系への大規模遠征であった為、補給艦や病院船といった補助艦艇も存分に付けられた。かくして、総数200隻を超える大艦隊が、天王星へ向けてはるばる遠征を開始したのであった。
しかし、旅路は順調であるとは言い難かった。地球圏出発後も解決されていなかった問題として「誰がこの遠征軍の指揮を執るのか?」というものがあった。というのも総司令官として、北米方面軍のジョージ・パストーレ中将と、極東方面軍のハン・チューリン中将が共に立候補したからである。更に問題だったのが、遠征軍に所属する米中艦艇の数がほぼ同数だったことであった。指揮下の艦艇数が多い方が全軍をも指揮するというわけにはいかなかったのである。そして、両者の指揮能力はほぼ同等と言われていた。
結局、遠征軍は能力や政治的公平性を鑑みて、総司令官を極東方面軍のジューゾウ・オキタ宙将、副司令官をパストーレ中将及びハン中将に定めたが、両者の確執は完全になくなったわけではなく、むしろより深くなってさえいた。
この戦いは、地球側の完全敗北としてよく知られている。だが、その一言を聞いただけでこの戦いの全てを知った気になるのはあまりにも傲慢である。このような無様な戦いでも、自らの誇りを忘れずに敵に立ち向かった勇敢な艦がいるのだ。そして、我らが偉大なるウォースパイト号もその内の一艦だった。

西暦2210年10月24日 J・L

西暦2191年 国連宇宙海軍 欧州方面軍所属 ジャック・オブライエン少尉(当時)

初めに
オブライエン氏は二年前のディンギル戦役において、乗艦である戦艦ロイヤル・オークと運命を共にされています。しかし、生前にオブライエン氏が遺していた音声データがこの度提供されました。この場において、このような貴重な証言を残してくださっていたオブライエン氏と、それを提供して下さったオブライエン氏の奥様であるエリザベス氏に、改めて感謝の意を述べたいと思います。

私はジャック・オブライエン、現在の階級は大尉だ。これから、私が経験したとある戦いについて話していきたいと思う。何故急にこんなことを始めたかって?年を取ってからというもの、自分がいつ死ぬか分かったもんじゃないのでね。こうして記録を残そうと思ったわけさ。これを見ている私以外の人間に言っとくが、このデータは私が死んでから公開するものだからな。決して、私が生きているうちに公開するんじゃないぞ。さて、では話を始めよう。
今回私が話すのは、私にとっての初めての戦いである天王星沖海戦についてだ。あの戦いは文字通り悲惨だった。だってそうだろ。人類史上、敵の三倍以上の戦力を投入して完敗した戦いがあるか?しかも相手には一隻も沈没艦が出ていないんだ。だがそんな戦いでも、私の乗艦であったウォースパイトは実に勇敢だった。乗っていたのが彼女でなかったら、私は今頃この世にはいなかっただろう。
さて、あの戦いで敗因と呼ばれているものはいくつかある。過度な慢心?司令部と前線指揮官の対立?不適切な艦隊運用?どれも私に言わせれば違うな。私が「天王星沖海戦での敗因は何だ?」と聞かれたらこう答えるね。“技術力の差”と。
今の地球防衛軍しか知らない奴には信じられないかもしれないが、当時は敵を傷つけることすら困難だったんだ。私は何度も見て来たよ。こっちの主砲が全弾命中して喜んでいたら、向こうは無傷でそれどころか反撃の砲火を放って来てるって場面をね。そんな光景を何度見ても生き残ってるのは、やっぱり運ってやつなんだろうな。まあ、その運も流石に底をついていそうだが。正直、ガミラスさんとの戦いでは一生分の運を使い果たした気がするね。
あの戦いに、我がロイヤル・スペース・ネイビーは保有するほぼ全ての戦力を投入していた。おそらく、政府のお偉いさん方はこの機に英国の実力を世界に見せつけようとしていたのだろう。今思えば実に馬鹿な話だった。そして偶然にも、我が軍は二ヶ月後に控えていた新国王即位式に乗じて行う予定だった観艦式の為、ちょうどモスポール保管されていた艦艇を引っ張り出していたところだった。だから、6隻のウォースパイト級と6隻のヨーク級を主力とするも、当然全艦が出撃可能だった。
圧巻だったよ。第二次内惑星戦争で活躍したウォースパイト、マレーヤ、バーラム、ヴァリアント、戦後に追加建造されたレナウン、レパルス。計6隻ものウォースパイト級が共に航行してる姿なんて、二度と見れないと思ったね。まあ、本来これは観艦式で見れるものだったのだろうけど。そうして、総数200隻に達する大艦隊は、野蛮な宇宙人を撃滅するために意気揚々と出撃していったってわけさ。考えが甘かったよ。外宇宙から飛来した宇宙人が、未だ太陽系すら制覇できていない人類よりも技術力が低いと思っていたなんてね。
この戦いは、まず序盤から躓いていった。最後まで宇宙人との開戦に反対していた、遠征軍指揮官のジューゾウ・オキタ提督が解任されたんだ。司令部が戦闘行動中(実際、領宙警備行動は発令されていた訳だし、こう言っても良いだろう)に前線指揮官を解任するなんて前代未聞だったよ。そして、これが原因で今まで鳴りを潜めていた米中軍のわだかまりが一気に沸騰したんだ。彼らは互いに相手の指揮下に入ることを承諾しなかった。これを抑え統率していたオキタ提督は、本当に素晴らしい人物だったと思うよ。で、米中両軍は、先遣艦のムラサメが敵の攻撃によって撃沈されたと知った瞬間、我先にと突撃していったよ。まだオキタ提督の後任の司令官も決まっていないのに。彼らは、物量の神話を未だ信じていたのだろう。多少強引な戦い方でも、物量で押しつぶせば勝てるってね。
でも実際はそうじゃなかった。敵?ガミラス帝国軍は、突撃して来た奴らから正確に旗艦だけを見抜いたんだ。そして奴らは、たった一航過で30隻以上の艦艇を血祭りに上げたよ。その中には、米宇宙海軍旗艦のニューヨークと、中国宇宙海軍旗艦のペキンも含まれていた。当然、遠征軍は大混乱に陥った。いくら第二次内惑星戦争を生き延びた精鋭が集まっているとはいえ、総司令官が解任された直後に副指令が戦死するなんて出来事に対処することはできなかった。結局、我々は戦力を分断され、奴らに各個撃破されていった。戦隊レベルで統制を回復していた部隊もあったようだが、その程度では圧倒的な力を誇る奴らには勝てなかった。そして、混乱する遠征軍をまとめ上げるべく新たな指揮官が任命された。それが、我らがウォースパイトに乗艦されていたロドニー・カニンガム中将だったというわけさ。とは言っても、混乱している部隊をまとめるのはとても困難だった。
まずカニンガム提督は、個人的な親交もあった極東方面軍第二空間護衛隊群司令官のオキタ提督(彼は全軍の指揮権こそ剥奪されたものの、自らが直接指揮している護衛隊群の指揮権は未だ有していた。)と共同し、二人が指揮していた王立宇宙海軍、航宙自衛隊、及び比較的損害が少なかった南亜方面軍、南米方面軍を中心に部隊を再編した。とは言っても、戦闘中にやっていることだからまともな再編成なんてできやしなかった。ただ、これは戦力を集中させるという意味合いが強かったから、その点では成功していた。
完全ではなかったが、生き残っていた艦艇のほとんどが集結したのを確認したカニンガム提督は、全艦に撤退命令を発令した。「ここで戦っても犬死にするだけだ。ならば今日の屈辱には耐え、明日勝利の芽を掴み取ろう。」そうカニンガム提督が言っていた。当然、多くの戦友が殺されているのにも関わらず、何の成果も得られないまま撤退することに関しては批判の声もあったよ。特に戦闘序盤で損害が大きかった米中軍に多かったかな?でも、そんな奴らに構っている暇はなかった。そうこうしているうちにも、味方の数はどんどん減り続けていたからだ。結局、カニンガム提督は撤退を頑なに拒む連中を放置し、そのまま撤退を開始したんだ。これに関しては、私は正しい選択だったと思う。というより、あの状況ではこれ以外の選択を取りようがなかったんだ。こうして、悲惨な撤退戦が始まった。因みに、この時点で半数以上の艦が宇宙の藻屑と化していた。
さて、ここに一枚のメモリーカードがある。これには一体、何が入ってると思う?実はこれにはな、天王星沖でのあの悲惨な撤退戦の通信記録が入ってるんだ。今からこれを流そうかと思う。こいつはまだ誰にも聞かせちゃいない。暇な時間を見つけては、ずっとこいつの解析ばっかりやっていた。その努力が実ったのか、ようやくテープの一部分が再生できるようになった。何でこんなものを持っているかって?私は通信兵でね。あの戦いではウォースパイトに通信士として乗り組んでいた。怒号、罵声、悲鳴、断末魔、色々聞いたよ。それを聞いていて、私は彼らの声を後世に伝えてやりたいと思ったんだ。こんな価値の低いデータなんて、帰還したら真っ先に削除されるに決まってる。そう思って、私は通信機からメモリーカードを抜き出そうとしたその時だった。ウォースパイトの艦橋付近をかすめた陽電子砲弾が、弾の表面から艦橋内部に向けてプラズマ流を放ってきた。それが直撃して、私の前に鎮座していた通信機は火花と破片を噴き出した。私はそれをもろに浴びてしまった。私の体には、今も多数の傷や火傷の痕が残っている。幸運にも顔だけはヘルメットをかぶっていたので無事だったがね。
もちろん、そのような大怪我を負えば後方へ移送されることは確実だった。そのことを十分理解していた私は、被弾のどさくさに紛れて黒焦げになった通信機からメモリーカードを回収したのさ。当然だが、外がまる焼けになっているのに中身は無事・・・なんてことにはなってなかった。中身もきちんと焼き上がっていたさ。でも、私はあきらめなかった。ここであきらめてしまうのは、あの戦いで死んでいった者達に申し訳が立たなかったから。あの怪我のおかげで、私は今まで生き残ってしまった。本当なら、私は火星沖で死ぬはずだったのに。ただ一人、私だけが生き残ってしまった。ふん、何だかこう言っていると、まるで私が死に場所を求めているようだな。安心しろ。私はまだ死ぬつもりはない。
前置きが長くなってしまったな。では再生するとしよう。死者達の遺言を。
【------ちら、北米方面空間戦------暫定旗艦、USSアーカンソー。現在敵艦隊と交戦中。我が方の被------大。救援を、救援を------------ガッデム!どう見ても全部当たってただろ!お前ら卑怯だ-----------にたくない、俺はまだ死にたくないんだよぉぉぉぉ!畜生めぇぇぇぇっ------------らはHMSバーラム。本艦は機関に重大な損傷を負い、地球への帰還が不可能となった。よって我々はこの宙域にとどまり、最後まで友軍の撤退を援護する。どうか地球で待っている人達にこう伝えてほしい。戦艦バーラムは最後まで勇敢に戦ったと・・・地球連邦万歳!英国万歳!神よ国王陛下を守り給え!------------ん、ばあちゃん。ごめん。俺今からそっちに行くわ------------そっ、------の救助は完了------------はい、見える限りは全員収------した!よしっ!機関始------大船速!早急に現宙域を離脱す------------えっ、広東が沈んだ・・・山東に天津も・・・残っているのは俺達だけか・・・------------ううっ・・・クレア・・・愛し・・・て・・・るぞ------------うおぉぉぉぉっ!生き延びてやる!絶対に、俺は生き延びてやるぞぉぉぉぉ------------こちら、JMS雪風。生存者はいませんか?誰か生きている人はいませんか?応答してください!誰か、誰か!------------】

天王星沖海戦、あの戦いでは実に多くの兵士が命を落としていった。だが、もはや彼らのことを覚えている人間はほんの一握りだ。そう、私のような者くらいだ。だからせめて、彼らのことを記憶の片隅にとどめていて欲しい。忘れても構わん。忘れたらまたこれを聞いて思い出してくれれば良い。どうか彼らの戦いを覚えていて欲しい。彼らの戦いを語り継ぐこと、それがこの私の最期の使命なのだ。
さて、では私はもう行かなければならない。何でも新造された戦艦に配属される新兵の教官をやって欲しいそうだ。この老兵に与えられた最後の仕事だ。今まで死んでいった者達の分まで、しっかりと働いてくるさ。ではまた、今後この音声がより多くの人の耳に届かんことを願う。

オブライエン氏の音声はここで終了していますが、最後に彼の最期について少しだけ述べたいと思います。
オブライエン氏はその後、再編された第一艦隊の戦艦ロイヤル・オークに配備され、新兵の教育を行っていました。ロイヤル・オークはデザリアム戦役の戦訓から有人化が推し進められており、何よりも乗組員の練度を高める必要があったからです。
そして、ディンギル帝国の艦隊が太陽系に電撃的に侵攻してきました。当時、主力艦隊は銀河中心部で発生した“異変”を調査すべく外宇宙へと赴いており、太陽系内で即応可能な戦力は再編中の第一艦隊だけでした。直ちに第一艦隊は、土星宙域に進軍中のディンギル帝国軍を迎撃すべく出撃して行きました。まだ乗組員の訓練が終了していなかったのに。その後第一艦隊は土星沖にて接敵、自艦隊の練度不足を懸念していた司令官は通常砲戦を断念、艦隊各艦に装備されていた拡大波動砲による先制攻撃で一気に殲滅しようと試みたのです。拡大波動砲の充填時間は波動砲チャージャーを接続すれば約6秒。絶対に回避できない攻撃のはずでした。
しかし、不幸にも拡大波動砲の発射するタイミングと、敵艦がワープするタイミングが一致してしまっていました。そして拡大波動砲発射直後で身動きの取れない第一艦隊に、計500隻以上の宙雷艇が襲い掛かったのです。正に“飽和攻撃”でした。しかし第一艦隊にはこれを防ぐことはできませんでした。第一艦隊には人員不足が原因で防空駆逐艦が定数の六割程度しか配備されておらず、更にその半数が月面基地で整備中だったからです。また肝心の防空戦闘でも、練度不足が原因で効果的な迎撃戦が行えませんでした。結局、第一艦隊は七割以上の艦艇を撃破され壊滅しました。
オブライエン氏の乗艦である戦艦ロイヤル・オークの最期は、随伴艦である巡洋艦バーミンガムが記録しています。最後に、バーミンガムの戦闘録を掲載して本稿を終わりにしたいと思います。

ロイヤル・オークに命中したハイパー放射ミサイルは三発であった。一発目は左舷中央部に命中した。しかし、これは中央部のバルジ状の部分が爆発を吸収したのか艦体にはそれほど損傷は見られなかった。続いて二発目が左舷対空砲群を直撃。この攻撃によって左舷対空砲群は全滅した模様である。更に三発目が艦橋中央部に着弾。この被弾でロイヤル・オークは戦闘能力を完全に消失した。この時点で艦内では、生き残った最上級士官が総員退艦を発令していた模様である。この光景を見て我々も乗組員救助の為に急行した。しかし我々は、ほとんどの人間を助けることが出来なかった。ロイヤル・オーク乗組員で救助出来たのはウィリアム・ライナー少尉以下46名であった。 

バーミンガム戦闘禄より一部抜粋

リンク集およびリンクページ紹介の記事に「コスモ・ウイングス」様 http://cwings.web.fc2.com/ を追加しました。詳細はリンクページ紹介の記事にてご確認お願いします。

第二次土星沖会戦の悲劇

 2207年に生じた銀河系中心部の大災害、当初地球防衛軍はヤマトを派遣しその調査にあたらせたのだが、そのヤマトが謎の敵対勢力(それがディンギル帝国とわかったのは第二次冥王星会戦の直前である)の攻撃を受け大破、自動航行で地球に帰還してきた。
 加えて、水惑星アクエリアスが謎のワープを開始し、僅か15日にして地球に迫るという非常事態が発生、これを受けた連邦政府は地球人類を一時的に宇宙コロニーや他の惑星、およびその衛星の基地に避難させる措置をとることにした。水惑星の水害による被害は恐らく尋常ではないだろうが、この時点では「水が引けばまた復興すればよい」という楽観的な見方が強かったのは否めない。

 しかも、ヤマトを攻撃した敵対勢力については「注意が必要」という認識はされたものの、艦隊は当面地球近辺に主力を配備し、避難の第一陣として土星タイタン基地および周辺の宇宙コロニーに出発した船団に護衛艦をつけなかったことは、地球防衛軍にとって取り返しのつかない失態になった。

 そして、その「ヤマトを攻撃した謎の敵対勢力」が太陽系に攻撃を仕掛けてくるということなど全く想定外で、外惑星の各基地には戦力にならない程度の艦艇しか残存していなかったため、たちまち11番惑星基地と冥王星基地が謎の大艦隊(以降はディンギル軍と記す)によって制圧されてしまった。この事態は、連邦政府や防衛会議、地球防衛軍の参謀本部にとってまるで考えの及ばない状況であった。
 上層部に話を通す暇はない、と判断した藤堂平九郎防衛軍統括司令長官の独断により、土星に向かっていた避難船団を掩護すべく、直ちに地球防衛軍の主力艦隊が発進した。このとき完成していたB型戦艦15隻のうち、テスト航海中に爆雷波動砲を最大出力で発射したカイパーベルトD宙域会戦以来、機関の不調に悩まされていた「マサチューセッツ」以外の14隻全艦がこの主力艦隊の中核戦力として出撃している。

 しかし、この「第二次土星沖会戦」と呼ばれる戦いは無残なものだった。避難船団は救援が間に合わずに全滅、そして避難船団を防衛すべしと急いでいた防衛艦隊は隊列が乱れており、戦場にたどり着いた第一陣のB型戦艦は、まずは敵艦隊の殲滅をと拡大波動砲の速射を行った。
 だが、その拡大波動砲の発射のタイミングに敵艦隊が戦術上の要件で(波動砲を回避するためのものではなかった、と後に判明した)ワープを行い、発射した拡大波動砲は回避されてしまう。しかも敵は強力なハイパー放射ミサイルを搭載した水雷艇部隊を既に発進させており、隊列を整えておらず満足な防空網を張ることができない状態でいた地球防衛艦隊に左側面から襲い掛かってきた。

 結局、側面を取られた状態からハイパー放射ミサイルによる飽和攻撃を受ける……奇しくも内惑星警備艦隊司令長官が鳴らした警鐘とほぼ同じ状況になった地球防衛軍の新鋭主力艦隊は、それでも防空駆逐艦であるC型駆逐艦の奮戦で相応の敵水雷艇とミサイルを撃墜はしたものの、その数に抗しきれず壊滅的な損害を出した。
 この会戦で失われたB型戦艦は12隻、生き残ったのは艦隊後方で損傷が中破に留まり、大勢が決した後に戦場を離脱した「スラヴァ」と、戦闘で大破して土星の衛星エンケラドゥスに不時着した「伊勢」のみだった。

 主力艦隊の壊滅、そしてアクエリアス接近まであと2週間。更に地球本土に行われた空襲で更なる艦艇と脱出用の輸送船の多くを破壊され宇宙への脱出も不可能、人類は絶体絶命の危機に追い込まれることとなった。


第二次冥王星会戦

 危機的状況に連邦政府と防衛軍はパニック状態に陥ったが、それでも藤堂長官を始めとする防衛軍の一部は諦めていなかった。殆ど戦時の状況を利用した独断の措置ばかりだったが、とにかく太陽系からのディンギル帝国軍の駆逐、水惑星アクエリアスのワープ阻止のため彼らは準備を始めた。

 まず、月基地および内惑星に温存されていた戦闘能力の低い艦、あるいは旧式艦をかき集めて護衛艦隊を編成。更にヤマトや「スラヴァ」「マサチューセッツ」といった修理が必要な艦に戦闘航海に支障がない程度の最低限の修理を施し、艦隊を編成して出撃させることが決定された。

 大まかだが、このとき準備された三つの艦隊の編成を挙げておく。

 第一遊撃部隊

 A3型戦艦「薩摩」(旗艦)
 A2型戦艦「カイオ・デュイリオ」
 改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」
 B型戦艦「マサチューセッツ」
     「スラヴァ」
 A2型巡洋艦4隻
 B型巡洋艦3隻
 C1型駆逐艦2隻
 A2型駆逐艦18隻

 第一陽動部隊

 A4型戦艦「ネルソン」
 改C1型駆逐艦10隻
 (防空は海王星基地戦闘機隊が担当)

 第二陽動部隊

 戦艦「ヤマト」
 B型巡洋艦「矢矧」
 改C1型駆逐艦8隻
 (防空は第64飛行隊(ヤマト搭載戦闘機隊)が担当)

 二つの陽動部隊の任務は、敵部隊、特に水雷戦隊を引き付け、敵艦隊の主要基地である機動要塞を破壊すべき第一遊撃部隊の突入を掩護することだった。そして波動砲発射が可能な戦艦を集中配備した第一遊撃部隊は、波動砲戦を以て敵艦隊および機動要塞の撃滅を行うことが期待されていた。
(なお、この第一遊撃部隊を率いていたのは、皮肉にも現状の軍備に警鐘を鳴らした内惑星警備艦隊司令長官であった)

 しかし、地球側にとって思わぬ事態が発生する。敵の残存する水雷艇部隊が事前の想定を上回っていたため、第一、第二陽動部隊に水雷戦隊を引き付けること自体は成功したものの、この両部隊のうち第一陽動部隊は文字通り全滅、第二陽動部隊もヤマトと駆逐艦1隻しか生き残ることができなかった上に、水雷戦隊の一部が第一遊撃部隊にも向かってきたのである。

 そのため、主力である第一遊撃部隊も過酷な戦闘を強いられることになった。向かってきた水雷艇の数は陽動部隊のそれに規模で劣ったが、大型艦の多さからたちまち主力部隊と察知され、敵艦隊の集中攻撃を受けることになったのだ。
 幸い、敵水雷艇にはガトランティス戦役以来の快速駆逐艦であるA2型駆逐艦によって対処できたが、それ以上の不幸は、時にワープを繰り返して通常航行時の速力の遅さを補う戦法を取るディンギル艦隊相手に早期の波動砲戦はほぼ不可能だったため(後にヤマトが波動砲戦を行って成功させたときは、小惑星帯での戦闘だったためディンギル軍はワープ戦法を有効利用できなかった)、敵に数で劣るにも関わらず通常の砲雷撃戦で対処するしかなかったことだった。

 このため、第一遊撃部隊司令長官は戦艦部隊の砲撃戦とA2型駆逐艦による機動戦を用いて何とか敵艦隊を一か所に集めさせ、強引に波動砲戦に持ち込みこれを壊滅させることに成功したが、犠牲はあまりに大きかった。第一遊撃部隊も旗艦「薩摩」と「ドレッドノート(Ⅱ)」、B型戦艦では「マサチューセッツ」が生き残ったものの、先の戦いで損傷していた「スラヴァ」は損害拡大のため放棄、戦闘終了後に自沈させる措置を取らざるを得なかった。また、残存艦および護衛艦も大半が失われるか例外なく大破しているという状況であり、今後の作戦行動が不可能となっていた。

 そして、最後に敵機動要塞および都市衛星ウルクを撃破し、更に自らを犠牲にして地球を救ったのはヤマトだった。そして戦役後、ヤマトに対してやむを得なかったとはいえ何も掩護ができなかったこと、自らの指揮で多くの将兵を死なせた悔恨も込めて、第一遊撃部隊司令長官は上層部に再び意見を具申した。

 「波動砲に依存しなければならない艦隊は実効戦力として意味がなく、今後一切必要ない。その上で、もし戦艦を建造するという選択肢があるならば、それは例え少数でも必ずヤマトに匹敵、あるいはそれ以上の攻防性能と機動力を、波動砲を問題とせずに持たせなければならない」

 今度のこの意見を、無視できる防衛軍首脳部の人間は存在しなかった。


B型戦艦の現状とその未来

 ディンギル戦役終結後、B型戦艦は生き残った「マサチューセッツ」と、エンケラドゥスから浮揚、復旧された「伊勢」。そしてディンギル軍の空襲を免れて完工した「ロドネー」「日向」(「アイオワ」はディンギル軍の空襲で受けた損傷が大きく、建造が中止された)の4隻で第一戦艦戦隊を編成した。

 そして年も改まり、これまで「地球の守護神」として親しまれてきたヤマトを失い、連邦政府と地球防衛軍は市民から激しい非難を浴びた。そしてディンギル戦役における惨敗を招いた原因となる軍備を推進し、その結果として「地球防衛軍の象徴」たるヤマトを自沈に追い込んだ参謀本部は、艦隊に所属する将兵から激しい憎悪を向けられていた。
 そうした対立の結果、とうとう先日発生した「政略派(波動砲艦隊推進派)」と通称される勢力のクーデター事件を招くことになった。そして、このクーデターが失敗に終わったことで、波動砲艦隊を推進していた派閥の関係者は防衛軍から一掃され、新たに防衛軍統括司令長官に就任した山南修宙将の元、地球防衛軍は新たな軍備を行うことに決定した。

 それは、極力小型化した波動魚雷を搭載する運動性に優れた新型駆逐艦と、波動ミサイルを搭載した新型コスモタイガーⅡ(五三型と称される)を配備した航空隊を決戦兵力とする新たな編成で、その中でB型戦艦は「戦況が許せば波動砲を使用するが、主任務はその火力と防御力によって艦隊戦列の中核を維持すること」という、A型戦艦の初期案に戻った構想で運用されることになった。
 もちろん、現状B型戦艦は新鋭艦であり、駆逐艦や航空機の数が揃うまでは貴重な防衛戦力と認識されているため、ディンギル戦役の戦訓を取り入れて、また自軍に配備された波動弾頭を有する実弾兵器に対する防御方策も考慮され、限定的ながら改装工事が行われている。

 前期型というべき「マサチューセッツ」「伊勢」は修理時に、後期型とも呼べる「ロドネー」「日向」は建造工事中に以下の改装が加えられた(なお便宜上、本文では前期型と後期型に分けたが、A型戦艦と異なり防衛軍はB型戦艦を前期型と後期型に区分してはいないので注意されたい)。

 ・舷側装甲を二重化し、間に緩衝材を充填(20世紀のイタリア戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト」級の装甲の構造に類似する)。これによりハイパー放射ミサイルおよび波動弾頭の爆発を装甲の外側で吸収する構造に変更
 ・艦内隔壁の強化
 ・艦尾上方のアンテナを艦尾下方に移設
 ・「マサチューセッツ」のみ、不調の機関を建造中止となった「アイオワ」用に準備されたものに換装

 この工事で防御力は限定的ながら向上したとされ、戦艦としては相応に有力と判定されることになった。だが、防衛軍の中にあって戦艦の存在感そのものが低下しており、また新鋭艦であるにも関わらず、ヤマトがこれまで担ってきた任務を完全に代替することができないB型戦艦に不満を持つ者は少なくなかった。そのためB型戦艦は「これ以上の追加建造は行わない」と決定され、以後はヤマトを始祖とする「汎用戦艦」の系譜を引き継ぐC型戦艦のみを少数建造し、A型、およびB型戦艦の系譜である「主力戦艦」は、建造そのものが当面ストップされることになった。

 今後すぐ、B型戦艦が地球防衛軍にとって「戦力とならない」と判断されることはないだろうし、その能力は例え行動可能な範囲が限られたとしても、敵に対する抑止力として十分に期待できる。しかし「曲がりなりにも新鋭艦である」ということが枷になってしまい、今後大改装が順次行われるA型戦艦の残存艦(こちらは旧式ゆえに「使いつぶしが効く」)のような積極的運用は難しいと思われるからか、あくまで噂だが「何隻かモスボールされる可能性がある」という極端な話まで聞こえてくる。それは極論としても、艦艇研究者としての筆者は戦争を望むところではないので、B型戦艦に地球防衛の戦力として期待しつつも、退役までその出番が来ないことを望む次第である。


おわりに

 B型戦艦は「強力な爆雷波動砲を搭載するためだけに」建造された艦であり、もしこれを諦めていればA型戦艦の拡大型として、あるいはヤマトの安価量産型としてバランスの取れた標準的な主力戦艦として世に出たかもしれない。
 とはいえ、B型戦艦は「砲塔型副砲がなく中距離での対空力に欠ける」という欠点はあったがそれ以外の完成度は十分に高く、そしてその問題に関しては本来、護衛艦である巡洋艦や駆逐艦が補うべきことであって、本艦の罪ではない。筆者としては、真に責任を負うべきは内惑星警備艦隊司令長官が指摘したように、B型戦艦にまるで合わせるように巡洋艦を大型化したり、運動性に欠ける駆逐艦を量産するなど、諸事情はあろうが十分な護衛兵力や機動戦を行える艦隊を用意しなかった当時の防衛軍参謀本部にあった、と断じるしかないところである。

 不幸なことだが、もし今後何かしらの戦禍が太陽系を脅かすとしたら、再びガトランティス戦役時代のバランスの取れた艦隊を志向し始めた現在の防衛軍なら、このB型戦艦の欠点を補った運用ができるかもしれない。しかし、繰り返すがそれはあくまで不幸とすべき出来事であるから、そうならないことを筆者は望む。だが、同時にそれはB型戦艦がその持ち得る能力を十全に発揮せずに役目を終えるということであり、上層部の思惑によって生み出された「軍備の歪さ」で未だ本当の活躍の場を得ていないB型戦艦は、文字通り「悲運の高性能戦艦である」としか、今の筆者には評する言葉が見当たらないのである。

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