地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

2018年10月

A型戦艦に続く主力戦艦

 2208年現在、少数ながら地球防衛艦隊の戦艦戦力の中核を担うB型戦艦は、当然ながら防衛軍戦艦史における立ち位置は「A型戦艦に続く地球防衛艦隊の主力戦艦」となる。
 しかし、B型戦艦の建造が計画された経緯を紐解くと、A型戦艦の建造計画、特に当初のそれと明確に異なる点が一つ存在することがわかる。それは、A型戦艦の建造計画はあくまで「大口径陽電子衝撃砲を装備し敵戦艦に対抗可能な艦を建造するためのもの」であったのに対し、後にB型戦艦として実現する新戦艦計画は「完成した新型波動砲を搭載するために、新戦艦を建造する必要が生じたため計画されたもの」ということである。


新型波動砲の開発

 この事情から、まずは本艦が装備した通称「爆雷波動砲」(「拡大波動砲」とも呼ばれるが、混乱を避けるため本文ではこの呼称で統一する)の説明から始める。この部分は「コスモ・ウイングス」第三部第一章に記述されたものを筆者が要約などしたため、あちらも参照していただければ幸いである。

 拡散波動砲の開発中から、防衛軍の一部には「ガミラス戦役の戦訓から、固定目標への破壊力を重視した波動砲を別に開発すべきではないか」という意見は存在していた。しかし最初の波動砲である九九式一型次元波動集束砲(ヤマトが最初に装備した波動砲)より固定目標への威力を追求した波動砲の開発を目指したとしても、当時の地球防衛軍の戦略構想が「太陽系に侵攻してくる敵艦隊の迎撃」に重点を置いていたこと、そして当時から現在に至るまで達成されていない「タキオン式波動砲によって次元爆縮式(と通称されるヤマトの搭載する)波動砲をエネルギー集束率で上回る」という課題の解決に全く目途が立たない状況だったため、結果「一式タキオン波動拡散砲」として拡散波動砲が完成してからは、タキオン式波動砲の研究はその威力増大に目的が絞られて細々と行われる(僅かながら実験用の艦艇が建造されたようだが、詳細は現在不明である)こととなった。

 その結果、拡散波動砲搭載艦が艦隊に配備され始めた当時の防衛軍は「拡散波動砲による敵艦隊撃滅を最優先とし、固定目標には多数の艦による波動砲の一斉射撃によって対処する」と決定した。この時期に建造された戦艦は元より、連合艦隊司令部など実戦部隊の一部から批判されながらも巡洋艦や駆逐艦にすら規模を問わず波動砲が装備されたのはこうした事情によるものである。

 ともあれ、次世代型波動砲の研究自体は継続して行われることとなった。当時の記録を要約すると「集束率の向上も含めて、今後の発展を見越した研究を絶やすわけにいかない」という苦しい状況が伺えるのだが、その研究の中で比較的早期に「集束型と拡散型の波動砲をハイブリッド化してはどうか」という提案がなされている。
 これは、波動砲の威力ではなく汎用性の向上を目指したものだったが、元々予算や人的資源の限られる防衛軍としては、1隻で集束波動砲と拡散波動砲の両方が使用可能な戦艦が建造できる可能性が生じるのは魅力だった。そのためこの提案は採用され、後に「爆雷波動砲」となる新型波動砲の具体的な研究が開始されることとなった。意外なことだが、これはガトランティス戦役勃発前という早い時期に開始された作業である。

 だが、ガトランティス戦役の結果、研究中のハイブリッド式波動砲が内包していた問題点が早期に発覚し、開発陣はその対策に追われることとなる。
 元々、集束波動砲と拡散波動砲はエネルギー集束装置の特性以外に極端な違いはないため、やろうと思えばA型戦艦など拡散波動砲搭載艦が波動砲を集束モードにして発砲することも不可能ではなかったし、実戦でも必要に迫られて何度か行われている。しかし、その戦訓から「既存の拡散波動砲搭載艦を用いて集束モードで発射した場合、元々エネルギーの拡散を前提としている砲を搭載しているため、集束モードの威力に著しい不足がある」と指摘され、更に「現状、集束および拡散波動砲双方において、全般的な威力および射程の不足、エネルギー充填時間の長さなど問題があり、早期の解決を求む」という、ただでさえ新型砲の研究に悪戦苦闘している技術陣にとっては無理難題と言うべき要求も艦隊側から付け加えられていた。
 当時は地球本土にまで被害が及んだ大戦役が終結したばかりの混乱期であり、しかも太陽系外惑星にはガトランティス帝国の残存軍が相当数残っている状況だったから、再び新型波動砲の計画は頓挫するのかと技術本部は焦りを隠せなかったようで、その様子は残された当時の資料からも伺える。

 だが(不謹慎ではあるが)、ここで技術本部にとってある僥倖がもたらされた。ガミラス・イスカンダル危機が勃発し、地球に援軍を要請したガミラスから、それまでガミラス側が秘匿しており地球独力では完成させることができなかった連続ワープ機関の詳細な技術が供与されたのだ。
 結果、研究中だった連続ワープ機関の実用化に目途が立ち、同時に波動機関そのものの出力向上が見込めることとなった。そして、この連続ワープ機関に関連した技術を応用することによって、拡散波動砲の威力を増強するための増幅装置、それもアンドロメダ型戦艦に搭載された大型のものをA型戦艦のそれと同等レベルにまで小型化が可能であると研究で判明したのである。

 これを受けて、技術本部は新型波動砲の改良を開始し、同時に実用テストを兼ねて、建造中の改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」の集束型波動砲に改造を加えて本格的な集束率の変更を可能とし、同艦から得た戦訓も設計に反映させることを決定した。
 「ドレッドノート(Ⅱ)」はガミラス・イスカンダル危機時は太陽系でガトランティス帝国残存軍との戦闘に従事していたが、戦闘詳報で波動砲の威力と射程にまだ若干の不足がある、およびエネルギー充填時間が向上していないことを問題視する一方で「状況に応じて波動砲の集束率を変更できることは、戦略的にも戦術的にも極めて有効と認める」と報告した。改良が必要とはいえ新型波動砲が有効と判定されたことに技術本部は安堵したが、同時にガミラス・イスカンダル危機における別の戦訓が問題となった。
 それは、新たな敵となった暗黒星団帝国軍が保有する、ウラリア式制圧自動惑星「ゴルバ」との交戦記録だった。このガトランティス都市帝国ほどではないが艦艇に比べれば超大型の兵器には、エネルギー集束率という点で地球の技術陣にとって羨望の的とも言えるデスラー砲すら効果がなかった、というのである。

 後の調査で、デスラー砲が無効化されたのは暗黒星団帝国軍が多用するエネルギー偏向バリアが原因と判明したが、この結論はむしろ「偏向バリアを超越する程度に既存波動砲を強化する必要がある」という要求にも繋がった。そのため新型波動砲を担当する技術者たちは「射程の向上、広範囲かつ効率的なエネルギー拡散、従来のタキオン集束型波動砲を上回る破壊力」という三つの難題に早期に取り組むことを余儀なくされることになったのだ。
 結論から書いてしまうと、自動惑星に対抗する波動砲としては、暗黒星団帝国戦役直前に大改装が行われたヤマトの波動砲を改造した通称「新波動砲」が担うことになったが、本題からは外れるのでここでは触れない。ただ、もちろん新波動砲とは異なる「開発中の別の新型波動砲」の集束モードの強化は極めて重要と考えられていたし、射程および拡散モードの威力の向上も必要であることに変わりはなかった。

 結局、技術本部は力技と言うべき方法でこの問題の解決を図ることになる。新技術で可能とされた波動砲エネルギー増幅装置の小型化を放棄し、アンドロメダ型戦艦のそれと同等の規模を維持する代わりに性能を大幅に向上させ、三つの難題すべてを一気に解消することにしたのだ。
 暗黒星団帝国戦役の勃発で試作砲の制作が中断する事態も発生したが、戦役終結後に技術陣は今度は暗黒星団帝国軍の戦艦「グロテーズ」級に搭載されていた無限β砲をも参考にして威力、射程を強化した試作砲を完成させ、試験に供した。結果は集束、拡散モード双方で威力と射程が向上、エネルギー充填時間の大幅短縮という満足すべきものに終わり、これを受けた防衛軍はこの新型波動砲を制式兵器として採用し「四式タキオン波動集束可変砲」の名称を付与した。
 (なお、このとき制作された試作砲は当時建造中だった汎用戦艦「アリゾナ」に転用されている)

 しかし、この新型波動砲の完成には大きな代償が伴った。それは、エネルギー増幅装置の規模をアンドロメダ型戦艦と同程度にしたため、既存のA型戦艦と同大の艦には搭載が不可能となったのである。そして、これらの現有戦艦に改装を行う、あるいはA型戦艦を再び量産して新開発の波動砲が搭載することができないなら、この砲をどのように活用すべきなのか。
 申し訳程度の議論が行われたが、結局「新型戦艦を設計し、A型戦艦に替わる主力戦艦として整備する」という結論を防衛軍首脳部が出すのに、さほど時間はかからなかった。


爆雷波動砲のための新戦艦

 開発が終了した四式タキオン波動集束可変砲には、現在「爆雷波動砲」あるいは「拡大波動砲」という通称がつけられている。この「爆雷」というのは水上艦艇が対潜用に装備した爆雷が「爆発する深度が調整できる(後述の爆雷モードではエネルギー拡散地点の精密な調整が可能である)」ことにちなんで名づけられたという説もあるが、事実かどうかは判然としない。繰り返すが混乱を防ぐため、前述の通り本文では「爆雷波動砲」で統一する。
 ただ、実験の過程で既存の集束、拡散いずれの波動砲とも弾道特性が異なることが判明したため、開発当初に予定された「集束モード/拡散モード」という区分けが、最終的に「拡大モード/爆雷モード」に変更されたのは間違いなく、現在も発射時のヒューマンエラーを防ぐため、拡大モードでの発砲時は「拡大波動砲」、爆雷モードの際は「爆雷波動砲」と艦隊内で呼び分けているのも確かである。

 さて、爆雷波動砲の搭載を前提とした新戦艦の設計要求は、ただちに参謀本部から艦政本部へと持ち込まれた。しかし艦隊戦力が激減している状況での参謀本部の焦りを反映するかのように、この要求は「四式タキオン波動集束可変砲を搭載し、同時に戦艦としての任務が遂行可能な艦を設計せよ」という、かなり大まかなものであったようだ。
 これにはさすがに艦政本部も困惑したようだが、まず爆雷波動砲を搭載すると船体規模がどの程度になるか試算が行われた。その結果「全長340m程度、重量は最低でも9万トン近くになる」との結論が出たが、従来の主力戦艦であるA型戦艦どころかヤマトすら僅かながらも上回る大型艦になるというこの試算に、今度は参謀本部のほうが面食らったといくつかの資料が伝えている。
 とはいえ、どのみち爆雷波動砲を搭載するために新戦艦を建造するのだから、この大型化は避けられないと参謀本部は割り切るしかなかった。もちろん、これでは建造費が高騰しA型戦艦ほど数量が揃えられないのは明白だったが、最終的には艦隊側からの「予算の都合で量的確保が難しければ、最低でもプレアデス級戦艦(暗黒星団帝国の旗艦型戦艦)、可能であればグロテーズ級戦艦に単独で対抗できる戦力を有する艦をできる限り多数建造することを望む」という要求が決め手となり、参謀本部はこれに沿った戦艦の設計を艦政本部に下命した。

 当時の防衛軍の保有戦艦は6隻(ヤマト及び各国で建造中の汎用戦艦は除く)まで減少しており、戦力の補充が急務であること。また、ある程度の試算を事前に行っていたことも幸いして、艦政本部は昼夜兼行で早期に新戦艦の要目を以下のようにまとめ上げた。


全長     346m
全幅     93.8m
船体重量   87,900トン
乗員     165名(戦時最大定数、90名程度で戦時運用は可能)
主機     タキオン式次元波動機関 1基
補機     大型ケルビンインパルス機関 1基(艦底部)
       埋め込み式小型ケルビンインパルス機関 2基(艦後下方両舷バルジ内)
波動砲    四式タキオン波動集束可変砲 1門
主砲     五式48cm三連装収束圧縮型衝撃波砲 3基9門
対空兵装   三式76mm連装パルスレーザー砲 16基32門(艦橋構造物両舷)
       埋め込み式25mm単装パルスレーザー砲(艦各部に多数)
ミサイル兵装 三式大型魚雷発射管 単装2基2門(艦首)
       一式三型魚雷発射管 単装6基6門(艦中央部両舷に後方へ向けて配置)
       九九式二型改一垂直軸ミサイル発射管 単装8基8門(艦底部)
       一式小型魚雷発射管 単装6基6門(艦首)
爆雷兵装   四式八連装波動爆雷投射機1基 8門(後甲板)
搭載機    一式三二型空間艦上戦闘機「コスモタイガーⅡ」12機
       (このうち2機は偵察機仕様)
       九八式汎用輸送機「コスモシーガル」2機
       救命艇2機、その他救命ボートなど


 実に9万トン近い大型艦となったが、参謀本部としても既にこうなることが試算でわかっていた以上、他に選択肢もなかったようである。この設計案は若干の修正を加えられたのみで採用され、このとき「B型戦艦」という名称が付与された。


船体構造

 B型戦艦は任務に関してはA型戦艦の直系にあたるが、技術的な系譜としてはこれまでの地球型戦艦と大きく異なり、本型より先に建造が開始されていたC型駆逐艦で大規模に採用された「箱型ブロックユニット構造」が使用されており、建造期間の短縮と軽量化が同時に図られている。そのため既存の地球防衛軍艦艇に比して曲面部分が少ない船体となっており、1番艦が披露されたときは話題になったと伝えられる。
 装甲厚などは機密のため不明であるが、船体構造がやや脆弱で後に補強を必要としたA型戦艦の反省から、ブロック方式といってもその構造は極めて強固なものとされ、装甲外鈑もA型戦艦より特に主要部が増厚されたようである。この効果があったのか、少なくとも就役当初は艦隊側も「十分な防御性能である」と高く評価している。

 中央部のバルジ形状の部分は、波動砲の速射時における放熱装置と艦載機格納庫のスペースとなっており、発進口は艦底に配置された。なお、本艦はコスモタイガーⅡ12機の搭載が可能であったが、設計の段階で「偵察機と輸送機、救命艇などを除いた固有の戦闘機は搭載せず、基地航空隊の燃料、弾薬の補給地点として格納庫を用いる」とされており、一部の作戦を除いて自艦所属の戦闘機隊を搭載したことはない。
 主砲、艦橋構造物の配置はほぼA型戦艦を踏襲しているが、通信設備の強化のため各所にアンテナが追加されている。ただ三番砲塔後方上部に伸びたアンテナは「三番砲塔の射界を制限する」と問題視され、ディンギル戦役後に残存していた艦と以後の建造艦のみ艦尾下方に配置を変更している。
 艦橋は一見すると背の高い大型のものに映るが、これはレーダーのアンテナ配置によってそう見えるだけで、実際は比較的コンパクトにまとめられている。旗艦としての能力に関しては、当時の防衛軍で最も旗艦能力の高かったA5型戦艦とほぼ同じで、100隻単位の艦艇を一括して指揮するための設備が搭載されていた。

 艦内の居住区は、A型戦艦とほぼ同等のスペースが確保されている恵まれた環境であり、乗員たちからも好評であった。また、ヤマトのようなO.M.C.S(食料合成装置)こそ搭載されなかったが、暗黒星団帝国戦役の戦訓から長期の航海に備え、重要防御区画に糧食庫や真水生成器などの大規模な給糧設備も準備されている。艦内工場についてはヤマトほど大規模なものにはならなかったが、A型戦艦よりは充実した工作設備を有していたとされる。


兵装

 このB型戦艦の存在意義とも言える四式タキオン波動集束可変砲であるが、その性能は爆雷モード(拡散波動砲相当)においては「アンドロメダの波動砲に比して破壊力、射程、有効範囲全てにおいて勝る」と評されている。一方で集束波動砲にあたる拡大モードは「(大改装後のヤマトが搭載した新波動砲こと)九九式二型次元波動集束砲に比して射程は同等だが、やや威力は劣る」と判定されたが、それでも艦隊側が不満を持つほどの威力不足に悩まされたという例はなく、むしろ就役時はその速射性能を高く評価されている。

 波動砲以外の兵装だが、本艦は四式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)が採用されてから初めて建造された戦艦であり、その使用が最初から決定されていた。そのため主砲には当初、当時のヤマトと同じ九八式三型48cm陽電子衝撃砲が予定されたが、設計中に砲塔を小型化するためにヤマトでは砲塔内に装備されていた陽電子収束器を砲身巻き付け型に改造した「五式48cm収束圧縮型衝撃波砲」が採用された。主砲の性能自体は九八式三型48cm陽電子衝撃砲と殆ど違いはないとされており、砲塔の旋回速度も砲塔小型化の効果もあって(対空砲兼用とされていた)A型戦艦より若干速い旋回性能を有していたとされる。
 また、四式波動徹甲弾、および三式融合弾用の弾庫も本艦では比較的大規模に準備されており、1門あて10発分程度の容積が確保されていたが、希少金属を多用する砲弾の生産が間に合わず、定数を装備して出撃したという記録は現状見つかっていない。

 また、A型戦艦と同様に本型も砲塔型副砲は採用されなかったが、これもA型戦艦と同じく主砲で対空射撃および軽艦艇にも問題なく対処可能と判断されたからだった。だが、後述するがこの措置が本型の運命に大きな影響を与えることになる。

 対空パルスレーザー砲は、A型戦艦やアンドロメダの対空砲不足が問題視された反省から、新型の三式76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて8基装備するという重装備になった。これは40mm砲塔や25mm砲塔を混載するヤマトに門数では劣ってもほぼ同等の近接対空火力と評価され、以後の地球防衛軍の戦艦の標準になったとも言われる。また、艦の各部に対空埋め込み式パルスレーザー砲を多数装備しているのは従来の戦艦と変わらないが、具体的な門数は不明である。

 一方で魚雷、ミサイル兵装は若干犠牲にされており、小型艦への対処用の魚雷発射管や艦底部防御用の垂直軸ミサイル、後方への通常型魚雷発射管など、就役時は特に見るべきところはない標準的な雷装と言えるだろう。爆雷兵装は大改装後のヤマトと同様、後部上甲板に八連装波動爆雷投射機が1基装備されている。


機関

 本型の主機関には艦政本部が新たに開発した新型波動機関が採用されており、小型軽量ながら出力はアンドロメダの主機(ただし、アンドロメダの主機は波動炉心3基によって構成されているので純粋な比較は難しい)にほぼ匹敵すると評価されている。また、連続ワープも可能である。
 補機はA型戦艦が搭載したものを改良した大型ケルビンインパルス機関を艦底部中心線上に1基、それと小型の同機関をバルジ収納型として両舷に1基ずつ装備した。また出力に余裕があることから旋回スラスターもA型戦艦より数が増やされており、艦隊側は「速力、直進安定性、旋回性能いずれも大型艦としては優秀」と肯定的な判定を下しており、この方面は就役後も特に問題は生じなかった。


建造計画の頓挫と急速量産

 こうして設計が纏められたB型戦艦は、ガトランティス戦役以来、波動砲への傾斜を深める地球防衛軍、特に参謀本部に大いに期待される存在となっていた。そのため建造は速やかに行われるはずであったが、2206年に発生した太陽の核融合異常増進による人類移住計画がこれに歯止めをかけることになる。人類を第二の地球に移住させるための輸送船団の建造が最優先とされたため、戦闘用艦艇に関しては必要最小限、それも一部兵装を省略して移民船の代用として使える艦のみに絞ると決定されたのである(この結果、一部武装を撤去して居住施設などを充実させた改C1型駆逐艦などが少数ながら建造されている)。

 そのため、資材を大量に消費するB型戦艦は真っ先に建造中止の対象とされ、地球および太陽系基地で当時建造されていたB型戦艦15隻のうち、ガルマン帝国とボラー連邦の紛争に巻き込まれた事情を考慮して、最も建造が進展していた「ダンケルク」「マサチューセッツ」の2隻のみ工事が続行されたものの、残りは全て建造作業が停止された。このためB型戦艦の1番艦は「ダンケルク」ということになり、これが本艦型の命名の由来となっている。
 「ダンケルク」は完成後、地球から最後に出発する探査船団の護衛艦として第二の地球探査に参加、ボラー連邦の小艦隊と数度交戦したが、相手の艦隊の規模が小さかったことも幸いして、その火力によって一方的に撃退している。また、銀河系中央部戦役末期に完成した「マサチューセッツ」はテスト航海中に「カイパーベルトD宙域会戦」に参加、爆雷波動砲を以てボラー連邦の大艦隊に壊滅的打撃を与えるなど、その優秀性を証明した。

 これによってB型戦艦に自信を深めた参謀本部は、太陽の核融合異常増進が治まると同時に、停止されていたB型戦艦の建造を一斉に再開した。この時期の参謀本部の入れ込み具合は相当なもので、当初15隻だったB型戦艦の計画も、政府との折衝で24隻(追加された9隻のうち、実際に起工されたのは3隻)まで増やすことに成功するなどして、並行して建造が開始されたB型巡洋艦も含めて、参謀本部の目指す「波動砲艦隊」は実現一歩手前まで来ていた。

 しかし、順調に竣工していったB型戦艦を待ち受けていた運命は過酷だった。そしてそれは、よりによって味方からそれを予言されるという悲しい宿命を背負っていた事実を、この時点で知る者は誰もいなかった。


無視された警鐘

 ここで、2207年に勃発したディンギル戦役勃発前に完成していたB型戦艦を一覧にしておきたい。

 BBB-01 「ダンケルク」
 BBB-02 「マサチューセッツ」
 BBB-03 「レトウィザン」
 BBB-04 「扶桑」
 BBB-05 「ロイヤル・オーク」
 BBB-06 「ケーニヒ」
 BBB-07 「マジェスティック」
 BBB-08 「コロラド」
 BBB-09 「カイオ・ジュリオ・チェーザレ」
 BBB-10 「ノルマンディー」
 BBB-11 「アイダホ」
 BBB-12 「スラヴァ」
 BBB-13 「ヴェストファーレン」
 BBB-14 「インペロ」
 BBB-15 「伊勢」

 (ディンギル戦役勃発時、建造中だった艦)
 BBB-16 「ロドネー」
 BBB-17 「アイオワ」
 BBB-18 「日向」


 ディンギル戦役におけるB型戦艦に関しては後に述べるが、実はB型戦艦、正確には本艦型を中心とする「波動砲艦隊」に重大な欠陥があることを、ディンギル戦役前に行われたある演習が明らかにしていたのである。
 それは、二線級戦力としての維持が決定したA型戦艦の生き残りを中心とした内惑星警備艦隊との演習時のことだった。当時の内惑星警備艦隊司令長官は艦隊派の中でもあまり波動砲に大きな期待を寄せる提督ではなかったのだが、その彼から「A型戦艦、A型巡洋艦、A型駆逐艦(全てガトランティス戦役時の主力艦艇)を中心とする我が艦隊に、是非最新鋭艦で編成された部隊との演習を許可してほしい」との申請があったのだ。

 元々、この提督に好意的とは言えなかった参謀本部は、これを新生波動砲艦隊のお披露目にはちょうど良い機会と判断し、結果、互いに戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦8という編成で、内惑星警備艦隊と防衛軍第一艦隊から抽出した最新鋭艦部隊が実戦演習を行ったのである。

 結果は、しかし最新鋭艦隊にとっては惨憺たると言うべきものだった。

 内惑星警備艦隊は、最初から相手が波動砲による先制攻撃を行うと読んで機動戦に転じ、大型艦揃いで直進速度はともかく運動性に問題のあるC型駆逐艦やB型巡洋艦の包囲網を軽々と突破、B型戦艦に対して駆逐艦部隊が近接雷撃戦を敢行したのである。
 B型戦艦の防御力、および当時の魚雷の威力不足から撃沈判定にまで至った艦は存在しなかったが、内惑星警備艦隊の機動戦に散々振り回された新鋭艦隊は最終的に勝利判定こそ取ったものの、特に波動砲艦としては防御力不足、巡洋艦としては大きすぎたB型巡洋艦は3隻が撃沈判定されるなど、旧式艦で揃えられた内惑星警備艦隊に対して許容範囲を超える大損害を出していた。

 演習の直後、内惑星警備艦隊司令長官から意見の具申があった。

 「現状の主力艦隊は、戦艦が大型化し防御力が強化されたのはよいが、小型艦に近接されると砲塔型副砲を搭載していないため対処が遅れる傾向がある。また、機動副砲の役割を果たすべき駆逐艦は大型に過ぎ、搭載砲の門数が不足している。巡洋艦に至っては戦艦とも巡洋艦ともつかぬ中途半端さがあり、現状使い道を見出すことは困難としか言いようがない」

 つまり、B型戦艦はまだましなほうで、その周囲を固めるべき護衛艦艇の建造計画や配備に問題があると指摘したのである。そして、内惑星警備艦隊司令長官の意見具申はこう締めくくられていた。

 「ガミラス戦役当時のような、機動戦を得意とする相手に宙雷戦を仕掛けられた場合、C型駆逐艦の防空力を以てしても全て食い止めるのは困難を極め、艦隊が大損害を被る可能性が高い。想定される敵水雷戦隊の攻撃に対処すべく、既存小型艦艇の有効活用、および護衛艦として運動性能に優れる小型艦を新規に建造すべきである」

 ここで抜粋した指摘に限らず、軍備全体をもう一度見直すべきという内惑星警備艦隊からのこの意見は、しかし参謀本部に無視された。何より同艦隊の司令長官が上層部から受けが悪かったのもあったが、自分たちが決定し整備した「波動砲艦隊」を問題視されたことで参謀本部の人間の多くが感情的になってしまったのが問題だった。そのため、この演習の結果は「乗員の練度の差によるもの」とされ、参謀本部は内惑星警備艦隊から下士官兵の1/3ほどを主力艦隊に転属させるという方法で問題をうやむやにしてしまったのである。

 だが、例え結果として本格的な対処を行う時間がなかったとはいえ、この味方からの警鐘を無視したの愚行だった。それが取り返しのつかない事態を招くのだが、その事態、ディンギル戦役におけるB型戦艦について触れるのは次項に譲りたい。

 「艦長」

 堀田が「駆逐艦A」艤装員長として着任して四日目、乗り組み予定の要員たちはもう皆が彼のことを「艦長」と呼ぶようになっていたが……艦橋でパネルの確認を行っていたところで声をかけられた。
 顔を上げてみると、砲雷長に内定している林美津保二尉がいた。まだ20歳だが航宙士官候補生学校でその砲雷撃戦の才能を見出され、僅かだが実戦経験もあるという、人材不足に悩まされる国連宇宙軍でも珍しい女性の戦術士官だった。ただ、彼女に雷撃戦の初歩を教えたのは士官候補生学校教官時代の堀田であったから、別に女性だからどうのと気にしたことはないし、彼女の才能と力量は十分に評価していた。

 「何だい、砲雷長?」
 「東京の南部重工から本艦の主砲が届きましたので、ご報告にあがりました」
 「そうか、やっと来たか」

 「駆逐艦A」の艤装はほぼ終わりに近づいていたが、主砲となるべき火砲が未到着であり、これを取り付ければほぼ完成することになるのだった。

 「わかった。先任将校も呼んで、一緒に確認しよう」
 「お願いします」

 そうして、三木と林を連れて届いた火砲が補完されているエリアに足を運ぶ。そこには、三木と林には意外な、そして堀田には納得ができるものが鎮座していた。

 「これは……砲身型火砲の砲塔ですか? 私はヤマトにだけ準備されていると思っていましたが」
 「ああ、これはヤマトに副砲として搭載される予定だった砲だよ。もっとも、ヤマトの副砲にはもっと口径の大きい砲が採用されたから、宙に浮いていたんだ」

 林の疑問に、堀田がそう答えた。

 目の前にあった砲塔と砲身を持つ兵器……制式名称「九八式15.5cm陽電子衝撃砲」。堀田の説明通り、当初はヤマトに副砲として搭載される予定だったが、今年になって「試製九九式20cm陽電子衝撃砲」の目途が立ったことから「ヤマトにはより強力な兵器を」という軍首脳の意向があり、こちらが採用されたということを「ヤマト計画」で戦術科に関係していた堀田は知っていた。

 「しかし、波動機関に加えてショックカノンですか……お偉方はうちの艦に相当な期待をかけているようですね」
 「そうだね。もっとも、波動機関を使えるのが我々の艦のみという現状だ。今更出し惜しみもしていられないし、少数でもガミラス艦隊に単独で挑もうというなら、ショックカノンはどうしても必要な兵器ではあるよ」
 「……」

 三木と堀田が話しているところで、林は表情を硬くして沈黙していた。

 「砲雷長、どうした?」
 「あ、失礼しました。その……」
 「構わないよ、言ってみなさい」

 堀田に促され、林は口を開く。

 「あの、私は駆逐艦にしか乗ったことがなく、ショックカノンを撃ったことがありません。それで、その……」
 「最初は誰だって初めてなものさ。私だって「キリシマ」にいたときも殆ど撃った記憶はないよ。『カ2号作戦』以降はそもそも簡単に撃たせてはもらえなかったものだから」
 「そうだったんですか?」
 「そう。だから不安に思うことはない。波動機関を搭載している以上、ショックカノンもこれまでの通常兵器と同じように使える前提でヤマトに搭載されている。それはこの艦も同じと心得ておけばいい。それに……」

 僅かに、堀田は笑顔を見せた。

 「私は君の腕を知っているし、信頼している。任せたよ」
 「は、はいっ!」

 僅かに顔を紅潮させて、林は下がっていった。

 「彼女、どうですか?」

 三木が聞く。

 「砲雷長としての実力は恐らく問題ないよ。ただ消極的というか、ちょっと慎重すぎるかもしれない。元々は船務科志望だったのが戦術科に転向したから、仕方ない面はあると教えていて思ったけどね。だけど」

 確認するように、堀田は締める。

 「これから経験を積めばいくらでも育つさ、他の乗員もそうだけどね。そして、我々のように実戦に出て生き残った者たちは、彼ら彼女らを生き残らせてその未来を繋げないといけない。それは心しておこう」
 「そうですね……」

 静かに頷く三木だった。


 そして二日後、陽電子衝撃砲の搭載とその他の工事を終え、ここに「駆逐艦A」は完成した現役艦と認められることになった。

 「しかしご時世とはいえ、寂しい竣工ですなあ」

 艦橋で機関長の来島研三が言う。彼は一尉で三木より年上の28歳だが、一尉としては三木のほうが先任だったため先任将校にはなれなかった。だが、それに別段不満を抱くでもない、豪放な性格の持ち主だった。

 「元々が機密扱いの艦だからね。それに、こんな状況では仮にそうでなくても、派手に進宙式というわけにはいかないさ」
 「まあ、そうですわな」
 「ところで、機関の調子はどうだい?」
 「今は順調……ってとこですな。もっとも、敵さんの技術を信頼して命預けるってのは、どうにもいい気分はせんもんです」
 「そいつは仕方がない、背に腹は代えられないからね」

 もっとも、来島もわかっていて愚痴を言っていることはもちろん堀田も理解していた。

 「艦長」

 三木がやってきた。

 「乗組員総員53名。ここにいる我々を除く全員、艦長をお待ちしております」
 「わかった、すぐ行こう」

 艦外に整列している乗員たちを一瞥して、堀田は演台の上に立つ。

 「本艦の艦長を務める、堀田真司二佐だ。改めてになるが、貴官ら将兵が全力を発揮し、任務を果たすことを期待する。そして……」

 ここからが、大事なところであった。

 「ここにいる全員、今度の作戦をやり遂げて、生きて地球に戻るんだ。私が艦長でいる限り、無駄死には許さないし私も君らに決してそれを強いることはしない。どこまでも生き抜いて、地球人類のために戦い続けてもらいたい」

 諸先輩から教えられたこと。最後まで絶望しない、軍人として命ある限り、最後まで生きて戦い抜く。これを堀田は自分の部下たちにも伝えなければならないと自覚しているつもりだった。

 「艦長」

 堀田の右後ろに立った三木が声をかけてきた。

 「艦名の公募も終了しています。結果はこちらになりますので、艦長から読み上げていただきたく思います」
 「わかった」

 艦名を乗員から公募する。これはまずないことだが、彼らの乗る駆逐艦はその任務が極秘であるため、公式にはあくまで「駆逐艦A」としか扱われない。それはそれで仕方がないとはいえ、自分らの乗る艦がそんな取ってつけたような名前では乗員の士気に関わる。堀田はそう考えて、乗員たち「だけに」通用する艦名を公募で選ぶことにしたのである。

 その結果が記された紙を見て、一瞬、堀田は目前に整列する乗員たちの表情を見る。彼らの大半は20代前半、残りは各種学校を卒業したばかりの10代の少年少女たちだが、その顔は一様に硬さが感じられた。

 (それだけ覚悟して、この艦名を選んだということだな)

 内心でそう思ってから、言う。

 「なお、先に貴官らへ向けて行った艦名の公募の結果が出た。それに従い……」

 ここで、堀田は軽く深呼吸していた。

 「本艦を今後、駆逐艦『神風』と呼称する。あくまで非公式だが、かつての日本海軍駆逐艦である『神風』は大戦を最後まで戦い抜いた艦だ。その伝統に則り、我々も生きて任務を全うしよう!」
 「「オーッ!」」

 乗員たちから、大きな歓声が上がった。

 「神風」という名は、もちろん航空隊でこの名前を使えば忌避されるし、国連宇宙軍でも北米支部あたりはいい顔をしないだろう。しかし堀田が述べた通り、日本海軍の駆逐艦たる「神風」は数々の窮地を乗り越えて太平洋戦争を生き残った武勲艦だ。これまでは他国に遠慮して、磯風型駆逐艦のどれにも使われていなかった名前ではあるが「自分たちが元寇の際の神風のように地球の窮地を救う」「例え死すとも悔いなく戦い抜く」という乗員たちの覚悟を示した公募名のように堀田には思われた。

 「では、これより『神風』は最初の航海に出港する。総員、配置につけ!」

 先任将校の三木が号令を下し、乗員たちは各部ハッチから乗り組みを開始する。それを見て、自分も
改めて艦長としての覚悟を決める堀田だった。


 艦橋の指揮席に着くと、艦橋要員たちが既に配置について、いささか硬い表情で堀田に敬礼を向けていた。
 先任将校と航海長を兼務する三木と、砲雷長の林。それに船務長の沢野夕莉三尉、通信長の河西智文三尉、それと先任将校として副長の役目を果たす三木に替わって普段の操艦を行う主席航海士の初島沙彩三尉。いずれも航宙軍士官候補生学校において成績優秀ということで選ばれたとはいえ、まだ19歳の若者たちだった。
 というより、機関の調整のためここにはいない来島と技術長の菅井貴也二尉、倉庫で物資の確認を行っている主計長の秦智哉三尉。彼らを含めても、実戦経験があるのは堀田と三木に来島、林の四人だけ。年齢も堀田、来島、三木が20代後半から中盤なのを除けば全員やっと20歳前後という、悲しいまでに現状の国防宇宙軍の人材不足が伺える艦首脳部だった。

 しかし、ガミラスの攻撃により本来の要員を失ったヤマトでさえ、状況は似たようなものだった。その点で贅沢が言える状況ではなかったし、自分も士官学校で教育者として、そして「キリシマ」砲雷長として若者たちを見てきた堀田は、彼ら彼女らにむしろ希望さえ抱いていた。

 (この若い力を纏めるのが、私の役目だ。それが死に損なったものの務めであり、先達の務めでもある)

 もう、堀田はそうと腹を括っていたのである。

 「諸氏に、改めて申し上げる」

 丁寧だが、やや重い口調で言う。

 「諸氏は、本艦の首脳部として若い……諸氏も若いことは十分に承知しているが、この艦の乗組員を引っ張っていってもらうことになる。不安もあろうし、これから苦労も多いだろうが……」
 「……」

 聞いている乗員たちは、息を飲むだけでもちろん言葉を発さない。

 「艦長としてあえて言う。何事もやらなければ物事は進んでいかない。失敗を恐れていても何も解決はしない。私はこの艦の責任者として、作戦の成功と貴官らを生きて地球に帰すことに全力を尽くすつもりだ。しかし残念ながら、私は諸氏の命の保証はできない。だが、最後の責任は全て私一人で負う覚悟はしている。諸氏は失敗を恐れず、これから堂々と戦ってほしい。以上だ」
 「「はいっ!」」

 堀田さんにしては饒舌だなと三木は思ったが、若い乗員たちの顔が、堀田の言葉を聞いて安心とはいかずとも、やる気を感じさせるものに変化したことを感じ取った。そこは教官任務も長かったとはいえ、一連の「カ号作戦」や「メ号作戦」を生き残った士官だけに自分などとは訳が違うな、と感心もしたのだった。

 「では、艦長」

 その三木に促されて、堀田は命令を下した。

 「『神風』発進準備にかかれ!」


 そして1時間ほどで『神風』は成層圏を脱出して宇宙空間へと出ていた。これまでの核融合反応機関で稼働していた艦からすれば信じられないほどの速さであり、これはさすがに経験したことのない堀田も驚くしかなかった。
 ふと後ろを振り向くと、赤茶けた地球が見える。これを青い地球へと戻すために我々は戦っているのだ。成否はヤマトにかかるところが大とはいえ、自分たちの任務も決して疎かにできるものではない。

 「では、月軌道に入ったところで訓練を……」

 そう、堀田が言いかけた直後だった。

 「レーダーに艦影! 数、3。ガミラス艦と思われます」
 「何だと!」

 船務長の沢野の報告に、さすがの堀田も驚いた。冥王星基地が壊滅した今となっては、太陽系に残っているガミラス艦はさほど多くないはずで、まして地球を出港した直後に接触するなど思ってもみなかった。
 しかし、さすがに歴戦の堀田であるから、冷静さを取り戻すのは速かった。

 (そうか、ヤマト出港後に地球がどうなっているか、冥王星基地から偵察に派遣されたのだろう。納得のいかない話ではないが、そうすると……)

 敵は、恐らく自分たちが帰るべき冥王星基地が、もう消滅しているということを知らない可能性を思い立った。

 「先任将校」
 「はい」
 「敵艦に気付かれず、振り切ることは可能だろうか?」
 「……難しいですね。ここで引き返しても発見される可能性は高いですし、そうなると」
 「追撃されて本艦は沈められ、これからの任務を果たせなくなるか……船務長」
 「はっ、はい」

 沢野が答える。

 「敵に我が艦は探知されているか?」
 「今、探知された模様です。こちらに向かってきます」
 「わかった。現在、敵艦3隻はどういう配置になっているか、パネルに出してくれ」
 「りょ、了解……出ます」

 パネルに目をやると、3隻はかなり間隔を広く取って航行していた。偵察任務であるなら、こういう陣形で視野を広く、というのは理解できる。

 「敵艦識別。ガ軍巡洋艦1、駆逐艦2」

 砲雷長の林から報告が入る。それならばと、堀田は通信長の河西に声をかけた。

 「通信長、敵の旗艦……恐らく巡洋艦だろうが、交信回路は開けるか」
 「は、はいっ。可能ですが、どうするんですか?」
 「伝えてやるといい、お前たちの帰るべき冥王星基地はもう消滅している。ここで戦闘を始めても無意味だぞ、と」
 「戦闘を避けるのですか?」

 林が声を上げたが、堀田は冷静なままだった。

 「まだ完成して出港したばかりの本艦が、戦闘でその性能を発揮できる保証はない。避けられる戦闘は避けたほうがいい。もちろん、相手次第ではあるが……通信長、とにかく相手への交信を頼む」
 「りょ、了解しました」
 「艦長、あるいはその通信で敵が自暴自棄になる可能性もあります。ここは」

 三木の言葉に頷くと、堀田は艦内放送で全乗組員に伝達した。

 「総員、そのまま落ち着いて聞け。本艦は敵巡洋艦ならびに駆逐艦に発見された。交戦を避けるための手は打つが、うまくいかない可能性もある。まだ訓練すら行っていない本艦だが、ここで退避することは不可能だ。いざとなれば、全員で総力を挙げて生き残るために戦ってもらいたい……総員、第一種戦闘配置!」

 まさか出港早々、敵艦と交戦することになるなど想定外だが、戦場とはそうした想定外によって形作られていると言っても過言ではない。だが、堀田や三木ら歴戦の士官ならともかく、実戦経験の乏しい、あるいは皆無な乗員たちが大半で、しかも波動機関搭載艦とはいえ駆逐艦1隻のみ。3隻の敵艦を相手にするのは無謀としか言いようがないが、逃げることは確実に死を招くことになる以上、通信で敵が引かない限りは戦うしかない。

 そして案の定と言うべきか、敵艦3隻は「神風」の通信に返信すらして来ず、旗艦である巡洋艦が徐々に迫ってきていた。

 (こうなれば、妙な話だが敵の技術を信頼するしかない。そして……)

 この「神風」に乗り組んだ若い乗員たちの力を信じるのみ。そう意を決して、堀田は「神風」にとって最初となる戦闘開始を決断した。

堀田真司

 本作の主人公。2170年4月12日生まれ、千葉県佐倉市出身。「ゆきかぜ」艦長古代守の航宙軍士官候補生学校における1期先輩にあたる。専攻は宙雷だが、実戦を積み重ねるにつれて砲術、操艦にも優れた才能を発揮するようになる。
 2193年の「カ号作戦」「カ2号作戦」(第一次、第二次火星沖会戦)時は一尉。突撃駆逐艦「ふゆつき」砲雷長として参加し「ひびき」艦長考案による接近戦を模倣、応用して行い戦果を挙げ、実戦経験者を多く失っていた軍上層部から注目されるようになる。その翌年、三佐に昇進した際に士官候補生学校校長だった土方竜(堀田も彼に教えを受けている)に乞われて同校にて宙雷科の教官を4年務め、多くの優秀な人材を輩出している。
 2198年、二佐に昇進。今度は艦隊司令長官の沖田十三と旗艦「キリシマ」艦長の山南修の要請で「キリシマ」砲雷長となる。この頃「ヤマト計画」の一員として戦術長の内定を受け取るが「自分より古代(守)君のほうが優れています。彼の下でなら喜んで働けます」と辞退、当面はヤマト砲雷長の候補とされる。
 しかし2199年1月の「メ号作戦」で「キリシマ」が被弾した際に負傷し入院、ヤマト計画から外されるが、同時に坊の岬沖に待機していたヤマト計画要員がガミラスの攻撃を受け壊滅した際も無事だった。
 その後、土方から駆逐艦「A」の艤装員長を拝命、同艦を以て波動機関製造のための物資調達とガミラス基地の調査を命じられることになった。

 風貌はやや小柄で中肉、かなりの童顔。性格はいたって温和で物静かだが、戦場では鋭い感性と理性を発揮し、日本海軍から国連宇宙軍日本艦隊に伝わる「水雷魂」を発揮して勇敢に戦う。指揮官としては公正さを重んじ他人を分け隔てなく扱うことから、同僚や部下からの信望は厚い。そうした面と実戦経験から沖田、土方、山南ら艦隊勤務の上官からも高く評価されているが、やや強情で現場の状況を「理屈任せに厳しく上へ指摘する」面もあり、上層部の一部から煙たがられている節もある(堀田のほうも、軍務局長の芹沢虎鉄を異常なほど嫌っている)。ただ、ヤマト計画本部長でもある藤堂平九郎からはその人柄を信頼されている。

 高室奈波という婚約者がいたが、遊星爆弾の攻撃によって失っている。それでも何故かガミラスを恨み切ることができないでいる自分に苛立ちを感じている面もあるが、他人の前では一切表に出さず、当人は生涯「男寡婦」を貫くつもりでいる。


三木幹夫

 2173年生まれ、岐阜県出身。航宙軍士官候補生学校の一年生だった時に、最上級生だった堀田と知り合う。専攻は航海科。
 士官学校卒業後は各地を転戦。2199年の「メ号作戦」では駆逐艦「おいて(追風)」の航海長として参加予定だったが、火星付近で「おいて」が機関不調を生じて地球に引き返し、不時着寸前に機関が停止し艦は墜落、多くの乗員が殉職する中で生き残る(ただ、僅かでも生存者がいたのは三木の操艦のおかげ、と評価されている)。
 その直後、駆逐艦「A」の航海長(最先任の一尉であるため、先任将校も兼務)を拝命。これは土方からの直々の命令で、三木以外の大半を若い士官が占めることになる駆逐艦「A」の艦長を務める堀田を補佐する役目が言い含められているようである。

 一見、飄々とした性格だが、戦場では堀田以上に冷静沈着な人物。こと操艦に関しては2199年現在生き残った士官の中でも有数の名手とされる。風貌はやや老け顔で当人も(少しだけ)そのことを気にしている様子。「キリシマ」艦長の山南修に何となく似ている、という評もある。

(なお、本キャラはPSゲーム版「さらば」が出典ですが、キャラの外見および性格その他は(筆者の印象の限りで)同じです。ただし、ゲームに登場する巡洋艦「すくね」は筆者創作には登場しないため、ゲーム版の三木艦長のような最期を迎えることはなく、あくまで堀田の補佐役として最後まで活躍してもらう予定です。改変は申し訳ありませんが、ご了承ください)

 なお登場人物が増え次第、この項目は増えていくことになります。よろしくお願いします。

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