地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

(筆者よりお断り:本創作においては、ヤマト2202で重要な設定である時間断層と重力子スプレッドを、諸般の事情から「ないものとして」扱っています。そのため旧作2に寄せつつ2202の設定を取り入れたものとなっていますので、ご了承ください。いずれ筆者がどのような前提で自分のヤマト世界を構築しているかはご説明しますので、しばらくの猶予を頂きたく思います)


地球防衛艦隊の拡張と連合艦隊司令部問題

 2201年。地球の復興は順調に進み、同時に地球防衛艦隊も整備されその規模を拡大させていった。そして、A2型巡洋艦やA2型駆逐艦といった後のガトランティス戦役において主力となる艦艇の整備も進み、やや先送りにされていた主力戦艦となるA型戦艦も量産型であるA2型戦艦の建造が開始されたこの頃、防衛軍参謀本部と地球防衛艦隊司令長官である土方竜宙将を始めとした艦隊側の主だったスタッフとが、ある議論を交わしていた。
 それは、もし太陽系にガトランティスなど他星系の国家が侵略してきた場合、世界各国から集められた艦艇で編成される「連合艦隊」を、どこでどのように指揮するかという議論であった。

 防衛軍に所属する艦艇は、ガミラスとの共同作戦でガトランティス帝国との戦いに赴く艦隊以外は、通常は戦隊単位で各外周、内周艦隊に振り分けられるか、個艦あるいは小規模な艦隊、戦隊単位で各惑星ないし衛星基地に分散配置されて駐屯艦隊を編成するかのどちらかであった。この場合、ガトランティス戦に出撃する艦隊も含めて、それぞれの部隊の規模はさほど大きいものとはならないため、各艦隊の司令部はそれぞれの所属基地、あるいは一定の旗艦設備を有するA2型戦艦から麾下の艦艇を指揮すれば問題なかった。
 しかし、話が連合艦隊となるとそうはいかない。連合艦隊が編成されるとはすなわち、太陽系内に大規模な敵艦隊(この時点では、移動要塞などが襲来してくることは想定されていなかった)が侵入し、この時期は土星軌道に設定されていた絶対防衛圏において敵艦隊に決戦を挑むという状況が前提だったからである。それには太陽系内あるいはその周辺に点在する戦力すべてを結集することになっていたから、所属や国籍を問わず大量の艦艇(この議論の際、見積もられた連合艦隊の最大艦艇数はおよそ300~350隻程度とされている)を一括して指揮することが必要であった。

 もちろん、通常のA2型戦艦ではこのような大規模艦隊を指揮統率するのは不可能である(A2型戦艦に続いて建造されたA3型戦艦は旗艦設備が強化されたが、これでも無理と判定された)。そのため参謀本部はヤマトに大改装を施してこの任務に充当することを考慮したようだが、当時、ヤマトには同艦以外には不可能な別の任務をと土方長官が構想していたため彼が異議を唱え、また実際にヤマトを大改装しても300隻規模の艦隊を統率することは不可能と判断され、この案は破棄されている(ただし、大規模な旗艦設備の追加を除いたヤマトの改装は、土方長官ら艦隊側も賛成したため実施されている)。
 その後、改A2型戦艦(後の通称「パトロール戦艦」)の建造によってこの任を補うことも考えられたが、結局これでも連合艦隊旗艦には不足であると判明したため、最終的にこの議論において、参加者は三つの案を考え出した。

1 地球上の基地から指揮を行う
2 太陽系内の惑星ないし衛星、この場合は絶対防衛圏である土星の衛星タイタンに司令部施設を建設し、そこから指揮を行う
3 旗艦用大型戦艦(会議中にもそう呼ばれている)を新たに建造、最前線にあって全艦隊を統率する

 しかし、地球上の基地から指揮を行う場合、どうしても現場と司令部との意思疎通がうまくいかず、時に取り返しのつかない事態を招来しかねないという不安があった(当時、重要機密であったガミラスとのファースト・コンタクトの際の当時の国連と国連宇宙軍の失敗を、この会議のメンバーは当然把握していたはずである)。また、土星軌道に絶対防衛圏を設定しておきながら、そこから遠く離れた地球で全艦隊を指揮するというのは、どうしても艦隊乗員に「自分たちばかり安全な場所に居て」と不満を与えることは避けられないという艦隊側の意見もあり、この三案の中では比較的早期に否定されている。

 また第二案だが、これは土星の衛星タイタンに連合艦隊司令部となり得る設備を持った大規模な基地を建設することは決定されたものの、参謀本部と艦隊側の双方から「タイタンに配置した連合艦隊司令部」について以下の問題点が指摘された。

1 タイタンに基地を設けてそこから全艦隊を指揮する場合、基地が直接攻撃され万一司令部が全滅するなどの事態が生じれば、連合艦隊の指揮系統は瞬時に壊滅する。そしてガミラス戦役の戦訓を考慮すると、遊星爆弾や惑星間弾道弾に類似した戦略兵器によって基地が直接攻撃される可能性は決して低くない
2 仮に地下基地として敵の攻撃に耐え得る防御を施したとしても、遠距離通信用のアンテナなどの設備は地上に配置するしかない。これが破壊されれば、例え司令部が無事でもやはり指揮系統が麻痺することは避けられない
3 土星軌道は絶対防衛圏ではあるが、状況が許せば連合艦隊を以て更に地球より遠い地点で敵艦隊の迎撃を行う可能性があり、本来はそのほうが望ましい。その状況で連合艦隊司令部がタイタンから動けなければ、地球ほど遠くないとはいえ広大な太陽系外縁において即応性を欠く場合が考えられる

 ゆえに、タイタンの基地は「鎮守府として連合艦隊の集結場所、あるいは作戦会議室として用いる」ことしかできない。これを艦隊側、特に土方長官が強く主張したため、この「連合艦隊司令部問題」を議論していた会議は一つの結論に達した。

 「連合艦隊総旗艦となる得る能力を持った『旗艦用大型戦艦』を、1隻でよいから建造する」ということである。


政治に求められた建造計画

 300隻単位の艦隊を指揮する旗艦には何が必要か。それは戦場全体を把握し、かつ所属部隊や国籍が異なる艦や部隊を一括して統御できる指揮能力と、遠方の味方艦にも適切な指示を与えることができる強力な通信設備だった。そしてそのためには、そうした高度な情報処理が行える大規模な管制コンピュータの搭載が絶対に必要な条件だった。
 連合艦隊旗艦用の大型戦艦を設計せよ、と命じられた艦政本部は、まずその管制コンピュータがどれだけの規模になるか、担当する技術本部と何度もやり取りを繰り返した。そして必要とされる容量を持つコンピュータを搭載した状態で、かつ前線で全軍の旗艦として簡単にその能力を失わないだけの重厚な防御力と必要最低限の武装(艦隊側はこの大型戦艦に関し「防御力は最大限必要だが、武装は戦艦として戦列を担うに足る兵器を搭載すれば十分」と提案していた)を施した艦の規模を試算したところ、結果は「全長360m以上、重量12万トン程度」というものになった。
 この当時、地球最大の戦艦であったヤマトを超え、量産されていたA型戦艦を100m近く上回る大型艦という試算に、参謀本部も艦隊側も驚きを隠せなかった。しかし、どう考えてもこの大型戦艦は「建造する必要がある戦艦」であったからどうしようもなく、防衛軍首脳部は地球連邦政府に対して当時の担当者に言わせると「恐る恐る」この戦艦案を提示し予算請求を行った。

 だが、予想に反してこの予算請求は地球連邦議会をすぐ通過し、それどころか秘密裡にであったが「多少の予算オーバーは許容するので、ヤマトを上回る最大最強の戦艦を建造してほしい」と政府側から打診されたのである。

 これには、盟友関係にあったガミラスとの政治的な力関係が理由であった。いくらヤマトというガミラス軍を寄せ付けなかった強力な戦艦を有しているとはいえ、当時の地球防衛軍の戦力ではガトランティス帝国に対する共同作戦でもガミラスの力に依存することが多々あり、地球連邦政府はそれを苦々しく思っていた。このような状況が長く続けば、いずれガミラスに外交の主導権を奪われかねないからだ。
 ゆえに、彼らは「ガミラス軍が手に負えなかったヤマトをも上回る超大型戦艦を建造し、地球連邦政府の象徴としたい」という思惑を持っていた。そこに来て防衛軍から「旗艦用大型戦艦を建造するための予算請求」が来たのだから、この申し出は文字通り渡りに船であったのだ。

 この政府からの返答を受け、防衛軍首脳部は艦政本部に「現状、使用可能な最新鋭の兵器と技術を結集し、防衛軍最大最強の戦艦を建造せよ」と下命した。一方、この状況に艦隊側は「旗艦用大型戦艦は必要だが、そこまで特別な装備を施した戦艦を建造する必要は認められず、単に予算の無駄遣いである」と反対意見を述べているが、防衛軍首脳部の大半と艦政本部にすれば、自分たちで好きなように大戦艦を建造できる話を蹴とばすつもりは毛頭なかったため、艦隊側の意見は全く無視された。
 そして、艦政本部は改めて、自分たちの培ってきたあらゆる技術と兵器を用いて建造する旗艦用大型戦艦の設計を開始したのである。


困難を極めた設計

 「連合艦隊総旗艦」であると同時に「地球防衛軍最大、最強の戦艦」であることを求められた旗艦用大型戦艦だが、その設計は非常に難航することになった。ヤマトやA型戦艦という過去の建造例があるとはいえ、これら過去の戦艦から飛躍的に性能を向上させた艦を設計するのは、当時の地球の技術力では困難を極めたからである。
 船体構造については、概ねはヤマトとA型戦艦のそれをほぼ踏襲しているが、参考としてガミラス軍の超大型戦艦である「ゼルグード級一等航宙戦闘艦」の防御構造も取り入れているとされる。ただし、ゼルグード級から主に参考としたのは艦内の防御構造や隔壁の配置であったとされ、両者の外見から共通性を窺い知るのは難しい。
 ただ、実戦で示した堅牢さから「確かにゼルグード級を参考にしたのは間違いない」というのが現状の評価であり、後述する大出力波動機関の恩恵もあり、その波動防壁も極めて強力なものとなっている。

 兵装については、波動砲は後に譲るため主砲から話を始めるが、当時はヤマトの48cm砲、A型戦艦の41cm砲を上回る大口径砲が制式兵器として存在しなかった。そのため、艦隊側はそのどちらかを搭載すればよいと主張したが、政府から「既存戦艦を上回る大口径砲を搭載せよ」と横やりが入り、この前提で砲の選定が行われることになった。
 艦政本部が選んだのは、ヤマトの大改装時に主砲強化案として一度考慮され、砲塔の機構の問題から「換装は不可」と判定され棚上げされていた「試製一式51cm陽電子衝撃砲」だった。しかし、陽電子衝撃砲では砲塔内に陽電子集束器を搭載する必要があり砲塔がヤマトよりも大型化することが避けられなかったため、同砲の砲身にエネルギー集束器を巻き付け式に装備してこの問題を解決した。この砲は艦の起工直後に行われた試験の後に「二式51cm集束圧縮型衝撃波砲」として制式採用、本艦には三連装砲塔が4基搭載されることになった。なお、2208年現在に至るまで、この砲は地球防衛軍の艦艇が搭載した最大口径の砲である。

 その他の兵装も新型兵器が多数装備され、新たに採用された速射魚雷発射管、A型戦艦に続いて搭載された対艦グレネード投射機、亜空間魚雷発射管、多連装ミサイル発射管が装備されている。他にも従来の短魚雷発射管と垂直軸(下方)ミサイル発射管も装備されており、ヤマトに迫る充実した雷装が施された戦艦となっている。一方で対空兵装はこの時期の防衛軍の艦艇らしくやや少な目で、速射能力を高めた新型対空パルスレーザー砲を40mm三連装と25mm三連装砲塔をそれぞれ2基ずつのほか、艦各部に埋め込み式25mmパルスレーザーを装備したのみだった。

 主機関の選定にも問題があった。当初はA型戦艦の1番艦「ドレッドノート(初代 後の「プロメテウス」)」が搭載した新型機関を実用レベルにまで改良して搭載することになっていたが、当時の地球が有するこの最強の機関を以てしても、船体が大型化することによって出力不足が明らかとなったからである。
 これは推進力の問題もさることながら、主砲へのエネルギー伝達量の不足、更に連合艦隊旗艦として最も重要な管制コンピュータを稼働させるエネルギーが足りないという大問題を内包していたから、艦政本部は当初はA型戦艦の機関を双発にして搭載することを考慮したが、これでは船体の幅が大きくなりすぎるため廃案となっている。
 結局、この問題は主機には新型機関を採用し、同時にA2型巡洋艦が装備していた機関を「主補機」(設計案の原文ママ)として搭載、波動炉心を3基装備する波動機関を新製することで決着を見た。このため機関の構成が複雑となりメンテナンスに必要な人員が増加するという別の問題が生じたため、この部分はAIを用いた自動化によって乗員の過剰な増加と負担を防ぐ対策が取られている(なお、やろうと思えば乗員によるフルメンテナンスも不可能ではなかったとされる)。
 補機については、A2型戦艦以降が搭載したケルビンインパルス機関をそのまま搭載したが、本艦は大型化と同時に波動機関停止時に備え、A型戦艦の倍となる4基を搭載。また、A型戦艦のそれより大型の懸吊式補助機関も2基装備された。

 そして、この主機関の波動炉心が3基となることには思わぬ副産物を伴った。それは、後方に大型炉心1基、その前方に中型炉心2基を搭載することになったため、装備予定の拡散波動砲を連装化することが可能になったのである。そのためA型戦艦では砲身内部に搭載されていた板状のスプリッター(エネルギー噴流分割整流板)が不要となり、より高い効率、かつ大出力波動機関による大エネルギー量によって、地球最強の戦艦に相応しい極めて強力な拡散波動砲を搭載することが可能となった。なお、A型戦艦とは同じ拡散波動砲でもやや異なるシステムであったため、兵器としての制式名称は「一式タキオン波動連装拡散砲」となっている。

 また、本艦の最大の目的である連合艦隊を統制するための管制コンピュータは、後に「タイタン基地の連合艦隊司令部にほぼ劣るところがない」と評されるほど強力なものが搭載された。このため連合艦隊総旗艦としては何ら問題なく使用でき、その優れた統制能力はガトランティス戦役の土星会戦において大いに発揮されている。

 だが、こうした兵装と機関の強化。そして旗艦としての能力を最大限高めた結果、船体は艦政本部の当初の試算より更に大型化し、結局、以下の要目で設計案が纏められた。


全長     389m
全幅     91.8m
船体重量   14,6000トン
乗員     200名(戦時最大定数。他に司令部要員25名)
主機     大型タキオン式次元波動機関 1基 中型タキオン式次元波動機関 2基
補機     大型ケルビンインパルス機関 4基
       懸吊式補助機関 2基
       ケルビンインパルス式加速ブースター 4基
波動砲    一式タキオン波動連装拡散砲 1基2門
主砲     二式51cm三連装集束圧縮型衝撃波砲 4基12門
対空兵装   一式40mm三連装パルスレーザー砲 2基6門(艦橋構造物両舷)
       一式25mm連装パルスレーザー砲 2基4門(艦橋両側面)
       埋め込み式25mm単装パルスレーザー砲(艦各部)
ミサイル兵装 零式四連装対艦グレネード投射機 2基8門(艦中央よりやや前方)
       二式速射魚雷発射管 単装4基4門(艦首両舷)
               同 単装8基8門(艦尾両舷)
       一式亜空間魚雷発射管 連装4基8門(船体両舷)
       一式多連装ミサイル発射管 16門(船体両舷)
       九八式二型短魚雷発射管 16門(船体両舷)
       九九式二型垂直軸ミサイル発射管 単装10基10門(艦底部)
搭載機    一式一一型空間艦上戦闘機「コスモタイガーⅡ」15機
       (このうち3機は偵察機仕様の複座型)
       九八式汎用輸送機「コスモシーガル」3機
       救命艇3機、その他救命ボートなど


 いかに予算に糸目をつけなかったとはいえ、ヤマトを上回る全長、A型戦艦の2.5倍という船体重量はさすがに関係者の大半を驚かせたが、当時の地球連邦政府としては「大型戦艦であればあるほどよい」という考え方だったから、この案は防衛軍首脳部から連邦議会に通されて問題なく予算が可決され、地球防衛軍の極東管区にて建造が決定された。


艦名の由来

 当初、この艦は「旗艦用大型戦艦A」いう仮称艦名がつけられたが、主力戦艦であるA型戦艦と紛らわしいこと。また、その存在自体が国内や同盟国ガミラスへの宣伝効果を期待されていたこともあり、波動砲に関しては秘匿されたが「地球防衛軍が大型戦艦を建造している」と喧伝するため、比較的早期に艦名が決定、公表されることとなった(なお、この処置に艦隊側は反発しているが、やはり無視されている)。

 最終的にはご存知の通り「アンドロメダ」(艦籍番号はFBB-01 Flagship=旗艦と戦艦のBBを合わせたもの)という艦名に決まったわけだが、これには「銀河系より最も遠い銀河の名称を使用したい」という意見があったこと、そして仮称艦名に「A」の文字が使われていたことから単に有名なアンドロメダ銀河の名が選ばれたという二つの説があるが、どちらか、あるいは両方であるかは筆者の調査では判然としなかったため、今後の調査に期待したいところである。
 いずれにせよ「アンドロメダ」という艦名は遠く宇宙に想いを馳せるにはちょうどよい名前であったからか、完成後の市民からは好意的に迎えられ、艦隊側は「やや誇大妄想的とも言える」という声もあったが大きなものではなく、自然とこの艦名を受け入れたと伝えられている。


官民の期待と軍からの酷評

 「アンドロメダ」の建造は先述の通り極東地区が担当したが、これは同地区がヤマトを建造したことで、A型戦艦を上回る大型戦艦の建造経験があったことが理由とされている。実際、これほどの大型艦でありながら工事は順調に進み、起工からおよそ1年8か月にあたる2202年9月には工事を終え、公試終了後の翌月に艦隊へと編入された。
 艦隊編入の直前、首都で行われた完成式典において、地球連邦大統領はこう述べている。

 「宇宙の平和。それをもたらし、それを守る力となるのは、我が地球とガミラスの同盟であります。その重責を担うシンボルとして、私は最新鋭戦艦『アンドロメダ』の完成をご報告するものであります」

 連合艦隊総旗艦を担う重責ある艦とはいえ、わざわざ大統領の演説まで行われたあたり、この「アンドロメダ」に対する官民の期待は、実際に同艦を運用する軍のそれを遥かに上回るほどであったと言えるだろう。

 だが、実は完成前の「アンドロメダ」に対する防衛軍、特に艦隊側からの事前の評価は決して高いものではなかった。連合艦隊司令長官たる土方宙将は沈黙を守っていたが、単艦での戦闘能力がヤマトやA型戦艦に重量比で大きく優越していると判断されなかったことから、司令部の一部からは「政治の横やりで無駄に大きくなった木偶の坊」という批判の声が出ており、その他の艦隊所属の士官たちからも「これなら同額の予算でA型戦艦を数隻建造したほうがよかったのではないか」とする意見が多かった。
 しかし、こうした否定的な意見の多い船出となった新鋭戦艦「アンドロメダ」だったが、その後の運用において徐々に弱点を克服し、その力量を示していくことになる。そして多くの読者がご存知であろう華々しい戦歴とその壮烈な最期に関しては、次の機会に譲りたいと思う。

西暦2191年、外宇宙より飛来したガミラス帝国の艦船と、国連宇宙海軍の艦船が天王星沖にて初めて接触した。最初は友好的な関係を築けるものと期待されていたが、結果として交渉は決裂、両国は戦争状態に突入した。後に“ガミラス戦役”や“ガミラス戦争”などと呼ばれる戦争の開幕である。
当初、国連宇宙海軍上層部は太陽系内に侵入してきたガミラス軍など簡単に撃滅できると信じていた。敵の数は、多く見積もっても50隻。一方、我の兵力はすぐ戦線に投入可能な艦だけでも300隻(これは第二次内惑星戦争後、各地でゲリラ戦を行っている火星軍残党を討伐するため、一時的に多くの艦が現役とされていたのが大きい)6倍の戦力差というのは、通常の戦争では必勝を確信できるほど圧倒的な差である。
直ちに、国連宇宙海軍は討伐軍を派遣した。討伐軍の主戦力となるのは、当時の二大強国であった米国と中国である。彼らの艦隊だけで、討伐軍の6割を占めた。投入される艦艇は、火星軍残党の地球襲撃を警戒し月面基地及び地球各所に配備されていた艦艇群である。戦闘艦艇だけでも160隻、更に今回は史上初めての外惑星系への大規模遠征であった為、補給艦や病院船といった補助艦艇も存分に付けられた。かくして、総数200隻を超える大艦隊が、天王星へ向けてはるばる遠征を開始したのであった。
しかし、旅路は順調であるとは言い難かった。地球圏出発後も解決されていなかった問題として「誰がこの遠征軍の指揮を執るのか?」というものがあった。というのも総司令官として、北米方面軍のジョージ・パストーレ中将と、極東方面軍のハン・チューリン中将が共に立候補したからである。更に問題だったのが、遠征軍に所属する米中艦艇の数がほぼ同数だったことであった。指揮下の艦艇数が多い方が全軍をも指揮するというわけにはいかなかったのである。そして、両者の指揮能力はほぼ同等と言われていた。
結局、遠征軍は能力や政治的公平性を鑑みて、総司令官を極東方面軍のジューゾウ・オキタ宙将、副司令官をパストーレ中将及びハン中将に定めたが、両者の確執は完全になくなったわけではなく、むしろより深くなってさえいた。
この戦いは、地球側の完全敗北としてよく知られている。だが、その一言を聞いただけでこの戦いの全てを知った気になるのはあまりにも傲慢である。このような無様な戦いでも、自らの誇りを忘れずに敵に立ち向かった勇敢な艦がいるのだ。そして、我らが偉大なるウォースパイト号もその内の一艦だった。

西暦2210年10月24日 J・L

西暦2191年 国連宇宙海軍 欧州方面軍所属 ジャック・オブライエン少尉(当時)

初めに
オブライエン氏は二年前のディンギル戦役において、乗艦である戦艦ロイヤル・オークと運命を共にされています。しかし、生前にオブライエン氏が遺していた音声データがこの度提供されました。この場において、このような貴重な証言を残してくださっていたオブライエン氏と、それを提供して下さったオブライエン氏の奥様であるエリザベス氏に、改めて感謝の意を述べたいと思います。

私はジャック・オブライエン、現在の階級は大尉だ。これから、私が経験したとある戦いについて話していきたいと思う。何故急にこんなことを始めたかって?年を取ってからというもの、自分がいつ死ぬか分かったもんじゃないのでね。こうして記録を残そうと思ったわけさ。これを見ている私以外の人間に言っとくが、このデータは私が死んでから公開するものだからな。決して、私が生きているうちに公開するんじゃないぞ。さて、では話を始めよう。
今回私が話すのは、私にとっての初めての戦いである天王星沖海戦についてだ。あの戦いは文字通り悲惨だった。だってそうだろ。人類史上、敵の三倍以上の戦力を投入して完敗した戦いがあるか?しかも相手には一隻も沈没艦が出ていないんだ。だがそんな戦いでも、私の乗艦であったウォースパイトは実に勇敢だった。乗っていたのが彼女でなかったら、私は今頃この世にはいなかっただろう。
さて、あの戦いで敗因と呼ばれているものはいくつかある。過度な慢心?司令部と前線指揮官の対立?不適切な艦隊運用?どれも私に言わせれば違うな。私が「天王星沖海戦での敗因は何だ?」と聞かれたらこう答えるね。“技術力の差”と。
今の地球防衛軍しか知らない奴には信じられないかもしれないが、当時は敵を傷つけることすら困難だったんだ。私は何度も見て来たよ。こっちの主砲が全弾命中して喜んでいたら、向こうは無傷でそれどころか反撃の砲火を放って来てるって場面をね。そんな光景を何度見ても生き残ってるのは、やっぱり運ってやつなんだろうな。まあ、その運も流石に底をついていそうだが。正直、ガミラスさんとの戦いでは一生分の運を使い果たした気がするね。
あの戦いに、我がロイヤル・スペース・ネイビーは保有するほぼ全ての戦力を投入していた。おそらく、政府のお偉いさん方はこの機に英国の実力を世界に見せつけようとしていたのだろう。今思えば実に馬鹿な話だった。そして偶然にも、我が軍は二ヶ月後に控えていた新国王即位式に乗じて行う予定だった観艦式の為、ちょうどモスポール保管されていた艦艇を引っ張り出していたところだった。だから、6隻のウォースパイト級と6隻のヨーク級を主力とするも、当然全艦が出撃可能だった。
圧巻だったよ。第二次内惑星戦争で活躍したウォースパイト、マレーヤ、バーラム、ヴァリアント、戦後に追加建造されたレナウン、レパルス。計6隻ものウォースパイト級が共に航行してる姿なんて、二度と見れないと思ったね。まあ、本来これは観艦式で見れるものだったのだろうけど。そうして、総数200隻に達する大艦隊は、野蛮な宇宙人を撃滅するために意気揚々と出撃していったってわけさ。考えが甘かったよ。外宇宙から飛来した宇宙人が、未だ太陽系すら制覇できていない人類よりも技術力が低いと思っていたなんてね。
この戦いは、まず序盤から躓いていった。最後まで宇宙人との開戦に反対していた、遠征軍指揮官のジューゾウ・オキタ提督が解任されたんだ。司令部が戦闘行動中(実際、領宙警備行動は発令されていた訳だし、こう言っても良いだろう)に前線指揮官を解任するなんて前代未聞だったよ。そして、これが原因で今まで鳴りを潜めていた米中軍のわだかまりが一気に沸騰したんだ。彼らは互いに相手の指揮下に入ることを承諾しなかった。これを抑え統率していたオキタ提督は、本当に素晴らしい人物だったと思うよ。で、米中両軍は、先遣艦のムラサメが敵の攻撃によって撃沈されたと知った瞬間、我先にと突撃していったよ。まだオキタ提督の後任の司令官も決まっていないのに。彼らは、物量の神話を未だ信じていたのだろう。多少強引な戦い方でも、物量で押しつぶせば勝てるってね。
でも実際はそうじゃなかった。敵?ガミラス帝国軍は、突撃して来た奴らから正確に旗艦だけを見抜いたんだ。そして奴らは、たった一航過で30隻以上の艦艇を血祭りに上げたよ。その中には、米宇宙海軍旗艦のニューヨークと、中国宇宙海軍旗艦のペキンも含まれていた。当然、遠征軍は大混乱に陥った。いくら第二次内惑星戦争を生き延びた精鋭が集まっているとはいえ、総司令官が解任された直後に副指令が戦死するなんて出来事に対処することはできなかった。結局、我々は戦力を分断され、奴らに各個撃破されていった。戦隊レベルで統制を回復していた部隊もあったようだが、その程度では圧倒的な力を誇る奴らには勝てなかった。そして、混乱する遠征軍をまとめ上げるべく新たな指揮官が任命された。それが、我らがウォースパイトに乗艦されていたロドニー・カニンガム中将だったというわけさ。とは言っても、混乱している部隊をまとめるのはとても困難だった。
まずカニンガム提督は、個人的な親交もあった極東方面軍第二空間護衛隊群司令官のオキタ提督(彼は全軍の指揮権こそ剥奪されたものの、自らが直接指揮している護衛隊群の指揮権は未だ有していた。)と共同し、二人が指揮していた王立宇宙海軍、航宙自衛隊、及び比較的損害が少なかった南亜方面軍、南米方面軍を中心に部隊を再編した。とは言っても、戦闘中にやっていることだからまともな再編成なんてできやしなかった。ただ、これは戦力を集中させるという意味合いが強かったから、その点では成功していた。
完全ではなかったが、生き残っていた艦艇のほとんどが集結したのを確認したカニンガム提督は、全艦に撤退命令を発令した。「ここで戦っても犬死にするだけだ。ならば今日の屈辱には耐え、明日勝利の芽を掴み取ろう。」そうカニンガム提督が言っていた。当然、多くの戦友が殺されているのにも関わらず、何の成果も得られないまま撤退することに関しては批判の声もあったよ。特に戦闘序盤で損害が大きかった米中軍に多かったかな?でも、そんな奴らに構っている暇はなかった。そうこうしているうちにも、味方の数はどんどん減り続けていたからだ。結局、カニンガム提督は撤退を頑なに拒む連中を放置し、そのまま撤退を開始したんだ。これに関しては、私は正しい選択だったと思う。というより、あの状況ではこれ以外の選択を取りようがなかったんだ。こうして、悲惨な撤退戦が始まった。因みに、この時点で半数以上の艦が宇宙の藻屑と化していた。
さて、ここに一枚のメモリーカードがある。これには一体、何が入ってると思う?実はこれにはな、天王星沖でのあの悲惨な撤退戦の通信記録が入ってるんだ。今からこれを流そうかと思う。こいつはまだ誰にも聞かせちゃいない。暇な時間を見つけては、ずっとこいつの解析ばっかりやっていた。その努力が実ったのか、ようやくテープの一部分が再生できるようになった。何でこんなものを持っているかって?私は通信兵でね。あの戦いではウォースパイトに通信士として乗り組んでいた。怒号、罵声、悲鳴、断末魔、色々聞いたよ。それを聞いていて、私は彼らの声を後世に伝えてやりたいと思ったんだ。こんな価値の低いデータなんて、帰還したら真っ先に削除されるに決まってる。そう思って、私は通信機からメモリーカードを抜き出そうとしたその時だった。ウォースパイトの艦橋付近をかすめた陽電子砲弾が、弾の表面から艦橋内部に向けてプラズマ流を放ってきた。それが直撃して、私の前に鎮座していた通信機は火花と破片を噴き出した。私はそれをもろに浴びてしまった。私の体には、今も多数の傷や火傷の痕が残っている。幸運にも顔だけはヘルメットをかぶっていたので無事だったがね。
もちろん、そのような大怪我を負えば後方へ移送されることは確実だった。そのことを十分理解していた私は、被弾のどさくさに紛れて黒焦げになった通信機からメモリーカードを回収したのさ。当然だが、外がまる焼けになっているのに中身は無事・・・なんてことにはなってなかった。中身もきちんと焼き上がっていたさ。でも、私はあきらめなかった。ここであきらめてしまうのは、あの戦いで死んでいった者達に申し訳が立たなかったから。あの怪我のおかげで、私は今まで生き残ってしまった。本当なら、私は火星沖で死ぬはずだったのに。ただ一人、私だけが生き残ってしまった。ふん、何だかこう言っていると、まるで私が死に場所を求めているようだな。安心しろ。私はまだ死ぬつもりはない。
前置きが長くなってしまったな。では再生するとしよう。死者達の遺言を。
【------ちら、北米方面空間戦------暫定旗艦、USSアーカンソー。現在敵艦隊と交戦中。我が方の被------大。救援を、救援を------------ガッデム!どう見ても全部当たってただろ!お前ら卑怯だ-----------にたくない、俺はまだ死にたくないんだよぉぉぉぉ!畜生めぇぇぇぇっ------------らはHMSバーラム。本艦は機関に重大な損傷を負い、地球への帰還が不可能となった。よって我々はこの宙域にとどまり、最後まで友軍の撤退を援護する。どうか地球で待っている人達にこう伝えてほしい。戦艦バーラムは最後まで勇敢に戦ったと・・・地球連邦万歳!英国万歳!神よ国王陛下を守り給え!------------ん、ばあちゃん。ごめん。俺今からそっちに行くわ------------そっ、------の救助は完了------------はい、見える限りは全員収------した!よしっ!機関始------大船速!早急に現宙域を離脱す------------えっ、広東が沈んだ・・・山東に天津も・・・残っているのは俺達だけか・・・------------ううっ・・・クレア・・・愛し・・・て・・・るぞ------------うおぉぉぉぉっ!生き延びてやる!絶対に、俺は生き延びてやるぞぉぉぉぉ------------こちら、JMS雪風。生存者はいませんか?誰か生きている人はいませんか?応答してください!誰か、誰か!------------】

天王星沖海戦、あの戦いでは実に多くの兵士が命を落としていった。だが、もはや彼らのことを覚えている人間はほんの一握りだ。そう、私のような者くらいだ。だからせめて、彼らのことを記憶の片隅にとどめていて欲しい。忘れても構わん。忘れたらまたこれを聞いて思い出してくれれば良い。どうか彼らの戦いを覚えていて欲しい。彼らの戦いを語り継ぐこと、それがこの私の最期の使命なのだ。
さて、では私はもう行かなければならない。何でも新造された戦艦に配属される新兵の教官をやって欲しいそうだ。この老兵に与えられた最後の仕事だ。今まで死んでいった者達の分まで、しっかりと働いてくるさ。ではまた、今後この音声がより多くの人の耳に届かんことを願う。

オブライエン氏の音声はここで終了していますが、最後に彼の最期について少しだけ述べたいと思います。
オブライエン氏はその後、再編された第一艦隊の戦艦ロイヤル・オークに配備され、新兵の教育を行っていました。ロイヤル・オークはデザリアム戦役の戦訓から有人化が推し進められており、何よりも乗組員の練度を高める必要があったからです。
そして、ディンギル帝国の艦隊が太陽系に電撃的に侵攻してきました。当時、主力艦隊は銀河中心部で発生した“異変”を調査すべく外宇宙へと赴いており、太陽系内で即応可能な戦力は再編中の第一艦隊だけでした。直ちに第一艦隊は、土星宙域に進軍中のディンギル帝国軍を迎撃すべく出撃して行きました。まだ乗組員の訓練が終了していなかったのに。その後第一艦隊は土星沖にて接敵、自艦隊の練度不足を懸念していた司令官は通常砲戦を断念、艦隊各艦に装備されていた拡大波動砲による先制攻撃で一気に殲滅しようと試みたのです。拡大波動砲の充填時間は波動砲チャージャーを接続すれば約6秒。絶対に回避できない攻撃のはずでした。
しかし、不幸にも拡大波動砲の発射するタイミングと、敵艦がワープするタイミングが一致してしまっていました。そして拡大波動砲発射直後で身動きの取れない第一艦隊に、計500隻以上の宙雷艇が襲い掛かったのです。正に“飽和攻撃”でした。しかし第一艦隊にはこれを防ぐことはできませんでした。第一艦隊には人員不足が原因で防空駆逐艦が定数の六割程度しか配備されておらず、更にその半数が月面基地で整備中だったからです。また肝心の防空戦闘でも、練度不足が原因で効果的な迎撃戦が行えませんでした。結局、第一艦隊は七割以上の艦艇を撃破され壊滅しました。
オブライエン氏の乗艦である戦艦ロイヤル・オークの最期は、随伴艦である巡洋艦バーミンガムが記録しています。最後に、バーミンガムの戦闘録を掲載して本稿を終わりにしたいと思います。

ロイヤル・オークに命中したハイパー放射ミサイルは三発であった。一発目は左舷中央部に命中した。しかし、これは中央部のバルジ状の部分が爆発を吸収したのか艦体にはそれほど損傷は見られなかった。続いて二発目が左舷対空砲群を直撃。この攻撃によって左舷対空砲群は全滅した模様である。更に三発目が艦橋中央部に着弾。この被弾でロイヤル・オークは戦闘能力を完全に消失した。この時点で艦内では、生き残った最上級士官が総員退艦を発令していた模様である。この光景を見て我々も乗組員救助の為に急行した。しかし我々は、ほとんどの人間を助けることが出来なかった。ロイヤル・オーク乗組員で救助出来たのはウィリアム・ライナー少尉以下46名であった。 

バーミンガム戦闘禄より一部抜粋

リンク集およびリンクページ紹介の記事に「コスモ・ウイングス」様 http://cwings.web.fc2.com/ を追加しました。詳細はリンクページ紹介の記事にてご確認お願いします。

第二次土星沖会戦の悲劇

 2207年に生じた銀河系中心部の大災害、当初地球防衛軍はヤマトを派遣しその調査にあたらせたのだが、そのヤマトが謎の敵対勢力(それがディンギル帝国とわかったのは第二次冥王星会戦の直前である)の攻撃を受け大破、自動航行で地球に帰還してきた。
 加えて、水惑星アクエリアスが謎のワープを開始し、僅か15日にして地球に迫るという非常事態が発生、これを受けた連邦政府は地球人類を一時的に宇宙コロニーや他の惑星、およびその衛星の基地に避難させる措置をとることにした。水惑星の水害による被害は恐らく尋常ではないだろうが、この時点では「水が引けばまた復興すればよい」という楽観的な見方が強かったのは否めない。

 しかも、ヤマトを攻撃した敵対勢力については「注意が必要」という認識はされたものの、艦隊は当面地球近辺に主力を配備し、避難の第一陣として土星タイタン基地および周辺の宇宙コロニーに出発した船団に護衛艦をつけなかったことは、地球防衛軍にとって取り返しのつかない失態になった。

 そして、その「ヤマトを攻撃した謎の敵対勢力」が太陽系に攻撃を仕掛けてくるということなど全く想定外で、外惑星の各基地には戦力にならない程度の艦艇しか残存していなかったため、たちまち11番惑星基地と冥王星基地が謎の大艦隊(以降はディンギル軍と記す)によって制圧されてしまった。この事態は、連邦政府や防衛会議、地球防衛軍の参謀本部にとってまるで考えの及ばない状況であった。
 上層部に話を通す暇はない、と判断した藤堂平九郎防衛軍統括司令長官の独断により、土星に向かっていた避難船団を掩護すべく、直ちに地球防衛軍の主力艦隊が発進した。このとき完成していたB型戦艦15隻のうち、テスト航海中に爆雷波動砲を最大出力で発射したカイパーベルトD宙域会戦以来、機関の不調に悩まされていた「マサチューセッツ」以外の14隻全艦がこの主力艦隊の中核戦力として出撃している。

 しかし、この「第二次土星沖会戦」と呼ばれる戦いは無残なものだった。避難船団は救援が間に合わずに全滅、そして避難船団を防衛すべしと急いでいた防衛艦隊は隊列が乱れており、戦場にたどり着いた第一陣のB型戦艦は、まずは敵艦隊の殲滅をと拡大波動砲の速射を行った。
 だが、その拡大波動砲の発射のタイミングに敵艦隊が戦術上の要件で(波動砲を回避するためのものではなかった、と後に判明した)ワープを行い、発射した拡大波動砲は回避されてしまう。しかも敵は強力なハイパー放射ミサイルを搭載した水雷艇部隊を既に発進させており、隊列を整えておらず満足な防空網を張ることができない状態でいた地球防衛艦隊に左側面から襲い掛かってきた。

 結局、側面を取られた状態からハイパー放射ミサイルによる飽和攻撃を受ける……奇しくも内惑星警備艦隊司令長官が鳴らした警鐘とほぼ同じ状況になった地球防衛軍の新鋭主力艦隊は、それでも防空駆逐艦であるC型駆逐艦の奮戦で相応の敵水雷艇とミサイルを撃墜はしたものの、その数に抗しきれず壊滅的な損害を出した。
 この会戦で失われたB型戦艦は12隻、生き残ったのは艦隊後方で損傷が中破に留まり、大勢が決した後に戦場を離脱した「スラヴァ」と、戦闘で大破して土星の衛星エンケラドゥスに不時着した「伊勢」のみだった。

 主力艦隊の壊滅、そしてアクエリアス接近まであと2週間。更に地球本土に行われた空襲で更なる艦艇と脱出用の輸送船の多くを破壊され宇宙への脱出も不可能、人類は絶体絶命の危機に追い込まれることとなった。


第二次冥王星会戦

 危機的状況に連邦政府と防衛軍はパニック状態に陥ったが、それでも藤堂長官を始めとする防衛軍の一部は諦めていなかった。殆ど戦時の状況を利用した独断の措置ばかりだったが、とにかく太陽系からのディンギル帝国軍の駆逐、水惑星アクエリアスのワープ阻止のため彼らは準備を始めた。

 まず、月基地および内惑星に温存されていた戦闘能力の低い艦、あるいは旧式艦をかき集めて護衛艦隊を編成。更にヤマトや「スラヴァ」「マサチューセッツ」といった修理が必要な艦に戦闘航海に支障がない程度の最低限の修理を施し、艦隊を編成して出撃させることが決定された。

 大まかだが、このとき準備された三つの艦隊の編成を挙げておく。

 第一遊撃部隊

 A3型戦艦「薩摩」(旗艦)
 A2型戦艦「カイオ・デュイリオ」
 改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」
 B型戦艦「マサチューセッツ」
     「スラヴァ」
 A2型巡洋艦4隻
 B型巡洋艦3隻
 C1型駆逐艦2隻
 A2型駆逐艦18隻

 第一陽動部隊

 A4型戦艦「ネルソン」
 改C1型駆逐艦10隻
 (防空は海王星基地戦闘機隊が担当)

 第二陽動部隊

 戦艦「ヤマト」
 B型巡洋艦「矢矧」
 改C1型駆逐艦8隻
 (防空は第64飛行隊(ヤマト搭載戦闘機隊)が担当)

 二つの陽動部隊の任務は、敵部隊、特に水雷戦隊を引き付け、敵艦隊の主要基地である機動要塞を破壊すべき第一遊撃部隊の突入を掩護することだった。そして波動砲発射が可能な戦艦を集中配備した第一遊撃部隊は、波動砲戦を以て敵艦隊および機動要塞の撃滅を行うことが期待されていた。
(なお、この第一遊撃部隊を率いていたのは、皮肉にも現状の軍備に警鐘を鳴らした内惑星警備艦隊司令長官であった)

 しかし、地球側にとって思わぬ事態が発生する。敵の残存する水雷艇部隊が事前の想定を上回っていたため、第一、第二陽動部隊に水雷戦隊を引き付けること自体は成功したものの、この両部隊のうち第一陽動部隊は文字通り全滅、第二陽動部隊もヤマトと駆逐艦1隻しか生き残ることができなかった上に、水雷戦隊の一部が第一遊撃部隊にも向かってきたのである。

 そのため、主力である第一遊撃部隊も過酷な戦闘を強いられることになった。向かってきた水雷艇の数は陽動部隊のそれに規模で劣ったが、大型艦の多さからたちまち主力部隊と察知され、敵艦隊の集中攻撃を受けることになったのだ。
 幸い、敵水雷艇にはガトランティス戦役以来の快速駆逐艦であるA2型駆逐艦によって対処できたが、それ以上の不幸は、時にワープを繰り返して通常航行時の速力の遅さを補う戦法を取るディンギル艦隊相手に早期の波動砲戦はほぼ不可能だったため(後にヤマトが波動砲戦を行って成功させたときは、小惑星帯での戦闘だったためディンギル軍はワープ戦法を有効利用できなかった)、敵に数で劣るにも関わらず通常の砲雷撃戦で対処するしかなかったことだった。

 このため、第一遊撃部隊司令長官は戦艦部隊の砲撃戦とA2型駆逐艦による機動戦を用いて何とか敵艦隊を一か所に集めさせ、強引に波動砲戦に持ち込みこれを壊滅させることに成功したが、犠牲はあまりに大きかった。第一遊撃部隊も旗艦「薩摩」と「ドレッドノート(Ⅱ)」、B型戦艦では「マサチューセッツ」が生き残ったものの、先の戦いで損傷していた「スラヴァ」は損害拡大のため放棄、戦闘終了後に自沈させる措置を取らざるを得なかった。また、残存艦および護衛艦も大半が失われるか例外なく大破しているという状況であり、今後の作戦行動が不可能となっていた。

 そして、最後に敵機動要塞および都市衛星ウルクを撃破し、更に自らを犠牲にして地球を救ったのはヤマトだった。そして戦役後、ヤマトに対してやむを得なかったとはいえ何も掩護ができなかったこと、自らの指揮で多くの将兵を死なせた悔恨も込めて、第一遊撃部隊司令長官は上層部に再び意見を具申した。

 「波動砲に依存しなければならない艦隊は実効戦力として意味がなく、今後一切必要ない。その上で、もし戦艦を建造するという選択肢があるならば、それは例え少数でも必ずヤマトに匹敵、あるいはそれ以上の攻防性能と機動力を、波動砲を問題とせずに持たせなければならない」

 今度のこの意見を、無視できる防衛軍首脳部の人間は存在しなかった。


B型戦艦の現状とその未来

 ディンギル戦役終結後、B型戦艦は生き残った「マサチューセッツ」と、エンケラドゥスから浮揚、復旧された「伊勢」。そしてディンギル軍の空襲を免れて完工した「ロドネー」「日向」(「アイオワ」はディンギル軍の空襲で受けた損傷が大きく、建造が中止された)の4隻で第一戦艦戦隊を編成した。

 そして年も改まり、これまで「地球の守護神」として親しまれてきたヤマトを失い、連邦政府と地球防衛軍は市民から激しい非難を浴びた。そしてディンギル戦役における惨敗を招いた原因となる軍備を推進し、その結果として「地球防衛軍の象徴」たるヤマトを自沈に追い込んだ参謀本部は、艦隊に所属する将兵から激しい憎悪を向けられていた。
 そうした対立の結果、とうとう先日発生した「政略派(波動砲艦隊推進派)」と通称される勢力のクーデター事件を招くことになった。そして、このクーデターが失敗に終わったことで、波動砲艦隊を推進していた派閥の関係者は防衛軍から一掃され、新たに防衛軍統括司令長官に就任した山南修宙将の元、地球防衛軍は新たな軍備を行うことに決定した。

 それは、極力小型化した波動魚雷を搭載する運動性に優れた新型駆逐艦と、波動ミサイルを搭載した新型コスモタイガーⅡ(五三型と称される)を配備した航空隊を決戦兵力とする新たな編成で、その中でB型戦艦は「戦況が許せば波動砲を使用するが、主任務はその火力と防御力によって艦隊戦列の中核を維持すること」という、A型戦艦の初期案に戻った構想で運用されることになった。
 もちろん、現状B型戦艦は新鋭艦であり、駆逐艦や航空機の数が揃うまでは貴重な防衛戦力と認識されているため、ディンギル戦役の戦訓を取り入れて、また自軍に配備された波動弾頭を有する実弾兵器に対する防御方策も考慮され、限定的ながら改装工事が行われている。

 前期型というべき「マサチューセッツ」「伊勢」は修理時に、後期型とも呼べる「ロドネー」「日向」は建造工事中に以下の改装が加えられた(なお便宜上、本文では前期型と後期型に分けたが、A型戦艦と異なり防衛軍はB型戦艦を前期型と後期型に区分してはいないので注意されたい)。

 ・舷側装甲を二重化し、間に緩衝材を充填(20世紀のイタリア戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト」級の装甲の構造に類似する)。これによりハイパー放射ミサイルおよび波動弾頭の爆発を装甲の外側で吸収する構造に変更
 ・艦内隔壁の強化
 ・艦尾上方のアンテナを艦尾下方に移設
 ・「マサチューセッツ」のみ、不調の機関を建造中止となった「アイオワ」用に準備されたものに換装

 この工事で防御力は限定的ながら向上したとされ、戦艦としては相応に有力と判定されることになった。だが、防衛軍の中にあって戦艦の存在感そのものが低下しており、また新鋭艦であるにも関わらず、ヤマトがこれまで担ってきた任務を完全に代替することができないB型戦艦に不満を持つ者は少なくなかった。そのためB型戦艦は「これ以上の追加建造は行わない」と決定され、以後はヤマトを始祖とする「汎用戦艦」の系譜を引き継ぐC型戦艦のみを少数建造し、A型、およびB型戦艦の系譜である「主力戦艦」は、建造そのものが当面ストップされることになった。

 今後すぐ、B型戦艦が地球防衛軍にとって「戦力とならない」と判断されることはないだろうし、その能力は例え行動可能な範囲が限られたとしても、敵に対する抑止力として十分に期待できる。しかし「曲がりなりにも新鋭艦である」ということが枷になってしまい、今後大改装が順次行われるA型戦艦の残存艦(こちらは旧式ゆえに「使いつぶしが効く」)のような積極的運用は難しいと思われるからか、あくまで噂だが「何隻かモスボールされる可能性がある」という極端な話まで聞こえてくる。それは極論としても、艦艇研究者としての筆者は戦争を望むところではないので、B型戦艦に地球防衛の戦力として期待しつつも、退役までその出番が来ないことを望む次第である。


おわりに

 B型戦艦は「強力な爆雷波動砲を搭載するためだけに」建造された艦であり、もしこれを諦めていればA型戦艦の拡大型として、あるいはヤマトの安価量産型としてバランスの取れた標準的な主力戦艦として世に出たかもしれない。
 とはいえ、B型戦艦は「砲塔型副砲がなく中距離での対空力に欠ける」という欠点はあったがそれ以外の完成度は十分に高く、そしてその問題に関しては本来、護衛艦である巡洋艦や駆逐艦が補うべきことであって、本艦の罪ではない。筆者としては、真に責任を負うべきは内惑星警備艦隊司令長官が指摘したように、B型戦艦にまるで合わせるように巡洋艦を大型化したり、運動性に欠ける駆逐艦を量産するなど、諸事情はあろうが十分な護衛兵力や機動戦を行える艦隊を用意しなかった当時の防衛軍参謀本部にあった、と断じるしかないところである。

 不幸なことだが、もし今後何かしらの戦禍が太陽系を脅かすとしたら、再びガトランティス戦役時代のバランスの取れた艦隊を志向し始めた現在の防衛軍なら、このB型戦艦の欠点を補った運用ができるかもしれない。しかし、繰り返すがそれはあくまで不幸とすべき出来事であるから、そうならないことを筆者は望む。だが、同時にそれはB型戦艦がその持ち得る能力を十全に発揮せずに役目を終えるということであり、上層部の思惑によって生み出された「軍備の歪さ」で未だ本当の活躍の場を得ていないB型戦艦は、文字通り「悲運の高性能戦艦である」としか、今の筆者には評する言葉が見当たらないのである。

金剛型宇宙戦艦――西暦2171年に一番艦金剛が就役して以降、世界中で数多くの同型艦が建造された。しかし、金剛型というのはあくまで極東管区(主に旧日本国領)での呼び名であって、その他の地域では違った呼称であったことはあまり知られていない。これはガミラス戦役後の世界の中心が極東に移ったことも一因であるだろうが、我々は少しでも記憶しておかなければならない。歴史の狭間に埋もれてしまった者達が、一体どのように戦い、そして散っていったのかを。私はジェームズ・リーランド少佐、地球防衛軍情報部第七〇七情報隊所属、歴史を未来に伝える者である。

西暦2210年10月20日 J・L

第一章 初陣

西暦2180年時 国連宇宙軍欧州方面軍所属 ロイ・キャメロン中尉(当時)の回想

私は今、アイルランド島にあるベルファストという街に来ている。ここは港街ということもあって、一昨年のアクエリアス危機(ディンギル戦役)の影響が色濃く残っている地域である。ガミラス戦役後この街は地球防衛海軍の軍港となったが、それ以外には特に何もないさびれた街である。ガミラス戦役以前は何かあったのかもしれないが、遊星爆弾で全てが吹き飛んでしまった今となっては知る由もない。しかし、ガミラス戦役以前のこの街を知っている者が一人、郊外の家で一人寂しく漁業を営んでいた。彼の名はロイ・キャメロン、とても65才には見えない屈強な体付きの男であり、かつては我らがロイヤル・スペース・ネイビーの一員だった漢であった。
「私が軍に居たのは、もうかなり前のことです。おそらく皆さんが一番興味をお持ちであろうガミラス戦役の時、私は既に第一線を退いていました。そのような私に話せることはあまりありませんが、それでもよろしいのですか?」キャメロン氏は、私と玄関で挨拶を交わし、最低限の家具しか置かれていない小さなリビングに私を招いた直後、そう私に尋ねて来た。
「構いません。私が求めているのは、むしろそのような話ですから。」そう私はキャメロン氏に自らの好奇心をありのまま伝えた。この時の私は、この文章を読む読者よりも彼の話に興味があったのかもしれない。
分かりました。それでは、少しばかり老人の長話に付き合ってもらいましょう。まず初めに、私が乗っていた艦の話をさせていただきたいと思います。私が乗艦していたのは、ウォースパイト級戦艦一番艦ウォースパイト。西暦2177年に就役した当時最新鋭の戦艦でした。
ウォースパイト級と名乗ってはいますが、実はこれ我が国・・・いえ、旧英連邦だけの呼称であったのです。あの戦艦の正式な名称は“国連宇宙海軍第三世代型主力戦艦”という、何とも味気無い名前でした。そこで各国は、この戦艦に独自の艦級名を付けていったのです。名前は国によってまちまちでした。今この戦艦を呼ぶときは、その活躍度から極東管区の“金剛型(コンゴウ・クラス)”という呼び名が一般的ではありますが、それ以外にも色々な名前がありました。
例えば、同じ極東管区でも当時中国と呼ばれていた国は、この戦艦を“火竜級(ファイヤードラゴン・クラス)”と呼称していました。この火竜級を中国は合計で16隻建造したらしいです。次に、今は北米管区となっている旧アメリカ合衆国、こちらでは“ヴァージニア級”と呼称されていました。こちらは細かな改修を重ねながら合計で20隻建造され、このクラスでは最大の建造数を誇ったらしいです。その他にも、旧ドイツ連邦共和国の“リュッツオウ級”、旧フランス共和国の“ノルマンディー級”、旧イタリア共和国の“カイオ・デュイリオ級”、旧ロシア連邦共和国の“アルハンゲリスク級”、旧インドの“ヴィクラント級”、旧ブラジル連邦共和国の“リオ・グランデ級”、など世界中で様々な呼称がありました。全ての同型艦を合わせたら70隻くらいは居たと思います。最も、これらの同型艦全てが一堂に会する機会は遂に訪れなかったのですが。もし70隻が同じ場所に集結したら、それはさぞ圧巻であったのでしょうね。
すみません。話がそれました。ともかく、私は戦艦ウォースパイトに栄光ある第一期生として乗り組んだのです。当時私は機関科に所属していましたので、当然ですがウォースパイトの機関室に配属されました。この搭載してある新型核融合炉がまた癖がありましてね、配備された直後はとても苦労したものです。でも最新鋭のエンジンに触れられるというだけでも、当時の私はすごく興奮しました。
やがてウォースパイトに配備されてから3年の月日が流れ、やっとエンジンの扱いにも慣れてきたころ、恐れていたことが遂に現実となりました。そうです、第二次内惑星戦争が始まったのです。少し前から多くのマスメディアが「地球と火星、数年以内に再び開戦か!」などと煽っていましたから、この事を聞いても私は「なんだ、また始まったのか。」と思うばかりでした。実に拍子抜けな言葉ですが、当時の私には戦争という言葉は誇大すぎたのです。
やがて私の初陣がやってきました。地球圏に侵入してきた火星軍を撃滅すべく、月面基地から次々と艦艇が飛び立っていきました。旧英連邦も、保有する4隻のウォースパイト級以下28隻(これは英連邦が保有する艦艇の7割弱に相当しました)の艦艇を出撃させました。もちろん、その中には私の乗るウォースパイトも含まれていました。そして艦隊は出撃してから二日後に火星軍と接触、後に“月軌道会戦”と呼ばれる戦いが勃発しました。
戦いの経緯としては、地球軍と火星軍は互いをほぼ同時に探知、しかる後に同航戦に突入。結果地球軍が圧勝したそうです。というのも実は、私は機関士ですから戦闘中は基本的に機関室に籠っています。戦闘が始まった途端に駄々をこねだすエンジンと向き合わなければならず、気が付いたら戦闘が終わってしまっていたのです。戦闘後、周りは「火星野郎の艦を何隻撃沈した。」だの、「俺の操舵で攻撃をギリギリのところで回避した。」だの会話が弾んでいましたが、私はその会話に加わることが出来ませんでした。それが悔しかった私は、次の戦いの時はこっそり機関室を抜け出して戦闘を見に行こうとさえ思いました。
そして月軌道会戦から数ヶ月後、軍令部である作戦が立案されました。少数の精鋭部隊をもってして火星沖に突入、当時地球に甚大な被害をもたらしていた遊星爆弾(ガミラスの物みたいに放射能が発生するわけではなく、火星軍のやつは単なる隕石です。)の発射基地を破壊する。というものでした。この作戦を聞いた瞬間、我々は飛び上がるように喜びました。何せ今までは地球に襲来する火星軍や隕石の迎撃ばかりを行っていた我々が、初めて攻めに転ずることが出来るのですから。この喜びは兵隊になった者にしかわからないでしょう。
早速、作戦は具体的なものへとなっていきました。火星沖に突入する部隊の指揮官には、極東方面軍所属の提督が任命されました。提督は国連宇宙海軍内で行われる合同演習の際、実に見事な戦法で自軍の三倍以上の敵に勝利したことがありました。それを見た北米方面軍の指揮官は当初「まぐれだ。次はああ上手くはいかんさ。」などと余裕の表情で発言したそうです。最もその自信も、次の演習で彼の部隊が提督の艦隊に全滅判定を叩き出されるまででしたが。このようなこともあって、上層部は彼の能力を高く評価していたらしいです。実際、先の月軌道会戦で一番戦功を挙げたのは彼の艦隊でしたからね。これは余談ですが、彼が旗艦としていた戦艦コンゴウの当時の艦長が、かの有名なアドミラル・オキタだったそうです。オキタの艦長としての能力の高さが、提督にあのような戦法を取らせることを可能にしたのだと思います。
そして我らがウォースパイト号が、栄えある突撃隊に参加することが決定したのです。この事を聞いた瞬間、私の中ではある思いが膨らみました。先ほど申し上げた「戦闘をこの目で見てみたい。」というものです。歴史の一ページに確実に書き込まれるであろう戦いに参加できるのです。どうせなら、特等席で見たいと思うのも自然な気持ちであると思います。
月軌道会戦より四ヶ月後、突撃隊が多くの人に見送られながら月面基地を離陸して行きました。戦艦4隻、巡洋艦12隻、駆逐艦16隻、計32隻の艦隊の姿はとても壮観でありました。突撃隊は月面上空にて艦隊陣形を組んだ後、火星へと進路を向けました。今ならここで敵前へのワープを行うところなのですが、当時はワープ航法など存在しなかったので、突撃隊は進路を欺瞞しつつ火星に接近しました。やがて我々は、火星側にその存在を知られることなく火星宙域に到着することが出来ました。完全なる奇襲でした。そして提督は次のような通信文を全軍宛てに発信しました。「我ラハ来タリ、ソシテ見タリ、誓ッテ共ニ勝タン。全軍突撃セヨ!」
火星宙域には、目標となるべき物が大きく分けて三つありました。一つ目は火星本星、火星政府の中枢は本星にありましたからこれは重要な戦略目標と言えました。二つ目は軌道上に浮かぶコロニー群、これらに居住しているのはほとんどが民間人でしたが、中には軍用ステーションも混じっていました。三つ目は火星の衛星フォボス、ここは火星軍が要塞を築き上げており、火星軍のほぼ全ての部隊がここに集結していました。またフォボスのマスドライバー基地が、地球に向けてあの忌まわしき遊星爆弾の雨を降らせていたのです。当然ながら、提督は三つ目の衛星フォボスを目標としていました。火星本星はいずれ叩かなければいけない目標とはいえ、早急に攻略する必要はありませんでした。コロニー群への攻撃は、民間人を戦闘に巻き込む可能性があったので攻撃目標から除外されました。いくら敵国人とはいえ民間人を戦闘に巻き込むべきではない。戦争に関して、提督はどちらかというと古いタイプの考えを持っている軍人でした。その点において、彼は国連宇宙海軍の善き部分を体現していた人間でした。それに、わざわざ敵が決戦の地を用意してくれているのにも関わらず、それを避けるかのような行為は武人である提督にとっては到底容認できなかったのでしょう。そして我々の主目標もまた、決戦の地にあったのですから。
かくして、後に“フォボス沖海戦”と呼ばれる戦いが勃発しました。旗艦コンゴウ以下、突撃隊は衛星フォボスに向けて突撃を開始しました。当然、艦のエンジンは常に最大出力で運転し続けなければならず、我々機関士は相当苦労させられました。外では両軍の砲火が飛び交い、いくつもの閃光がきらめく中、我々は必死にエンジンと格闘していたのです。
やがて戦闘も半ばにさしかかった時、それまでは何とか運転し続けていたエンジンに故障が発生したのです。とは言っても、その故障はどの艦でも日常茶飯事で起きているようなもので、平時であれば無視していても問題ないほどの小さなものでした。しかし、ここで私の耳に悪魔が囁いたのです。私は戦闘中なのにも関わらず、機関長に「交換用の部品を持ってくる。」と一言告げた後に、勝手に持ち場を離れて見張り所へと向かったのです。
見張り所から私が見た光景は、それまでエンジンに囲まれていた私からしてみれば幻想的にすら思えました。主砲から放たれたエメラルドグリーンのビームが、赤く塗装された火星軍の戦艦をまるで風船を割るかのように一撃で粉砕していました。ガミラス戦役時の記録映像をさんざん見せられた人にはとても信じられないかもしれませんが、当時、高圧増幅光線砲は「4発以上命中すれば撃沈確実。」と言われるくらい強力な兵装だったのです。また、我らがロイヤル・スペース・ネイビーのE級突撃宇宙駆逐艦が、敵の戦闘衛星に肉薄雷撃を行い撃破する様子も見ることが出来ました。ムラサメ型宇宙巡洋艦とヨーク級宇宙巡洋艦が統制砲撃を行い、フォボスの表面に設置された電磁加速砲を破壊する光景も見ました。
ですが、私の中で一番印象に残っている光景は、コンゴウとウォースパイトとの連携攻撃です。一方が攻撃を行っている最中、もう一方は常に反対側を警戒し続け火星軍の接近を許しません。更に二艦の機動も凄まじく、僚艦が随伴できないことがしばしばありました。本当にこの二艦のコンビネーションには圧倒されました。開いた口が塞がらないとは正にあのようなことを言うのだなぁ、などと思ったりもしました。そして私は、このような戦いぶりを見せられる艦の乗組員であることに改めて誇りを感じたものでした。やがて突撃隊はマスドライバー基地に到達すると、保有する全火力をマスドライバー基地に向かって叩き込みました。幾条もの光線やミサイルが降り注ぎました。装甲など無きに等しいマスドライバーが、この攻撃に耐えられる道理はありませんでした。攻撃は数分間続き、その後にマスドライバーは跡形もなく崩壊していきました。我々はその光景を見て歓喜しました。「これで戦争が終わるぞ!」「もう怯えながら空を見つめる必要はないんだ!」そのような歓声が艦内各所から聞こえてきました。私も彼らと同じ気持ちでした。しかし、現実は非情でした。この戦いには、まだ余興が残っていたのです。
火星宙域に、突撃隊より遅れて本隊が到着しました。到着してから直ぐに、本隊旗艦のヴァージニアから一通の電文が突撃隊全艦に向けて発信されました。その内容は次のようなものでした。「突撃隊ノ見事ナル奮戦ニ感謝ス、後ノ任務ハ我々ガ実施スル、諸君ラハ引キ続キ静観サレタシ。」これに疑問を抱いた人間はいませんでした。突撃隊の各艦は既に弾薬を消耗しつくしており、到底次の戦闘を行えるような状態ではなかったからです。しかし、この後に本隊が行ったことを鑑みると、私にはこの通信も我々にくぎを刺したように聞こえるのです。いや、彼らとしてはそのつもりだったのでしょう。彼らが行った行為は、常人なら後ろめたさを感じる程度では済まないことでしたから。
本隊の連中は、我々があれほど戒めた軌道上のコロニー群への攻撃を開始したのです。それも軍用ステーションだけではなく、民間ステーションへも攻撃を行ったのです。私は当初、彼らが何を行っているのか理解できませんでした。何故彼らは民間人を攻撃・・・・いや、虐殺しているのか?その答えは、母なる星地球にありました。当時、地球は火星からの遊星爆弾攻撃に晒されており、多くの市民が地下シェルター(後の地下都市)への避難を余儀なくされていました。鬱蒼とした地下での生活の中、地球市民は怒りの矛先を自然と火星人へ向けていました。そのような状況下、市民の感情は遂に爆発し、一部の人間は火星人の抹殺を唱えるまでになりました。これは地球の血塗られた歴史の再現でした。宇宙に進出するようになってもなお、人類の精神構造は何ら変化を見せていなかったのです。ガトランティスは全生命の抹殺を唱えていたらしいですが、果たしてそれとこれとはどう違うのでしょうか?ただ対象が小さくなっただけではないでしょうか?根本的にやっていることは変わらないと私は思います。
このような経緯があり、国連宇宙海軍は火星への虐殺的な攻撃を自国民と政府に後押しされる形で半ば強引に決定したのです。彼らが行った攻撃は、正に“虐殺”とか“過剰攻撃”などという言葉が似あったものでした。一部の軍用ステーションが僅かな抵抗を行っていましたが、ほとんどが無抵抗のまま爆発に呑まれていきました。後に彼らは「我々は抵抗者を攻撃しただけだ。降伏した者には寛大な処置を与えている。」と発言していました。詭弁もはなただしいものです。私はこの目でしっかりと見ました。火星の民間商船が、白旗を掲げた瞬間に高圧増幅光線砲に撃ち抜かれたところを。無防備都市宣言を出したコロニーが、隊列を組んだ艦隊によって完膚なきまでに破壊される姿を。しかし、本隊の人間全員がこの虐殺的攻撃を行っていたわけではありませんでした。中には攻撃命令を拒否した部隊もあったのです。そしてその中には、ウォースパイトの同型艦であるマレーヤ、バーラム、ヴァリアントの3隻も含まれていました。私は、偉大なるロイヤル・スペース・ネイビーとウォースパイト級が、この非人道的行為に参加していないことがせめてもの救いでした。
――国連宇宙海軍はコロニー群を壊滅させた後に火星本星への攻撃を慣行、首都であるアルカディアシティには無数の弾丸が降り注いだ。特に火星の玄関口との称されたアルカディアポートは徹底的に攻撃され、優雅なデザインの宇宙港は瓦礫へと変わった。準備射撃が終了した後、上空に待機していた強襲揚陸艦より空間騎兵隊が降下、ほぼ廃墟と化したアルカディアシティを占領した。火星政府首脳陣は、半数が砲撃で死亡し残りは降下してきた空間騎兵隊によって確保された。かくして、第二次内惑星戦争は終結したのである―― 
そう、歴史の教科書には書いてあります。ですが、あなたがたには是非とも知ってもらいたい。この光景を見ていた我々がどう感じ、どう思ったかを。
まず、あの後私は営倉にぶち込まれることを覚悟していました。当然です。戦闘中に無断で持ち場を離れたのですから。ですが、いつまでたっても何も起こりませんでした。不思議に思った私は、いつも営倉替わりに使われている空き部屋へと向かいました。(艦内スペースに余裕がないウォースパイトには、専用の営倉を設置する余裕はありませんでした。)するとそこには、本来であれば私をここに連れて来るはずであった機関長が居たのです。どうやら機関長は、コロニー群への攻撃をやめさせようとエンジンを緊急停止させ、それから機関室内に立てこもったらしいのです。隣の部屋に居た砲雷長も、似たような理由でここに入れられているようでした。「正直、あの時俺は本気で奴らを撃沈しようと思ったよ。」そう砲雷長は営倉内から私に話しかけてきました。砲雷長は、残存している火器を使用し、ウォースパイトの傍でコロニー群への攻撃を行っていた中国艦を撃沈しようとしたらしいのです。無論、実際に砲弾が放たれることはありませんでした。艦長が実力で止めにかかったからだそうです。「でさ、艦長が『お前の気持ちは十分に分かる。皆も同じ気持ちだ。だからと言って、皆が勝手な行動をとり始めたらおしまいだ。俺はどうなっても良い。だが、お前らには輝かしい未来があるだろう?』なんて言っちゃってさ。そう言われちゃったら、俺もおとなしくなるしかないじゃないか。畜生め!」そう砲雷長は壁の向こう側に向かって激昂していました。そしてこの次に機関長が言った言葉を、私は永遠に忘れることはないでしょう。「狂ってる。敵も味方も、皆狂ってる。」この言葉が、今の状況全てを表しているのではないかと当時の私は思いました。
第二次内惑星戦争後、私は退役しました。もう戦いはこりごりでした。ガミラス戦役の際には軍に戻らないかとのお誘いも受けました。あの時は人類が一丸となって戦っていたので、正直後ろめたさもありました。でも私は断りました。代わりに私は、戦闘以外で人類に貢献しようとしました。そういうわけで、ガミラス戦役時は地下都市に電気を供給する核融合炉の管理を行っていました。ウォースパイトの核融合炉を扱っていたくらいですから、民間の核融合炉を扱うなど造作もないことでした。ガミラス戦役後もしばらくは核融合炉をいじっていたのですが、やがて私の技術を次の世代に伝えることに専念していきました。その方がより良いと気が付いたのです。そして今から四年前、この街に移り住んで来ました。それからはずっとこの調子です。
「私の話はこれで終わりです。」そう言って、キャメロン氏は立ち上がった。そして彼は窓に近づいた。窓の外には、海岸線とそれに続く大海原が広がっている。既に日はだいぶ傾いており、夕焼けの光が窓から差し込んでいた。窓から差し込んでいる温かい光が、キャメロン氏の体を包み込んでいる。「ウォースパイト、実に良い艦でした。私のような軍人の最期を飾るには余りにも立派すぎる。でもそんな彼女も、第一次火星沖海戦で星の海へと還りました。その後、彼女の名前を継ぐ艦が誕生しましたが、私にとっては彼女こそが・・・・いえ、今もなお火星沖で眠っている彼女だけがウォースパイトなのです。」やがて日は沈み、辺りは漆黒に染まった。私はキャメロン氏にお礼を告げ、彼の家から立ち去った。漆黒の闇に浮かぶさびれた家には、時代の波に呑まれ、そして消えゆく老人がただ一人佇んでいた。

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