地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

白色彗星帝国戦役時におけるA型戦艦

 A2型戦艦から本格的に量産、配備が開始されたA型戦艦であるが、就役後に艦隊側からはバランスのとれた攻防性能と機動力、居住性について概ね良好な評価を得ている。

 ただ、主砲である一式40cm衝撃波砲に関しては度重なる改良にも関わらず、散布界は未だに大きいこと。それと艦橋砲として装備した零式15.5cm六連装砲は戦闘訓練で連続発砲した場合、艦橋への振動など影響が大きく実用性がないという点が問題として指摘されていた。
 しかし、参謀本部や艦政本部は艦橋砲は特殊砲弾を用いる以外は使用停止にすればよく、主砲についても複数艦の射撃によって弾幕を形成する際には、むしろある程度の広さをもつ散布界が必要ではないかと考えており、更なる散布界縮小を目指した根本的な改善は行われなかった。

 A型戦艦の前期生産型である38隻のうち、地球の工廠に係留されていた「ドレッドノート」と輸送船団護衛の任務に従事していた「ボロディノ」を除く36隻が、土星宙域におけるバルゼー艦隊との戦闘に参加した。
 この会戦でA型戦艦各艦は当初期待された波動砲艦、および艦隊の中核を成す戦列艦として十分な働きを見せたのだが、戦後に各艦隊から提出された戦闘詳報によって、A型戦艦が内包していた重要な問題点がこの会戦で噴出したことが示されている。

 それらに曰く、

・主砲の散布界が遠距離砲戦において著しく過大。これが原因で有効命中弾数が過少となり、敵艦隊をアウトレンジした場合においても敵戦力を早期に減少させることが難しい。特に艦隊内の戦艦数が少なく濃密な弾幕を形成できない場合においてこの傾向が顕著である(なお、この散布界問題は土星会戦における第6艦隊壊滅の一因とされている)
・主要火器を管制コンピュータによって艦橋から指揮するため、艦橋に損害を被ると即座に戦闘不能となる場合があり、その復旧を戦闘中に行うことが困難。また砲塔内に要員が配置できず照準機構も搭載されていないため、非常時に砲側照準による射撃を行うことが不可能である
・近接対空火力が不足し、敵航空機およびミサイルに対して有効な迎撃手段を有していない
・全般的な防御性能は十分であるが(砲塔の構造に起因して)砲塔天蓋の防御力が不足。また船体構造の強度に不安があり、非主要防御区画への被弾が衝撃として船体を伝わり装備機器に悪影響を与える場合がある

 また、会戦の最終段階で連合艦隊は彗星都市帝国の攻撃によって壊滅的な被害を受けたのだが、この戦闘における波動砲についての所見が残っている。
 それによると「拡散波動砲は対艦戦闘においてその破壊力は極めて大なるも、要塞など大型の固定目標に対しては集束型波動砲に比して明確に威力が劣る。対艦戦闘に特化した結果として、その他の目標に対する攻撃能力が不十分である」とし、艦隊に配備された波動砲艦が拡散波動砲搭載の戦艦と、威力の低い集束型波動砲しか持たない巡洋艦しかなかったことを悔いる記述がなされている。

 これらの戦訓はさっそく参謀本部でも検討されたが、結果、波動砲に関しては当時開発中だったエネルギー集束率の変更が可能な新型砲(後の爆雷波動砲)の実用化を促進させるとし、主砲の散布界過大については貫通力と射程の減少を忍んで初速を低下させ集弾性の確保を行うことになった。

 この決定は彗星帝国戦役終結直後に各部からの承認を受け、戦役を生き残った前期生産型の各艦に施された改装と、続いて建造されることになった後期生産型にも反映されている。前期生産型の残存艦と後期生産型については別項で触れることにしたい。


暗黒星団帝国戦役直前までのA型戦艦残存艦の動向

 彗星帝国超巨大戦艦の撃沈によって区切りとされる白色彗星帝国戦役であるが、その時点で残存していたA型戦艦は以下の通り。

A2型:「カイオ・デュイリオ」
改A2型:「テネシー」
A3型:「薩摩」「ストラスブール」

 この他に当時の防衛軍が保有していた戦艦はヤマト1隻で、太陽系内に彗星帝国の残存軍が存在する状況においては艦隊戦力の不足が否めず、しかも建造工廠の多くが彗星帝国の攻撃によって破壊されたため、新規に多数の艦を建造することもままならなかった。
 ただ同時に、太陽系内で多くの戦闘が行われた結果、撃沈された艦の残骸などから希少金属を調達するのが比較的容易であり、また内惑星基地の被害はほぼ皆無だったので、これらの要素から既存艦の修理と小規模な新規建造は可能という見通しも存在していた。そのため、この時期の防衛軍は主に彗星帝国残存軍との戦闘を前提として、艦艇の修理と少数ながら新造艦の建造を行っている。

 新規建造艦については次項に譲り、ここでは残存していたA型戦艦各艦について追っていく。

 「テネシー」は白色彗星帝国戦役時の損傷が大きく、彗星帝国残存軍との戦闘には参加していない。残る3隻は優先的に修理が施され、後述する後期生産型と共に戦艦戦隊を構成して活躍、損失なしで残存軍との戦いを終えた。また、同時期に発生したイスカンダル戦役では「ストラスブール」に限定的な連続ワープ(無人艦による先行誘導が必要となる)を可能とするべく機関の改装を行い、ヤマト以下によって編成されたイスカンダル救援艦隊に所属し暗黒星団帝国軍との戦闘に参加、大きな損害もなく帰還している。
 これら一連の戦役が終結した後、A型戦艦にはそれ以前に収集された戦訓に対応する改装工事が行われることになった。ただ、この時期は艦隊戦力および人員の不足を無人艦隊の整備によって補うという状況だったため、行われた改装は艦によって微妙に異なるものとなっている。ここでは個艦ごとに取り上げることとし、共通する改装の項目については重複することをご容赦いただきたい。


「カイオ・デュイリオ」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造(一式40cm衝撃波砲の初速を低下させ散布界を改善したもの、代償に貫通力と射程が減少)
・艦底部に九九式垂直軸ミサイル発射管を2門追加(配置はA3型と同様)
・電探と通信機器を改A3型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 改装は比較的小規模だった模様で、工事完了後の本艦は外惑星練習艦隊の旗艦として活動している。

「テネシー」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造
・無人艦で編成される中規模程度の艦隊を統制するため旗艦設備を更新
・電探と通信機器を改A2型パトロール巡洋艦の後期生産型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 本艦の改装は白色彗星帝国戦役時の損傷修理と並行して行われているが、前線復帰が急がれたため改装自体の規模は小さい。工事完了は彗星帝国残存軍との戦闘が終了した直後で、イスカンダル戦役終結後は冥王星に配備された太陽系外周無人艦隊の旗艦となっている。
 ちなみに本艦と「カイオ・デュイリオ」はA3型以降の艦と異なり完成時から艦橋砲を装備していたが、機材の撤去が行われたという記録が存在しないため、実戦での実弾射撃を停止する措置が取られたのみと判断される。

「薩摩」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造
・主砲塔内を改造し、砲側照準による射撃を可能とするための設備を追加
・砲塔天蓋の防御力改善のため、主砲砲身基部に増加装甲を装備(これに伴い最大仰角が若干減少している)
・両舷側の九九式短魚雷発射管を全門撤去、同所に対空砲座を新設し零式76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて4基装備
・機関を「ストラスブール」と同様の限定的な連続ワープに対応可能なものへと改造
・戦隊旗艦設備の更新
・電探と通信機器を改A3型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 「薩摩」の改装はイスカンダル戦役が終結した直後に開始されており、他艦より比較的規模の大きいものとなった。改装工事の完了は暗黒星団帝国戦役開始の直前で、この状態で戦役勃発を迎えたものと考えられる。

「ストラスブール」

 イスカンダルから帰還後、本艦も「薩摩」改装の終了と入れ替わりに改装を行う予定であったが、暗黒星団帝国戦役勃発のため実施されていない。内容は機関を除き概ね「薩摩」と同様とされている。

 なお、改装された各艦に共通する主砲の改造と船体構造の補強、電探その他の装備更新は「その効果は大と認める」と評価された。特にA型戦艦を悩ましてきた主砲の散布界問題はこの工事によって大幅な改善が見られ、懸念された貫通力と射程の減少も最低限に収められていたため、艦隊側からは大いに歓迎されている。


後期生産型の建造

 前述したとおり、白色彗星帝国戦役後の地球防衛軍に残された戦艦は5隻に過ぎず、加えて彗星帝国残存軍が太陽系外周に存在している状況であり、艦隊戦力の整備は必要不可欠であった。
 このため防衛軍は既存艦の修理と巡洋艦と駆逐艦の追加建造、および無人艦隊の整備に注力することにしたが、彗星帝国残存軍に戦艦など大型艦が多数含まれる模様であること、無人艦隊はまだ研究が終わったばかりで実戦で確実に戦力として期待できるかが不透明という問題もあり、最低限ながら戦艦の追加建造も行うことが決定された。この段階で建造が決まったのがA型戦艦の「後期生産型」で、予算は未成に終わったA3型、A4型戦艦のものが転用されている。

 この後期生産型は戦時急造型と言うべきもので、その建造にあたってはあらゆる方面で省力化が図られており、特に兵器などの艤装関連は製造能力や設計時間の不足から既存品の流用によって賄われた部分が多いのが特徴である。なお未成艦の船体モジュールも再利用されたが、前期生産型各艦が後日の改装で行った船体構造の補強は建造中に実施されている。

 6隻が建造された後期生産型は二つのタイプに分類される。以下で紹介したい。


改A3型(主砲換装型、後期生産型・甲)「ドレッドノート(Ⅱ)」「山城」「ネヴァダ」

 後期生産型の最初のタイプ。一番艦「ドレッドノート(Ⅱ)」の艦名が引き継ぎなのは、地球の工廠で全損となり解体された先代から多くの部品が流用されたことに由来する。

 この改A3型の最大の特徴は、主砲がそれまでのA型戦艦とは異なる九九式二型46cm連装砲塔3基に変更されていることだが、この決定に至った事情は以下の通りである。
 建造が決まったA型戦艦の後期生産型だが、当面の問題として「一式40cm砲の砲身不足」というものがあった。これは彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃により地球各所の工廠が大きな損害を受け、同時に既存艦向けの予備として用意されていた一式40cm砲の砲身の多くも炎上して使用不能となり、結果として深刻な砲身の不足が発生したのである。無事な在庫は当然かき集められたが、既存艦の修理のため、あるいは予備部品として使う必要も生じていたため、新造艦に向けて供給できる砲身が3隻分しか確保できない見通しとなった。
 (余談だが、この砲身不足問題に対処するため、当時残存していたA型航空母艦から主砲の砲身が撤去され他艦への供給に回されている。ディンギル戦役終結までA型航空母艦各艦が予備艦として実質放置されていたのは搭載機不足が最大の理由だが、この砲身転用も一因であったようだ)

 このため艦政本部は対策を迫られたのだが、ここで技術本部から「ヤマトが搭載している九九式二型46cm衝撃波砲の砲身であれば、研究用として用意されたものが一定数存在している」と知らせがあった。
 これを受けた艦政本部は、早速A型戦艦への九九式二型46cm衝撃波砲の搭載を検討した。結果、砲口径が大型化するため連装砲塔による搭載で忍ばざるを得ないが、幸い46cm連装砲塔の設計はかつて巡洋艦拡大の戦艦試案の際に行われていて、それを流用することも可能であり実現性は十分と判定され、この改A3型戦艦へ同砲が装備されることになった。
 (ただ、40cm三連装砲塔と46cm連装砲塔はバーベット径が異なるため、改設計と建造工事の際には相応の手間を要したと伝えられている)。

 艦隊側の一部から主砲6門では不足が生じるのではないかとの指摘もあったが、九九式二型46cm衝撃波砲は白色彗星帝国戦役の戦訓から良好な命中率と威力が高く評価されていたため戦艦の火力としては十分と判断されており、その後の実戦でも大きな問題は生じていない。また、本型が搭載した46cm連装砲塔はヤマトの三連装砲塔を縮小した設計だったため当初から砲塔内に照準機構が装備されており、この点は好評であったようだ。

 波動砲に関しては、それまでのA型戦艦に搭載された一式タキオン波動拡散砲を集束型に改造した「一式一型改タキオン波動集束砲」の搭載が決定された。既存の波動砲を用いながら完全な流用にならなかったのは、今後彗星帝国の都市衛星のような巨大移動要塞と遭遇した場合、拡散波動砲装備艦が多くを占める現状の戦艦戦力では対抗が難しく、一定数の集束型波動砲搭載戦艦を整備しておきたいという思惑からであった。
 なお「山城」と「ネヴァダ」は予定通り一式改一型タキオン波動集束砲を搭載したが、「ドレッドノート(Ⅱ)」は技術本部から「次期主力戦艦に装備予定の爆雷波動砲を新造戦艦1隻に試験的に搭載したい」との提案がもたらされたことにより、建造中に搭載済みの波動砲を爆雷波動砲に改造して完成している。
 (ただし「ドレッドノート(Ⅱ)」が装備した爆雷波動砲は制式兵器である「二式タキオン波動集束可変砲」とは仕様が異なり、各種機材が小型化されていたため戦闘詳報で威力不足とエネルギー充填時間が想定より長いことが問題視されているが、船体規模の小ささから改善はできなかった模様である)

 これら以前のA型戦艦とは相違点のある改A3型戦艦だが、他は電探などが最新型に更新された程度で、ほとんどの装備は未成に終わったA3型戦艦用に準備されたものがそのまま使用され、艦橋構造物に含まれる艦橋砲も同じく特殊砲弾発射用に限定されたものが搭載されている。

 同じ後期建造型であるA5型戦艦より起工が早かった本型は、完成後直ちに彗星帝国残存軍との戦闘に参加し活躍したが、11番惑星宙域での会戦において「山城」が敵駆逐艦の体当たり攻撃を受けて大破、総員退去後に爆沈し、彗星帝国残存軍との戦闘で唯一失われた戦艦となった。

 残る2隻はイスカンダル戦役終結まで太陽系にて待機していたが、その後の暗黒星団帝国戦役勃発まで大きな改装は行われていない。ただ艦隊側から「(砲塔の設計が旧式なため)主砲の仰角が不足し対空射撃が困難」との指摘があり、これを改善するべく砲塔天蓋装甲を防御に支障がない程度に一部切除し仰角を若干引き上げる小規模な工事が実施されている。


A5型(旗艦戦艦型、後期生産型・乙)「メリーランド」「ネルソン」「金剛」

 後期生産型、ならびにA型戦艦で最後に建造されたタイプ。本型も白色彗星帝国戦役時における軍備計画の影響を強く受けたものとなっている。

 白色彗星帝国戦役の初期に「A型戦艦以上の強力な戦艦を追加建造し艦隊戦力を強化する」目的から、アンドロメダ型戦艦の追加建造が行われることが決定した(一般には10隻が計画され5隻が起工されたと言われる)。そのための資材は用意されたのだが、戦役中盤は量産性で勝るA型戦艦の優先度が高くなり、細々と建造が続けられた艦も最後は彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃により全て失われ、1隻も完成することはなかった。

 このA5型戦艦の主砲と装甲鈑、そして既存のA型戦艦と異なるアンドロメダに類似した艦橋といった装備は、未成に終わったアンドロメダ型戦艦のために用意されたそれを転用したものである。これは既存品の流用という最大の目的もさることながら、比較的規模の大きい艦隊を統率する能力を有する戦艦を、新規に装備を製造せず建造できるという点に防衛軍が魅力を感じたこともあったようだ。機関も重量増加への対策が考慮された結果、建造中止となったA4型戦艦用に準備された3隻分の波動機関をそのまま搭載している。

 波動砲は、船体規模の違いからアンドロメダ型のものを流用できなかったため「零式一型改タキオン波動連装集束砲」と呼称される、使用停止措置に伴い損傷修理時などに撤去、あるいは製造されたが余剰となっていたA型巡洋艦用の波動砲を連装に改造したものが搭載されることになった。しかし実際には連装砲への改造に手間取り、各艦とも彗星帝国残存軍との戦闘への参加が急がれた関係で、完成時は船体構造に含まれる砲身を除いた波動砲関連の機材を省略して工事を終え、発射口に装甲鈑を装着した状態で艦隊に編入されている。
 (余談だが、波動砲発射口に装甲鈑を装着した状態の本型の映像が流布した際、いくつかの専門誌に「波動砲未搭載の新型戦艦」として紹介されたことがある。これと波動砲搭載後の本型が混同されたりもして「防御が強化されたA型戦艦(俗に「後期生産型・丙」と通称される)が別に存在する」という誤解が生じていた時期がある)

 以上のようにありあわせの部品をかき集めて建造されたA5型戦艦であるが、実戦ではアンドロメダ型譲りの装甲防御と既存A型戦艦より優れた指揮能力、重量が以前の同型艦より増大したにも関わらず機動力も維持されていた点が高く評価された(ただ機関については「扱いが難しい」とする記録が存在する)。彗星帝国残存軍との戦闘においても指揮戦艦として活躍し、損失なしでイスカンダル戦役までを終えている。

 暗黒星団帝国戦役勃発前の改装は、予定されていた波動砲の装備と主砲の一式一型改40cm衝撃波砲への改造が全艦に行われたのみであった。ちなみに波動砲装備後の本タイプは艦首の波動砲身が他のA型戦艦より幅広で重く「前トリムの傾向が強く、特に大気圏内での操艦が難しい」と評されたと伝わる。

 なお、A型戦艦はイスカンダル戦役後に追加建造が検討された形跡がある。詳細は不明だが、仮に計画として具体化されてもB型戦艦の建造開始と暗黒星団帝国戦役が勃発した時期から考えて、恐らく実現しなかったものと推定される。

新戦艦の設計と試作

 増幅装置を含む拡散波動砲関連の機材、および大口径の波動砲身を搭載することが要求されたため、艦政本部は艦の前半部をヤマトに類似した箱型とし、それに直径の大きい円筒形の構造を持つ後半部を組み合わせた船体を新戦艦に採用した。これでは紡錘型船型と比較して建造の手間が増すことは避けられなかったが、極力規模を小さくしつつも内部の容積を増加させ、求められた機材を搭載するためには必要と判断されたのだ。
 ただ、様々な特殊任務を前提として建造されたヤマトほどの船体強度は求められなかったから、建造期間短縮のため駆逐艦、巡洋艦の量産によって培われたブロック建造方式の活用や各部のモジュール化が最大限行われている。

 装甲防御に関しては、当初参謀本部は拡散波動砲の発射ユニットとしてこの戦艦を見ていたため近接して敵艦と交戦する機会は少ないと判断し、建造費と工期を圧縮するため必要最小限の防御に止めるつもりだった。しかし艦隊側から「それでは波動砲発射に用途を限定するしかなく、戦艦としての任務を遂行することが不可能になる」と猛反発され、設計当事者たる艦政本部も難色を示した事から、通常兵器を用いた対艦戦闘において必要とされる防御力を付与することが決定されている。
 ただ、工期短縮および費用縮減の観点から船体の軽量化は重要とされたため、防御配置はヤマトを参考にしつつ一部変更が加えられ、装甲鈑には製造が容易かつ軽量な新素材を多用、ガミラス戦役時の戦訓からヤマトで過剰と判断された部分の装甲については装甲厚の削減が実施されている。
 これらの処置によって戦艦としての防御力が低下したと指摘する資料も散見されるが、防御配置の変更と新素材の多用は直接防御の強化にも寄与しており、完成時のヤマトでは不十分とされた光学系装甲の大幅な見直しも行われていたため、後に使用した艦隊側は本型の防御力について「概ね十分である」と評価している。

 波動砲以外の兵装であるが、参謀本部から新戦艦の主要任務として「拡散波動砲の使用により遠距離の敵艦隊を撃滅する」ことが追加されたため、設計開始後の早い段階で新型の一式40cm衝撃波砲(正確な砲口直径は40.6cm)の搭載が決定、これを三連装砲塔に収めて3基装備することになった。この砲は既存の波動砲より射程距離が向上した一式タキオン波動拡散砲に対応した衝撃波砲で、ヤマトが装備した九九式46cm砲に比して大幅な射程延伸を実現していたものである。
 本型用に新たに設計された三連装砲塔は大仰角が取れるようになっており、発射速度および砲塔の旋回速度に関しても性能向上が図られた。それに伴ってヤマトには搭載された砲塔型副砲が廃止されているが、これは主砲で軽艦艇にも対応できると判断されたことと、甲板上の構造物を削減して重量や占有面積を減らしたい意図があったことが影響している。

 また、衝撃波砲という兵器が確実性のあるものとして認識されていなかった時期に建造されたヤマトでは、万一の失敗に備えてミサイル、魚雷発射管が多数装備されたが、本型はそれが大幅に削減された。同じく対空用パルスレーザー砲も、改良により既存の砲に比して発射速度が大幅に強化されていたし、同じく発射速度と仰角が向上した新型主砲を装備することで防空力も充分に確保できると判断され、こちらもヤマトより門数が減少した。

 艦内の格納庫であるが、当初はヤマトと同等の搭載能力を確保することが考えられたが、実行すると船体の大型化が避けられず、また設計開始後ほどなく航空母艦の建造が計画されたため、救命艇や内火艇などの他には当時の公式文書から引用すると「開発中の新型艦上戦闘機(のちのコスモタイガーⅡ)5機程度の搭載を予定」という小規模なものとされた。なお、本型は主に搭載するべき機材が不足していたことから実戦で戦闘機の運用を行ったことはなく、任務によって偵察機として1~2機のコスモタイガーⅡを搭載したのみである。
 加えて、想定された任務が太陽系内もしくは外縁における敵艦隊の迎撃であったため、極端な長期間にわたって基地などへ寄港せず航海を行うことも考えられず、ヤマトでは大規模に設けられた慰安、給糧施設は削減され、代わりに艦内居住区を拡大して乗員一人あたりの居住スペース増加を図っている。更に艦内工場についてもヤマトほどではなく、自艦の応急修理やミサイル等の弾薬を補充するのに用いる程度という比較的規模の小さいものとなった。

 これら艦内設備の見直しは艦の軽量、小型化と工数削減、そして居住性の向上に大きく寄与し、参謀本部も艦隊側もこの点については概ね良好な評価を下している。

 2200年末、拡散波動砲を搭載した新型戦艦の基本設計が以下のようにまとめられた。

全長:242m
全幅:45.8m
船体重量:53,400トン
乗員:80名(戦時定数、任務により増減あり)
波動砲:一式タキオン波動拡散砲 1門
主砲:一式40cm三連装衝撃波砲 3基9門
対空兵装:零式40mm三連装パルスレーザー砲 2基6門 
零式25mm連装パルスレーザー砲 2基4門
ミサイル兵装:九九式垂直軸ミサイル発射管 単装4基4門(艦底部)
九九式短魚雷発射管 単装8基8門(両舷側に各4基)

 この原案がまとまった直後、近接火力強化のため艦橋構造物頂上に零式短15.5cm六連装衝撃波砲が1基搭載されることが決まった。この短15.5cm砲はガミラス戦役末期にM-21881式突撃駆逐艦の火力を強化するために開発されたものだが、実際に搭載した艦が1隻も完成しなかったため、余剰となった在庫品が六連装化され本型へ流用されることになったのである。

 ところで、本型はヤマトと異なり主砲塔に砲術科の乗員を配置せず、波動砲を始めとする全火器の統制は艦橋に装備された射撃指揮統制コンピュータを介し一括して行われることとなり、船体や機関部のメンテナンスも大幅に自動化された。これはガミラス戦役後の人員拡充が始まったばかりで、人的資源の限られた防衛軍が節約できる乗組員は極力減らそうと考えたことによる。
 ただ、これは後に建造されたアンドロメダ型戦艦にも言えるのだが、基本的には多くを自動化するという方針はあったものの、乗員を一定数確保した戦艦として設計、建造され、実際の運用でも自動による作業と乗員による処置が並行して行われた事例が多々あることを踏まえると、必ずしも本型は自動化に徹し切った艦とは言い難い面があるように思われる。ただその一方、これら乗員数削減のための配慮が、後に発生した様々な問題の原因になったのも確かな事実といえる。

 こうして順調に進んでいった新型戦艦の設計であるが、主機関の選定に関しては非常に難航することとなった。

 参謀本部と艦政本部、そして実際に運用する艦隊側が様々な議論を重ねた結果、候補として二つの機関が残った。まず第一は、南部重工が新型戦艦用として新たに設計した波動機関。もう一つは艦政本部がヤマトに搭載された波動機関を改良した機関である。
 どちらを搭載したとしても、主兵装たる拡散波動砲の威力は殆ど差がないとされていた。そのため推進力が問題になったのだが、前者の新型機関はその大出力から巡洋艦に匹敵する速度性能を得ることが期待できたし、後者はそこまでの高速は期待出来なかったものの、ガミラス戦役におけるヤマトの経験を充分に反映させた上で改良を施していたため、信頼性が非常に高いという利点があった。
 結局、双方に長所があることからなかなか結論は出ず、また本型は防衛軍にとってヤマト以来、そして量産型としては初めての戦艦建造でもあったから、最終的に候補に上がった二つの機関をそれぞれ搭載する艦を1隻ずつ建造することで決着を見た。こうして建造した2隻を試験し様々な問題点を早期に洗い出して、それを解決してから量産を行うことにしたのである。

 試作艦の建造が決定した時点で、この新型戦艦には「A型戦艦」という名称が付与された。最終的にA型戦艦は各型合わせて44隻という多数が建造され、広く一般に「主力戦艦」と呼ばれるようになるのだが、詳細に関しては今後別項にて説明したいと思う。

前期生産型


 44隻の量産が行われたA型戦艦であるから、基本設計はさておき武装や機関、各種搭載機器に関しては様々なバリエーションが存在する。そのため防衛軍も公式文書において各艦を主に建造時期で分けて扱っており、特に白色彗星帝国戦役終結前に完成した38隻を「前期生産型」とし、その後追加建造された6隻を「後期生産型」として区別するのはよく知られている。
 まずは前期生産型の各種タイプから解説していくことにするが、本稿には波動砲や衝撃波砲、波動機関など、現在の防衛軍にとっても機密となる部分が多く含まれるため、それらに関する言及が不十分となる場合があるのをあらかじめご了承いただきたい。

 なお、各タイプ名は公式文書に拠る制式名称だが、続くカッコ内の名称は研究書籍などにおいて付与された通称であることにご注意いただけると幸いである。


A1型a(試作型a、試作型甲)「ドレッドノート(初代)」

 A型戦艦で最初に建造された艦で、一般的には後述の「ボロディノ」と共にA1型と呼称されることが多いが、ここでは個別に取り上げることにする。本艦が搭載した機関は南部重工製の新型波動機関である。

 建造の進展が「ボロディノ」より早かったため、本艦は公試運転の際に新型機関のテストはもちろん、拡散波動砲など全装備火器の試射、新たに搭載した射撃統制コンピュータの試験に供されることとなった。
 ところが、この試験中に大小様々な問題が発生したため、結果、公試そのものが終了前に中止されている。

 直後にまとめられた問題点は次のようなものだった。

・主砲である一式40cm衝撃波砲の散布界が過大なため、命中率が全自動射撃、手動照準射撃の双方において極めて低い
・新型波動機関のエネルギー伝導管が、設計ミスにより過熱し熔解する箇所が存在する
・ヤマトに比して通信設備を削減した結果、艦隊および戦隊旗艦としての通信能力に不安がある
・探知能力、特に艦底方向へのそれが充分でない
・急速旋回用スラスターの不足、および配置が不適切なため、旋回性能がヤマトより劣る
・艦橋内部が狭隘なため、戦隊あるいは小規模艦隊の旗艦として使用するのが困難

 結局、本艦はこれらの問題に対処するため建造ドックへ逆戻りすることになった。そして続いて完成した「ボロディノ」の試験結果も踏まえて改装が行われたものの、エネルギー伝導管を中心に大規模な再設計を施したにも関わらず、機関の過熱と伝導管の熔解問題はどうしても解決することが出来なかった。
 この機関に関する問題は相当に深刻で、防衛軍の中で最も熟練した機関員を揃えた試験も行われたが、最終的に「本艦の機関は戦闘艦艇用として実戦に耐えうるものではない」と結論付けられている。

 こうした事情から、本艦は最後の機関テストが終了した後、艦種類別を「特務艦」に変更(この処置は予算上の戦艦建造枠の都合によるものらしい)した上で地球の工廠に地上実験艦として係留されることが決定され、以後は除籍まで宇宙空間への航行を行っていない。そして引き続き新型機関の実用化および最新兵装の実験に用いられたのだが、これらは後にアンドロメダとA5型戦艦に搭載された機関や、散布界過大に悩まされた一式40cm砲の改良型を実現させる基礎となった。

 白色彗星帝国戦役が勃発した直後、防衛軍は本艦を戦艦として現役復帰させるべく、機関の換装ないし大幅な改造、兵装を中心とした装備を量産型各艦と同じものに変更する改装を計画したが、実行されずに終わっている。そして戦役末期、係留されていた工廠が彗星帝国超巨大戦艦の砲撃を受け、これによって大破した本艦は全損と判定されて程なく解体され、その廃材や使用可能とされた部品は既存艦の修理や新造艦の建造に転用された。

 なお「ドレッドノート」の艦名は、本艦の除籍後に完成した改A3型の一隻に引き継がれているので、混同されないようご注意頂きたい。


A1型b(試作型b、試作型乙)「ボロディノ」

 前述した「ドレッドノート」と同時に建造された試作艦で、機関はヤマトと同型の波動機関に艦政本部が改良を施したものを搭載している。

 完工したのは「ドレッドノート」より遅かったのだが、「ドレッドノート」が前述した各種問題の発生により公試未了のままドックへ逆戻りしたため、結果として書類上の竣工、防衛軍への引き渡しはこの「ボロディノ」のほうが先になった。
 そうした経緯から、通常「ドレッドノート型」と称されるA型戦艦だが、一部の公式文書および既刊の資料において「ボロディノ型」と表記されることもある。

 本艦は波動機関の過熱問題こそ生じなかったものの、それ以外の問題は「ドレッドノート」と同じく存在しており、また機関の最大出力が劣ることから加速性能の不足が指摘され、更なる能力向上も求められた。
 しかし、試作型2隻の試験結果を取り入れた増加試作型として改A1型戦艦が建造されることとなったため、本艦への根本的な改装は見送られている。そのため「ボロディノ」は実験終了後も外・内周艦隊および基地艦隊には配備されず、主砲に発砲遅延装置、艦橋構造物に各種電探を追加する改装を行った後、外惑星練習艦隊の旗艦として主に土星基地やアステロイドベルト基地周辺で行動した。

 本艦は白色彗星帝国戦役が勃発する直前、2番砲塔の撤去と訓練生用居住区画の拡大などを行い、本格的な練習戦艦へと改装することが検討されている。これは具体的な設計に入る前に戦役が勃発したため実現せずに終わり、今度は先の「ドレッドノート」と同様の量産型に準じた装備を施す工事が計画されたが、結局こちらも実行されなかった。

 土星会戦の直前、本艦は他の練習、警備艦隊所属艦の一部と共に、土星より地球へと後送される輸送船団を護衛して一旦地球へと帰還した。ところが、その土星会戦で防衛艦隊主力の大半が失なわれたため、防衛軍は彗星都市帝国を攻撃すべく、残存艦艇をかき集めて艦隊を編成することとした。これに参加すべく、地球で待機していた同艦も艦隊の集結地点である金星へと出撃している。(詳細は「コスモ・ウイングス」第二部四章をご参照頂きたい)
 そして、A型航空母艦3隻と共に第1空母戦隊を臨時編成した「ボロディノ」は地球軌道上で都市帝国直衛艦隊と交戦。その際、集中砲火を受けながら衝角戦術を仕掛けてきた敵戦艦と激突、大爆発を起こして敵艦もろとも轟沈し、艦歴に幕を閉じた。


改A1型(増加試作型、試作型c、試作型丙)「ジャン・パール」

 試作艦として建造された「ドレッドノート」「ボロディノ」の公試時に判明した問題点を根本的に解決すべく、急遽A2型巡洋艦2隻分の予算と資材を転用して建造された艦である。

 主な改良点は以下に示す。

・散布界の広さから命中率低下を招いている一式40cm衝撃波砲に、新開発の発砲遅延装置を装備
・主機関は信頼性に勝る「ボロディノ」と同じとし、出力を向上させた改良型補助機関を搭載
・旋回用スラスターの新設、および配置を見直し。出力も増強し旋回性能を向上させる
・通信能力改善のため各部アンテナを大型化、機器も増強
・艦底部に探知機器を搭載した大型ポッド2基を懸吊し、特に艦下方における探知能力を強化する
・艦橋構造物を大型化し、数個戦隊の指揮が可能な旗艦設備を整備

 これらの改装によって原設計より重量が1,500トンほど増加した(重量54,900トン)が、補助機関の出力強化によって発揮速度と加速性能は「ボロディノ」より向上している。また、旋回用スラスターの改良により運動性も良好と判定された。

 完成した「ジャン・パール」の公試成績は防衛軍にとってほぼ満足すべきものであり、主砲に関しては散布界の問題から射撃指揮統制コンピュータの更なる改良と調整が必要とされたものの、それ以外のA1型戦艦で生じた問題は概ね解消されていた。
 そのため、この改A1型戦艦を基礎とした戦艦を量産すれば、防衛軍が望んだ波動砲搭載戦艦の大量整備が問題なく実現できると結論付けられることとなった。

 公試終了後「ジャン・パール」は編成されたばかりの第1外周艦隊、ついで第4外周艦隊の旗艦を務めたが、この間に発砲遅延装置と射撃指揮統制コンピュータを量産型であるA2型戦艦と同じものに換装している。また艦隊での運用結果からA型戦艦は艦隊旗艦設備の更なる増強が求められたのだが、これは本艦にではなく後続のA2型戦艦の一部の艦に必要な工事が施された。
 白色彗星帝国戦役勃発時の本艦は、武装その他の装備や性能に多少の相違こそあるものの、全体の仕様はほぼ後続のA2型戦艦と同様だったようで、専用の艦隊旗艦設備がないため比較的規模の小さい天王星基地駐留艦隊の旗艦として配備されていた。
 そして、土星会戦前に「ジャン・パール」も連合艦隊へと編入され、同じく基地艦隊の旗艦を務めていた改A2型戦艦「リヴェンジ」「テネシー」と共に第12戦艦戦隊を臨時編成、土星の衛星ヒペリオンを基地とする前衛偵察部隊である第6艦隊の基幹戦力を構成することになった。

 バルゼー艦隊との決戦時、敵の前衛部隊を第1艦隊の正面に誘導、拡散波動砲編隊射撃による撃滅に貢献した第6艦隊だったが、その後襲来したバルゼー第2艦隊の猛攻によって艦隊は壊滅。「ジャン・パール」もそのときの戦闘で失われている。


A2型(初期量産型)「ロイヤル・ソヴリン」「レゾリューション」「ラミリーズ」「ワイオミング」「ニューヨーク」「テキサス」「河内」「摂津」「土佐」「コンテ・ディ・カヴール」「カイオ・デュイリオ」「アンドレア・ドリア」「ブルターニュ」「プロヴァンス」「ロレーヌ」

 改A1型戦艦の成功によって建造が決定した、A型戦艦最初の、同時に地球防衛軍にとって初めての波動機関を搭載する量産型戦艦である。

 一部の艦内配置を除いた船体と武装、機関は改A1型戦艦と同じで、完成時の外見から区別するのは極めて困難である。戦隊旗艦設備は全艦に設けられており、主砲の発砲遅延装置および射撃指揮統制コンピュータは更に改良されたものを搭載している。
 また「河内」「コンテ・ディ・カブール」「ブルターニュ」は完成時から、「ロイヤル・ソヴリン」「ワイオミング」は後日の改装で、各外周艦隊旗艦および戦時編成時の艦隊旗艦を務めるための設備が追加された。この5隻には艦橋構造物後方に艦隊司令部専用の通信アンテナが装備されており、他艦との識別は容易である。

 続々と建造された本型は3隻編成の戦艦戦隊を構成して各太陽系外周艦隊に配備、その主戦力となった。また、艦隊旗艦として改装された5隻は続くA3型戦艦で同じ装備を施された艦が建造されなかったため、平時は各外周艦隊の旗艦として活動している。
 なお、当初A2型戦艦は27隻の建造が予定されていたが、戦闘演習の結果、艦橋に装備された零式短15.5cm六連装衝撃波砲の連続射撃時に発生する振動が原因で各武装の照準や操艦に支障を来たす、と艦隊側から指摘があったため、これを中心に各部へ改良を加えたA3型戦艦に量産を切り替えることが決定、15隻で建造は打ち切られた。

 余談になるが、防衛軍にとって最初の空母となったA1型航空母艦は本型をベースとし、船体後半部を改設計して航空艤装を加えたものである。

 白色彗星帝国戦役勃発時、A2型戦艦の各艦は第1、第2外周艦隊の主要戦力を構成していたが、連合艦隊編成時に各戦隊は第2、第4、第5艦隊に分散配備されている。これは完成が遅く乗員の練成が不十分とされたA3型戦艦を第1艦隊に集中配備したためであった。
 「ロイヤル・ソヴリン」が第2艦隊、「コンテ・ディ・カヴール」が第4艦隊、そして「河内」が第5艦隊の旗艦を務めた土星会戦であったが、バルゼー艦隊および都市帝国との交戦において「ワイオミング」「カイオ・デュイリオ」の2隻を除いた全艦が撃沈されている。
 また、艦隊戦で損傷しタイタン基地に退避した「ワイオミング」も、直後に基地が彗星帝国軍に爆撃された際に大破、全損とされ戦役後に解体されたため、白色彗星帝国戦役を生き残ったのは「カイオ・デュイリオ」1隻だった。

 「カイオ・デュイリオ」のその後については、別項に譲らせていただくことにする。


改A2型(電探強化型、パトロール戦艦)「リヴェンジ」「テネシー」

 A2型戦艦をベースとし、各部に改造を行ったタイプである。

 本型は当初、電探および通信施設を強化することで、A2型戦艦以下によって構成された中~大規模の艦隊を統率するために建造が構想されたものだった。つまり、後にアンドロメダとして結実する旗艦型戦艦の役割を果たすことが目的だったのだが、設計段階で大規模艦隊の旗艦として用いるには艦の規模が小さいと指摘され、遊撃部隊として敵侵攻軍の後背で破壊活動を行う第三艦隊に配備するための戦艦へと計画が変更、2隻が起工された。

 ところが建造中、連合艦隊司令部から第三艦隊にA型戦艦に近い火力を持つA型航空母艦を配備することが提案され、これが採用されたため第三艦隊専用に戦艦を建造する意義が低下した。そのため本型は再度の設計変更が行われ、今度は地球防衛軍の重要拠点となる冥王星、海王星基地に所属する警備艦隊の旗艦用戦艦として建造を続行する事になった。

 ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点を以下に挙げる。

・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もより強力なものへと換装
・艦底部垂直軸ミサイル発射管を全門撤去、ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力電探および通信機に対応した専用アンテナを艦各所に追加

 この改造によって、艦隊側からは「機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」と評されたが、波動砲や主砲を始めとした戦闘力は維持されており、また警備艦隊旗艦としての能力は非常に高かったため、戦艦としての評価は概ね良好であったようだ。

 本型は警備艦隊以外での使用は考慮されていなかったとされることが多いが、実際には平時における哨戒活動の他にも、警備艦隊を率いて第1、第2外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時において警備艦隊の一部と共に連合艦隊の戦列に加わることが想定されていたようである。
 実際、白色彗星帝国戦役勃発後に2隻はいずれも連合艦隊に加えられ、偵察行動と拡散波動砲編隊射撃の弾着観測を任務とした第6艦隊に編入。土星会戦の緒戦で敵艦隊の動向調査や敵前衛艦隊への拡散波動砲一斉射撃の支援を行い、その強力な探知能力を存分に発揮している。

 しかしその後、行動中の第6艦隊はバルゼー第2艦隊の襲撃を受け、艦隊旗艦を務めていた「リヴェンジ」が沈没、「テネシー」は大破落伍して木星ガニメデ基地へと離脱し、そこで修理中に戦役が終結したため以後の戦闘には参加できなかった。

 なお「テネシー」の後日に関しては別項で記述させていただく。

A3型(中期量産型)「クイーン・エリザベス」「バーラム」「ヴァリアント」「ノース・カロライナ」「ワシントン」「アラバマ」「薩摩」「安芸」「紀伊」「リシュリュー」「ストラスブール」「ガスコーニュ」「ナッソー」「ヘルゴラント」「バイエルン」「ツェザレヴィッチ」「ガングート」「ペトロパブロフスク」

 戦艦戦力の更なる増強を図った防衛軍が、A2型戦艦の使用実績を取り入れて整備したタイプ。最終的な建造数は18隻で、A型戦艦の中で最も多数が建造された形式となる。

 A2型戦艦との相違点は次の通り。

・15.5cm六連装艦橋砲の機材を一部撤去し、反重力感応機用砲弾など特殊砲弾の発射専用とする
・艦底部に九九式垂直軸ミサイル発射管を2門追加(合計6門)
・量産性向上のため、艦内の構造を一部見直し
・戦隊旗艦施設を強化し、小規模艦隊向けの指揮能力を標準装備

 この他の武装や防御、電探や機関などはA2型戦艦と同じであった。A2型戦艦との識別は完成時の艦底部ミサイル発射管のハッチ数により可能だが、映像のアングルなどによっては非常に困難である。

 本型が就役を始めたのは白色彗星帝国戦役が始まる直前で、戦役勃発後はただちに各外周、内周艦隊に配備されて乗員の訓練が行われている。なお、この訓練課程を満たすことが優先され工事に充てる期間がなかったため、A2型戦艦の一部に施された艦隊旗艦設備の追加は実施されなかった。
 土星会戦直前においてもA3型戦艦各艦の練成は未だ不十分と見られており、また艦隊旗艦設備も未装備であることから、完成、就役していた18隻は第1艦隊に集中配備された。これは第1艦隊の主任務が拡散波動砲による先制攻撃と衝撃波砲を用いた各艦隊への火力支援と想定されていたためで、一定の艦隊機動が行える練度が確保されていれば十分にその戦力を発揮できると連合艦隊司令部が判断したためである。

 第1艦隊所属のA3型戦艦は、拡散波動砲編隊射撃による敵前衛部隊への先制攻撃、そしてカッシーニの隙間における砲撃戦でその威力を発揮しバルゼー艦隊の撃滅に貢献したが、最終的には艦隊戦で損傷落伍した「薩摩」「ストラスブール」を除く全艦が、敵艦隊および都市帝国の攻撃によって撃沈されている。また、生き残った両艦も損傷が大きかったため、その後の都市帝国直衛艦隊との戦闘にも参加できなかった。

 なお、白色彗星帝国戦役勃発後にA3型戦艦は12隻の追加建造が計画され6隻起工(残り6隻はA4型戦艦に変更)されたが、これらの多くは彗星都市帝国や超巨大戦艦の攻撃によって建造ドック内で破壊され、無事だった船体の一部と準備された資材などは後期生産型が建造される際に転用されている。

 「薩摩」と「ストラスブール」のその後については別項に譲りたいと思う。

A4型(高速戦艦型)計画のみ

 白色彗星帝国戦役に伴う戦時計画で、A3型戦艦として建造が決定した12隻のうち、後期の6隻は改設計を加えた別タイプの艦に変更されることになった。計画変更の理由は戦役勃発直後、波動砲を装備した改A2型パトロール巡洋艦およびB2型護衛駆逐艦で構成された第11護衛艦隊が、カイパーベルト外縁において彗星帝国軍ナスカ艦隊の一部と交戦した際の出来事に求めることができる。

 この戦闘で、波動砲による編隊射撃を敢行しようとした第11護衛艦隊はエネルギーチャージ中に敵艦隊の反撃を受け、防御力が脆弱な巡洋艦、駆逐艦で構成された同艦隊は動くこともできないまま、ほぼ戦果なく壊滅させられてしまったのである。
 後に提出された戦闘詳報において、艦隊側は「現状、巡洋艦以下の艦艇に装備されている波動砲は、装備艦の防御力不足によりエネルギー充填中の敵からの反撃に対する抗鍛性が不十分なため、戦場での有効な活用が極めて困難」という所見を提出。更に「今後、水雷戦隊に追従し敵艦隊に波動砲、および大口径衝撃波砲による火力支援を行える戦艦が必要と考えられる」との意見も添えられていた。

 これらを検討した結果、防衛軍はA型巡洋艦およびB2型駆逐艦の波動砲に大幅な使用制限を加える(直後、更に使用停止の措置が取られている)こととし、将来的にはこれらの艦から波動砲そのものを撤去すると決定した。これに伴い、艦隊側から要望があった「水雷戦隊を掩護するための高速戦艦」を整備し波動砲艦としての巡洋艦の任務を代替させることになり、このA4型戦艦の建造が計画された。

 このA4型戦艦は船体や武装に関してはA3型戦艦と同じものを用いることになっていたが、機関にはA1型戦艦「ドレッドノート」のそれを基礎とし大幅な改良を施した機関(補足すると、アンドロメダ型戦艦に搭載された主機関と同じもの)を採用し、発揮速度と加速性能の大幅向上を狙っていた。
 機関の換装が決定されたのは、巡洋艦と駆逐艦で構成された水雷戦隊に追従するための速度性能が求められたからであるが、この時期地球に係留されていた「ドレッドノート」を用いた試験、およびアンドロメダにおける運用の結果、改良を加えた新型機関は「ドレッドノート」に搭載されたオリジナルよりは若干劣るものの、他のA型戦艦が装備する機関に比べて出力が向上していること。そしてある程度の熟練した機関員が必要ではあるが、実用性の向上した機関として使用できる目処が立ったことによる。

 機関の製造に若干の時間を必要としたため、防衛軍は最初に3隻を建造して、戦時編成において水雷戦隊を中心に編成される第2艦隊へ配備することとし、続いて建造する3隻は同じく高速艦が多数所属する第4艦隊に配属させる予定であった。

 しかし各艦の起工と前後して土星会戦が戦われ、そのとき各々2個水雷戦隊を率いた第2、第4艦隊のA2型戦艦は水雷戦隊の足手まといになることもなく、A4型戦艦の任務として想定されていた波動砲および主砲による火力支援に多大な威力を発揮するなど活躍した。
 この結果から「通常型戦艦の機動性をある程度高い水準に保てれば、専用の高速戦艦は不要ではないか」という意見が参謀本部から提出されたこと。そして地球および各惑星基地の建造工廠の多くが彗星帝国の攻撃により大きな被害を出したため、戦役終結までA4型戦艦は1隻も完成せずに終わっている。

 それでも、彗星帝国残存軍に対する兵力として予定通り3隻のA4型戦艦を建造することも考えられたが、先の戦役の戦訓から防衛軍の戦術に再検討が加えられ、A型戦艦もそれに伴う改設計を受けることが決定された。そうした要素もあり、このA4型戦艦は結果的に計画のみの存在として終焉を向かえることになった。

 なお白色彗星帝国戦役終結時、3隻分製造された本型用の機関は戦火を潜り抜けて残存していたが、これらは後に建造されたA5型戦艦へと転用されている。

(筆者注 本作はpixivに投稿した、原作版宇宙戦艦ヤマトおよびPS2ゲーム版までを考慮して書かれたもので、リメイク版の要素を含んでいません。後者を含んだものが現在継続中のD級戦艦の文章となりますので、こちらはあくまで「旧作の『主力戦艦』について書かれたもの」としてお読みいただければと思います)

地球防衛軍の戦艦計画

 イスカンダルより波動機関およびそれに関連する技術がもたらされて以降、地球防衛軍の軍備計画に「戦艦」の文字が最初に登場したのは、ガミラス戦役の末期にあたる2200年の初頭とされる。
 (なお、ヤマトは「人類脱出に用いる特務艦」として計画、建造されたため、軍備計画で「戦艦」として扱われるようになったのはガミラス戦役終結後である)

 この時期の防衛軍は、

・地球本土およびその周辺の制宙権を死守する
・ヤマトの帰路を確保するため、太陽系内のガミラス戦力を漸減ないし撃滅する

 といった任務を果たすための戦力整備を目標にしていたが、この時期における生産力の低下と希少金属の不足は深刻で、この目的に沿って艦艇を建造し艦隊を編成することは、例え最小限のそれに絞ったとしても極めて困難であると考えられた。
 ただ幸いなことに、対ガミラス艦用の兵器として開発された九九式46cm衝撃波砲(ヤマトの主砲)の威力が期待以上であり、同時に小口径衝撃波砲(試製零式15.5cm衝撃波砲。ヤマトに副砲として装備)も一応は実用の目処が立っていたから、波動機関を生産するための希少金属を確保することができれば、多数の艦艇を建造することなく地球周辺の制宙権維持に必要な戦力は揃えられるのではないか、という見通しもあった。

 2199年末、防衛軍は鹵獲したガミラス・デストロイヤーの機関を転用して建造したA型駆逐艦による物資輸送作戦、いわゆる「タイタン急行」を敢行し、波動機関製造に必要なコスモナイトなどの希少金属を一定量確保することに成功した。
 これにより、少数ながら波動機関搭載艦によって構成された艦隊を整備することが可能になったのだが、このとき艦隊側は防衛軍の兵器局に対して「九九式46cm衝撃波砲を搭載した超大型戦艦の建造」に関する要望を出しており、これが最初に記述した「防衛軍の軍備計画における初の戦艦」にあたる。

 この要望における「超大型戦艦」とは、詳細は不明だがヤマトより若干縮小されたものと考えられている。そして、その想定されていた任務の第一は「ガミラス超弩級戦艦の駆逐、あるいは撃破」であった。

 ガミラスの超弩級戦艦とは、現在の地球では「シュルツ艦」という通称で知られているガミラス軍の旗艦型戦艦を指しているのだが、地球防衛軍は過去に数度この艦と対戦した経験があり、最初の交戦時には当時防衛軍きっての精鋭と言われていた北米第三艦隊をこの一艦のためにほぼ壊滅させられるという惨敗を喫していた。
 そのため、地球本土の防衛、および太陽系内の制宙権回復にはこの敵戦艦が極めて脅威になると考えられており、防衛軍はそれに対抗可能な戦艦を必要としていたのである。

 この戦艦、特に仕様において最も重要なのは「九九式46cm衝撃波砲を搭載し、敵戦艦に対抗可能な攻防性能を有する艦が要望された」ことであり、建造期間短縮と資材節約の観点から波動砲の搭載が全く考慮されていなかった事実は注目に値する。
 ところが、艦隊側が要望した戦艦建造は生産力と希少金属の不足が解決されず、兵器局から「全く不可能である」と回答されてしまっている。実際、ガミラス戦役終結時までに「レコンキスタ」と呼ばれる太陽系宙域回復作戦に使用できる戦力として整備できた艦艇は、A型巡洋艦1隻とA型駆逐艦8隻に過ぎなかった。この結果を踏まえると、戦艦の建造が当時の状況では無理があったのは致し方なかったと言えるだろう。

 地球にとって幸運なことに、ガミラス冥王星基地に配備されていた超弩級戦艦は1隻のみで、それは10番小惑星帯におけるヤマトとの交戦で撃沈されていたから、巡洋艦と駆逐艦で構成された防衛軍艦隊は「レコンキスタ」において敵戦艦と交戦する機会がなく、作戦は無事に成功している。


 ガミラス戦役終結後、地球連邦の成立に伴って地球防衛軍の組織は大きく様変わりし、その中に艦艇の設計、建造および各種審査を行う部局として新たに「艦政本部」が設けられた。

 組織化直後の艦政本部は、まず既存のA型巡洋艦とA型駆逐艦の整備と改良に忙殺されることになり、新規の戦艦計画には手をつけていなかった。これは当時、艦隊戦力を構成できると判断された波動機関搭載艦が極めて少数だったため、まずは短期間に量産が可能な巡洋艦や駆逐艦を一定数揃えることが優先されたからである。
 それでもガミラス戦役における戦訓から、巡洋艦や駆逐艦が搭載する中小口径の衝撃波砲は威力に限界があること、巡洋艦に設置可能な規模の司令部施設では指揮下の艦艇を統制する能力が不足するのも明白だったから、いずれは艦隊の中核を成す戦列艦として、また巡洋艦以下の艦艇で編成された艦隊を指揮するための戦艦が必要であるとの認識は、艦隊側も参謀本部も等しく有していた。

 そうしたことから、防衛軍は改めて艦政本部に戦艦試案の検討を下命したが、この時点で防衛軍が想定していた「戦艦」の任務は以下のようなものであった。

・大口径衝撃波砲と強固な装甲を有することで艦隊戦列の中核を成し、特に敵の重装甲艦に対抗する
・数十隻単位の艦艇で編成された艦隊を指揮統率する旗艦として用いる
・波動砲を搭載し、必要に応じてその大なる火力を発揮し戦況を優位足らしめる

 ここで始めて、新たに一定数の建造が計画されることになった戦艦にも、ヤマトと同じく波動砲の搭載が求められている。
 しかし、当時はまだ九九式タキオン波動集束砲(ヤマト搭載の波動砲)を艦隊戦においてどう運用するか確固たる方針が存在しておらず、そもそも当時はガミラス戦役でのヤマトの戦訓から対艦戦闘に波動砲は不向きとの見方が強かったため、その搭載はあくまで「戦況によって使用する機会が生じる可能性を考慮する」という要素が濃いものとなっていた。
 つまり、この時点の「戦艦」に求められた任務の第一義は、大口径衝撃波砲の威力を発揮して敵の重装甲艦、すなわち戦艦を撃破することであった。そのため、新規設計の戦艦はこれを優先した艦として検討が開始されている。

 当時の艦政本部が設計した戦艦試案のいくつかが残っており、中でもこの頃量産が開始されたA2型巡洋艦を拡大して九九式46cm衝撃波砲8門、九九式タキオン波動集束砲1門を搭載した設計案は性能やコストのバランスもよく、参謀本部も一時期真剣に採用を考えた節がある。

 そうした既定の方針が大きく変化したのは、防衛軍の技術本部によってある兵器の実用化に目処が立ったことによるものであった。


拡散波動砲搭載の新戦艦構想

 新戦艦の検討作業が続いていたこの時期、それとほぼ並行して技術本部による「艦隊戦に威力を発揮し得る新型波動砲」の試作が進んでいた。

 この新型波動砲はガミラス戦役におけるヤマトの戦訓から、集束型波動砲は着弾地点付近への威力は極めて大きいものの、その影響が広範囲に及ばないことから分散している艦隊には効果が低いと判断されたことで開発が決まったものだった。事実、高速襲撃を得意としたガミラス艦隊に対して、ヤマトは波動砲を発射する機会に恵まれていなかった。

 地球防衛軍にとって最大の任務は、太陽系に侵攻してくる侵略者を地球より可能な限り遠い地点で迎撃、これを撃滅することである。しかもガミラス戦役の戦訓から、敵艦隊と対峙する防衛艦隊は数的、あるいは実効戦力において劣勢を強いられる可能性が高いと考えられており、それを跳ね返す兵器として防衛軍、特に参謀本部は波動砲に大きな期待をかけていた。そのため、対艦戦闘には不向きと判断された波動砲を艦隊戦に適応させるべく改良を行うことにしたのである。
 詳しい開発経緯については本題から外れるので省くが、ちょうど巡洋艦拡大の戦艦試案が提出された時期と前後して、この新型波動砲、すなわち「拡散波動砲」の実験が技術本部によって行われ成功したことから、今後新造される艦艇に拡散波動砲を搭載することが構想された。

 だが、この拡散波動砲はある技術的な問題を抱えていた。それは、この波動砲を搭載する艦には広範囲の目標を確実に破壊できるエネルギーを確保するため、またその拡散を効率よく行うため、波動エネルギー増幅装置と集束型波動砲より大口径の砲身が必要とされていたのである。
 (ちなみに、増幅装置と大口径砲身を使用しない拡散波動砲は試験の結果「九九式タキオン波動集束砲に比して威力の低下が著しく、有効範囲も不十分」と判定されている)
 巡洋艦拡大の戦艦試案は、ヤマトと同じ九九式タキオン波動集束砲の搭載を前提に設計されていた。そのため艦政本部は拡散波動砲搭載のための再設計を施そうとしたが、巡洋艦と同じ紡錘型船体を拡大した構造を持つこの試案では、装備が必要な増幅装置と大口径砲身を艦内部に収めることが不可能であった。

 船体規模が大きいはずの新戦艦に拡散波動砲が搭載できない以上、もちろん巡洋艦以下の艦艇に装備するのも無理である。艦隊戦力の数的不利を拡散波動砲の威力によって埋めるつもりでいた参謀本部としてはこの事態を放置しておくわけにはいかず、そのため新戦艦とは別に「波動砲艦」と呼称すべき、拡散波動砲の使用に特化した艦を建造することも検討されている。
 だが、艦隊側から「用途を波動砲の発射のみに限定した場合、波動砲が使用不能となった状況において戦闘力を完全に喪失することになり、戦力として期待できない」との意見が出されたため、この案は具体的な設計作業に入ることなく立ち消えとなった。

 以上の経緯から、巡洋艦拡大の新戦艦案は不採用となり、完成した拡散波動砲こと「一式タキオン波動拡散砲」の搭載を前提とした新戦艦の設計が、再び艦政本部に下命されることになったのである。

四管区による試作量産型戦艦

 四管区の競作という形で再開されるにあたり、防衛軍首脳と艦政本部が協議して纏めた、いわゆる『要求仕様』の概略は以下のようなものだった。なお、この時点で新型戦艦の制式名称として『A型戦艦』の呼称(よく知られる『D級』の名は通称で制式名称ではないが、公文書においても『D級』と記されることのほうが多かったとされる)が与えられている。

A型戦艦に対する要求仕様(一部抜粋)

全長 300m以下とする

全幅 75mを限度とする

全高 100m程度とする

搭載兵装

1.波動砲
(間もなくの制式採用が予定されていた、通称・拡散波動砲こと)一式タキオン波動拡散砲1門を搭載すること

2.主砲
大口径陽電子衝撃砲を8門以上搭載し、敵カラクルム級戦艦を正面から撃破可能なこと。また、三式融合弾など実弾の発射を可能とすること

3.副砲
主砲の発射速度、並びに砲塔旋回速度の向上が見込まれるため、砲塔型副砲の搭載は必ずしも考慮せずともよい。ただし、司令塔防護用の近接火器は必ず装備すること

4.魚雷、ミサイル兵装
ヤマトの装備を参考に、可能な限り多数を装備すること。ただし、波動砲および主砲の装備に支障を来す場合においては削減も可とする

5.対空火器
対空パルスレーザー砲を可能な限り多数装備すること。ただし、新型の拡散型対空パルスレーザー砲を用いることによる削減は可とする

主機 次元波動機関1基とす。ただし、量産を考慮し生産性と整備性を考慮すること

補機 ケルビンインパルス機関2基以上を装備すること

搭載機 開発中の新型艦上戦闘機(後のコスモタイガーⅡ)を10機以上搭載すること

乗員 150名程度を限度とし、十分な居住性および物資搭載のための設備を確保すること。なお、90名弱程度の乗員での戦時運用を可能とすること


 この要求仕様と同時に、艦政本部が設計した船体の基礎部分に関する設計が各管区に青写真として配布された。結果論になるが、その青写真自体は後にD級戦艦となる量産艦の船体構造および寸法にほぼ準拠したものだったのだが、この時点では要求仕様の範囲内であれば、各管区に対してサイズ変更などの裁量権は与えられており、文字通り『競作』と呼ぶにふさわしい状況を呈することとなる。

 当然のことながら、今回の新戦艦はヤマトのように特殊な任務は想定されておらず、あくまで敵の戦艦、この場合はガトランティス帝国のカラクルム級という明確な仮想敵が存在していたから、まずそれに単艦で対抗し得ること。また、艦隊戦列の中核を成し時には金剛型、村雨型で構成された艦隊の旗艦を務めることが求められていた。
 この仕様要求はその明確な目的に沿ったものであったが、担当した四管区は「この要求が今後の地球防衛軍の『主力戦艦』たる艦を求めている」という点について、その部分はおよそ正確に理解したようである。だが、競作である以上全く同じ艦が出てくるはずもないわけで、四管区はそれぞれ独自色を出した艦を設計することとなる。

 以下では、四管区によって設計、建造された試作艦の概要について説明していきたい。また、ここで建造された4隻の試作艦はそれぞれ数奇な運命をたどることになるのだが、建造後、およびガトランティス戦役中の経歴に関しては基本的に別項を設けたいと思う。


A1型a(欧州管区建造艦)『ドレッドノート(Ⅰ)』

 欧州管区が担当した試作艦。もちろん欧州各国の設計陣による共同設計ではあったが、艦名が示すように建造を主導、実行したのはイギリスであった。
 なお、新型戦艦競作の試作艦としては一番最初に竣工しており、そのため本艦が『新型戦艦の一番艦』とされたことが、後にこのA型戦艦が『ドレッドノート級』、つまり略称D級と呼ばれるようになった理由である。

 実艦は、後に『量産型D級に最も装備が近い』と評されるほど堅実にまとめられており、主砲には新型の長砲身大口径ショックカノンである『一式41cm集束圧縮型衝撃波砲』(この砲はロシア管区以外の全ての試作艦に用いられている)を採用、その他の武装など各種装備も、後に建造される量産艦とほぼ同じものであった。ただ、たった一つと言ってよい量産艦との相違点がこの艦の運命を変えることとなる。
 『後続の量産艦とほぼ同じだった』と評されることの多いこの艦だが、唯一、主機関だけは欧州管区と欧州系軍需企業が共同開発した新型波動機関を搭載していた。これは新型主力戦艦に巡洋艦(新戦艦が量産され次第、金剛型戦艦も巡洋艦として運用されることがこの時点で決まっていた)に限りなく近い機動力を与えることで、波動機関を搭載したことで「巡洋艦や駆逐艦の如き機動力を発揮できる」と評された金剛型や村雨型に問題なく追随し、敵艦隊を機動力で翻弄することを目的にして採用されたものであった。

 (なお、この『高速戦艦案』を強く主張したのは、イギリスに設計、建造の主導権を奪われる格好となったフランスだという説があるが、定かではない。ただ、本艦が装備した機関を製造したのはフランスの企業であったようだ)

 しかし、コンセプト自体は先進的で、後に建造されるD級戦艦の後期生産型にも影響を与えることになる、この『試作高速戦艦』ではあったが、惜しむらくは当時の技術では波動機関の所定の出力発揮こそ可能ではあったものの、代償として機関の信頼性を大きく損ねることになった。

 そのため、竣工後の公試運転ではエネルギー伝導管の設計ミスにより過剰な加熱を招いて熔解事故を起こし、そのままドックへ逆戻りを強いられている。そして、以後も欧州管区および高速戦艦としての本艦に魅力を感じていた艦政本部が協力してこの問題に対処したが、伝導管の熔解の他にも大小問わず問題が多発し、解決の見込みが立たなかった。
 この新型機関に起因する本艦の問題は相当に深刻であったらしく、最終的には国籍を問わず集められた、地球防衛軍の中で最も熟練した機関科員による試験も行われたが、その結果「本艦の機関は戦闘用艦艇のそれとして、とても実戦に耐え得るものではない」という結論に達することとなった。

 このため、艦政本部と協議した防衛軍首脳部は本艦を『そのまま採用する』ことは断念した。だが、他の量産艦に比して機関以外の装備は安定した性能を発揮したことから、機関のみ後述するA1型d戦艦に搭載されたものに換装が決まったが、その他の装備はこのA1型a戦艦のものが新型量産戦艦のそれとして採用されている。その意味で、後に新鋭量産戦艦が『ドレッドノート級ことD級』と呼ばれる端緒を作った艦としての責任は全うされたと言えるだろう。
 なお、本艦そのものにも機関の換装工事が持ち上がっているが、その時期にはもう量産艦の建造が進んでいたため、工数の多さもあって断念された。この決定に至った理由としては、問題が多発した新型機関ではあるものの、防衛軍としても艦隊側としても『巡洋艦戦隊に完全に追随できる高速戦艦』というコンセプトには未練があったため、研究と熟成の材料として本艦の機関はそのままにしておく必要もあった、とも考えられている。

 そのため、ガトランティス帝国と地球との交戦が本格化する直前、本艦は艦種類別を『特務艦』に変更した上で、地球防衛軍司令部(および艦政本部)の所在地である日本に回航、工廠に地上試験艦として係留されることになった。この際、艦名を『プロメテウス』に改名しており、英国戦艦において伝統の艦名たる『ドレッドノート』の名は、ガトランティス戦役終結後に建造された二代目に引き継がれている。


A1型b(ロシア管区建造艦)『ボロディノ』

 ロシア管区が建造した試作戦艦。竣工は『ドレッドノート(Ⅰ)』より遅かったのだが、あちらが機関のトラブルで公試運転直後にドックへ逆戻りを強いられたため、本来は二番艦であるこちらを一番艦とする資料も存在する。D級戦艦が書籍によっては『ボロディノ級』と記されることがあるのは、これに由来する。

 新型主力戦艦の試作建造にあたって、ロシア管区はまず第一に『攻撃力を最大限強化する』ことを目標としたようである。そのため、地球防衛軍首脳部および艦政本部が放棄した『量産型ヤマト』という構想に対して『攻撃力のみ、極限までそれに近づける』という方針を立てて設計を行っている。
 主砲はヤマトと同じ九八式48サンチ三連装陽電子衝撃砲(建造当時は2202年に大改装を終えたヤマトが搭載した九八式二型48cm陽電子衝撃砲は試作中で、搭載できなかった)を三基搭載、更に後の量産艦では搭載されなかった煙突型SAM発射管も搭載するなど、今回の競争試作においては後述するA1型c戦艦と同等以上の重武装を誇っていた。特にミサイル、魚雷兵装が重視されていたのが特徴と言えるだろう。

 だが、この重武装には当然のこと代償が伴った。この、ロシア管区が総力を挙げて設計した『ボロディノ』は、他の管区が建造した試作戦艦より船体が大型化したのである。正確な寸法は現状公表されておらず不明なのだが、要求仕様で許された最大までサイズを拡大して建造されたと伝えられている。
 しかし、この『船体の大型化』がロシア管区にとって致命傷となった。確かにこの『ボロディノ』は攻撃力において他の管区が建造した試作艦の中でも高いバランスが取れており、船体の大型化に伴って防御力も向上していたとされている。その高性能は防衛軍首脳部にとって魅力的だったことは間違いないのだが、最終的に艦政本部、それの艦砲を担当する部門からの意見が、この試作戦艦の運命を決することになった。

 「砲身の生産に関して、量産戦艦のそれとして用いるには現状、安定した供給に目途が立たない」

 確かに今回の新型量産戦艦の競作において、九八式48サンチ衝撃砲を搭載する艦が出てくること自体、艦政本部としては予想外だった。だが、実際にその改良型である九八式二型48cm砲が未完成であるこの時点では、48cm砲の砲身の生産ラインも確保されておらず(元々、九八式48サンチ衝撃砲はヤマトに搭載するための専用砲であり、量産が考慮されていなかった)、まして、こちらは既に完成、制式採用されていた新型砲である一式41cm集束圧縮型衝撃波砲のライン確保との兼ね合いもあり、まだ未完成の新型48cm砲を当てにして、ここで同砲を搭載する艦を量産型戦艦として採用することはできなかった。

 だが、それ以上に問題となったのは『武装強化のため大型化した船体』であった。確かに要求仕様にギリギリ沿ったものではあったが、ヤマトに比して1割程度小型化した程度と伝えられる戦艦を収容できるドックなどの施設は限られており、その運用においては多大な不都合が生じることは明らかだった。また、重武装による弊害として、船体が大型な割に艦内容積が圧迫されており、これが原因で居住性が悪化したことも問題視されている。
 そのため、特に欧州と極東で建造された試作艦が『量産性と運用性を重視して』船体を極力、小型化しながら、十分に居住性と今後の発展性を考慮した余裕のある設計を行ったのと一線を画した、この『ボロディノ』が新型量産戦艦として不採用になったのはやむを得ないことだったと言える。

 こうして、量産型戦艦のベースとしては不採用になった『ボロディノ』ではあったが、その装備はヤマトと共通する部分が多かったため、そのまま単艦で使用することだけならば大きな支障はなかった。そのため『ボロディノ』は各種試験を終えた後、主砲のみ大改装後のヤマトと同じ九八式二型48cm陽電子衝撃砲へと換装したのみで就役し、主に外惑星練習艦隊の旗艦として行動した。
 なお、ガトランティス帝国との本格的戦争状態に突入する直前、本艦には本格的な練習戦艦への改装が考慮されており、具体的な設計も行われている。だが、ガトランティス戦役が勃発したためこの工事は見送られ、特に大きな改装もないまま本艦も同戦役に参加したのだが、その際の戦歴については別項にて触れたいと思う。


A1型c(北米管区建造艦)『アリゾナ(Ⅰ)』

 北米管区が建造した試作量産戦艦。四管区が建造した戦艦の中では三番目に竣工した艦であった。
 本艦も『ボロディノ』と同じく攻撃力強化が重視されていたのだが、特に正面装甲の強固さを誇るカラクルム級を強く意識した結果、北米管区、ことに設計の中心となったアメリカの主張であるところの『正面からカラクルム級を大口径ショックカノンの火力を以て圧倒する』ことが主眼とされていたようである。

 その目的に対する答えが、地球防衛軍の宇宙艦艇にとっては初となる『舷側装備式主砲塔』であった。本艦は甲板上の一番、二番主砲塔の間の両舷に更に主砲塔を装備することで正面に対する火力を極限まで強化し、側面を晒した片舷全力射撃に頼らず、正対した相手に対して他管区が建造した試作戦艦の火力を上回ることを狙ったのである。
 この大火力が最大の強みであった『アリゾナ(Ⅰ)』であったが、それ以外の装備は主砲塔に場所を取られる形でミサイル兵装が減少した以外は、特筆すべき特徴もなく信頼性についても問題はなかったから、北米管区はその採用に大きな自信を持っていたと伝えられている。

 しかし、北米管区の自信作であった、この『アリゾナ(Ⅰ)』が新型量産戦艦として採用されることはなかった。その理由として、艦政本部の本艦に関する報告が残っているので抜粋したい。

・本艦1隻で主砲塔5基を使用することになるが、その製造などを考慮すると、本艦3隻分の主砲塔を用いて通常型戦艦を5隻建造したほうがよい。また本艦を量産艦として選択した場合、現状では砲身のみの供給においても不安がある
・波動防壁を考慮しても、防御の観点から側面装甲にバーベット径に相当する大穴を開けるのは問題がある。現状、この問題への対処法をすぐに用意できないため、新型戦艦の量産が遅れる危険がある
・大気圏内を含めた重力下において、艦前部の重量が過大で前トリムの傾向が甚だしく、操艦が困難を極める

 これらの問題の他に、舷側装備の砲塔の実弾発射が不可能(経験不足から揚弾機構に問題があったと伝えられている)なこと、船体内部の容積が『ボロディノ』同様に圧迫されており居住性に難点もあったことが、不採用に至った理由とされている。

 ただ、北米管区としては『正面攻撃力を強化した戦艦』というコンセプトには執着があったらしく、本艦は不採用および艦隊への就役が見送られることが決定された後、艦種類別を『実験艦』に変更した上で艦名を番号名(具体的な名称は資料の散逸により判明していない)とし、北米管区で艦政本部から指摘された問題点を解決するための研究に用いられ、一度も艦隊に配備されず実戦にも参加しなかった。
 その研究の成果が、後に『たった1隻で強大なボラー連邦軍を震撼させた悲劇の宇宙戦艦』として勇名を残すことになる汎用護衛戦艦『アリゾナ(Ⅱ)』へと結実するのだが、こちらは本題から外れるので別の機会に譲りたいと思う。なお、本艦は後のデザリアム戦役によって修復不能な被害を受けたため、解体処分という形で艦歴を終えている。


A1型d(極東管区建造艦)『出羽』

 極東管区が建造した、四管区による競争試作戦艦としては最後に竣工した艦である。

 本艦の竣工が遅れたのは、極東管区がヤマトの大整備に手間取ったことが原因だった。だが極東管区はその時間を利用して、他管区の建造艦の情報を、極秘裏にある程度収集した上で本艦の改設計および建造を行ったようだ。
 そのため、極東管区(実質的には多くの作業を日本の設計、建造部門が担当している)は他の三管区が特別には考慮しなかった点に目を付けた。それは『艦隊旗艦設備の強化』という点だった。

 これは、将来の地球防衛艦隊の大規模化を見据えたものであると同時に、船体規模から中規模以上の艦隊旗艦として不安があると考えられていた新型量産戦艦の問題点を解消することを目指すための手法であった。そのため旗艦として用いるに不備がないよう、装備全般が信頼性に偏重したとすら言える無難なものが選択されており、竣工後の試験において『新鋭艦としては装備が旧式』と指摘されるほどだった。だが、この信頼性重視の設計が後に本艦に思わぬ運命をもたらすことになる。
 それはさておき、四管区による競争試作において、最終的に『ドレッドノート(Ⅰ)』と、この『出羽』が選考に残った。だが、当時の地球防衛艦隊の規模に対して旗艦設備がやや過剰と評されたことと『ドレッドノート(Ⅰ)』に比して各種装備が旧式に過ぎる面もあり、制式採用は譲ることとなった。

 だが、機関の信頼性において『ドレッドノート(Ⅰ)』より大幅に勝ったことから、それが採用されて『ドレッドノート(Ⅰ)』の船体にそのまま装備され、今後量産する新戦艦も本艦ほどではないが旗艦設備をある程度整えるべく設計変更を加える、という形でこの新戦艦の競作は決着を見た。
 また『専用の旗艦型戦艦の必要性』がこの艦の存在で議論されたことが、後に『戦略指揮戦艦』として設計される『アンドロメダ』に繋がったことを考えると、実質的に採用された『ドレッドノート(Ⅰ)』に劣らず、後の地球防衛軍に大きく貢献する艦となったと言えるだろう。

 なお『出羽』は試験終了後、旧式と評された各種装備の一部を『ドレッドノート(Ⅰ)』と同じものへと換装したのみで艦隊に就役した。これは機関をはじめ各種装備の信頼性に問題がなかったため大規模な工事が必要なかったことと『アンドロメダ』ほどではないが中規模艦隊の旗艦としては十分すぎるほどの設備を有していたから、その有用性が期待されたのである。
 そのため、後に勃発したガトランティス戦役のみならず、以降の戦役においても現役艦として活躍を続ける歴戦の戦艦となるのだが、その戦歴については別項に譲りたいと思う。

(筆者注 本稿の最後に登場する『出羽』は、八八艦隊さん制作の動画『宇宙戦艦ヤマト2202MMD外伝~第十一番惑星沖海戦~』三部作に登場する旗艦型D級戦艦『出羽』を、八八艦隊さんのご許可を頂いてそのまま用いています。ご協力に深く感謝いたします)

2200年当時の地球防衛艦隊の状況

 ガミラス大戦が終結して程ない2200年初頭、地球防衛軍はその艦隊戦力の大半を喪失している状況であり、しかも僅かな残存艦の大半が「陳腐化が激しく員数合わせにもならない」と酷評された核融合炉機関搭載の旧式艦であった。

 この当時、防衛軍が有する波動機関搭載艦としてはヤマトの他に、ヤマトの帰路確保と太陽系宙域回復のため実行された『星還作戦』に投入された新鋭艦が少数存在していたが、前者はイスカンダルへの長期航海を終えたばかりで大規模な整備が必要、後者は大戦末期に急造された、それ自体が『試作艦』と評すべき艦の集まりであり、しかも工業力低下の影響と戦時急造による粗製乱造、更には戦場での酷使による影響から艦の状態が極めて悪く、とても現状において艦隊の主力を担わせるのは不可能であった。
 事実、星還作戦に投入された艦の多くは、大戦終結後に予備艦に編入されたり、艦種類別が変更されて特務艦あるいは実験艦になったりして、早期に第一線から離れていた。また、原設計そのものにも戦時急造ゆえの不備が多数あったようで、例えば星還作戦における一連の戦闘で活躍した駆逐艦として知られる『神風』(この艦をベースに、後にフレッチャー級護衛駆逐艦が設計、建造されている)に代表される新鋭艦の設計を熟成あるいは発展させた新型の巡洋艦、駆逐艦の建造が開始されるまで、これより更なる時間が必要となったのである。

 唯一、幸いだったのは、大戦の終結によりガミラスとの同盟が成立し、その技術供与と地球独自の研究の融合により波動コアの大量生産が地球においても可能となり、結果、波動機関を搭載した艦をある程度量産する目途が立っていたことだった。
 そのため、地球防衛軍は当面、ガミラス大戦において艦隊の主力を担った金剛型宇宙戦艦、村雨型宇宙巡洋艦に波動機関を搭載、それによって生じた余剰スペースに装備の追加を行う、更に波動機関によって強化された出力を利用しての武装強化、並びに波動防壁の設備を追加するなどの改良を施し、この両クラスの量産を以て当面の艦隊戦力の増強を行うことに決定した。この判断については、大戦末期にガミラス軍の攻撃により工廠が破壊されるなどして修理不能となり保管されていた金剛型や村雨型の残存艦を再利用できる、という目算があったことも影響している。

 (なお、波動機関の装備による性能向上に関しては、金剛型や村雨型と同時期に建造されていた磯風型駆逐艦においても検討されている。だが、艦が小型に過ぎ波動機関への換装を行っても戦力の強化が限定されること、ワープ機関の搭載が不可能で太陽系内でしか使用できないという問題があり、宙雷艇あるいはレーダーピケット艦などに用いるものに波動機関換装の改造、およびある程度の新規建造が行われたが、大規模な量産は見送られた)

 確かに金剛型戦艦も村雨型巡洋艦も、ガミラス大戦勃発より更に前から建造が始まっていた旧式艦ではあったが、まだ地球が大規模な戦争状態に突入していない時期に設計されたため、当初から一定以上の信頼性が確保されていたこと。また旧式であるが故に使用実績が長く、それをフィードバックした改設計がガミラス大戦時においても継続して行われていたことがあり、当面の量産艦としてのベースとして十分に利用価値があった。
 そのため、即時量産の開始が可能な波動機関搭載艦の原型として採用されたわけなのだが、結果として両クラスに波動機関を搭載した恩恵は予想以上に大きく、それぞれが核融合炉機関搭載時とは比較にならないほどの性能向上を遂げていた。金剛型戦艦を例に挙げれば、ガミラス大戦時においてヤマト完成前までは対抗策が極めて限定されていたガミラス軍のデストリア級重巡洋艦と交戦したとしても「単艦同士であれば十分以上に対抗可能」と判断されるほど性能が強化されていたから、いかに波動機関の採用とその副次効果が大きく、そして、それを搭載した艦の早期量産が防衛戦力の確保のため極めて重要であったか、この事実だけでもおよそ理解していただけると思う。

 そうして始まった地球防衛艦隊の再整備だが、当時の状況を考えれば、防衛軍首脳が選択したこの施策はほぼベストの選択と見てよかったろう。だが程なく、これら金剛改型戦艦、村雨改型巡洋艦の量産では対応できない事態が、地球防衛軍を悩ますことになるのである。


『新鋭艦を至急に必要とする状況である』

 ガミラス大戦終結後、その交戦相手であったガミラスとの同盟が成立したのは先に述べた通りだが、この同盟にはいくつかの副産物が存在した。そして、その最たるものと言うべきは『ガトランティス帝国という新たな敵を作ることになった』という現実だった。
 無論、イスカンダルからの帰路にあったヤマトがガトランティス軍と交戦していた以上、ガトランティス帝国が少なくとも今後地球にとって仮想敵となることは確実だったのだが、ガミラスとの同盟が成った以上、その相手がガトランティスとの長期的な戦争状態を継続しているのだから、新たに成立した地球連邦政府としても、これに全く関与しないわけにはいかなかった。

 結果、地球防衛軍は太陽系の防衛のみならず、ガトランティス帝国軍に対するガミラスとの共同作戦に限られた戦力の一部を投入することを決定した。反対論もなくはなかったが、政治的、特に同盟に対する信義の問題もあって、選択の余地がなかったのである。
 そのような状況から、専ら中小規模のそれが多かったが、再編半ばの地球防衛艦隊もガトランティス帝国軍との交戦を幾度となく経験することになった。そして当然ながら、その戦力の中核を担ったのは新たに波動機関を搭載した金剛改型戦艦と村雨改型巡洋艦だったのだが、これらはガトランティス軍のラスコー級巡洋艦やククルカン級駆逐艦に対しては十分対抗できる能力を有していると判断されており、実戦でもその通りであった。だが、ガトランティス軍にはこれら既存の艦艇では対応しきれない艦が存在していた。

 元々、ガトランティス軍はガミラス軍に比して大型艦の比率がやや大きめだったことがあり、当時の地球防衛軍には実質存在しなかった戦艦クラスの大型艦との交戦もある程度行われていた。
 このうち、地球への帰途でヤマトも交戦したメダルーサ級火焔直撃砲艦については、確かに火焔直撃砲という強力な兵器を搭載していたものの、それ以外の兵装は必ずしも対応不可能というほどではなく、また火焔直撃砲のユニット自体を含めて防御面に問題があり、機動力もそれほどではなかったため、金剛改型や村雨改型がこれと交戦した場合、局地的な数的優位を確保した上で機動戦に持ち込めば、苦戦はしても対処は困難とまでは判断されなかった。

 問題は、もう一つの戦艦級の敵艦だった。それはこの当時、防衛軍において『大戦艦』と呼ばれていた、ガトランティス軍のカラクルム級戦艦であった。

 この大型戦艦は機動性についてはメダルーサ級とほぼ同等、あるいはいささか劣る程度でしかなく、特筆すべきことはなかった。だがその攻防性能、特に強固な防御力は改良された金剛改型、村雨改型の武装を以てしても、艦隊側の報告から『現状においては不可能と言えるほどに対処が困難』と判定されることになった。いかに威力が大幅に強化されたとはいえ、この両クラスが装備する短砲身ショックカノンでは、カラクルム級の防御を突破して有効打を与えることはまず不可能だったのである。
 もっとも、ガミラス軍が保有する主力戦艦であるガイデロール級戦艦を以てしても、カラクルム級戦艦に打撃を与えることは極めて困難であり、実質、この敵艦に確実に対応できるのはガミラス軍にとっても虎の子の旗艦級戦艦であるゼルグート級戦艦のみとされていたほどだったから、当時の地球防衛軍が保有する艦で対抗するのが限りなく不可能だったのは、確かに無理からぬことではあった。

 (なお、カラクルム級への対策としてヤマトの投入が検討された形跡があるが、当時の同艦は戦略上『太陽系宙域の防衛における決戦兵力』という位置付けであり、また本艦に匹敵する艦が自艦一隻しか存在せず投入時期の判断が難しいこと、運用コストが莫大で当時の地球防衛軍には負担が大きすぎるという理由もあり、早期にこの案は放棄されたようだ)

 しかし、実際にこの強敵と対峙する艦隊側としては『敵にほぼ対処不能な艦が存在する』というのは看過できない状況だった。常に敵に比して数で劣る戦いを前提として戦略、戦術を練る地球防衛軍ではあったが、もし何らかの幸運で一時的な戦力的優位を得たとしても、敵にカラクルム級戦艦が一隻いただけで、その優位が崩れる可能性は非常に高かった。まして、最初から数で劣っていれば、もはや言うべきことはない。
 当時はまだカラクルム級戦艦との交戦自体が少なく、その意味では幸運であったし、見方によっては緊急の対処が不可欠とまで言い切れない面もあった。だが、そもそもガトランティス帝国という勢力自体に謎が多く、今後、どれだけの戦力を投入してくるかなど予想できるはずもなかったし、当然ながら地球が主たる目標とされ攻撃を受ける可能性とて存在していた。だからこそ、むしろ若干ながら余裕があるとも言える現状において、可能な限り早期にカラクルム級戦艦に対抗可能な艦を整備しておくべきではないだろうか。そんな意見が、特に艦隊内において日々強いものになっていた。

 「既存艦艇の力量不足を痛感するものであり、敵大戦艦に対応可能な新鋭艦を、至急に必要とする状況である」

 ある戦闘における詳報のこの記述が、当時の状況のほぼ全てを物語っていた。そして防衛軍首脳部もまた、地球人類を守るために『カラクルムショック』と呼ばれた敵大戦艦への対抗策に取り組む必要性を理解したのである。


波動砲艦か戦艦か

 『カラクルム級戦艦に対応可能な艦を整備する』という一点においては、防衛軍首脳部と艦隊側で意見の相違は存在しなかった。だが、ここで両者の間に一つの論争が発生する。それは、そのカラクルム級という強敵に対してどのような手段で対処するか、という方法論についてであった。

 防衛軍首脳部は、ここで波動砲搭載艦を用いる方策を提案した。元々、防衛軍首脳部、そして連邦政府の中枢はその一部を除き、ヤマト艦長とイスカンダル女王との間で交わされた『今後、二度と波動砲を使用しない』という条約を『個人的な約束』として反故にする気であったから、この機に波動砲搭載艦の大量整備し、後に『波動砲艦隊構想』と呼称されることになる『波動砲の大火力を以て敵艦隊を殲滅する』という思想の実現を狙ったのである。その意味で、既存の兵器で対抗困難な敵艦の存在は、政治的な意味においては都合のよい存在であったことも事実であろう。

 一方、艦隊側は一部の士官がイスカンダルとの条約から波動砲の搭載に猛反対したが、全体としては『新鋭艦に波動砲を搭載することは否定しない』という意見に落ち着いた。だが、波動砲発射に特化した艦の建造については、ほぼ全ての艦隊勤務の士官が強硬に反対している。
 これはガミラス大戦における戦訓が理由であり、その戦訓から艦隊側は波動砲に関して「その大威力は艦隊戦においても評価できるが、発射までにエネルギー充填など時間のかかる兵器は運用への制限が極めて大きく(これは波動機関搭載前のショックカノン搭載艦に同じことが言えた)戦機を逸する危険が大きい。また、もし何らかの理由で波動砲が使用不可能な状況に陥った場合、その艦は艦隊内において戦力として全く機能しなくなる」という意見でおよそ統一されていた。そんな状況だったから、艦隊側としては敵の大型戦艦に対抗すべき艦が、波動砲発射『だけ』に特化した艦として建造されるなど許容できるはずもなかった。

 この論争だが、しかし形ばかりのもので早期に決着がついた。ガミラス大戦の戦訓を検討すれば、艦隊側の主張のほうが妥当であることは言うまでもなかったし、また少数ながら存在した『波動砲搭載艦反対派』の士官たちを極度に刺激しないためにも、波動砲に特化した艦を建造するのは必ずしも適切とは言い難かったのだ。
 そして実のところ、波動砲艦隊に執着がある防衛軍および連邦政府首脳の多くにとっても『新鋭艦に波動砲が搭載される』ことが重要であり、それは必ずしも波動砲特化の艦である必要もなく、通常の戦艦としても用いることができる艦であっても特に気にするべき話とは言えない。筆者の推測ではあるが、そういう一面もあったと思われる。

 しかし、このときの『波動砲艦か戦艦か』という論争は、後に波動砲という兵器の有用性や政治的な意図など様々な思惑が混じり合って複雑化し、長く防衛軍内部において火種として燻り続けるだが、詳しいことはここでは触れない。ただ、今後起こることになる深刻な未来をもたらす対立へと繋がる、その第一歩がこの出来事であったのもまた事実であろうと、筆者としては認識するところである。


新型戦艦の計画開始

 ともあれ、地球防衛軍は『波動砲を搭載した新型戦艦を建造する』という結論に達したのだが、当然ながらヤマトを除き、地球にはガミラスやガトランティスにおいて『戦艦』と呼称されるような大型艦の建造については経験がなかった。
 それでも身近に脅威となる敵艦が存在する以上、設計自体は急ぐ必要があった。そのため何もかも一から設計を開始するだけの時間的余裕があるはずもなく、地球防衛軍内部で新たに発足したばかりであった艦政本部は、まず新戦艦設計のタイプシップとなる艦の選定から開始した。ベースとなる艦が存在すれば、それだけ設計の時間短縮が可能だったからである。

 計画が始まった当時、その候補は三つあった。

 ・ヤマトの設計を簡易化し、量産に対応させる
 ・ゼルグート級戦艦をベースとし、最大限大型の艦を早期に建造することを目標とする
 ・ガイデロール級戦艦の構造を流用し、波動砲の追加など必要な改修を施す

 こうして案だけは出されたのだが、艦政本部として実際に採用できそうなものとなると、正直なところ一つしかなかった。ヤマトのように特殊任務を想定し、その達成のため何も惜しむところなくあらゆる要素を注ぎ込んだ艦を簡易化、量産対応させるなど不可能、あるいは可能であったとしても多大な時間を必要としたし、ゼルグート級戦艦をベースにする案も、ヤマトすら上回る大型艦を簡易化するのも当然ながら難行だったが、そもそもそのような超大型艦の早期建造、かつ量産など、ガミラス大戦の痛手からようやく復興が進んでいる当時の地球にはあまりに荷が重すぎた。

 そのため『ガイデロール級戦艦の構造を流用する』という結論は早期に出されており、ガミラス側にも早々にその旨が打診されたようである。地球側にとって幸いなことに、ガイデロール級戦艦はガミラス軍にとっては秘匿性の低い汎用型戦艦であり、それも旧式艦の部類であったから、この時期においては後継艦の整備が議論されているような状況だった。
 そのためガミラス軍としても、同盟者となった地球がガイデロール級を『地球なりにアレンジする』というのであれば、技術交流によってガイデロール級の後継艦の参考になり得る可能性もあると判断したようで、文字通り『二つ返事で』資料が提供されたと伝えられている。

 こうしてタイプシップも定まり、早速、艦政本部において具体的な設計作業が始まったのだが、開始早々、別の問題が発生して設計作業が停滞する事態に陥ってしまった。

 これは、ガミラス大戦当時に行われていた艦艇整備の方法に原因があった。大戦勃発からしばらくは、まだ地球連邦が成立しておらず国連主導の各国の宇宙艦隊を寄せ集めていた関係で、それぞれの国が自国の規格で艦を建造していたのである。
 当然、これでは非効率ということになり、紆余曲折を経て金剛型戦艦と村雨型巡洋艦、そして磯風型駆逐艦に建造艦を集約して軍備が続けられたのだが、これが決定されて以降、艦艇の設計部門は新型艦の設計を行う機会をほぼ失い、既存艦の改良に忙殺されることになった。例外はヤマトの他に、星還作戦に参加した一部の新鋭艦のみであり、それらすら相当な部分が間に合わせな設計であったことも事実であった。

 そのような経緯があったため、設立にあたっては各国の艦艇設計部門から精鋭を集めたはずの艦政本部であったが、実のところ大型戦艦に関しては無論のこと、そもそも『新鋭の量産艦を設計すること』自体のノウハウが相当に低下してしまっていたのである。先に述べたように、ガミラス大戦末期に建造された新鋭艦の更なる改良が遅れたという事実もあるが、それはこの新規建造艦を設計する作業に関して機能不全が生じていた、という事情が影響していたことは否めなかった。

 急を要する新型戦艦の設計が滞ってしまうという事態に、さすがに防衛軍首脳部は焦りを禁じ得なかった。そのため、防衛軍は艦政本部に対していったん新戦艦の設計を中止させ、新たに別の指示を出した。

 『艦政本部は新戦艦について、ガイデロール級戦艦に波動砲の砲身を搭載、その他の装備を地球仕様に改造した船体部分の基礎のみ設計せよ。その後、その原型に準じた仕様で各地域の軍管区において新戦艦の試作艦を設計、建造し、その中で特に優れたものを量産する新戦艦として採用する』

 つまり、艦政本部のみでは荷が重いと判断された新戦艦の設計を、各地域の軍管区による競作に切り替えたということである。
 無論、ガイデロール級戦艦をタイプシップにすることは既に決定されていたし、一定数の量産が予定されている艦である以上、船型や武装に大きな差異が生じては問題になる。そのため、まず新戦艦に対する要求仕様は防衛軍の中枢で決定し、それに応じて船体の原型となる部分のみ艦政本部が担当、その後のことは各地域の軍管区に任せる。そうした方法に防衛軍首脳部は問題の解決法を見出したのだった。

 この競作には欧州、北米、ロシア、極東の各管区が参加することになったが、これはかつての大国で様々な要素において当時の地球では比較的余裕があったり、極東管区のように大型艦建造(この場合はヤマトがそれにあたる)の経験を有するという理由で選ばれたとされる。
 そして、この四管区による競作をもって新型戦艦、後にD級戦艦となる艦の開発が本格的にスタートしたのだが、その競作の顛末と、この新戦艦の計画と運用が地球防衛軍の艦隊編成のみならず、その軍備全体にどのような影響を与えたか。それらに関しては次項より順々に触れていきたいと思う。

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