地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

 「前進中のボラー艦隊、およそ150隻。なお、後方に敵旗艦を中心とする打撃部隊を確認」

 「ドレッドノート(Ⅱ)」から発進した偵察機の敵情偵察は、燃料の関係でこれで最後になったが、堀田提督が必要としていた情報はこれで十分だった。

 (さすがに、敵も旗艦を先頭に立てては来ないか)

 ボラー連邦独特の軍人気質故か、それとも旗艦の重装甲を頼んでなのかは不明だが、ボラー艦隊はこれまで多くの戦闘で「旗艦が先頭集団にいる」ことが多かった。だが、地球防衛軍やガルマン・ガミラス軍との戦いではそれが裏目に出て、第1主力艦隊やゴルサコフ艦隊は旗艦が早期に撃沈されることで指揮系統が大混乱をきたし、その後はほぼ掃討戦という一方的な敗北を喫していたのだ。
 今回の敵指揮官は、どうやらそのあたりは心得ているようであった。しかし、国家元首が自ら出撃した戦いでこうした消極的とも取れる陣形を採って、かつ負けたらどうなるか。先に述べたとおり、生きて帰れてもその指揮官の将来は知れている。相当に覚悟はしているはずだ。

 それに何より、敵旗艦が後方にいるということは、これに集中攻撃を加えて指揮系統を乱す作戦が使えないということである。これは第3警備艦隊に不利なはずだが、堀田提督もそこまでは計算済みだった。

 (賭けではある、だが成算はあるはずだ)

 敵艦隊のカイパーベルト小惑星帯突入まであと10分、と報告されたところで、堀田は命令を下した。

 「全艦、小惑星帯より外に出て敵艦隊の進撃を阻止する。今後の行動は各々の艦長に委任する。ただし、何があっても決して足を止めるな! 動きを止めれば最後、沈められると覚悟せよ!」

 命令一下、左右両翼から「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」をそれぞれ中核とする小部隊が突撃を開始し、第63駆逐隊も使用許可の下りた主砲を用いて戦闘を開始した。
 ボラー艦隊としては、もちろん小惑星帯に伏兵がいるなど先刻承知している。それをあぶり出すための全艦突撃でもあったから、面食らうことは何もなかったはずだ。しかし、彼らは直後の別の出来事に驚くことになる。

 正面の第63駆逐隊、C1型駆逐艦3隻から繰り出される弾幕が予想外の凄まじさだったのである。およそ3秒に2発間隔で発射される、しかもこれまで対戦した地球防衛軍の戦闘艦より貫通力に優れたエネルギー弾は、重装甲を自慢とするボラー艦隊の先鋒隊をじわじわと削り取っていった。
 これはC1型駆逐艦が搭載していた「一式三型40cm衝撃波砲」に理由があった。本来は防空駆逐艦として20cmクラスの新型砲を採用予定だったが、開発が間に合わなかったため、旧来の「一式一型40cm衝撃波砲(A型戦艦が完成時に搭載していた主砲)」の発射速度を極限まで高め、そして散布界問題が解決できず貫通力低下を忍んで初速を落としていたこの砲を、射撃時の相互干渉を防ぐためA型戦艦の三連装砲塔とほぼ同じ大きさの連装砲塔で搭載し、散布界問題を解決したのが「一式三型40cm衝撃波砲」の正体だった。
 そして、原型となった「一式一型40cm衝撃波砲」は、長射程と高貫通力をひたすら追求した砲であり、それはボラー連邦の重装甲艦にも十分に通用したのである。

 更に、両翼から打って出た小部隊の機動もまた、ボラー艦隊から見れば常軌を逸していた。それぞれの旗艦とおぼしき戦艦を先頭に単縦陣を組み、片舷全力射撃で味方の側面を狙い撃ちしてくる。こちらが対処しようと艦首を敵に向けようとすれば、まるで慣性ドリフトとでも言うべき機動で艦首を向け、続けざまに衝撃波砲と魚雷を乱射してくる。それはボラー艦隊側も想定していた「時間稼ぎ」とはまるで縁のない、数の差から言えば自暴自棄とも言える戦い方としか、彼らには思えないものだった。

 この第3警備艦隊の猛攻に一時的な混乱を見せたボラー艦隊だったが、そこは戦力差で10倍近い優位を保っているという安心感からか、程なく陣形を整え始めた。敵は少数なのだから、包囲されたとしてもいずれ敵は削り切れる。そう判断したのか、ボラー側の指揮官は、戦力を正面、右翼、左翼の三つに分けて包囲を目論むと思われる第3警備艦隊の各艦を迎撃させる陣形を選択したようだった。

 「ここが踏ん張りどころだ! 全艦、エネルギーもミサイルも使い果たすつもりで撃ち続けろ!」

 通信用のマイクを握ったまま叱咤する堀田に、いよいよ待ち焦がれていた連絡が入ったのはその数秒後だった。

 「戦艦『マサチューセッツ』より通信。ワープを完了し戦場に急行中、あと10分で波動砲射程圏内に到着とのことです!」

 戦艦「マサチューセッツ」。それはA型戦艦に続く主力戦艦として整備が決まったものの、太陽系からの移住計画が持ち上がったため移民船建造に労力を取られ、現状2隻しか完成していない新型戦艦「B型戦艦」の2番艦で、この戦闘が開始される前は天王星軌道でテスト航海を行っていた。そして、第3警備艦隊の来援要請に同艦の艦長が独断で応じ、連続ワープでこの戦場に急行してきたのである。
 同艦には、これまでスカラゲック海峡星団で撃沈された「アリゾナ」がボラー艦隊に一度だけ発射した新型波動砲が搭載されていた。そして、実はボラー連邦はこの新型波動砲に「アリゾナが発射したものとは別のモード」が存在し「その前身は『薩摩』『ドレッドノート(Ⅱ)』にも搭載されている」ことも、これまでの地球防衛軍との交戦で知る機会がなかった。

 (もう少し、もう少しだ)

 内心で自らを落ち着かせるように言い聞かせると、堀田は通信士に「マサチューセッツ」への打電を命じた。

 「貴艦の来援に感謝する。波動砲射程圏内に到着後、エネルギーの最大充填を行い、こちらの合図で射撃することを要請する」

 速射性にも優れた新型波動砲だが「エネルギーの最大充填」となると、さすがに数分の時間は要する。ただでさえ数の少ない第3警備艦隊がその終了まで持ちこたえられるかわかったものではないが、ここで焦って敵を撃ち漏らしては意味がない。堀田はあくまで「マサチューセッツ」の一撃にこの戦いの成否を賭けていた。

 だが、陣形を整えたボラー艦隊の反撃は激烈を極め、これまで各艦の艦長たちの必死の回避行動で致命傷を避けられてはいたが「マサチューセッツ」の準備完了までの時間、果たして持ちこたえられるのか。

 「司令官、波動防壁を使いましょう」

 参謀の誰かが声を上げたが、堀田はそれに対し、普段の温厚さに似合わない大声を返した。

 「馬鹿もん! 防壁を張れば本艦は無事でも、味方駆逐艦に攻撃が集中するぞ。敵の砲撃を引き付ける囮という役目があることを忘れるな!」

 怒鳴られた参謀は困ったように「薩摩」艦長の顔を見たが、こちらは平然としたままである。そして、艦長は堀田のほうへ振り向いて言った。

 「提督、もう少し艦を前に出しますか?」
 「すまない、よろしく頼む」

 「薩摩」は半速ながら前進を開始し、敵艦隊の砲撃も徐々に集中してきているようだった。しかし、これなら麾下の第44駆逐隊は仕事がしやすいはずだ。元来、堀田は水雷屋なのだ。

 しかし「マサチューセッツ」のエネルギー充填中、ほぼ体勢を立て直したボラー艦隊は凄まじい猛攻を加えてきた。
 まず、左翼部隊の第29巡洋艦戦隊の巡洋艦「ローン」が突出したところで集中砲火を受けて沈没、脱出できたのは10数名だった。同じ部隊の「サンディエゴ」も機関に被弾して戦列を離脱。残る「ドレッドノート(Ⅱ)」と「ヨーク」だけでは5分も持つまい。
 堀田が自ら指揮する右翼部隊も駆逐艦「ブレストーズ」が爆沈し、こちらは生存者がいなかった。同じく「ホットスパー」も大破、航行不能に陥り、僚艦「ホプキンス」が危険を冒して横づけし乗員を収容しているところであった。また「薩摩」も敵の集中砲火で2番主砲塔を破壊され、他にも被弾多数で乗員にかなりの被害が生じている、極めて危険な状況だった。
 第63駆逐隊はこれら左右の味方を掩護すべく、左翼に「春月」「花月」、右翼に「夏月」が急行していた。だが、恐らく間に合うまい。これはむしろ「来るべき時のための回避運動」と言うべきだった。

 いよいよ駄目か、という言葉が脳裏をかすめそうになった堀田に「マサチューセッツ」から連絡が入った。

 「『爆雷波動砲』エネルギー最大充填にて発射準備完了!」

 聞くや、もう一度ボラー艦隊の陣形を確認する。今は「薩摩」から見てカタカナの「コ」を逆にしたような密集状態になっていた。

 (頃はよし)

 内心で呟いて、堀田は艦隊各艦と「マサチューセッツ」に命を下す。

 「各艦『プランE』に従って退避運動。爆雷波動砲、発射10秒前! 9.8.7.6……」

 10秒という時間が、異様に長く感じられた。

 「3.2.1……テーッ!」

 その直後だった。

 それまでの集束、拡散波動砲いずれとも異なる長く伸びた弾道の波動エネルギーが、疑似回廊を形成していた小惑星帯を吹き飛ばして通過。近くにいた新兵が多くを占める第63駆逐隊の乗員たちは、恐らく驚いただろう。

 そして、そのエネルギーの帯はボラー艦隊の前衛部隊の直前で「傘を開くように広く拡散」した。

 制式名称「二式タキオン波動集束可変砲」。先に「アリゾナ」が発射した「拡大モード」はエネルギーを一点に集中し、代わりに速射が可能な集束波動砲の強化モード。そして今回「マサチューセッツ」が発射した「爆雷モード」。こちらは拡散波動砲を強化したモードで、従来の拡散波動砲を上回る破壊力と効果範囲を誇る、現在の地球防衛軍が大きな期待を寄せる、ハイブリッド型の新型波動砲であった。
 そして、これまでB型戦艦と交戦経験がなく、同時に拡散波動砲という兵器を「偶然にも知る機会を得なかった」ボラー艦隊にとって、自分たちの密集陣形がここでは完全に命取りになるなど、全く知る由もなかったのである。

 「レーダー手、状況を報告せよ」
 「は、はいっ」

 堀田に促され、目の前の光景に唖然としていたレーダー手が報告する。

 「敵艦……およそ100隻以上が消滅、残存艦20数隻は後方へ撤退を開始しました」
 「そうか、まだ終わりではないな」

 気を引き締めるように言う。敵には旗艦を中心とする30隻程度の本隊が残っているから、残存艦を合わせれば50隻程度の艦隊にはなる。大半の敵艦を沈めたとはいえ、まだ数では圧倒的に敵が有利なのだ。
 しかも、ここで凶報が入った。

 「『マサチューセッツ』より入電。『我、機関に不調をきたし、当面、戦列への参加は不可能!』」

 通信士の声は悲鳴に近かった。波動砲を考慮しなくとも、新鋭のB型戦艦である「マサチューセッツ」はその火力と防御力でこれからの戦闘の主力となるはずだった。それが戦列に加われないとなると、果たしてどうなるか。
 第3警備艦隊も、退避した艦と沈没艦生存者の救助に残した駆逐艦を除けば、今ここにいる艦は「薩摩」隊に合流を果たした「クアルト」を加えて僅か9隻だ。しかも「クアルト」以外の殆どは大なり小なり損傷していて、元から警備艇である「クアルト」に多くは期待できない。

 (この状況では、敵もそう簡単には退くまい。こちらの状況を見れば、また押し出してくるのは明白だな)

 堀田の読み通り、爆雷波動砲の影響を免れた艦と合流した敵艦隊は撤退する様子を見せず、集結した「目の前にいる」第3警備艦隊との交戦を準備しているようだった。
 未だ絶対絶命の状況。しかし、堀田にはまだ「最後の一手」が残されていた。

 「『和泉』より暗号電文」

 通信士が、その「最後の一手の使いどころ」を知らせてきた。

 「我、敵旗艦の座標を特定せり、至急『狼』を放つ許可を求む」

 許可する、と堀田は答え、それから周囲にいる麾下の残存艦へボラー艦隊への攻撃を命令した。

 この時点で、あるいはボラー艦隊の指揮官はまだ勝利を信じていたかもしれない。いきなり100隻以上の味方を失ったのは驚愕に値するが、それでも手元にはまだ敵を優越する数の艦艇が残っている。
 そして、味方の大半を吹き飛ばした未知の大型艦は何故か動く様子を見せず、目の前には10隻にも満たない敵艦隊。この状況なら恐らく自分でも退かないだろうな、と堀田は思っていた。

 しかし次の瞬間、ボラー艦隊にとって第二の異変が起こった。

 他艦とは異なる赤色の旗艦の後方に、いきなり地球防衛軍の駆逐艦が4隻出現したのである。これは堀田が「最後の一手」として「和泉」に指揮権を委譲し共に敵艦隊の後方に回り込ませていた第52駆逐隊で、この旗艦への急接近は「和泉」の正確な座標特定を利用したワープが可能にしたものだった。
 そして、4隻の改A2型駆逐艦はワープアウトするや、一斉に旗艦目がけて大型魚雷16本を発射する。旗艦だけを標的に絞って投射された魚雷は敵旗艦に回頭の暇さえ与えず、見事全弾命中。旗艦の大型戦艦は周囲の護衛艦数隻を道連れに火球と化して爆沈した。

 旗艦を失って大混乱に陥ったボラー艦隊だったが、それでも何隻かは第52駆逐隊への反撃を試みようと回頭を終える。しかし、彼らは再び驚くべきものを目にした。

 第52駆逐隊の4隻が、その場から「消えていた」のである。

 この第52駆逐隊に配備されていた改A2型駆逐艦は、このグループでも希少な連続ワープ機関を搭載した艦であった。彼らは「和泉」の座標特定に従って一回目のワープにより敵旗艦に近接、魚雷投射と同時に戦果確認すらせず急速回頭、あらかじめ「和泉」から指定されていた障害物のない安全な宙域に二回目のワープを敢行したのだ。

 この「座標を特定した連続ワープによる近接雷撃と急速離脱」という戦法は、今回の成功で防衛軍の水雷戦隊に新たな可能性を与えることになった。そして、後に新型駆逐艦群による水雷襲撃の戦法としても採用され、非公式ながら「堀田戦法」と呼ばれるようになるのだが、それが実現するのはこれよりまだ少し先、ディンギル戦役終結後のこととなる。

 「敵旗艦の撃沈を確認、残る敵艦は潰走状態に入った模様。我、これより艦隊に復帰する」

 「和泉」からの通信を受けた堀田は、静かに軽くうなずくような仕草を見せた。

 (終わった、か)

 もう一度表情を引き締めてから、堀田は各艦に命じた。

 「戦闘配備を解き、警戒配備に移行。各艦は周辺を警戒しつつ、敵味方を問わず沈没、損傷艦の生存者の収容にあたれ」

 後に「カイパーベルトD宙域会戦」と呼ばれるこの戦闘で、これが堀田真司提督の出した最後の命令となった。

 「敵艦隊に空母、並びに惑星破壊大型ミサイル搭載艦の存在を確認せず」

 カイパーベルトの小惑星帯から外に出て、レーダーの最大探知距離から敵艦隊の構成を確認していた「和泉」「クアルト」の両警備艇、並びに「ドレッドノート(Ⅱ)」から発進した偵察機(「コスモタイガーⅡ」三ニ型偵察仕様)の報告により、第3警備艦隊は戦端を開く前にこの事実を知ることができた。

 (やはり、敵は空母が不足しているようだ)

 堀田提督は考える。第1、第2主力艦隊をヤマトとの交戦で失っていたボラー連邦は、シャルバート星攻撃に大規模な空母部隊を投入したと聞くが、その空母艦隊がガルマン・ガミラス帝国のデスラー総統直属艦隊に全滅させられたという。そうなれば、ボラー連邦ほどの大国でも空母、それ以上に艦載機の搭乗員が不足することは免れまい。
 しかし、空母はいなくともボラー連邦の戦艦にも数は少ないが、艦載機を搭載するものがいるのも事実である。

 (とはいえ、会敵直後の航空戦となると、いささかこちらは苦しいが)

 「ドレッドノート(Ⅱ)」偵察機から「敵艦隊より艦載機の発進を確認」と報告が入り、第3警備艦隊も第11番惑星基地の戦闘機隊に全力出撃を要請する。
 程なく、11番惑星基地から28機の戦闘機隊が発進し「薩摩」偵察機の誘導で戦場に向かったと報告が入ったが、発進地点からかなり距離のある空間での交戦になったため、基地航空隊は対艦攻撃用のミサイルを搭載できず、全てのハードポイントに増槽を装備しての出撃となった。そして、それでも戦場宙域に留まれるのは30分程度と見込まれており、まず戦場到着自体にも同程度の時間がかかる。

 彼我の艦載機の性能差を考えれば、恐らく80機程度と判明した敵艦載機が相手としても、30機弱のコスモタイガーⅡで十分に対抗できる。これはよいとして、問題はその戦闘機隊到着までにどうやって制空権を維持するか……でもなかった。

 (何より重要なのは「その時」までに、どれだけ味方艦の存在を敵に露呈しないかだ)

 もちろん、そのための作戦を堀田提督は立案し、それを第3警備艦隊司令部と各艦は敵艦隊到着までの僅かな時間に超特急で準備した。元から冗談交じりで「幕僚殺し」などと呼ばれるほど、状況が許せば事前の「仕込み」を念入りに行う指揮官だが、その知将としての緻密さとそれを裏打ちする実戦経験が、彼をして前線の将兵から信頼を得ている所以でもある。

 15分後、ボラー艦隊の艦載機にカイパーベルトの内側で陣取った第3警備艦隊の一部が捕捉された。しかし、恐らく敵の搭乗員たちは面食らったはずである。
 彼らの目に映ったのは、これまで見たこともない大型艦が5隻だけ。前衛に2隻の戦艦らしき艦、うち1隻は通信を発し続けているため旗艦と推測され、若干離れた後衛には、一見すると船体規模の割に弱武装と映る、白い塗装が印象的な3隻の艦が並列していた。これまでこの宙域の戦闘で確認されていたA型戦艦やA型巡洋艦が存在しない艦隊に違和感はあったはずだが、旗艦らしき艦を確認できたことにボラー艦載機隊の隊長は満足したようだった。

 「まず旗艦から仕留めるぞ、一斉攻撃だ!」

 この敵航空隊の通信を傍受した、と報告を受けたとき「薩摩」の指揮席に座った堀田提督はその静かな表情を崩さなかった。

 敵が見た「5隻の大型艦」の正体は、後衛の3隻はC1型駆逐艦で編成された第63駆逐隊だったが、前衛の「旗艦と思われる艦」とその同型を合わせての2隻は、実は艦艇ではなかった。
 これらの正体は「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」に搭載されていた、大口径衝撃波砲の射撃訓練に用いる艦艇型のバルーンデコイだった。今回の第3警備艦隊の出撃が元々訓練のためであり、そしてその訓練で最も重要視されていたのは、新規に編入された第63駆逐隊の主砲射撃訓練であったため、耐久力の高い大型デコイが準備されていたのだ。
 そのデコイのうち、一つに「救援要請などもっともらしい平文の通信を適宜送る」機構を装備して旗艦に偽装し、これに当面の攻撃を集中させる。これが堀田提督の最初に準備した「罠」だった。

 では、第3警備艦隊の他の艦艇はどこにいたのか。

 第63駆逐隊とデコイが居座る宙域は、回廊とはいかずとも正面は小惑星や氷塊がやや少なめで、両側には比較的大きな小惑星や氷塊が密集している場所だった。その「類似回廊」とでも言うべき空間の左側に「ドレッドノート(Ⅱ)」と第29巡洋艦戦隊の4隻、右側に旗艦である「薩摩」と第44駆逐隊の5隻が、小惑星や氷塊を徹底的に利用してその存在を秘匿しつつ布陣していた。
 警備艇2隻は敵艦隊の構成を確認し終えると、いずれも敵に捕捉されない距離を保ちつつ「クアルト」はそのまま偵察活動を続けながら「薩摩」率いる部隊への合流を目指し「和泉」は敵艦隊の後方へ回り込む運動を始めた。「和泉」と現状見当たらない第52駆逐隊には重要な任務があったが、それに触れるのは後にしたい。



 「くそっ、なぜこいつは沈まん!」

 第63駆逐隊の司令駆逐艦「春月」から戦場の状況が報告されたとき「薩摩」艦橋にいた各員は敵航空隊の指揮官のそんな声が聞こえたような気がした。
 当初の狙い通り、ボラー艦載機隊は旗艦に偽装させたデコイに集中攻撃を加えていた。しかし、比較的高火力を持つボラー連邦の艦載機とはいえ、大口径衝撃波砲のデコイとして準備されたものをそう簡単に破壊できるはずがない。

 (だが、この偽装もそろそろ限界だな)

 少なくとも堀田提督はそう思っていた。囮作戦は成功したものの、その「種」がデコイである以上、敵航空機に対して何ら反撃の手段を持ち合わせていない。延々と攻撃を続けているのに反撃すらしてこないことに、敵が不審を持たないほうがおかしいのだ。

 「基地航空隊の到着まであと何分か?」

 作戦参謀から「あと15分ほどで到着します」と返され、堀田提督は「そろそろだな……」と小声で呟いてから、この戦闘で初めてよく通る声で命令を下した。

 「第63駆逐隊に命令。敵艦載機隊への対空戦闘を許可する、防空駆逐艦としての力量を存分に発揮すべし!」

 これを受けて、待ちかねたとばかりに第63駆逐隊は火災を起こし始めていたデコイ付近まで接近、近接対空戦闘を開始した。そして、そのC1型駆逐艦群の対空戦闘に、ボラー艦載機隊は戦慄したはずである。
 主砲は今後の作戦のためにと堀田提督から使用を制限されていたものの、C1型駆逐艦とは元々、波動砲搭載戦艦の護衛を主任務として設計された「防空駆逐艦」なのだ。その両舷に装備された速射性を極限まで高めたパルスレーザー砲と空対空改良型短魚雷、そして艦橋前面の箱型パルスレーザーランチャーによる激烈な対空砲火に「運動性に難がある」とされるボラー艦載機隊はたちまち戦力を撃ち減らされていった。

 ここで罠と気づいたか、ボラー艦載機隊は退却を開始する。だが、その判断は遅かった。
 「薩摩」偵察機に誘導された11番惑星基地戦闘機隊が戦場に到着、空戦に突入した。元から護衛戦闘機ですらコスモタイガーⅡに性能で大幅に劣るボラー艦載機が後ろを取られた状態で攻撃されればどうなるか、もう目に見えていた。

 「今後の作戦のため、敵艦載機の撃滅を切に願う」

 11番惑星基地に航空隊の全力出撃を要請する際、堀田提督はこう付け加えていた。そのため戦闘機隊の攻撃は執拗を極め、30分という滞空時間ぎりぎりまで戦闘を続けた結果、第63駆逐隊との共同でボラー艦載機隊を文字通り全滅させたのである。



 ここまでは、第3警備艦隊司令部が想定した通りに事態が推移していた。敵が先手を取るために送り込んできたはずの艦載機隊を全滅させたことで、相手にいくらか残存機があろうともそれほど大きな脅威になるとは考えにくかったからだ。
 だが、戦場とは文字通り生き物である。これで戦線は膠着するだろうと判断した第3警備艦隊司令部要員の多くが、数分後、それが誤りだったと知ることになる。

 「ボラー艦隊主力、陣形を保ちつつ前進してきます!」

 偵察活動を続行中の「クアルト」からの報告は司令部を驚かせた。敵も囮を務めるために行動していると彼らは想定していたし、艦載機による先制攻撃も、自分たちが空母を持たないことを知っている敵側にとって一方的な攻勢が行える唯一の手段だったはずだから、これも予想できた。
 その敵の攻勢を排除した以上、囮としては戦局の膠着を望んでも、ほぼ全力で攻勢に出てくるはずはない。第3警備艦隊の司令部要員たちの大半がそう思っていたのだ。

 直後、今度は地球防衛軍司令部から驚くべき通信が入った。

 「太陽周辺宙域で、ヤマト及びガルマン・ガミラス帝国艦隊とボラー連邦艦隊、並びに機動要塞が交戦中。なお、ガルマン帝国のデスラー総統、ボラー連邦のベムラーゼ首相が参戦の模様」

 これを聞いた堀田提督は、すぐに自分の誤りに気付いた。

 「敵の必死さを見誤った。囮であることは間違いないが、国家元首自らが出てきた作戦でこのまま逃げ帰れば、恐らく敵の指揮官の命はない。ボラー連邦とはそういう国だろうからな……」

 ガルマン・ガミラス帝国からの情報が大半を占めるためいささか誇張されていると見るべき点はあるが、ボラー連邦という国がベムラーゼ首相による極めて強権的な独裁国家であることは、この時期の防衛軍でもよく知られていた。実際、ヤマトが第二の地球探査で立ち寄ったバース星ではその首相から極めて無理な要求を突き付けられ、交戦状態になったあげく味方が駐留しているバース星そのものを、ベムラーゼ首相は「殆ど個人的な気分による命令で」破壊したという事実があるのだ。

 「どうしますか? このままでは薄い小惑星帯を突破されて第63駆逐隊が危険ですが」

 参謀長に問われ、一瞬、堀田は思案する。そして「薩摩」の通信士に声をかけた。

 「来援艦から、最後のワープを開始すると連絡が入ったのは何分前か?」
 「3分前です」
 「そうか」

 短く答えた瞬間、堀田は自分の頭の中で作戦をわずかに切り替えた。

 「各艦に伝達『敵艦隊が小惑星帯に入る前に攻勢に出る。全艦、突撃準備』」
 「て、提督?」

 作戦参謀が驚いたように声を上げたが、堀田は構わず続けた。

 「敵が数に任せて押してくれば、もはや遅滞戦術は通じない。ならば、こちらも敵の殲滅を狙うしかない。そのための『プランE』でもあるのだ。ここは我々のみならず、地球の正念場と覚悟して戦おう」

 同時に、第63駆逐隊にも打電する。

 「これより、貴駆逐隊の主砲射撃制限を解除する。敵との適切な距離を保ちつつ、その火力を発揮することを期待する」

 大型艦とはいえ、所詮は駆逐艦であるC1型駆逐艦で構成され、かつ練度も低い第63駆逐隊に敵の大攻勢を粘り切るだけの能力はない。そして中央に布陣するこの部隊が突破されれば、現在は存在を隠蔽している自分たちが遊兵と化して敵が太陽系内に乱入し、戦略的敗北は免れない。極めて危険な戦いにはなるだろうが、ここは打って出るしかないと決断したのである。

 (来援艦のワープ終了から戦場到着、チャージ完了まで……恐らく20分と少し。それまでどう支えるか、それだけだ)

 膠着するはずだった戦況が、一気に動き出した。

 2203年初頭、太陽の核融合異常増進による人類滅亡の危機は、ヤマトがシャルバート星からハイドロコスモジェン砲を受け取ったことで収束に向かいつつあった。
 この時期、ヤマトによって行われていた第二の地球探査の過程において、ガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦による星間戦争に巻き込まれていた地球防衛軍は、市民の移住および太陽制御を前にして太陽系が攻撃を受ける可能性を考慮し、探査船団に参加しなかった艦艇と、移民船建造の合間に細々と建造していた新型艦を太陽系外周に配置、敵対勢力であるボラー連邦の侵攻に備えていた。

 ヤマトが太陽系に帰還し太陽制御に向かった直後、防衛軍が「カイパーベルトD宙域」と名付けた空間に配置されていた探査衛星が、ボラー連邦の大艦隊(少なくとも180隻以上)を遠距離で捕捉した。
 この知らせは真っ先に、太陽系内の最前線基地である第11番惑星基地、および同基地に駐屯し、この時点で同惑星軌道上において訓練を行っていた第3警備艦隊(臨時編成)にもたらされた。

 艦隊編成は以下の通り。


第3警備艦隊

司令官 堀田真司宙将補

第2戦艦戦隊
A3型戦艦「薩摩」(旗艦)
改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」

第29巡洋艦戦隊
A2型巡洋艦「サンディエゴ」「ヨーク」「ローン」

第5警備戦隊
警備艇(元改A2型パトロール巡洋艦)「和泉」「クアルト」

第44駆逐隊
A2型駆逐艦「ホプキンス」「ホットスパー」「ブレストーズ」「スローヴイ」

第52駆逐隊
改A2型駆逐艦「吹雪」「五月雨」「秋雲」「早霜」

第63駆逐隊
C1型駆逐艦「春月」「夏月」「花月」

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 第3警備艦隊旗艦時の「薩摩」。完成時のA3型戦艦に比べ、対空兵装強化と砲塔天蓋への増加装甲追加などの改装が行われている(画像制作:はたかぜ工廠様)


 現在この警備艦隊に所属している艦は、通常いくつかの小部隊に分かれての哨戒活動に従事していたが、新規に編入された第63駆逐隊との共同訓練のため合流して行動していたのは幸いだった。ただちにボラー艦隊迎撃に向かうべしと第3警備艦隊司令部は色めき立ったが、司令官の堀田提督はある疑問を感じていた。
 彼は11番惑星の警備艦隊司令官として着任して以来、何度かボラー連邦艦隊との小競り合いを経験してきた。しかし、ボラー連邦は過去のほぼ全ての戦いにおいて小規模な艦隊を分散してワープで、あるいはレーダー妨害を行いながら送り込んで来ており、数に劣る11番惑星の警備艦隊は時に翻弄されることもあった。その戦訓がありながら、なぜこうして大規模な戦力を集中して、それもこれ見よがしに存在を示しながら進撃してくるのか。

 今のボラー連邦が、地球人類が滅亡の危機に瀕していることを知らないはずはない。それなら敵対勢力である以上、その滅亡を促進するのはむしろ当然であり、そのために現在真っ先に目標とすべきはヤマトではないのか。

 「こちらを引き付けるための囮かもしれない」

 堀田提督はそう判断し、ただちに地球防衛軍司令本部と各太陽系惑星基地、そして太陽に向けて航行中のヤマトにボラー艦隊来襲の報を打電させた。しかし、既に太陽に極めて近い宙域を航行していたヤマトは不運にも太陽から発せられる電磁波の影響でこの通信を受け取ることができず、結果としてこの後、ベムラーゼ首相直隷の機動要塞および艦隊と単独で交戦することになる。
 もちろん戦後にわかったことだが、第3警備艦隊が向かっている先に存在するボラー連邦の艦隊は堀田提督の読み通り、ベムラーゼ首相指揮下の本隊が太陽系に侵入するのを支援するための囮部隊だった。とはいえ、囮だからと第3警備艦隊がこれを無視すれば、敵艦隊は悠々と太陽系の外惑星に攻撃を開始するだろう。この時期、冥王星にはA5型戦艦2隻を中心とする一定規模の艦隊が駐留していたが、地の利がない宙域で当時太陽系に残留している防衛艦隊の数倍にもなる規模の艦隊を止める術など、ヤマト以下の強力かつ新鋭の戦艦をすべて第二の地球探査に振り分け、太陽系内に配備された艦隊が従来艦と訓練未了の新型艦で編成されている現在の地球防衛軍には存在しない。ゆえに、第3警備艦隊は何があろうとこの敵艦隊を迎撃するしか道がなかった。

 再び、第3警備艦隊は味方に宛てて打電する。

 「我が第3警備艦隊はボラー連邦艦隊の太陽系侵入を阻止すべく、カイパーベルトD宙域に向かう。敵戦力極めて強大につき掩護を求むが、別方面からのボラー連邦軍の来襲にも注意されたし」

 同時に、11番惑星基地に対して戦闘機による支援要請も行われた。なお、これらの通信はボラー連邦の国家元首動くとの報を受けて太陽系に向かっていたガルマン・ガミラス帝国のデスラー総統直属艦隊にも傍受(発信されたのは暗号電文だったが、友好国であるため双方の暗号システムが一部共有されていた)され、同艦隊がヤマト掩護に急行するきっかけになったとされている。

 厳しい戦いが予想されたが、それでも第3警備艦隊には一応の勝算があった。カイパーベルトの小惑星、および氷塊を利用した遅滞戦術を行えば、太陽系内に残留する防衛艦隊が集結して自艦隊の掩護ないし敵の別動隊に対処してくれる可能性はある。敵の1/10の戦力で長くは持たないかもしれないが、仮に自艦隊が壊滅しても太陽の制御にさえ成功すれば地球は救われるのだ。そうなれば、いかにボラー連邦の大艦隊といえど太陽系に留まる理由は低くなるはずだ。第3警備艦隊司令部はそこまで腹を括っていた。

 ともあれ、敵艦隊に先んじてカイパーベルトD宙域に到着した第3警備艦隊だったが、編成上は18隻と当時の地球防衛軍としては有力な艦隊ではあったとはいえ、その内情は決して楽観視できるものではなかった。
 先の暗黒星団帝国戦役における重核子爆弾の影響で、太陽系外周に配備されていた艦艇は艦そのものは無傷だったものの、その乗員全てを一度に喪失していたからである。当面は最前線に配備されるということもあり、第3警備艦隊の各艦に着任した乗員はまだ比較的練度に恵まれたほうではあったが、新鋭のC1型駆逐艦で編成された第63駆逐隊は艦隊行動に一応問題なく追従できる程度というレベルであり、C1型駆逐艦が既存の巡洋艦以上の大型艦となっていることも手伝って、とても駆逐艦らしい機動戦は期待できない。

 また、この時期の地球防衛軍の艦艇は、対抗すべきボラー連邦の艦艇に対して「衝撃波砲の通常エネルギー弾の威力不足」という大問題を抱えていた。もちろん中距離程度での射撃で多数の命中弾を与えれば通常弾でも敵艦の撃破は可能だったが、これまでアウトレンジ攻撃を志向し衝撃波砲の威力、射程の向上に躍起となっていた地球防衛軍にこの問題は大きなショックを与えていた。
 これには当時、地球防衛軍で最も大口径の衝撃波砲を搭載していたヤマトですら悩まされ、スカラゲック海峡星団会戦で敵の大艦隊と交戦した際には二式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)を撃ち尽くすまで乱射し、ようやく敵の前衛部隊を崩して勝利を収めたというほどであった。
 当然、これまでのカイパーベルト宙域で行われた戦闘でも、ヤマトより火力で劣るA型戦艦はその主砲の威力不足が深刻に受け止められていた。一応「ドレッドノート(Ⅱ)」は門数こそ少ないがヤマトと同じ九九式三型46cm砲を搭載し、二式波動徹甲弾も少数ながら配備されていたからまだよかったが、この新型徹甲弾に対応する改装が行われていなかった「薩摩」はこれまでの敵艦隊との交戦でかなりの難渋を強いられていた。また、A型戦艦の主砲を改良した砲(一式三型40cm衝撃波砲)を搭載したC1型駆逐艦は正面での撃ち合いにその速射性能を発揮することは期待できても、二式波動徹甲弾なし(元々運用能力が付与されていなかった)でどこまで有効打を与えられるかは、これまで実戦で戦った経験のない艦型だけに未知数だ。まして、現状は波動砲を撤去し20cm砲しか搭載していないA型巡洋艦クラスの艦に多くを望むのは無理がある。

 ならば雷撃戦はどうか。第52駆逐隊を構成する改A2型駆逐艦は新鋭艦に配備が始まった大型魚雷に対応した艦で、暗黒星団帝国戦役では内惑星宙域にいたため乗員が無事だったこともあり、その水雷襲撃には大きな期待が持てる。もう一方の第44駆逐隊も艦は白色彗星帝国戦役時と同じ旧来の雷装ではあるが、側面攻撃に成功すれば正面以外は脆いボラー連邦の大型艦にも相応の効果が見込めるはずだ。しかし、今回はあまりに敵艦の数が多く、突撃のタイミングを誤れば返り討ちは免れないだろう。

 では戦艦装備の波動砲はというと、少なくともこの時点で使用を考慮するなど論外である。あくまでカイパーベルトに浮遊する小惑星や氷塊を利用した遅延戦術が目的なのに、そのために必要な浮遊物を自ら吹き飛ばしては全く意味がない。

 このように寄せ集め、かつ決め手に欠く艦隊で、いくら囮と思われるとはいえ10倍の戦力を持つ敵に挑むなど、普通に考えれば無謀と言うしかない。しかし退くという選択肢は既になく、そして彼らにはまだ二つの幸運があった。
 一つは、艦隊司令官の堀田宙将補が、当年33歳と若いながらもガミラス戦役から暗黒星団帝国戦役までを戦い抜いて生き残った経験豊富な提督であること。
 そしてもう一つは、艦隊が戦闘予定地点に到着後程なく、恐らく天王星宙域から入った「ある一隻の艦」からの入電だった。

 「貴艦隊の支援要請を受信せり。これより、本艦は連続ワープにて直ちに掩護に向かう」

 この通信を受けた堀田提督は、事前にAからDまで用意してあった作戦プランに「E」を加え、敵艦隊が戦闘宙域に入る直前にその「プランBからプランEに移行する」作戦を準備、各艦の配置と「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」に搭載されていた偵察機各1機の発艦、そして「来援する一隻の艦」への具体的な行動要請も完了させていた。

 戦闘開始直前、堀田提督はこう全艦に訓示したと伝わる。

 「苦しい戦いだが、勝つための作戦は用意してある。各艦、この戦闘で総力を挙げての奮戦と、同時に生還を期待する」

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