地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

金剛型宇宙戦艦――西暦2171年に一番艦金剛が就役して以降、世界中で数多くの同型艦が建造された。しかし、金剛型というのはあくまで極東管区(主に旧日本国領)での呼び名であって、その他の地域では違った呼称であったことはあまり知られていない。これはガミラス戦役後の世界の中心が極東に移ったことも一因であるだろうが、我々は少しでも記憶しておかなければならない。歴史の狭間に埋もれてしまった者達が、一体どのように戦い、そして散っていったのかを。私はジェームズ・リーランド少佐、地球防衛軍情報部第七〇七情報隊所属、歴史を未来に伝える者である。

西暦2210年10月20日 J・L

第一章 初陣

西暦2180年時 国連宇宙軍欧州方面軍所属 ロイ・キャメロン中尉(当時)の回想

私は今、アイルランド島にあるベルファストという街に来ている。ここは港街ということもあって、一昨年のアクエリアス危機(ディンギル戦役)の影響が色濃く残っている地域である。ガミラス戦役後この街は地球防衛海軍の軍港となったが、それ以外には特に何もないさびれた街である。ガミラス戦役以前は何かあったのかもしれないが、遊星爆弾で全てが吹き飛んでしまった今となっては知る由もない。しかし、ガミラス戦役以前のこの街を知っている者が一人、郊外の家で一人寂しく漁業を営んでいた。彼の名はロイ・キャメロン、とても65才には見えない屈強な体付きの男であり、かつては我らがロイヤル・スペース・ネイビーの一員だった漢であった。
「私が軍に居たのは、もうかなり前のことです。おそらく皆さんが一番興味をお持ちであろうガミラス戦役の時、私は既に第一線を退いていました。そのような私に話せることはあまりありませんが、それでもよろしいのですか?」キャメロン氏は、私と玄関で挨拶を交わし、最低限の家具しか置かれていない小さなリビングに私を招いた直後、そう私に尋ねて来た。
「構いません。私が求めているのは、むしろそのような話ですから。」そう私はキャメロン氏に自らの好奇心をありのまま伝えた。この時の私は、この文章を読む読者よりも彼の話に興味があったのかもしれない。
分かりました。それでは、少しばかり老人の長話に付き合ってもらいましょう。まず初めに、私が乗っていた艦の話をさせていただきたいと思います。私が乗艦していたのは、ウォースパイト級戦艦一番艦ウォースパイト。西暦2177年に就役した当時最新鋭の戦艦でした。
ウォースパイト級と名乗ってはいますが、実はこれ我が国・・・いえ、旧英連邦だけの呼称であったのです。あの戦艦の正式な名称は“国連宇宙海軍第三世代型主力戦艦”という、何とも味気無い名前でした。そこで各国は、この戦艦に独自の艦級名を付けていったのです。名前は国によってまちまちでした。今この戦艦を呼ぶときは、その活躍度から極東管区の“金剛型(コンゴウ・クラス)”という呼び名が一般的ではありますが、それ以外にも色々な名前がありました。
例えば、同じ極東管区でも当時中国と呼ばれていた国は、この戦艦を“火竜級(ファイヤードラゴン・クラス)”と呼称していました。この火竜級を中国は合計で16隻建造したらしいです。次に、今は北米管区となっている旧アメリカ合衆国、こちらでは“ヴァージニア級”と呼称されていました。こちらは細かな改修を重ねながら合計で20隻建造され、このクラスでは最大の建造数を誇ったらしいです。その他にも、旧ドイツ連邦共和国の“リュッツオウ級”、旧フランス共和国の“ノルマンディー級”、旧イタリア共和国の“カイオ・デュイリオ級”、旧ロシア連邦共和国の“アルハンゲリスク級”、旧インドの“ヴィクラント級”、旧ブラジル連邦共和国の“リオ・グランデ級”、など世界中で様々な呼称がありました。全ての同型艦を合わせたら70隻くらいは居たと思います。最も、これらの同型艦全てが一堂に会する機会は遂に訪れなかったのですが。もし70隻が同じ場所に集結したら、それはさぞ圧巻であったのでしょうね。
すみません。話がそれました。ともかく、私は戦艦ウォースパイトに栄光ある第一期生として乗り組んだのです。当時私は機関科に所属していましたので、当然ですがウォースパイトの機関室に配属されました。この搭載してある新型核融合炉がまた癖がありましてね、配備された直後はとても苦労したものです。でも最新鋭のエンジンに触れられるというだけでも、当時の私はすごく興奮しました。
やがてウォースパイトに配備されてから3年の月日が流れ、やっとエンジンの扱いにも慣れてきたころ、恐れていたことが遂に現実となりました。そうです、第二次内惑星戦争が始まったのです。少し前から多くのマスメディアが「地球と火星、数年以内に再び開戦か!」などと煽っていましたから、この事を聞いても私は「なんだ、また始まったのか。」と思うばかりでした。実に拍子抜けな言葉ですが、当時の私には戦争という言葉は誇大すぎたのです。
やがて私の初陣がやってきました。地球圏に侵入してきた火星軍を撃滅すべく、月面基地から次々と艦艇が飛び立っていきました。旧英連邦も、保有する4隻のウォースパイト級以下28隻(これは英連邦が保有する艦艇の7割弱に相当しました)の艦艇を出撃させました。もちろん、その中には私の乗るウォースパイトも含まれていました。そして艦隊は出撃してから二日後に火星軍と接触、後に“月軌道会戦”と呼ばれる戦いが勃発しました。
戦いの経緯としては、地球軍と火星軍は互いをほぼ同時に探知、しかる後に同航戦に突入。結果地球軍が圧勝したそうです。というのも実は、私は機関士ですから戦闘中は基本的に機関室に籠っています。戦闘が始まった途端に駄々をこねだすエンジンと向き合わなければならず、気が付いたら戦闘が終わってしまっていたのです。戦闘後、周りは「火星野郎の艦を何隻撃沈した。」だの、「俺の操舵で攻撃をギリギリのところで回避した。」だの会話が弾んでいましたが、私はその会話に加わることが出来ませんでした。それが悔しかった私は、次の戦いの時はこっそり機関室を抜け出して戦闘を見に行こうとさえ思いました。
そして月軌道会戦から数ヶ月後、軍令部である作戦が立案されました。少数の精鋭部隊をもってして火星沖に突入、当時地球に甚大な被害をもたらしていた遊星爆弾(ガミラスの物みたいに放射能が発生するわけではなく、火星軍のやつは単なる隕石です。)の発射基地を破壊する。というものでした。この作戦を聞いた瞬間、我々は飛び上がるように喜びました。何せ今までは地球に襲来する火星軍や隕石の迎撃ばかりを行っていた我々が、初めて攻めに転ずることが出来るのですから。この喜びは兵隊になった者にしかわからないでしょう。
早速、作戦は具体的なものへとなっていきました。火星沖に突入する部隊の指揮官には、極東方面軍所属の提督が任命されました。提督は国連宇宙海軍内で行われる合同演習の際、実に見事な戦法で自軍の三倍以上の敵に勝利したことがありました。それを見た北米方面軍の指揮官は当初「まぐれだ。次はああ上手くはいかんさ。」などと余裕の表情で発言したそうです。最もその自信も、次の演習で彼の部隊が提督の艦隊に全滅判定を叩き出されるまででしたが。このようなこともあって、上層部は彼の能力を高く評価していたらしいです。実際、先の月軌道会戦で一番戦功を挙げたのは彼の艦隊でしたからね。これは余談ですが、彼が旗艦としていた戦艦コンゴウの当時の艦長が、かの有名なアドミラル・オキタだったそうです。オキタの艦長としての能力の高さが、提督にあのような戦法を取らせることを可能にしたのだと思います。
そして我らがウォースパイト号が、栄えある突撃隊に参加することが決定したのです。この事を聞いた瞬間、私の中ではある思いが膨らみました。先ほど申し上げた「戦闘をこの目で見てみたい。」というものです。歴史の一ページに確実に書き込まれるであろう戦いに参加できるのです。どうせなら、特等席で見たいと思うのも自然な気持ちであると思います。
月軌道会戦より四ヶ月後、突撃隊が多くの人に見送られながら月面基地を離陸して行きました。戦艦4隻、巡洋艦12隻、駆逐艦16隻、計32隻の艦隊の姿はとても壮観でありました。突撃隊は月面上空にて艦隊陣形を組んだ後、火星へと進路を向けました。今ならここで敵前へのワープを行うところなのですが、当時はワープ航法など存在しなかったので、突撃隊は進路を欺瞞しつつ火星に接近しました。やがて我々は、火星側にその存在を知られることなく火星宙域に到着することが出来ました。完全なる奇襲でした。そして提督は次のような通信文を全軍宛てに発信しました。「我ラハ来タリ、ソシテ見タリ、誓ッテ共ニ勝タン。全軍突撃セヨ!」
火星宙域には、目標となるべき物が大きく分けて三つありました。一つ目は火星本星、火星政府の中枢は本星にありましたからこれは重要な戦略目標と言えました。二つ目は軌道上に浮かぶコロニー群、これらに居住しているのはほとんどが民間人でしたが、中には軍用ステーションも混じっていました。三つ目は火星の衛星フォボス、ここは火星軍が要塞を築き上げており、火星軍のほぼ全ての部隊がここに集結していました。またフォボスのマスドライバー基地が、地球に向けてあの忌まわしき遊星爆弾の雨を降らせていたのです。当然ながら、提督は三つ目の衛星フォボスを目標としていました。火星本星はいずれ叩かなければいけない目標とはいえ、早急に攻略する必要はありませんでした。コロニー群への攻撃は、民間人を戦闘に巻き込む可能性があったので攻撃目標から除外されました。いくら敵国人とはいえ民間人を戦闘に巻き込むべきではない。戦争に関して、提督はどちらかというと古いタイプの考えを持っている軍人でした。その点において、彼は国連宇宙海軍の善き部分を体現していた人間でした。それに、わざわざ敵が決戦の地を用意してくれているのにも関わらず、それを避けるかのような行為は武人である提督にとっては到底容認できなかったのでしょう。そして我々の主目標もまた、決戦の地にあったのですから。
かくして、後に“フォボス沖海戦”と呼ばれる戦いが勃発しました。旗艦コンゴウ以下、突撃隊は衛星フォボスに向けて突撃を開始しました。当然、艦のエンジンは常に最大出力で運転し続けなければならず、我々機関士は相当苦労させられました。外では両軍の砲火が飛び交い、いくつもの閃光がきらめく中、我々は必死にエンジンと格闘していたのです。
やがて戦闘も半ばにさしかかった時、それまでは何とか運転し続けていたエンジンに故障が発生したのです。とは言っても、その故障はどの艦でも日常茶飯事で起きているようなもので、平時であれば無視していても問題ないほどの小さなものでした。しかし、ここで私の耳に悪魔が囁いたのです。私は戦闘中なのにも関わらず、機関長に「交換用の部品を持ってくる。」と一言告げた後に、勝手に持ち場を離れて見張り所へと向かったのです。
見張り所から私が見た光景は、それまでエンジンに囲まれていた私からしてみれば幻想的にすら思えました。主砲から放たれたエメラルドグリーンのビームが、赤く塗装された火星軍の戦艦をまるで風船を割るかのように一撃で粉砕していました。ガミラス戦役時の記録映像をさんざん見せられた人にはとても信じられないかもしれませんが、当時、高圧増幅光線砲は「4発以上命中すれば撃沈確実。」と言われるくらい強力な兵装だったのです。また、我らがロイヤル・スペース・ネイビーのE級突撃宇宙駆逐艦が、敵の戦闘衛星に肉薄雷撃を行い撃破する様子も見ることが出来ました。ムラサメ型宇宙巡洋艦とヨーク級宇宙巡洋艦が統制砲撃を行い、フォボスの表面に設置された電磁加速砲を破壊する光景も見ました。
ですが、私の中で一番印象に残っている光景は、コンゴウとウォースパイトとの連携攻撃です。一方が攻撃を行っている最中、もう一方は常に反対側を警戒し続け火星軍の接近を許しません。更に二艦の機動も凄まじく、僚艦が随伴できないことがしばしばありました。本当にこの二艦のコンビネーションには圧倒されました。開いた口が塞がらないとは正にあのようなことを言うのだなぁ、などと思ったりもしました。そして私は、このような戦いぶりを見せられる艦の乗組員であることに改めて誇りを感じたものでした。やがて突撃隊はマスドライバー基地に到達すると、保有する全火力をマスドライバー基地に向かって叩き込みました。幾条もの光線やミサイルが降り注ぎました。装甲など無きに等しいマスドライバーが、この攻撃に耐えられる道理はありませんでした。攻撃は数分間続き、その後にマスドライバーは跡形もなく崩壊していきました。我々はその光景を見て歓喜しました。「これで戦争が終わるぞ!」「もう怯えながら空を見つめる必要はないんだ!」そのような歓声が艦内各所から聞こえてきました。私も彼らと同じ気持ちでした。しかし、現実は非情でした。この戦いには、まだ余興が残っていたのです。
火星宙域に、突撃隊より遅れて本隊が到着しました。到着してから直ぐに、本隊旗艦のヴァージニアから一通の電文が突撃隊全艦に向けて発信されました。その内容は次のようなものでした。「突撃隊ノ見事ナル奮戦ニ感謝ス、後ノ任務ハ我々ガ実施スル、諸君ラハ引キ続キ静観サレタシ。」これに疑問を抱いた人間はいませんでした。突撃隊の各艦は既に弾薬を消耗しつくしており、到底次の戦闘を行えるような状態ではなかったからです。しかし、この後に本隊が行ったことを鑑みると、私にはこの通信も我々にくぎを刺したように聞こえるのです。いや、彼らとしてはそのつもりだったのでしょう。彼らが行った行為は、常人なら後ろめたさを感じる程度では済まないことでしたから。
本隊の連中は、我々があれほど戒めた軌道上のコロニー群への攻撃を開始したのです。それも軍用ステーションだけではなく、民間ステーションへも攻撃を行ったのです。私は当初、彼らが何を行っているのか理解できませんでした。何故彼らは民間人を攻撃・・・・いや、虐殺しているのか?その答えは、母なる星地球にありました。当時、地球は火星からの遊星爆弾攻撃に晒されており、多くの市民が地下シェルター(後の地下都市)への避難を余儀なくされていました。鬱蒼とした地下での生活の中、地球市民は怒りの矛先を自然と火星人へ向けていました。そのような状況下、市民の感情は遂に爆発し、一部の人間は火星人の抹殺を唱えるまでになりました。これは地球の血塗られた歴史の再現でした。宇宙に進出するようになってもなお、人類の精神構造は何ら変化を見せていなかったのです。ガトランティスは全生命の抹殺を唱えていたらしいですが、果たしてそれとこれとはどう違うのでしょうか?ただ対象が小さくなっただけではないでしょうか?根本的にやっていることは変わらないと私は思います。
このような経緯があり、国連宇宙海軍は火星への虐殺的な攻撃を自国民と政府に後押しされる形で半ば強引に決定したのです。彼らが行った攻撃は、正に“虐殺”とか“過剰攻撃”などという言葉が似あったものでした。一部の軍用ステーションが僅かな抵抗を行っていましたが、ほとんどが無抵抗のまま爆発に呑まれていきました。後に彼らは「我々は抵抗者を攻撃しただけだ。降伏した者には寛大な処置を与えている。」と発言していました。詭弁もはなただしいものです。私はこの目でしっかりと見ました。火星の民間商船が、白旗を掲げた瞬間に高圧増幅光線砲に撃ち抜かれたところを。無防備都市宣言を出したコロニーが、隊列を組んだ艦隊によって完膚なきまでに破壊される姿を。しかし、本隊の人間全員がこの虐殺的攻撃を行っていたわけではありませんでした。中には攻撃命令を拒否した部隊もあったのです。そしてその中には、ウォースパイトの同型艦であるマレーヤ、バーラム、ヴァリアントの3隻も含まれていました。私は、偉大なるロイヤル・スペース・ネイビーとウォースパイト級が、この非人道的行為に参加していないことがせめてもの救いでした。
――国連宇宙海軍はコロニー群を壊滅させた後に火星本星への攻撃を慣行、首都であるアルカディアシティには無数の弾丸が降り注いだ。特に火星の玄関口との称されたアルカディアポートは徹底的に攻撃され、優雅なデザインの宇宙港は瓦礫へと変わった。準備射撃が終了した後、上空に待機していた強襲揚陸艦より空間騎兵隊が降下、ほぼ廃墟と化したアルカディアシティを占領した。火星政府首脳陣は、半数が砲撃で死亡し残りは降下してきた空間騎兵隊によって確保された。かくして、第二次内惑星戦争は終結したのである―― 
そう、歴史の教科書には書いてあります。ですが、あなたがたには是非とも知ってもらいたい。この光景を見ていた我々がどう感じ、どう思ったかを。
まず、あの後私は営倉にぶち込まれることを覚悟していました。当然です。戦闘中に無断で持ち場を離れたのですから。ですが、いつまでたっても何も起こりませんでした。不思議に思った私は、いつも営倉替わりに使われている空き部屋へと向かいました。(艦内スペースに余裕がないウォースパイトには、専用の営倉を設置する余裕はありませんでした。)するとそこには、本来であれば私をここに連れて来るはずであった機関長が居たのです。どうやら機関長は、コロニー群への攻撃をやめさせようとエンジンを緊急停止させ、それから機関室内に立てこもったらしいのです。隣の部屋に居た砲雷長も、似たような理由でここに入れられているようでした。「正直、あの時俺は本気で奴らを撃沈しようと思ったよ。」そう砲雷長は営倉内から私に話しかけてきました。砲雷長は、残存している火器を使用し、ウォースパイトの傍でコロニー群への攻撃を行っていた中国艦を撃沈しようとしたらしいのです。無論、実際に砲弾が放たれることはありませんでした。艦長が実力で止めにかかったからだそうです。「でさ、艦長が『お前の気持ちは十分に分かる。皆も同じ気持ちだ。だからと言って、皆が勝手な行動をとり始めたらおしまいだ。俺はどうなっても良い。だが、お前らには輝かしい未来があるだろう?』なんて言っちゃってさ。そう言われちゃったら、俺もおとなしくなるしかないじゃないか。畜生め!」そう砲雷長は壁の向こう側に向かって激昂していました。そしてこの次に機関長が言った言葉を、私は永遠に忘れることはないでしょう。「狂ってる。敵も味方も、皆狂ってる。」この言葉が、今の状況全てを表しているのではないかと当時の私は思いました。
第二次内惑星戦争後、私は退役しました。もう戦いはこりごりでした。ガミラス戦役の際には軍に戻らないかとのお誘いも受けました。あの時は人類が一丸となって戦っていたので、正直後ろめたさもありました。でも私は断りました。代わりに私は、戦闘以外で人類に貢献しようとしました。そういうわけで、ガミラス戦役時は地下都市に電気を供給する核融合炉の管理を行っていました。ウォースパイトの核融合炉を扱っていたくらいですから、民間の核融合炉を扱うなど造作もないことでした。ガミラス戦役後もしばらくは核融合炉をいじっていたのですが、やがて私の技術を次の世代に伝えることに専念していきました。その方がより良いと気が付いたのです。そして今から四年前、この街に移り住んで来ました。それからはずっとこの調子です。
「私の話はこれで終わりです。」そう言って、キャメロン氏は立ち上がった。そして彼は窓に近づいた。窓の外には、海岸線とそれに続く大海原が広がっている。既に日はだいぶ傾いており、夕焼けの光が窓から差し込んでいた。窓から差し込んでいる温かい光が、キャメロン氏の体を包み込んでいる。「ウォースパイト、実に良い艦でした。私のような軍人の最期を飾るには余りにも立派すぎる。でもそんな彼女も、第一次火星沖海戦で星の海へと還りました。その後、彼女の名前を継ぐ艦が誕生しましたが、私にとっては彼女こそが・・・・いえ、今もなお火星沖で眠っている彼女だけがウォースパイトなのです。」やがて日は沈み、辺りは漆黒に染まった。私はキャメロン氏にお礼を告げ、彼の家から立ち去った。漆黒の闇に浮かぶさびれた家には、時代の波に呑まれ、そして消えゆく老人がただ一人佇んでいた。

 「堀田真司一尉、本日を持ちまして『ふゆつき』砲雷長に着任いたしました。よろしくお願いいたします」
 「ご苦労、よろしく頼む」

 2192年も押し迫った頃、ガミラス戦役が激化する一方で続々と新造艦艇が建造されていたが、その一隻である磯風型突撃駆逐艦「ふゆつき」に新たな砲雷長が着任した。

 堀田真司。航宙軍士官候補生学校において「宙雷に関しては同期で右に出るものはない」とまで称され、戦術研究科にも選抜されて二年を過ごした秀才である。卒業後はしばらく本土で技術部の新型魚雷開発に協力していたが、間もなくであろうと見込まれたガミラス太陽系遠征軍との戦いに新型魚雷は間に合わないと見切りをつけられてしまい、ついに軍艦乗りとして宇宙に出ることになったのだ。

 当時の「ふゆつき」艦長は水谷信之三佐。このとき34歳で、階級が一つ下なだけの堀田が22歳ということを考えると「出世が遅い」と言われるのは仕方ない。だが、これは本人が無能だとかそういう問題ではなく、本来航海科士官だった水谷は国連宇宙軍の人材不足により宙雷に「転向させられた」ため教育期間が必要だったこと。また本人も戦功を求めて戦うという姿勢を見せず、あくまで戦場全体を見て自分の役割をしっかりと果たすことを志向する性格だったので、自然と地味さが拭えず上層部からあまり重んじられていなかったのである。
 だが、航海長として、そして僅かな経験だが砲雷長として、彼を部下とした士官、あるいは彼の下で戦った将兵たちは水谷を、特にその粘り強さにおいて高く評価しており、派手さはなくともこれからのガミラスとの戦いにおいても貴重な人材になると見る者が多かった。

 しかし、これらの評判いずれも、堀田の耳にはまだ届いていない。というより「そうした評判を耳にすると自分の人を見る目が曇る」という考え方をする彼にとって、自分を含めて軍において誰それがどうのという評判はあまり関心のないことであったのだ。

 形通りの挨拶を終えてから、堀田は水谷に艦長室……といっても申し訳程度の狭い個室だったが、そこに案内された。

 「君は、まだ戦場に出たことがなかったな」
 「はい、恥ずかしながら……」
 「そんなことは言わなくていい。後方で軍務に服すことも立派な役割であるのだから、堂々としていればよい。ただ……」
 「?」
 「今の国連宇宙艦隊には、苦戦続きのせいもあろうが若者たちを馬鹿にする傾向が見られる。正直よいこととは言えないし、私はこの艦においてそれは許していないつもりだが、君も侮られることがあるかもしれない。覚悟しておいてもらえるとありがたい」
 「はい」

 堀田の答えに、水谷は満足そうな表情を見せる。正直、風貌だけでも地味な人だと思わず堀田が思ってしまうような相手ではあるが、こうして話をしてくれるあたり、信頼に値する艦長であることは間違いないだろう。

 (自分は、どうやら恵まれたところからスタートすることになったようだ。後はそれに慢心しないことだな)

 艦長室から退室したとき、堀田はそう思っていた。


 そして、それからの「ふゆつき」での堀田の暮らしは、ある意味で地獄であったし、ある意味で納得できるものだった。

 何しろ訓練が凄まじく過酷なのだ。もちろんこれはガミラス戦役の厳しさから当然のことと堀田は思うのだが、さすがに体がついて行かなくなることも多々あった。この激しさは、士官学校で「鬼」と呼ばれる校長から教わったはずの彼でも「厳しい……」と思わず口に出かけたほどであった。
 だが、よいこともあった。水谷は「自分はこの艦で若者を侮ることを許していない」と語っていたが、その言葉の通り、自分より年上の乗員がほとんどを占める「ふゆつき」で、堀田は若さを理由に侮った態度を取られたことは、上下いずれを問わず一度もなかった。
 この「周囲に侮られることなく任務に専念できた」というのは幸運としか言いようがないが、後に堀田が指揮官となったときに自分の「ふゆつき」時代を顧みて行動したため「堀田さんは人を分け隔てなく扱ってくれる」という部下からの信頼を勝ち得る大きな財産となったのである。


 「お前さん、専攻は宙雷だよな?」

 ある日、堀田は先任将校である航海長からそう声をかけられた。

 「はい、そうです」
 「その割には、なかなか砲術もやるじゃないか。俺も別の艦で何人か砲雷長を見てきたが、お前さんほどうまく当てる奴はそういなかったもんだ」
 「恐縮です……士官学校の同期に砲術専攻の友人がいまして、彼から色々教わりましたので」

 その「同期の友人」には自分も宙雷戦術を教えていたが、それはここで言うことでもない。

 「へえ、男の友情ってやつはいいもんだよな。だけどな……」

 急に、航海長の声のトーンが下がる。

 「?」
 「……いや、俺も士官学校で友達になった奴は結構いたんだがな、もう半分も生き残っちゃいない。あのガミ公の悪魔にみんなやられちまった」
 「……」
 「俺は、船を動かすことしか能がないから、敵討ちと行きたくても大砲もミサイルも打てやしない。なあ、砲雷長さんよ。この艦の次の実戦がいつか知らねえけど、そんときは敵の1隻くらいは沈めてやってくれよな」
 「……わかりました、努力します」

 頼んだぜ、と言いながら去っていく航海長だったが、堀田は振り向くことすらできなかった。航海長の望む「敵の1隻くらいは沈める」ということが、実は絶望的に難しいと知っていたからである。

 彼は若いながらも雷撃戦の専門家であるし、それ故にしばらくは研究家としての活動が続いていたのだが、とにかくレーザー砲もミサイルも現状、ガミラス艦の大小を問わず殆ど通用しないのだ。訓練においてこれまで何とか撃沈したガミラス艦の装甲を参考にした仮想標的に砲撃や雷撃を加えても、それこそ体当たり寸前の近接戦闘でなければ貫通しないのである。たった今、会話した航海長と水谷艦長は操艦の名手だと堀田は知っていたが、それでも「体当たり寸前まで接近してください」とは言いにくかった。

 「砲雷長」

 水谷に声をかけられた。

 「あ、艦長」
 「何か考えていたか? ぼんやりしているようにも見えたが」
 「いえ、少し考えていました」
 「何をだ?」
 「……敵の装甲を撃ち抜く手段を。しかし、思いつきませんでした」
 「そうか」

 深刻な問題だが、水谷はいつもの物静かさを崩さなかった。

 「その前に砲雷長。一つ、君について気になることがあるんだが」
 「何でしょうか?」
 「君は、私たち……この「ふゆつき」の乗員たちを本当に信頼してくれているのか?」
 「えっ……それはいったい?」

 そんなことは考えたことがなかった。堀田にとって「信頼している」のが当然のことであって、水谷始めこの「ふゆつき」に乗艦している人たちを疑ったことなどないのだ。
 言葉に詰まる堀田に、水谷は続ける。

 「堀田君、信頼とは言葉にしないと通じないことがある。もちろん、人間であるから言葉にしにくいこともあるし、時に何もなくとも察さねばならないこともあるだろう。だが、まずは行動第一だが、必ず言葉も示せ。君はこれから士官として多くの将兵を率いていくことになる。私のような言葉足らずになってほしくないものだな」
 「……」

 反論の余地がなかった。堀田の性格が元々無口だったということもあるが、これまでの彼は「やるべきこと」とは「命令されてやること」であって、自分の考えを口にするということではなかったからである。この二か月あまりの訓練の間で、そんな堀田の問題点を水谷は正確に見抜き、そして自分と照らし合わせて「それではいけない」と指摘したのだから。

 「申し訳ありません」
 「謝ることはない、私は自分がうまくできないことを君にしろと言っているのだから」
 「いえ、艦長。お言葉、大変ありがたく思っています。堀田一尉、これからは話すべきときは話すよう注意して参ります」
 「よし、わかってくれればそれでいい。頼むぞ」

 はい、と答えつつ敬礼しながら立ち上がろうとした堀田の胸のポケットから、一枚の紙が舞い落ちる。一瞬、しまったと思ったが水谷はそれを見逃さなかった。

 「砲雷長、それは?」
 「い、いえ、何でもありません」
 「そうか?」
 「はい、その……」
 「お、砲雷長が何か隠し事しているぞ」
 「そいつはいかんな。艦長、ここは艦長権限で砲雷長の隠し事を明らかにしましょう」

 さっき去っていったはずの航海長も含めて、何故か「ふゆつき」艦橋に普段詰める面々が集まってきていた。このとき、堀田の顔は真っ赤になっていた。
 軽く咳払いをして、水谷がにやりと笑って口を開いた。

 「砲雷長、艦長命令である。その落ちた紙を私に見せてくれたまえ」
 「……了解しました」

 艦長命令である以上、否やはない。堀田は水谷に紙……写真を差し出し、それに「ふゆつき」の艦橋要員たち全員が目をやる。

 「これは、別嬪さんだな」

 堅物の水谷ですら、思わずそうつぶやく綺麗な女性がその写真には写っていた。

 「お、砲雷長の恋人さんかな?」
 「ほう、我が艦の若手筆頭さんも隅に置けないな」
 「こいつぁ美人さんだ、こんな人を放ってあの世に行ったら罰が当たるぞ、なあ砲雷長?」
 「……」

 散々言われ放題で、堀田は結局何も言えなかった。しかもそればかりか、しばらくはその写真の女性……婚約者の高室奈波についてあれこれ聞かれ続けるという、これまでの訓練より厳しいとしか思えない状況に放り込まれる羽目になったのであった。


 そんな喧噪が一段落してから、堀田は水谷と航海長に相談を持ち掛けた。

 「接近戦で魚雷などの実弾を打ち込む、これでガミラス艦の小型艦までなら一定の効果が見込めます。そのための操艦は可能でしょうか?」

 彼自身が考えたように、実弾とはいえ殆ど体当たりに近い接射が必要なのである。もちろん1隻沈めても自分たちが沈められてしまっては、その戦法に全く意味はない。接近しつつ敵弾を回避し撤収する、そんな高度な操艦が要求されるのだ。

 「何だ、そうならとっとと言ってくれればいいじゃねえか」

 航海長が自信満々に言うのを、水谷は黙って聞いていた。

 「つまりあれだろ、魚雷を叩き込めれば何とかなる可能性はあるってことだな?」
 「そうです。それも本来の魚雷の性能を無視して、現地改造で射程を犠牲にして推進エネルギーを全て雷速に注ぎ込む。まだ理論上でやったことはありませんが、これなら僅かですが可能性はあります」
 「よし、ではやってみるとしよう」

 水谷が断を下す。

 「だが、魚雷の改造となると難しそうだが、見通しは?」
 「私も魚雷開発に携わっていましたので……応急改造で作業は危険ですが、不可能ではないかと」
 「わかった、ならば技術長から許可を貰ってくれ。それが駄目ならこの話はここまでだが、許可が下りれば私に異論はない。砲雷長の思うようにやってくれ」
 「はいっ!」

 堀田は「ふゆつき」の技術長に相談を持ち掛けたが、苦戦続きである前線を知っていた技術長も「やむを得ない」と判断してくれて魚雷の改造が許可され、早速、技術科員たちから志願者を募って魚雷の改造が行われた。
 幸い、改造中に爆発事故などは起こさず、堀田が考案した「応急改造の雷速に全振りした魚雷」が「ふゆつき」に搭載され、実験の日取りも決まった。ただ、この実験は上位組織には許可を取らずに行われることになった……これは「上申してもまず許可されないだろう」と水谷が判断したからだが、そのため「ふゆつき」単独の臨時訓練で密かに試験することになったのだ。

 「ふゆつき」は単独で演習場である月軌道に到着、そこに配置されていたガミラス艦の装甲に見立てた標的を捕捉した。

 「よし、航海長と砲雷長、頼んだぞ。『ふゆつき』全速前進!」

 水谷の命令一下「ふゆつき」は突撃機動に入る。

 「砲雷長、かなり荒っぽいがちゃんと当ててくれよな!」
 「了解しました!」

 堀田も大声で応じる。そして「ふゆつき」は水谷の適切な指示と航海長の巧みな操艦によって、標的から発射される訓練用エネルギー弾を絶妙に回避しつつ、徐々に装甲標的に近づいていった。

 「目標、距離500、400、300……」

 船務長が「まだなのか」と言いたげに距離を告げる。

 「200、100!」
 「魚雷、テーッ」

 やっと、堀田が魚雷の引き金を引く。直後、全速突撃状態だった「ふゆつき」は装甲標的を衝突寸前ギリギリのところで回避していた。

 「砲雷長、戦果確認を」
 「はいっ」

 水谷の命で、堀田は直ちに装甲標的の分析を行う。しかし……

 「……装甲、貫通を確認できず」

 「ふゆつき」艦橋の要員、特に堀田は落胆を隠せなかったが、水谷はただ一言「そうか」としか言わなかった。

 「砲雷長、技術長と共に原因を分析してくれ」
 「了解しました」

 技術長と共に艦橋を出ていく堀田だったが、その表情は真っ青になっていた。


 そして数時間後、装甲標的の分析を終えた堀田は、艦長室にいた水谷に報告した。

 「魚雷の頭部が起爆前に破砕したのが、標的を貫通できなかった理由でした。……申し訳ありません、私の計算ミスで現状の魚雷では雷速に耐えられないということに気付けませんでした」
 「……」
 「艦長、私を何かしらご処分願えないでしょうか?」
 「……理由は?」

 ここまで、あくまでも水谷は静かな口調だった。

 「魚雷の改造という危険な作業に技術科の要員に手伝ってもらいながら、何の成果も出せませんでした。また艦長や航海長の操艦のおかげで事なきを得ましたが……」
 「堀田君」

 水谷が堀田の言葉を遮った。

 「私は、君はよくやった、と褒めてやりたいところなのだがな」
 「えっ? ですが、私は失敗したのですが」
 「確かに実験は失敗した。しかし、君は自分の言う『危険な作業と操艦』を皆に実行させるのに何のためらいも覚えさせなかった。これがどういうことか、理解できるか?」
 「……いいえ」

 堀田の答えに、水谷は軽くため息をついた。

 「そこがわからんのが君の未熟だな。いいか、もし君が『砲雷長として乗組員に信頼されていなかったら』、誰がこんな成算があるかどうかわからない実験に付き合うと思う? 私を含め、今度のことで本艦が犯した危険全てが『君への信頼の証』と考えることはできんか?」
 「あっ……」

 確かにその通りだ。危険な操艦を引き受けた航海長、危険な魚雷の改造を請け負った技術科、そして上層部に秘匿してまで全てを容認した艦長。彼らがまだ着任二か月ほどの堀田を「信頼に値する砲雷長」と見ているのは明らかだった。

 「も、申し訳ありませんでしたっ!」

 今にも泣き出しそうな気持ちで頭を下げる堀田だったが、その彼に水谷は「まあ、座りたまえ」と着席を促した。

 「正直、君は不思議な男だよ」
 「え?」
 「着任二か月の砲雷長と考えれば、君の行動に誰かが反対すると私は思っていた。だが、失敗それ自体を他の乗組員たちがどう思っているかはともかく、事前に誰一人、君に『反対はしなかった』からな」
 「……」
 「私は、これでも色々な部署や艦を渡り歩いて、色々な人間を見てきた。だが、君のような……褒めすぎかもしれんが『人を惹きつける器』を持った男は見たことがない。君は生き残ってさえいれば、いつか地球のために大きな仕事をすることになるかもしれんな」
 「そんな……買い被りすぎです」

 戸惑う堀田に、水谷はまた「にやり」と笑って見せた。

 「君は私の人を見る目も疑うのかね? 安心しなさい、これでもその方面は悪いほうではないと自負がある」
 「……」
 「だから、君には特に言っておく」

 水谷の表情と口調が、今度は真剣なものに替わった。

 「今後実戦において、決して無駄死にになるような戦いをしてはならない。それが君のためでもあり、君に率いられる将兵、同僚たちのためでもある。そして、君はいつかそうした戦いができるようになると私は信じている。このことを忘れないでくれ」
 「……はい」

 堀田は立ち上がり、敬礼した。

 「艦長のお言葉、堀田真司、肝に銘じます」
 「そう、それでいい」

 水谷が頷き、そして用事が控えていた堀田が退室しようとしたその時、声がかかった。

 「あと、写真のあの綺麗なお嬢さんのためにもな」

 堀田は顔を赤くして「失礼しますっ」と逃げるように艦長室を後にした。


 水谷信之という人は、ガミラス戦役からディンギル戦役、更にそれ以降の戦役すら戦い抜いた古参の将官、そして「ヤマトの最後を看取った男」として知られる人物だが、肝心なところで負傷したり所属部隊に恵まれなかったりして、出世が遅れたまま50代を迎えることになった、ある意味で不運な提督であった。
 そして後年、その彼を最終的に将官として推薦し、自分の率いる部隊の副将格として登用を願い出たのは、実は階級で水谷を追い越してしまっていた堀田だった。

 「私の今があるのは、土方さんと沖田さんと山南さん、そして水谷さんのお陰です。あんな立派な識見と覚悟のある方を埋もれさせてしまうのは、防衛軍にとってあまりに惜しすぎます」

 水谷を将官に推薦する際、堀田はそう述べた。そして堀田が将官として「公正さという点で後ろ暗さが全く見受けられない」とまで称されたのは、若き日の「ふゆつき」で学んだ「人との信頼関係の大切さ」が大きかったのではないかと、後年、堀田真司という軍人を研究する学者たちの多くが認めるところなのは紛れもない事実である。


あとがき

 筆者が好きなヤマトキャラの中で随一の地味さを誇る?水谷「冬月」艦長(メ号作戦時に「ふゆつき」がいた(=それまで沈んでいない)ので、その艦長にもしてしまいました)が登場です。下の「信之」の名は筆者オリジナルで戦国武将の真田信之に由来しており「苦労が多いが我慢強く生き残るキャラ」という意味でつけました。まだこの時点では34歳ですが、自分作成の年表だとヤマト自沈時(完結編)では50歳になっているんですよね…台詞を書いていると、懐かしい小林修氏の声で脳内変換されてちょっと嬉しかったです。
 水谷艦長は本編でも生き残るキャラなので、外伝小説においてまれに登場したりすることがあると思います。そしていずれは主要キャラとして経験豊富な水雷戦隊指揮官として活躍してもらうつもりでいますので、いつになるかわかりませんが楽しみにしていただければと思います。

 なお、航海科から宙雷科に移籍、というのは、史実日本海軍の木村進提督(二度、駆逐艦部隊である第十戦隊を率いた海軍最後の水路部長)を参考に設定しました。この設定を決めた後に同じような設定がされた小説を拝見して変えようとも思いましたが、せっかくなのでそのままにしました。問題があるようでしたら考え直しますので、ご了承いただければ幸いです。

 旧作では2201年だった「さらば」「2」が2202年末~2203年になったので、当然それくらいの尺度で旧作ではややタイト気味だった後期作品の年表を設定し直す必要が出てきます。ということで、色々な方と雑談などしながら簡単に作ってみたのでご覧いただければと思います


2191年 ガミラス戦役開始

2193年 第一次、第二次火星沖会戦

2199年 メ号作戦 ヤマト、イスカンダルへ発進(帰還は12月8日)

2200年 地球・ガミラス平和条約締結
    同時に、地球とガミラスは辺境星域でガトランティス軍との戦闘を共同で行うようになる

2201年 (本編としては何もないが、ガトランティスとの小規模な交戦状態は継続中の見込み)

2202年 アンドロメダ完成 年末にヤマト、テレザートに向けて発進

2203年 ガトランティス戦役開始 年内にズォーダー大帝が戦死するも残存軍が太陽系に残留

2204年 ガトランティス残存軍との戦闘中、ガミラス・イスカンダル危機勃発(「新たなる旅立ち」とゲーム版「イスカンダルへの追憶」を一部改変する?)

2205年 (年初頭の予定)暗黒星団帝国、地球へ襲来(永遠に ガミラス・イスカンダル危機終結から程なく暗黒星団帝国は攻めてくると予想)

2206年 (地球復興の度合いから年半ば以降?)太陽の核融合異常増進発生(Ⅲ)

2207年 太陽の核融合異常増進停止 年末くらいに銀河系大災害発生 

2208年 ディンギル戦役勃発 ヤマト自沈(完結編)
    地球&民主ガミラス&ガルマン帝国の三国同盟が正式に締結(筆者創作の予定。あるとしたら仲介者は地球ということになりそう。あと、これも予定ですがボラー連邦と決着をつける戦争をするならこれが契機かも)


 ガミラス・イスカンダル危機でガミラス本星がどうなるか、というのが2202完結でデスラーがどうなるか確定するまでは未定なので、最後の三国同盟が成立するかは正直不明です。民主ガミラスの本星が崩壊してその市民をデスラー率いるガルマン帝国が引き取る(統治は民主ではなくても旧ガミラスよりは穏健だろうと)という可能性も考慮の余地があります

 一応、このように作った上で艦艇史や外伝小説などの創作を行っている&今後も行っていく予定ですが「ここはこうではないか?」と何かご意見ありましたらコメント欄への書き込みないしツイッターにてよろしくお願いします

A型戦艦に続く主力戦艦

 2208年現在、少数ながら地球防衛艦隊の戦艦戦力の中核を担うB型戦艦は、当然ながら防衛軍戦艦史における立ち位置は「A型戦艦に続く地球防衛艦隊の主力戦艦」となる。
 しかし、B型戦艦の建造が計画された経緯を紐解くと、A型戦艦の建造計画、特に当初のそれと明確に異なる点が一つ存在することがわかる。それは、A型戦艦の建造計画はあくまで「大口径陽電子衝撃砲を装備し敵戦艦に対抗可能な艦を建造するためのもの」であったのに対し、後にB型戦艦として実現する新戦艦計画は「完成した新型波動砲を搭載するために、新戦艦を建造する必要が生じたため計画されたもの」ということである。


新型波動砲の開発

 この事情から、まずは本艦が装備した通称「爆雷波動砲」(「拡大波動砲」とも呼ばれるが、混乱を避けるため本文ではこの呼称で統一する)の説明から始める。この部分は「コスモ・ウイングス」第三部第一章に記述されたものを筆者が要約などしたため、あちらも参照していただければ幸いである。

 拡散波動砲の開発中から、防衛軍の一部には「ガミラス戦役の戦訓から、固定目標への破壊力を重視した波動砲を別に開発すべきではないか」という意見は存在していた。しかし最初の波動砲である九九式一型次元波動集束砲(ヤマトが最初に装備した波動砲)より固定目標への威力を追求した波動砲の開発を目指したとしても、当時の地球防衛軍の戦略構想が「太陽系に侵攻してくる敵艦隊の迎撃」に重点を置いていたこと、そして当時から現在に至るまで達成されていない「タキオン式波動砲によって次元爆縮式(と通称されるヤマトの搭載する)波動砲をエネルギー集束率で上回る」という課題の解決に全く目途が立たない状況だったため、結果「一式タキオン波動拡散砲」として拡散波動砲が完成してからは、タキオン式波動砲の研究はその威力増大に目的が絞られて細々と行われる(僅かながら実験用の艦艇が建造されたようだが、詳細は現在不明である)こととなった。

 その結果、拡散波動砲搭載艦が艦隊に配備され始めた当時の防衛軍は「拡散波動砲による敵艦隊撃滅を最優先とし、固定目標には多数の艦による波動砲の一斉射撃によって対処する」と決定した。この時期に建造された戦艦は元より、連合艦隊司令部など実戦部隊の一部から批判されながらも巡洋艦や駆逐艦にすら規模を問わず波動砲が装備されたのはこうした事情によるものである。

 ともあれ、次世代型波動砲の研究自体は継続して行われることとなった。当時の記録を要約すると「集束率の向上も含めて、今後の発展を見越した研究を絶やすわけにいかない」という苦しい状況が伺えるのだが、その研究の中で比較的早期に「集束型と拡散型の波動砲をハイブリッド化してはどうか」という提案がなされている。
 これは、波動砲の威力ではなく汎用性の向上を目指したものだったが、元々予算や人的資源の限られる防衛軍としては、1隻で集束波動砲と拡散波動砲の両方が使用可能な戦艦が建造できる可能性が生じるのは魅力だった。そのためこの提案は採用され、後に「爆雷波動砲」となる新型波動砲の具体的な研究が開始されることとなった。意外なことだが、これはガトランティス戦役勃発前という早い時期に開始された作業である。

 だが、ガトランティス戦役の結果、研究中のハイブリッド式波動砲が内包していた問題点が早期に発覚し、開発陣はその対策に追われることとなる。
 元々、集束波動砲と拡散波動砲はエネルギー集束装置の特性以外に極端な違いはないため、やろうと思えばA型戦艦など拡散波動砲搭載艦が波動砲を集束モードにして発砲することも不可能ではなかったし、実戦でも必要に迫られて何度か行われている。しかし、その戦訓から「既存の拡散波動砲搭載艦を用いて集束モードで発射した場合、元々エネルギーの拡散を前提としている砲を搭載しているため、集束モードの威力に著しい不足がある」と指摘され、更に「現状、集束および拡散波動砲双方において、全般的な威力および射程の不足、エネルギー充填時間の長さなど問題があり、早期の解決を求む」という、ただでさえ新型砲の研究に悪戦苦闘している技術陣にとっては無理難題と言うべき要求も艦隊側から付け加えられていた。
 当時は地球本土にまで被害が及んだ大戦役が終結したばかりの混乱期であり、しかも太陽系外惑星にはガトランティス帝国の残存軍が相当数残っている状況だったから、再び新型波動砲の計画は頓挫するのかと技術本部は焦りを隠せなかったようで、その様子は残された当時の資料からも伺える。

 だが(不謹慎ではあるが)、ここで技術本部にとってある僥倖がもたらされた。ガミラス・イスカンダル危機が勃発し、地球に援軍を要請したガミラスから、それまでガミラス側が秘匿しており地球独力では完成させることができなかった連続ワープ機関の詳細な技術が供与されたのだ。
 結果、研究中だった連続ワープ機関の実用化に目途が立ち、同時に波動機関そのものの出力向上が見込めることとなった。そして、この連続ワープ機関に関連した技術を応用することによって、拡散波動砲の威力を増強するための増幅装置、それもアンドロメダ型戦艦に搭載された大型のものをA型戦艦のそれと同等レベルにまで小型化が可能であると研究で判明したのである。

 これを受けて、技術本部は新型波動砲の改良を開始し、同時に実用テストを兼ねて、建造中の改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」の集束型波動砲に改造を加えて本格的な集束率の変更を可能とし、同艦から得た戦訓も設計に反映させることを決定した。
 「ドレッドノート(Ⅱ)」はガミラス・イスカンダル危機時は太陽系でガトランティス帝国残存軍との戦闘に従事していたが、戦闘詳報で波動砲の威力と射程にまだ若干の不足がある、およびエネルギー充填時間が向上していないことを問題視する一方で「状況に応じて波動砲の集束率を変更できることは、戦略的にも戦術的にも極めて有効と認める」と報告した。改良が必要とはいえ新型波動砲が有効と判定されたことに技術本部は安堵したが、同時にガミラス・イスカンダル危機における別の戦訓が問題となった。
 それは、新たな敵となった暗黒星団帝国軍が保有する、ウラリア式制圧自動惑星「ゴルバ」との交戦記録だった。このガトランティス都市帝国ほどではないが艦艇に比べれば超大型の兵器には、エネルギー集束率という点で地球の技術陣にとって羨望の的とも言えるデスラー砲すら効果がなかった、というのである。

 後の調査で、デスラー砲が無効化されたのは暗黒星団帝国軍が多用するエネルギー偏向バリアが原因と判明したが、この結論はむしろ「偏向バリアを超越する程度に既存波動砲を強化する必要がある」という要求にも繋がった。そのため新型波動砲を担当する技術者たちは「射程の向上、広範囲かつ効率的なエネルギー拡散、従来のタキオン集束型波動砲を上回る破壊力」という三つの難題に早期に取り組むことを余儀なくされることになったのだ。
 結論から書いてしまうと、自動惑星に対抗する波動砲としては、暗黒星団帝国戦役直前に大改装が行われたヤマトの波動砲を改造した通称「新波動砲」が担うことになったが、本題からは外れるのでここでは触れない。ただ、もちろん新波動砲とは異なる「開発中の別の新型波動砲」の集束モードの強化は極めて重要と考えられていたし、射程および拡散モードの威力の向上も必要であることに変わりはなかった。

 結局、技術本部は力技と言うべき方法でこの問題の解決を図ることになる。新技術で可能とされた波動砲エネルギー増幅装置の小型化を放棄し、アンドロメダ型戦艦のそれと同等の規模を維持する代わりに性能を大幅に向上させ、三つの難題すべてを一気に解消することにしたのだ。
 暗黒星団帝国戦役の勃発で試作砲の制作が中断する事態も発生したが、戦役終結後に技術陣は今度は暗黒星団帝国軍の戦艦「グロテーズ」級に搭載されていた無限β砲をも参考にして威力、射程を強化した試作砲を完成させ、試験に供した。結果は集束、拡散モード双方で威力と射程が向上、エネルギー充填時間の大幅短縮という満足すべきものに終わり、これを受けた防衛軍はこの新型波動砲を制式兵器として採用し「四式タキオン波動集束可変砲」の名称を付与した。
 (なお、このとき制作された試作砲は当時建造中だった汎用戦艦「アリゾナ」に転用されている)

 しかし、この新型波動砲の完成には大きな代償が伴った。それは、エネルギー増幅装置の規模をアンドロメダ型戦艦と同程度にしたため、既存のA型戦艦と同大の艦には搭載が不可能となったのである。そして、これらの現有戦艦に改装を行う、あるいはA型戦艦を再び量産して新開発の波動砲が搭載することができないなら、この砲をどのように活用すべきなのか。
 申し訳程度の議論が行われたが、結局「新型戦艦を設計し、A型戦艦に替わる主力戦艦として整備する」という結論を防衛軍首脳部が出すのに、さほど時間はかからなかった。


爆雷波動砲のための新戦艦

 開発が終了した四式タキオン波動集束可変砲には、現在「爆雷波動砲」あるいは「拡大波動砲」という通称がつけられている。この「爆雷」というのは水上艦艇が対潜用に装備した爆雷が「爆発する深度が調整できる(後述の爆雷モードではエネルギー拡散地点の精密な調整が可能である)」ことにちなんで名づけられたという説もあるが、事実かどうかは判然としない。繰り返すが混乱を防ぐため、前述の通り本文では「爆雷波動砲」で統一する。
 ただ、実験の過程で既存の集束、拡散いずれの波動砲とも弾道特性が異なることが判明したため、開発当初に予定された「集束モード/拡散モード」という区分けが、最終的に「拡大モード/爆雷モード」に変更されたのは間違いなく、現在も発射時のヒューマンエラーを防ぐため、拡大モードでの発砲時は「拡大波動砲」、爆雷モードの際は「爆雷波動砲」と艦隊内で呼び分けているのも確かである。

 さて、爆雷波動砲の搭載を前提とした新戦艦の設計要求は、ただちに参謀本部から艦政本部へと持ち込まれた。しかし艦隊戦力が激減している状況での参謀本部の焦りを反映するかのように、この要求は「四式タキオン波動集束可変砲を搭載し、同時に戦艦としての任務が遂行可能な艦を設計せよ」という、かなり大まかなものであったようだ。
 これにはさすがに艦政本部も困惑したようだが、まず爆雷波動砲を搭載すると船体規模がどの程度になるか試算が行われた。その結果「全長340m程度、重量は最低でも9万トン近くになる」との結論が出たが、従来の主力戦艦であるA型戦艦どころかヤマトすら僅かながらも上回る大型艦になるというこの試算に、今度は参謀本部のほうが面食らったといくつかの資料が伝えている。
 とはいえ、どのみち爆雷波動砲を搭載するために新戦艦を建造するのだから、この大型化は避けられないと参謀本部は割り切るしかなかった。もちろん、これでは建造費が高騰しA型戦艦ほど数量が揃えられないのは明白だったが、最終的には艦隊側からの「予算の都合で量的確保が難しければ、最低でもプレアデス級戦艦(暗黒星団帝国の旗艦型戦艦)、可能であればグロテーズ級戦艦に単独で対抗できる戦力を有する艦をできる限り多数建造することを望む」という要求が決め手となり、参謀本部はこれに沿った戦艦の設計を艦政本部に下命した。

 当時の防衛軍の保有戦艦は6隻(ヤマト及び各国で建造中の汎用戦艦は除く)まで減少しており、戦力の補充が急務であること。また、ある程度の試算を事前に行っていたことも幸いして、艦政本部は昼夜兼行で早期に新戦艦の要目を以下のようにまとめ上げた。


全長     346m
全幅     93.8m
船体重量   87,900トン
乗員     165名(戦時最大定数、90名程度で戦時運用は可能)
主機     タキオン式次元波動機関 1基
補機     大型ケルビンインパルス機関 1基(艦底部)
       埋め込み式小型ケルビンインパルス機関 2基(艦後下方両舷バルジ内)
波動砲    四式タキオン波動集束可変砲 1門
主砲     五式48cm三連装集束圧縮型衝撃波砲 3基9門
対空兵装   三式76mm連装パルスレーザー砲 16基32門(艦橋構造物両舷)
       埋め込み式25mm単装パルスレーザー砲(艦各部に多数)
ミサイル兵装 三式大型魚雷発射管 単装2基2門(艦首)
       一式三型魚雷発射管 単装6基6門(艦中央部両舷に後方へ向けて配置)
       九九式二型改一垂直軸ミサイル発射管 単装8基8門(艦底部)
       一式小型魚雷発射管 単装6基6門(艦首)
爆雷兵装   四式八連装波動爆雷投射機1基 8門(後甲板)
搭載機    一式三二型空間艦上戦闘機「コスモタイガーⅡ」12機
       (このうち2機は偵察機仕様)
       九八式汎用輸送機「コスモシーガル」2機
       救命艇2機、その他救命ボートなど


 実に9万トン近い大型艦となったが、参謀本部としても既にこうなることが試算でわかっていた以上、他に選択肢もなかったようである。この設計案は若干の修正を加えられたのみで採用され、このとき「B型戦艦」という名称が付与された。


船体構造

 B型戦艦は任務に関してはA型戦艦の直系にあたるが、技術的な系譜としてはこれまでの地球型戦艦と大きく異なり、本型より先に建造が開始されていたC型駆逐艦で大規模に採用された「箱型ブロックユニット構造」が使用されており、建造期間の短縮と軽量化が同時に図られている。そのため既存の地球防衛軍艦艇に比して曲面部分が少ない船体となっており、1番艦が披露されたときは話題になったと伝えられる。
 装甲厚などは機密のため不明であるが、船体構造がやや脆弱で後に補強を必要としたA型戦艦の反省から、ブロック方式といってもその構造は極めて強固なものとされ、装甲外鈑もA型戦艦より特に主要部が増厚されたようである。この効果があったのか、少なくとも就役当初は艦隊側も「十分な防御性能である」と高く評価している。

 中央部のバルジ形状の部分は、波動砲の速射時における放熱装置と艦載機格納庫のスペースとなっており、発進口は艦底に配置された。なお、本艦はコスモタイガーⅡ12機の搭載が可能であったが、設計の段階で「偵察機と輸送機、救命艇などを除いた固有の戦闘機は搭載せず、基地航空隊の燃料、弾薬の補給地点として格納庫を用いる」とされており、一部の作戦を除いて自艦所属の戦闘機隊を搭載したことはない。
 主砲、艦橋構造物の配置はほぼA型戦艦を踏襲しているが、通信設備の強化のため各所にアンテナが追加されている。ただ三番砲塔後方上部に伸びたアンテナは「三番砲塔の射界を制限する」と問題視され、ディンギル戦役後に残存していた艦と以後の建造艦のみ艦尾下方に配置を変更している。
 艦橋は一見すると背の高い大型のものに映るが、これはレーダーのアンテナ配置によってそう見えるだけで、実際は比較的コンパクトにまとめられている。旗艦としての能力に関しては、当時の防衛軍で最も旗艦能力の高かったA5型戦艦とほぼ同じで、100隻単位の艦艇を一括して指揮するための設備が搭載されていた。

 艦内の居住区は、A型戦艦とほぼ同等のスペースが確保されている恵まれた環境であり、乗員たちからも好評であった。また、ヤマトのようなO.M.C.S(食料合成装置)こそ搭載されなかったが、暗黒星団帝国戦役の戦訓から長期の航海に備え、重要防御区画に糧食庫や真水生成器などの大規模な給糧設備も準備されている。艦内工場についてはヤマトほど大規模なものにはならなかったが、A型戦艦よりは充実した工作設備を有していたとされる。


兵装

 このB型戦艦の存在意義とも言える四式タキオン波動集束可変砲であるが、その性能は爆雷モード(拡散波動砲相当)においては「アンドロメダの波動砲に比して破壊力、射程、有効範囲全てにおいて勝る」と評されている。一方で集束波動砲にあたる拡大モードは「(大改装後のヤマトが搭載した新波動砲こと)九九式二型次元波動集束砲に比して射程は同等だが、やや威力は劣る」と判定されたが、それでも艦隊側が不満を持つほどの威力不足に悩まされたという例はなく、むしろ就役時はその速射性能を高く評価されている。

 波動砲以外の兵装だが、本艦は四式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)が採用されてから初めて建造された戦艦であり、その使用が最初から決定されていた。そのため主砲には当初、当時のヤマトと同じ九八式三型48cm陽電子衝撃砲が予定されたが、設計中に砲塔を小型化するためにヤマトでは砲塔内に装備されていた陽電子収束器を砲身巻き付け型に改造した「五式48cm集束圧縮型衝撃波砲」が採用された。主砲の性能自体は九八式三型48cm陽電子衝撃砲と殆ど違いはないとされており、砲塔の旋回速度も砲塔小型化の効果もあって(対空砲兼用とされていた)A型戦艦より若干速い旋回性能を有していたとされる。
 また、四式波動徹甲弾、および三式融合弾用の弾庫も本艦では比較的大規模に準備されており、1門あて10発分程度の容積が確保されていたが、希少金属を多用する砲弾の生産が間に合わず、定数を装備して出撃したという記録は現状見つかっていない。

 また、A型戦艦と同様に本型も砲塔型副砲は採用されなかったが、これもA型戦艦と同じく主砲で対空射撃および軽艦艇にも問題なく対処可能と判断されたからだった。だが、後述するがこの措置が本型の運命に大きな影響を与えることになる。

 対空パルスレーザー砲は、A型戦艦やアンドロメダの対空砲不足が問題視された反省から、新型の三式76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて8基装備するという重装備になった。これは40mm砲塔や25mm砲塔を混載するヤマトに門数では劣ってもほぼ同等の近接対空火力と評価され、以後の地球防衛軍の戦艦の標準になったとも言われる。また、艦の各部に対空埋め込み式パルスレーザー砲を多数装備しているのは従来の戦艦と変わらないが、具体的な門数は不明である。

 一方で魚雷、ミサイル兵装は若干犠牲にされており、小型艦への対処用の魚雷発射管や艦底部防御用の垂直軸ミサイル、後方への通常型魚雷発射管など、就役時は特に見るべきところはない標準的な雷装と言えるだろう。爆雷兵装は大改装後のヤマトと同様、後部上甲板に八連装波動爆雷投射機が1基装備されている。


機関

 本型の主機関には艦政本部が新たに開発した新型波動機関が採用されており、小型軽量ながら出力はアンドロメダの主機(ただし、アンドロメダの主機は波動炉心3基によって構成されているので純粋な比較は難しい)にほぼ匹敵すると評価されている。また、連続ワープも可能である。
 補機はA型戦艦が搭載したものを改良した大型ケルビンインパルス機関を艦底部中心線上に1基、それと小型の同機関をバルジ収納型として両舷に1基ずつ装備した。また出力に余裕があることから旋回スラスターもA型戦艦より数が増やされており、艦隊側は「速力、直進安定性、旋回性能いずれも大型艦としては優秀」と肯定的な判定を下しており、この方面は就役後も特に問題は生じなかった。


建造計画の頓挫と急速量産

 こうして設計が纏められたB型戦艦は、ガトランティス戦役以来、波動砲への傾斜を深める地球防衛軍、特に参謀本部に大いに期待される存在となっていた。そのため建造は速やかに行われるはずであったが、2206年に発生した太陽の核融合異常増進による人類移住計画がこれに歯止めをかけることになる。人類を第二の地球に移住させるための輸送船団の建造が最優先とされたため、戦闘用艦艇に関しては必要最小限、それも一部兵装を省略して移民船の代用として使える艦のみに絞ると決定されたのである(この結果、一部武装を撤去して居住施設などを充実させた改C1型駆逐艦などが少数ながら建造されている)。

 そのため、資材を大量に消費するB型戦艦は真っ先に建造中止の対象とされ、地球および太陽系基地で当時建造されていたB型戦艦15隻のうち、ガルマン帝国とボラー連邦の紛争に巻き込まれた事情を考慮して、最も建造が進展していた「ダンケルク」「マサチューセッツ」の2隻のみ工事が続行されたものの、残りは全て建造作業が停止された。このためB型戦艦の1番艦は「ダンケルク」ということになり、これが本艦型の命名の由来となっている。
 「ダンケルク」は完成後、地球から最後に出発する探査船団の護衛艦として第二の地球探査に参加、ボラー連邦の小艦隊と数度交戦したが、相手の艦隊の規模が小さかったことも幸いして、その火力によって一方的に撃退している。また、銀河系中央部戦役末期に完成した「マサチューセッツ」はテスト航海中に「カイパーベルトD宙域会戦」に参加、爆雷波動砲を以てボラー連邦の大艦隊に壊滅的打撃を与えるなど、その優秀性を証明した。

 これによってB型戦艦に自信を深めた参謀本部は、太陽の核融合異常増進が治まると同時に、停止されていたB型戦艦の建造を一斉に再開した。この時期の参謀本部の入れ込み具合は相当なもので、当初15隻だったB型戦艦の計画も、政府との折衝で24隻(追加された9隻のうち、実際に起工されたのは3隻)まで増やすことに成功するなどして、並行して建造が開始されたB型巡洋艦も含めて、参謀本部の目指す「波動砲艦隊」は実現一歩手前まで来ていた。

 しかし、順調に竣工していったB型戦艦を待ち受けていた運命は過酷だった。そしてそれは、よりによって味方からそれを予言されるという悲しい宿命を背負っていた事実を、この時点で知る者は誰もいなかった。


無視された警鐘

 ここで、2207年に勃発したディンギル戦役勃発前に完成していたB型戦艦を一覧にしておきたい。

 BBB-01 「ダンケルク」
 BBB-02 「マサチューセッツ」
 BBB-03 「レトウィザン」
 BBB-04 「扶桑」
 BBB-05 「ロイヤル・オーク」
 BBB-06 「ケーニヒ」
 BBB-07 「マジェスティック」
 BBB-08 「コロラド」
 BBB-09 「カイオ・ジュリオ・チェーザレ」
 BBB-10 「ノルマンディー」
 BBB-11 「アイダホ」
 BBB-12 「スラヴァ」
 BBB-13 「ヴェストファーレン」
 BBB-14 「インペロ」
 BBB-15 「伊勢」

 (ディンギル戦役勃発時、建造中だった艦)
 BBB-16 「ロドネー」
 BBB-17 「アイオワ」
 BBB-18 「日向」


 ディンギル戦役におけるB型戦艦に関しては後に述べるが、実はB型戦艦、正確には本艦型を中心とする「波動砲艦隊」に重大な欠陥があることを、ディンギル戦役前に行われたある演習が明らかにしていたのである。
 それは、二線級戦力としての維持が決定したA型戦艦の生き残りを中心とした内惑星警備艦隊との演習時のことだった。当時の内惑星警備艦隊司令長官は艦隊派の中でもあまり波動砲に大きな期待を寄せる提督ではなかったのだが、その彼から「A型戦艦、A型巡洋艦、A型駆逐艦(全てガトランティス戦役時の主力艦艇)を中心とする我が艦隊に、是非最新鋭艦で編成された部隊との演習を許可してほしい」との申請があったのだ。

 元々、この提督に好意的とは言えなかった参謀本部は、これを新生波動砲艦隊のお披露目にはちょうど良い機会と判断し、結果、互いに戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦8という編成で、内惑星警備艦隊と防衛軍第一艦隊から抽出した最新鋭艦部隊が実戦演習を行ったのである。

 結果は、しかし最新鋭艦隊にとっては惨憺たると言うべきものだった。

 内惑星警備艦隊は、最初から相手が波動砲による先制攻撃を行うと読んで機動戦に転じ、大型艦揃いで直進速度はともかく運動性に問題のあるC型駆逐艦やB型巡洋艦の包囲網を軽々と突破、B型戦艦に対して駆逐艦部隊が近接雷撃戦を敢行したのである。
 B型戦艦の防御力、および当時の魚雷の威力不足から撃沈判定にまで至った艦は存在しなかったが、内惑星警備艦隊の機動戦に散々振り回された新鋭艦隊は最終的に勝利判定こそ取ったものの、特に波動砲艦としては防御力不足、巡洋艦としては大きすぎたB型巡洋艦は3隻が撃沈判定されるなど、旧式艦で揃えられた内惑星警備艦隊に対して許容範囲を超える大損害を出していた。

 演習の直後、内惑星警備艦隊司令長官から意見の具申があった。

 「現状の主力艦隊は、戦艦が大型化し防御力が強化されたのはよいが、小型艦に近接されると砲塔型副砲を搭載していないため対処が遅れる傾向がある。また、機動副砲の役割を果たすべき駆逐艦は大型に過ぎ、搭載砲の門数が不足している。巡洋艦に至っては戦艦とも巡洋艦ともつかぬ中途半端さがあり、現状使い道を見出すことは困難としか言いようがない」

 つまり、B型戦艦はまだましなほうで、その周囲を固めるべき護衛艦艇の建造計画や配備に問題があると指摘したのである。そして、内惑星警備艦隊司令長官の意見具申はこう締めくくられていた。

 「ガミラス戦役当時のような、機動戦を得意とする相手に宙雷戦を仕掛けられた場合、C型駆逐艦の防空力を以てしても全て食い止めるのは困難を極め、艦隊が大損害を被る可能性が高い。想定される敵水雷戦隊の攻撃に対処すべく、既存小型艦艇の有効活用、および護衛艦として運動性能に優れる小型艦を新規に建造すべきである」

 ここで抜粋した指摘に限らず、軍備全体をもう一度見直すべきという内惑星警備艦隊からのこの意見は、しかし参謀本部に無視された。何より同艦隊の司令長官が上層部から受けが悪かったのもあったが、自分たちが決定し整備した「波動砲艦隊」を問題視されたことで参謀本部の人間の多くが感情的になってしまったのが問題だった。そのため、この演習の結果は「乗員の練度の差によるもの」とされ、参謀本部は内惑星警備艦隊から下士官兵の1/3ほどを主力艦隊に転属させるという方法で問題をうやむやにしてしまったのである。

 だが、例え結果として本格的な対処を行う時間がなかったとはいえ、この味方からの警鐘を無視したの愚行だった。それが取り返しのつかない事態を招くのだが、その事態、ディンギル戦役におけるB型戦艦について触れるのは次項に譲りたい。

 「艦長」

 堀田が「駆逐艦A」艤装員長として着任して四日目、乗り組み予定の要員たちはもう皆が彼のことを「艦長」と呼ぶようになっていたが……艦橋でパネルの確認を行っていたところで声をかけられた。
 顔を上げてみると、砲雷長に内定している林美津保二尉がいた。まだ20歳だが航宙士官候補生学校でその砲雷撃戦の才能を見出され、僅かだが実戦経験もあるという、人材不足に悩まされる国連宇宙軍でも珍しい女性の戦術士官だった。ただ、彼女に雷撃戦の初歩を教えたのは士官候補生学校教官時代の堀田であったから、別に女性だからどうのと気にしたことはないし、その才能と力量は十分に評価していた。

 「何だい、砲雷長?」
 「東京の南部重工から本艦の主砲が届きましたので、ご報告にあがりました」
 「そうか、やっと来たか」

 「駆逐艦A」の艤装はほぼ終わりに近づいていたが、主砲となるべき火砲が未到着であり、これを取り付ければほぼ完成することになるのだった。

 「わかった。先任将校も呼んで、一緒に確認しよう」
 「お願いします」

 そうして、三木と林を連れて届いた火砲が補完されているエリアに足を運ぶ。そこには、三木と林には意外な、そして堀田には納得ができるものが鎮座していた。

 「これは……砲身型火砲の砲塔ですか? 私はヤマトにだけ準備されていると思っていましたが」
 「ああ、これはヤマトに副砲として搭載される予定だった砲だよ。もっとも、ヤマトの副砲にはもっと口径の大きい砲が採用されたから、宙に浮いていたんだ」

 林の疑問に、堀田がそう答えた。

 目の前にあった砲塔と砲身を持つ兵器……制式名称「九八式15.5cm陽電子衝撃砲」。堀田の説明通り、当初はヤマトに副砲として搭載される予定だったが、今年になって「試製九九式20cm陽電子衝撃砲」の目途が立ったことから「ヤマトにはより強力な兵器を」という軍首脳の意向があり、こちらが採用されたということを「ヤマト計画」で戦術科に関係していた堀田は知っていた。

 「しかし、波動機関に加えてショックカノンですか……お偉方はうちの艦に相当な期待をかけているようですね」
 「そうだね。もっとも、波動機関を使えるのが我々の艦のみという現状だ。今更出し惜しみもしていられないし、少数でもガミラス艦隊に単独で挑もうというなら、ショックカノンはどうしても必要な兵器ではあるよ」
 「……」

 三木と堀田が話しているところで、林は表情を硬くして沈黙していた。

 「砲雷長、どうした?」
 「あ、失礼しました。その……」
 「構わないよ、言ってみなさい」

 堀田に促され、林は口を開く。

 「あの、私は駆逐艦にしか乗ったことがなく、ショックカノンを撃ったことがありません。それで、その……」
 「最初は誰だって初めてなものさ。私だって「キリシマ」にいたときも殆ど撃った記憶はないよ。『カ2号作戦』以降はそもそも簡単に撃たせてはもらえなかったものだから」
 「そうだったんですか?」
 「そう。だから不安に思うことはない。波動機関を搭載している以上、ショックカノンもこれまでの通常兵器と同じように使える前提でヤマトに搭載されている。それはこの艦も同じと心得ておけばいい。それに……」

 僅かに、堀田は笑顔を見せた。

 「私は君の腕を知っているし、信頼している。任せたよ」
 「は、はいっ!」

 僅かに顔を紅潮させて、林は下がっていった。

 「彼女、どうですか?」

 三木が聞く。

 「砲雷長としての実力は恐らく問題ないよ。ただ消極的というか、ちょっと慎重すぎるかもしれない。元々は船務科志望だったのが戦術科に転向したから、仕方ない面はあると教えていて思ったけどね。だけど」

 確認するように、堀田は締める。

 「これから経験を積めばいくらでも育つさ、他の乗員もそうだけどね。そして、我々のように実戦に出て生き残った者たちは、彼ら彼女らを生き残らせてその未来を繋げないといけない。それは心しておこう」
 「そうですね……」

 静かに頷く三木だった。


 そして二日後、陽電子衝撃砲の搭載とその他の工事を終え、ここに「駆逐艦A」は完成した現役艦と認められることになった。

 「しかしご時世とはいえ、寂しい竣工ですなあ」

 艦橋で機関長の来島研三が言う。彼は一尉で三木より年上の28歳だが、一尉としては三木のほうが先任だったため先任将校にはなれなかった。だが、それに別段不満を抱くでもない、豪放な性格の持ち主だった。

 「元々が機密扱いの艦だからね。それに、こんな状況では仮にそうでなくても、派手に進宙式というわけにはいかないさ」
 「まあ、そうですわな」
 「ところで、機関の調子はどうだい?」
 「今は順調……ってとこですな。もっとも、敵さんの技術を信頼して命預けるってのは、どうにもいい気分はせんもんです」
 「そいつは仕方がない、背に腹は代えられないからね」

 もっとも、来島もわかっていて愚痴を言っていることはもちろん堀田も理解していた。

 「艦長」

 三木がやってきた。

 「乗組員総員53名。ここにいる我々を除く全員、艦長をお待ちしております」
 「わかった、すぐ行こう」

 艦外に整列している乗員たちを一瞥して、堀田は演台の上に立つ。

 「本艦の艦長を務める、堀田真司二佐だ。改めてになるが、貴官ら将兵が全力を発揮し、任務を果たすことを期待する。そして……」

 ここからが、大事なところであった。

 「ここにいる全員、今度の作戦をやり遂げて、生きて地球に戻るんだ。私が艦長でいる限り、無駄死には許さないし私も君らに決してそれを強いることはしない。どこまでも生き抜いて、地球人類のために戦い続けてもらいたい」

 諸先輩から教えられたこと。最後まで絶望しない、軍人として命ある限り、最後まで生きて戦い抜く。これを堀田は自分の部下たちにも伝えなければならないと自覚しているつもりだった。

 「艦長」

 堀田の右後ろに立った三木が声をかけてきた。

 「艦名の公募も終了しています。結果はこちらになりますので、艦長から読み上げていただきたく思います」
 「わかった」

 艦名を乗員から公募する。これはまずないことだが、彼らの乗る駆逐艦はその任務が極秘であるため、公式にはあくまで「駆逐艦A」としか扱われない。それはそれで仕方がないとはいえ、自分らの乗る艦がそんな取ってつけたような名前では乗員の士気に関わる。堀田はそう考えて、乗員たち「だけに」通用する艦名を公募で選ぶことにしたのである。

 その結果が記された紙を見て、一瞬、堀田は目前に整列する乗員たちの表情を見る。彼らの大半は20代前半、残りは各種学校を卒業したばかりの10代の少年少女たちだが、その顔は一様に硬さが感じられた。

 (それだけ覚悟して、この艦名を選んだということだな)

 内心でそう思ってから、言う。

 「なお、先に貴官らへ向けて行った艦名の公募の結果が出た。それに従い……」

 ここで、堀田は軽く深呼吸していた。

 「本艦を今後、駆逐艦『神風』と呼称する。あくまで非公式だが、かつての日本海軍駆逐艦である『神風』は大戦を最後まで戦い抜いた艦だ。その伝統に則り、我々も生きて任務を全うしよう!」
 「「オーッ!」」

 乗員たちから、大きな歓声が上がった。

 「神風」という名は、もちろん航空隊でこの名前を使えば忌避されるし、国連宇宙軍でも北米支部あたりはいい顔をしないだろう。しかし堀田が述べた通り、日本海軍の駆逐艦たる「神風」は数々の窮地を乗り越えて太平洋戦争を生き残った武勲艦だ。これまでは他国に遠慮して、磯風型駆逐艦のどれにも使われていなかった名前ではあるが「自分たちが元寇の際の神風のように地球の窮地を救う」「例え死すとも悔いなく戦い抜く」という乗員たちの覚悟を示した公募名のように堀田には思われた。

 「では、これより『神風』は最初の航海に出港する。総員、配置につけ!」

 先任将校の三木が号令を下し、乗員たちは各部ハッチから乗り組みを開始する。それを見て、自分も改めて艦長としての覚悟を決める堀田だった。


 艦橋の指揮席に着くと、艦橋要員たちが既に配置について、いささか硬い表情で堀田に敬礼を向けていた。
 先任将校と航海長を兼務する三木と、砲雷長の林。それに船務長の沢野有香三尉、通信長の河西智文三尉、それと先任将校として副長の役目を果たす三木に替わって普段の操艦を行う主席航海士の初島沙彩三尉。いずれも航宙軍士官候補生学校において成績優秀ということで選ばれたとはいえ、まだ19歳から20歳程度の若者たちだった。
 というより、機関の調整のためここにはいない来島と技術長の菅井貴也二尉、倉庫で物資の確認を行っている主計長の秦智哉三尉。彼らを含めても、実戦経験があるのは堀田と三木に来島、林の四人だけ。年齢も堀田、来島、三木が20代後半から中盤なのを除けば全員やっと20歳前後という、悲しいまでに現状の国防宇宙軍の人材不足が伺える艦首脳部だった。

 しかし、ガミラスの攻撃により本来の要員を失ったヤマトでさえ、状況は似たようなものだった。その点で贅沢が言える状況ではなかったし、自分も士官学校で教育者として、そして「キリシマ」砲雷長として若者たちを見てきた堀田は、彼ら彼女らにむしろ希望さえ抱いていた。

 (この若い力を纏めるのが、私の役目だ。それが死に損なったものの務めであり、先達の務めでもある)

 もう、堀田はそうと腹を括っていたのである。

 「諸氏に、改めて申し上げる」

 丁寧だが、やや重い口調で言う。

 「諸氏は、本艦の首脳部として若い……諸氏も若いことは十分に承知しているが、この艦の乗組員を引っ張っていってもらうことになる。不安もあろうし、これから苦労も多いだろうが……」
 「……」

 聞いている乗員たちは、息を飲むだけでもちろん言葉を発さない。

 「艦長としてあえて言う。何事もやらなければ物事は進んでいかない。失敗を恐れていても何も解決はしない。私はこの艦の責任者として、作戦の成功と貴官らを生きて地球に帰すことに全力を尽くすつもりだ。しかし残念ながら、私は諸氏の命の保証はできない。だが、最後の責任は全て私一人で負う覚悟はしている。諸氏は失敗を恐れず、これから堂々と戦ってほしい。以上だ」
 「「はいっ!」」

 堀田さんにしては饒舌だなと三木は思ったが、若い乗員たちの顔が、堀田の言葉を聞いて安心とはいかずとも、やる気を感じさせるものに変化したことを感じ取った。そこは教官任務も長かったとはいえ、一連の「カ号作戦」や「メ号作戦」を生き残った士官だけに自分などとは訳が違うな、と感心もしたのだった。

 「では、艦長」

 その三木に促されて、堀田は命令を下した。

 「『神風』発進準備!」


 そして1時間ほどで『神風』は成層圏を脱出して宇宙空間へと出ていた。これまでの核融合反応機関で稼働していた艦からすれば信じられないほどの速さであり、これはさすがに経験したことのない堀田も驚くしかなかった。
 ふと後ろを振り向くと、赤茶けた地球が見える。これを青い地球へと戻すために我々は戦っているのだ。成否はヤマトにかかるところが大とはいえ、自分たちの任務も決して疎かにできるものではない。

 「では、月軌道に入ったところで訓練を……」

 そう、堀田が言いかけた直後だった。

 「レーダーに艦影! 数、3。ガミラス艦と思われます」
 「何だと!」

 船務長の沢野の報告に、さすがの堀田も驚いた。冥王星基地が壊滅した今となっては、太陽系に残っているガミラス艦はさほど多くないはずで、まして地球を出港した直後に接触するなど思ってもみなかった。
 しかし、そこは歴戦の堀田であるから、冷静さを取り戻すのは速かった。

 (そうか、ヤマト出港後に地球がどうなっているか、冥王星基地から偵察に派遣されたのだろう。納得のいかない話ではないが、そうすると……)

 敵は、恐らく自分たちが帰るべき冥王星基地が、もう消滅しているということを知らない可能性を思い立った。

 「先任将校」
 「はい」
 「敵艦に気付かれず、振り切ることは可能だろうか?」
 「……難しいですね。ここで引き返しても発見される可能性は高いですし、そうなると」
 「追撃されて本艦は沈められ、これからの任務を果たせなくなるか……船務長」
 「はっ、はい」

 沢野が答える。

 「敵に我が艦は探知されているか?」
 「……今、探知された模様です。こちらに向かってきます」
 「わかった。現在、敵艦3隻はどういう配置になっているか、パネルに出してくれ」
 「りょ、了解……出ます」

 パネルに目をやると、3隻はかなり間隔を広く取って航行していた。偵察任務であるなら、こういう陣形で視野を広く、というのは理解できる。

 「敵艦識別。ガ軍巡洋艦1、駆逐艦2」

 砲雷長の林から報告が入る。それならばと、堀田は通信長の河西に声をかけた。

 「通信長、敵の旗艦……恐らく巡洋艦だろうが、交信回路は開けるか」
 「は、はいっ。可能ですが、どうするんですか?」
 「伝えてやるといい、お前たちの帰るべき冥王星基地はもう消滅している。ここで戦闘を始めても無意味だぞ、と」
 「戦闘を避けるのですか?」

 林が声を上げたが、堀田は冷静なままだった。

 「まだ完成して出港したばかりの本艦が、戦闘でその性能を発揮できる保証はない。避けられる戦闘は避けたほうがいい。もちろん、相手次第ではあるが……通信長、とにかく相手への交信を頼む」
 「りょ、了解」
 「艦長、あるいはその通信で敵が自暴自棄になる可能性もあります。ここは」

 三木の言葉に頷くと、堀田は艦内放送で全乗組員に伝達した。

 「総員、そのまま落ち着いて聞け。本艦は敵巡洋艦ならびに駆逐艦に発見された。交戦を避けるための手は打つが、うまくいかない可能性もある。まだ訓練すら行っていない本艦だが、ここで退避することは不可能だ。いざとなれば、全員で総力を挙げて生き残るために戦ってもらいたい……総員、第一種戦闘配置!」

 まさか出港早々、敵艦と交戦することになるなど想定外だが、戦場とはそうした想定外によって形作られていると言っても過言ではない。だが、堀田や三木ら歴戦の士官ならともかく、実戦経験の乏しい、あるいは皆無な乗員たちが大半で、しかも波動機関搭載艦とはいえ駆逐艦1隻のみ。3隻の敵艦を相手にするのは無謀としか言いようがないが、逃げることは確実に死を招くことになる以上、通信で敵が引かない限りは戦うしかない。

 そして案の定と言うべきか、敵艦3隻は「神風」の通信に返信すらして来ず、旗艦である巡洋艦が徐々に迫ってきていた。

 (こうなれば、妙な話だが敵の技術を信頼するしかない。そして……)

 この「神風」に乗り組んだ若い乗員たちの力を信じるのみ。そう意を決して、堀田は「神風」にとって最初となる戦闘開始を決断した。

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