地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

2019年03月

(この文章は旧作、リメイク版問わず公式とは無関係です。ただ、創作のベースとしては2199と旧作2以降、PSゲーム版を用いています。筆者の趣味と本編内の用語、およびアニメ内の描写から推定して書いておりますので、時に矛盾も生じる可能性もありますが、何かありましたらコメントなどでご指摘頂ければ幸いです)

陽電子衝撃砲と集束圧縮型衝撃波砲

 この二つは性能差が基本的にないので混同されがちなのだが、発射プロセスに相違点がある。それぞれの過程を書き出すと以下のようになる。なお、エネルギー弾として使用される圧縮された陽電子を供給するのが各艦の搭載する主機関(ヤマト以降は波動機関となる)であることは共通している。


陽電子衝撃砲

・機関に直結する陽電子発生装置は砲身尾部に装備されている
・陽電子発生装置によって生成された陽電子塊をレールガンの要領で撃ち出す
・集束圧縮型衝撃波砲に比べ(特に初期のそれは)散布界が小さく、砲身への負担が少なく砲身命数に余裕がある。ただし、全般に必要な機材が大型化しがちで砲塔の小型化が困難という欠点を有する

集束圧縮型衝撃波砲

・陽電子発生装置が砲身尾部に加え、砲身中心部に補助エネルギー発生装置と加速器が追加装備されている
・砲身尾部の発生装置によって形成される陽電子塊は陽電子衝撃砲より小さいが、砲身中央部で形成されたエネルギー塊と撃ち出される途中で融合することにより、陽電子衝撃砲と同等の陽電子塊を撃ち出すことが可能。そのため、威力に関しては砲口径に準じてほぼ同等と評価される
・砲身にエネルギー発生装置を追加したことにより、砲塔内に大規模な機材を置く必要がないため砲塔の小型化が容易。また、改良前の陽電子衝撃砲より発射速度に優れるが、砲身命数が短くなるのと戦闘中の砲身の破損に弱いのが難点。また、初期の集束圧縮型衝撃波砲は高発射速度への対応が不十分で散布界が過大という問題を抱えていた(2207年現在は改善済み)

 以上の違いを踏まえて、ここではヤマト以降に搭載された戦艦級の大口径砲各種について書いていきたい。


九八式48サンチ陽電子衝撃砲の系列砲

九八式48サンチ陽電子衝撃砲→九八式一型48cm陽電子衝撃砲

 竣工時のヤマトが搭載した陽電子衝撃砲。イスカンダル王国から波動機関の技術がもたらされ、旧来の陽電子衝撃砲が現在の波動砲のような決戦兵器ではなく、汎用兵器として使用できる目途が立ったことによりヤマトの主砲用として開発された砲である。
 その威力は絶大で、ガミラスのメルトリア級航宙巡洋戦艦までなら三連装砲塔の一斉射で撃破可能だった。ガミラス戦役中、唯一通用しなかったのはドメル司令が座乗したゼルグート級一等航宙戦艦の正面装甲のみであり、これも側面装甲は容易く貫通できる相手であった。

 また、エネルギー供給が停止した場合に備え、三式融合弾などの実弾の発射が可能となっていたのも特徴の一つであり、この砲弾がガミラス戦役の多くの戦場で有効に活用されたことから、以後の地球防衛軍の大口径衝撃砲は実弾発射を前提に設計されることとなる。

 地球連邦の成立による地球防衛軍の再編、および2201年から開始された大改装でヤマトの主砲が換装されたことにより、砲の完成時の「九八式48サンチ陽電子衝撃砲」から「九八式一型48cm陽電子衝撃砲」に制式名称が変更されたが、ヤマトが主砲を換装したため、制式名称変更後にこの砲を搭載した地球防衛軍の艦艇は存在しない。


九八式二型48cm陽電子衝撃砲

 2202年末に大改装完成したヤマトが装備した改良型陽電子衝撃砲。当初は51cm集束圧縮型衝撃波砲への換装が計画されていたが、51cm砲を搭載するには艦内容積が不足していたため、旧来の一型砲に大幅な改良を加えたこの砲が搭載された。

 元が大口径の陽電子衝撃波砲であることを生かし、新技術を用いて各種機材の出力を強化。集束圧縮型衝撃波砲とほぼ同等の発射速度と従来の48cm陽電子衝撃砲を上回る威力を両立させている。
 2202年当時、この砲を上回る威力を持つと判定されたのはアンドロメダが装備した二式51cm集束圧縮型衝撃波砲のみであり、それはかつて有効打を与えられなかったゼルグート級航宙戦艦の正面装甲にすらダメージを与えられるほど強化されていた(ただし、その際に交戦したゼルグート級がいわゆる「ドメラーズⅢ」と呼ばれるドメル司令の旗艦と同等の防御能力があったかは不明とされる)。また、当初の集束圧縮型衝撃波砲が悩まされていた散布界問題がこの砲には存在しなかったため、艦隊側からもその性能は絶賛されていた。

 ガトランティス戦役後、一式40cm集束圧縮型衝撃波砲の砲身不足問題が発生した際、実験用およびヤマト用の予備として準備されていたこの砲の砲身が改A3型戦艦に転用され連装砲塔に装備、搭載されている。また、時期は不明だが砲のエネルギージェネレーターを強化してアンドロメダの51cm砲に威力を近づける試験が行われた形跡がある(ガトランティス戦役末期のヤマトで実施、実戦投入された説あり)が、砲の各装備への負担が大きすぎるため、最終的にこの試みは放棄されたようだ。


九八式三型48cm陽電子衝撃砲

 九八式二型陽電子衝撃砲をベースとし、新型の四式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)に対応するための改造を行った砲。2204年に完成した第二次改装後のヤマトと、デザリアム戦役後に残存していた改A3型戦艦がこの砲への換装工事を行っている。
 砲の各種機器が改良されエネルギー弾の威力も向上していたが、改造の重点は三式融合弾より大重量な四式波動徹甲弾に対応した揚弾、装填機構を装備することに置かれていた(なおこの砲に限らず、揚弾機構が強化されていない艦で四式波動徹甲弾の運用を行うことは不可能だった)。

 ちなみに、2205年以降に建造が開始されたB型戦艦も初期案ではこの砲が搭載される予定だったが、諸事情により変更されている。


五式48cm集束圧縮型衝撃波砲

 B型戦艦が主砲として装備した砲。分類上は集束圧縮型衝撃波砲であるが、ベースが九八式三型陽電子衝撃砲であるため、こちらに記載する。先述した通り、B型戦艦にも当初は九八式三型陽電子衝撃砲が搭載される予定だったが、砲塔を小型化し船体規模を縮小するために、同砲を集束圧縮型衝撃波砲に改造したこの砲が採用された。
 砲塔内部の機材を小型化し、集束圧縮型衝撃波砲の特徴である砲身部のエネルギー発生装置が追加された以外は九八式三型陽電子衝撃砲との差異はなく、試験の際にも性能は誤差程度の違いしかなかったとされる。現状、華々しい戦果に恵まれていないB型戦艦ではあるが、この砲自体は艦隊側から「概ね十分な性能を有している」と評価されているようだ。

 ただ、2207年現在の仮想敵であるボラー連邦の艦艇は重装甲を誇るため、九八式三型48cm砲も含めて、防衛軍の戦艦が装備する大口径衝撃波砲の威力強化は愁眉の急とされている。そのため、今後どのような改良が施されるか注目したいところである。


集束圧縮型衝撃波砲系列

一式41cm集束圧縮型衝撃波砲→一式一型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 A型(ドレッドノート型)戦艦の前期建造型が主砲として搭載した砲。集束圧縮型衝撃波砲のシステムは先述の48cm砲と異なり、威力不足を補うため砲身中央にエネルギー増幅器を装備していた20.3cm以下の中小口径陽電子衝撃砲のそれを大口径化したため、技術の系譜としては大口径陽電子砲とは差異が認められる。
 エネルギー弾の質量は48cm砲に劣るが、高初速砲ゆえに貫通力に優れ、ガトランティス戦役においてその威力を十分に発揮している。ただ散布界過大が艦隊側から常に指摘されており、発砲遅延装置の搭載など改良が続けられたが、戦役終結まで根本的な解決はできなかった。

 ガトランティス戦役終結直後、この砲は初速を減じる改造が行われたため、後述するように制式名称が変更された。しかし、ガトランティス太陽系残存軍との戦闘に参加したA型戦艦の残存艦も主砲改造を戦闘前に行っていたため、名称変更後にこの砲を搭載して敵と交戦した艦は存在しない。


一式41cm集束圧縮型衝撃波砲(改)→一式一型改41cm集束圧縮型衝撃波砲

 先の一式41cm集束圧縮型衝撃波砲の初速を低下させ、散布界問題の根本的解決を図った砲。貫通力は低下(艦隊側曰く「砲口径なりに」)したが、散布界は劇的に改善され、改A3型戦艦を除く後期建造型のA型戦艦やB型巡洋艦に主砲として搭載された。2207年現在も大改装を控えた一部のA型戦艦や残存するB型巡洋艦に搭載され現役である。


一式二型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 一式一型改41cm砲を四式波動徹甲弾に対応させる改造を行った砲。改造の規模は48cm砲ほど大掛かりではなく、揚弾、装填機構以外の諸元は一式一型改41cm集束圧縮型衝撃波砲と同じである。
 四式波動徹甲弾は希少金属を多用するため生産量の確保が困難で、地球防衛軍はこの砲弾を48cm砲弾中心に生産することに決定したため、本砲を装備した艦はかなり少ない。


一式三型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 一式一型41cm集束圧縮型衝撃波砲の砲身を強化(詳細は機密のため不明だが、砲身生成の方法と使用金属が変更されたと言われる)、散布界問題を解決しつつ従来の貫通力に加え、発射速度の大幅強化を図った砲。発射機構も大幅に変更されたため、新たに制式名称が付与されている。
 最初に搭載したのは「防空駆逐艦」と呼ばれたC1型駆逐艦で、発射速度はディンギル戦役における第二次冥王星会戦の映像を見る限り、2秒に1発と推定される。その威力はボラー連邦の重装甲艦にも通用すると高く評価されたが、対空砲としては「威力過剰」と評価され、特にC型駆逐艦の初期建造艦において門数不足が問題になっている。なお、四式波動徹甲弾の運用能力は当初から付与されていない。

 それでも、既存の一式一型改41cm砲と互換性があるため、大改装後は宙雷戦隊の支援任務に充当される予定のA型戦艦の現存艦にも装備される予定である。


二式51cm集束圧縮型衝撃波砲

 これまで「アンドロメダ」のみが装備した、2207年現在の地球防衛軍で最大口径の艦砲。元々は先述したヤマトに装備が検討された砲だったが、搭載不可と判断されたためアンドロメダに転用された。

 エネルギー弾の質量は48cm砲を大きく上回り、集束圧縮型衝撃波砲ゆえに貫通力も高く、文字通り地球防衛軍最強の艦砲と現在も評されている。ただ、同時期の41cm砲ほどではないが散布界の広さが問題になっており、ガトランティス戦役の土星会戦が生起する直前、発砲遅延装置の装備と射撃指揮統制用コンピュータの改良によって散布界を許容範囲にまで収める改造が行われ「概ね解決した」との評価に落ち着いた。

 その後に建造が予定された戦艦にも幅広く搭載すべしという意見もあったが、他の量産艦と規格が異なる大口径砲で運用面に難点が多く、ガトランティス戦役後に建造された自動戦艦用の主砲として装備されたのを除き、有人艦でこの砲を搭載した艦は建造されていない。


 以上が、2207年現在地球防衛軍が運用した大口径衝撃砲となる。なお、ボラー連邦艦艇に対する大口径砲の威力不足の問題は、間もなく就役が予定されているC型戦艦に搭載される新型砲(詳細は不明)で何か動きがあると期待されているのが現状である。

(本作にはお世話になっている八八艦隊さん、島(178cm)さんの作成したオリジナルキャラが登場します。今後も活躍していただく予定です。お二方、ありがとうございます。なお、これらオリジナルキャラの設定は八八艦隊さんの「高石範義 経歴書」、島さんの「明星、瞬いて」「明星の残光」というpixivに投稿されている作品をお読み頂くとより楽しめます)

 2201年初頭、地球連邦とガミラスによる安全保障条約の締結に伴い、月面に建設されたガミラス大使館。ここに駐在する武官たちの間で、地球防衛軍のある二佐について話題になることが多くなっていた。

 「地球にも、随分とできる士官がいるようだ」

 ガミラス軍は伝統的に、航空戦や宙雷戦といった、機動力を生かして敵を翻弄する戦闘を好む軍人が多かった。そのため地球に駐在する武官の幾人かにこの方面のエキスパートとも言える人材がいたのだが、その中で特に宙雷戦を得意とする者たちが、地球防衛軍士官学校で宙雷科の教頭を務める『とある士官』を高く評価していたのである。

 もちろん、士官学校で一科の教頭を務めている以上、この士官は現在ガトランティス帝国と行われている地球、ガミラス連合艦隊の戦闘に参加したことはない。それでもなお高く評価されていたのは、彼がガミラスの士官たちと行った戦術シミュレーションにおいて、如何なる不利な状況からでも必ず引き分けまでには持ち込み、文字通り不敗を誇ったこと。
 そして、そんな力量があってもなお、時間が許せばガミラス大使館を訪れて武官同士で戦術論に花を咲かせたり、過去のガミラス艦隊の戦闘記録、特にドメル司令のそれを熱心に学ぶ姿勢が、自分たちの専門分野に関しては誇り高いガミラス軍人たちから好意的に受け入れられていたからである。

 しかし、その地球の士官が一切口にしなかったので誰も知らなかったが、彼がガミラスとの戦いで婚約者と多くの同僚、教え子を失い、それでもガミラスを憎む気になれない自らの心理に疑問を抱きながら日々過ごしていることを、もしガミラスの武官たちが知ったらどんな事態になったろうか。
 だが、それは恐らく永遠の謎となるはずだった。話題の防衛軍の二佐、堀田真司はそんな自分の過去を話す気を一切持たず、ガミラス人とも分け隔てなく付き合っていたのだから。


 話は変わるが、堀田のみならず、地球防衛軍の艦隊士官たちにはある共通の危機感があった。

 「今のままでは、地球が再び焦土になる可能性も考えなくてはならない」

 これは特に、堀田の同期である高石範義、あるいはこの二人と互いに能力を高く評価している山南修という二人の宙将補を含め、堀田自身もまたその一人ではあったが、実際にガミラス大戦において艦隊戦を経験した士官たちが持っている傾向の強い感覚だった。
 確かにガミラスとの戦争は終わった。だが、そのガミラスと和平を結ぶ過程で、やむを得ない事情とはいえ今度はガトランティス帝国という敵を新たに作ることになってしまった。まだ敵の正確な情報が判明しない現状ではあったが、だからこそ彼らが太陽系、地球を標的に定めないという保証がなかったのである。

 堀田が自分の過去に触れずにいたのは、それ自体を思い出したくない、ガミラスという国家はいざ知らず、それに属する個々の人たちを恨んでも意味がないと考えていたこともあったが、自身が恨み言を口にして、それが原因で地球とガミラスとの関係を悪化させることを懸念した面もあった。そういう意味で堀田自身の言葉を借りれば「自分は生き残ったというだけで不相応に偉くなりすぎた」ということなのかもしれない。
 それに過去を悠長に振り返る余裕は、正直なところ今の堀田にはなかった。彼には自分が所属する組織である地球防衛軍に対して大きな懸念があり、それを解決するには自分の力ではどうすることもできない。だから、追放同然に閑職に回されることを甘んじて受け入れようとしている恩師を、無理やりにでも再び表舞台に押し出さなければならないという課題を抱えていたのである。


 ある日、堀田はその件について高石と二人きりで話をしていた。今でこそ階級は上の相手だが、同期ゆえの気楽さか、二人だけのときはいつも通り友人としての口調で会話をするのだった。

 「範さん、どうだろう。説得できそうだろうか?」
 「……難しいな、やはり沖田さんの約束を守りたいという気持ちが強すぎる」

 話題の人は、地球防衛軍の全艦隊を率いる提督であるべきと目されながらも、ヤマト艦長である沖田十三がイスカンダルの女王スターシャと結んだ『波動砲は二度と用いない』という約束を守るためにその人事を受け入れようとしない、堀田の士官学校時代からの恩師でもある土方竜だった。

 「土方さんの信念は、確かに誰であってもそう簡単に動かせるはずはない。それに、地球の恩人であるスターシャ女王との約束を尊重したいというのも、私はわかるつもりだが……」
 「真さん。俺もそう思わないでもないが、それで今の地球が守れると思うのか?」
 「……」

 堀田は返事ができなかった。

 ガミラス大戦において『波動機関』という強力な動力源を得た地球防衛軍は、大戦が終わるや否や、凄まじい勢いで軍備の拡張を行っていた。これには『二度とガミラス戦役の悲劇を繰り返してはならない』という官民共同の意識があったから誰も反対するものはなく、堀田個人としても、艦隊戦力を必要相応に準備することを否定する理由はない。問題はその内実だった。

 「防衛軍の首脳部は、波動砲という兵器に依存しすぎているのではないか?」

 堀田にはそんな疑問があった。地球防衛軍が波動砲搭載の主力戦艦である『D級(ドレッドノート級)戦艦』の量産に手を付けたのは最近のことだが、現在設計中の新型巡洋艦や、果ては駆逐艦にまで波動砲が搭載されることになっていたのである。

 士官学校の教官として艦隊戦術、特に宙雷科ゆえに機動戦の専門家たる堀田は、この状況に危惧を抱いていたのだ。これまでの戦訓の検討や戦術シミュレーションの結果、波動砲は威力こそ絶大だがエネルギー充填に時間を取られるなどして、決して柔軟な運用に向いた兵器とは判断できなかったからである。
 実際、堀田は駆逐艦への波動砲搭載には強く反対したし、その際に、または宙雷科の士官や学生にすら一部見られるようになった波動砲へと傾斜する人々に対して、

 「ガミラスは、波動砲がなくても強かったよ」

 などと、口癖のように言うことを余儀なくされていた。

 とはいえ、艦隊戦というシステムの中において、時に波動砲によって数的劣勢を覆すことが必要となる局面が存在することは、堀田も砲術の専門家である高石との交流で理解するところではあったから、必ずしも波動砲を全面的に否定するという考え方はしていなかった。スターシャとの『約束』も守りたいとは思うのだが、現状の地球防衛軍でそれが許されるのかと言えば、これまた甚だ心もとない現実があるのも承知していた。

 「もし防衛軍の首脳部がもっとバランスの良い艦隊を志向してくれるなら、土方さんの志を曲げさせる必要もないんだが……」
 「そうだな、だが難しいだろうな」

 高石が答える。もし土方が艦隊の総指揮官たることを辞退すれば、その座は恐らく山南に回ってくるだろうと予想されていた。だが山南、あるいは同じ宙将補である高石は能力は土方に劣るものではないが、やはり軍人として『格』という点で見劣ってしまう。これは当人らの責任ではないからどうしようもないのである。
 ゆえに、防衛軍の上層部と真っ向からやり合って、艦隊を率いる実戦担当の士官たちの意見を通すことは、誰が何をしても難しくなってしまう。そうなれば最悪、今後は波動砲を搭載した艦の数を増やせば十分、などという偏向した軍備がまかり通ることになりかねない。堀田や高石、そして立場上、公言こそしていなかったが山南もまた、そうした事態になることを懸念して土方に表舞台へと返り咲いてほしいと考えていたのである。

 しかし、当面はどうすることもできない。そんな結論にしかならず高石が去ったところで、それを待っていたかのように鳴り出した自分のデスクの電話を、堀田は手にした。
 だが、それは悲しい事実を知らせるものだった。会話を終えて受話器を置いた堀田は表情こそ変えなかったが、もしその場に誰かがいたら目に見えてわかるほど、明らかに肩を落としてしまっていた。


 それから数日後。堀田は士官学校教員の制服に喪章をつけた姿で、かつての教え子の葬儀へと足を運んでいた。

 (武田君……これからという時に、こんなことになってしまうとは)

 武田夕莉。堀田にとっては彼女の父に士官学校候補生時代に世話になり、自らが士官学校の教官になってからその娘を指導する立場になるという縁もあって、他の生徒と大きな差が出ない程度に『ほんの少しだけ目をかけてきた』生徒。そして、その堀田の指導に応えていつしかガミラス戦末期には艦列を並べて共に戦う『戦友』となった、有能で、どこか人を惹きつける魅力のあった若き女性士官。
 その彼女が『輸送船団護衛任務の際に、ガトランティスの攻撃により戦死した』との知らせてきたのが、ちょうど数日前の電話であった。

 武田が戦死した際の状況を伝手で耳にしたとき、堀田は激怒を禁じ得なかった。

 「旧式の戦艦だけで護衛部隊を編成するとは、司令部は何を考えているのか!」

 思わず大声でそう口にしていた。彼女たちの部隊は波動機関に換装されたとはいえ、もはや旧式で第一線の任務には不適当な金剛型宇宙戦艦が四隻だけ。しかも機動力を有する駆逐艦などの支援もないという、艦隊任務を担当する士官からすれば非常識に過ぎる状況だったのだ。これでも、護衛の二隻と輸送船団の全艦は帰還できたというのだが、それは堀田からすれば武田と、これまた自分にいささか縁のあった、このとき同時に戦死した品川幾二三佐の功績だったとしか言いようがなかった。
 本来なら品川の葬儀にも出席したかったが、子を授かったばかりで夫に死なれた彼の妻が「軍人なんてもう見たくない!」と取り乱してしまっていると聞いたので、遠慮したのである。

 儀式としての葬儀が一通り終わってから、人込みをかき分けて……これだけの人数が集まったのは明朗快活な武田の人柄が偲ばれると思う堀田だったが、葬儀のまとめ役を務めていた女性士官の元へと歩み寄った。
 やはり、というべきなのだが、その女性士官の顔には生気が全く見受けられなかった。

 「藤堂君……」
 「……」

 やっとの思いで堀田は声をかけたが、返事はなかった。

 「藤堂君、今度のことは……」
 「教官、何も仰らないでください」

 ようやく返ってきたのは、弱々しいがきっぱりとした拒絶の返事だった。

 藤堂早紀、防衛軍三佐。

 堀田にとっては、士官学校の教官時代に武田と同じようにその能力を評価し、また彼女が独自に研究していた『AIによって自動制御された艦隊』に関して、戦闘記録の提供や実戦士官として意見を述べるなどして協力した、かつての教え子の一人だった。

 だが、正直なところAIによる自動艦隊に関して堀田はさして興味はなく、彼女の研究に協力したのは、当時士官学校の校長だった土方から「彼女のような有能な士官を、むざむざ潰したくない」と告げられたこと。何より、彼女の母親が恐らくまともな死に方をしていないだろうと想像され、そのことが早紀にとって心の重荷になっていることが、ただ見ているだけでも明らかに感じ取れてしまっていたのである。だから自分だけでも、当時誰にも見向きされなかった彼女の研究にささやかながら手を貸そうと決めたのであった。

 もちろん、AI艦隊という未来の一つの可能性を広げるという面を考慮はしていたが、言ってしまえば『藤堂早紀という個人のために』その研究に付き合ったのである。これを堀田らしくない『ひいき』と言えばそうだったのかもしれないが、早紀とのこれまでの付き合いで、彼女が土方の言葉通り有能な士官であり、藤堂平九郎・現地球防衛軍統括司令長官の娘であるという事実を全く無視した上で、潰してしまうには惜しい人材だと承知してのことでもあった。
 そんな形で指導してきた彼女がここまで落ち込んでしまっているのは、堀田としても居たたまれなかった。武田は早紀の士官学校時代の後輩で数少ない友人であり、その関係は傍目からも姉妹のようなものだったのだから、こうなってしまうのはやむを得ないとわかっていてもである。

 「藤堂君、聞きたくないだろうが言わせてもらうよ」

 心を鬼にして、堀田は口を開いた。

 「どういう状況でこんなことになったかは、およそは知っている。あえて言う。君の指揮に問題があったからではない。指揮官に何のミスがなかったとしても、人が死んでいく。それが戦場だ」
 「……」
 「だから、君らを生かすために犠牲になった人たちに報いたいと思うなら、これからも自分の役割を全うすることだよ。今すぐには無理でも、君がいつか立ち直ってくれると信じる。私はそれを待っているよ」
 「……」

 これが、単に教官任務しか経験のない士官の言葉だったら戯言だろう。だが、堀田はガミラス大戦において『カ二号作戦』を初陣とし、その後も太陽系内でのガミラスとの戦闘を戦い抜いた歴戦の将校でもある。その言葉は、恐らく今の防衛軍の同年代の士官に比べればよほど重かったろう。
 だが、早紀は表情を曇らせたまま、黙って堀田の言葉を聞いているだけだった。

 (これ以上は、追い詰めるだけにしかならないか……)

 堀田はそう判断して、敬礼してその場を去った。早紀とはその後しばらく会う機会がなくなり、次に再会したときには驚くべき事態になっていたのだが、もちろんそんなことをこの時点で想像するなど不可能であった。


 「堀田さん、早紀が失礼しました」

 早紀の前を去り、式場を後にしようとしたその時、堀田は耳慣れた声に呼び止められた。

 「……永峰君か。不謹慎な言い様で申し訳ないが、君や藤堂君だけでも生きて戻ってきてくれたのは、正直よかった」
 「いえ、俺もあの時は何もできませんでした。悔しいです」

 永峰祐樹一尉。先の作戦で早紀が座乗していた戦艦『明星』の副長で、彼女とは士官学校時代の同期生である。戦術科の士官だから堀田の教え子の一人であるし、かつてガミラス大戦時の日本艦隊旗艦『キリシマ』において砲雷長と砲術士官という関係でもあった、縁のある相手である。

 「少し、お時間をいただけますか?」

 永峰の問いに、堀田は「構わないよ」と答え、式場から少し離れた人気のない場所へと足を運んだ。

 「早紀のことですが……教官は大丈夫と思われますか?」

 やはりそのことかと、堀田は思った。

 「初の実戦で妹同然の後輩を失った。いくら軍人だとはいえ、心理的に焼き切れたとしても批判することはできないよ。私が教えていた頃から……いや、恐らくそれよりずっと以前から、張り詰めた気持ちで生きてきたとしか思えないから」
 「教官もそう思われますか……」
 「藤堂君を見ていると、嫌でもわかってしまうことだよ。そして、よりにもよって統括長官の娘ということで、政治的に利用しようと群がる人間もいるだろう。その中でよく理性を保っていると、正直なところ褒めてあげたいくらいさ」
 「……」

 永峰が黙ってしまうあたり、状況が自分の想像以上に深刻だと堀田は理解するしかなかった。永峰ほど早紀と付き合いが長く、その性格をよく知る同僚を堀田は知らない。その彼が明らかに「自分にはお手上げだ」という顔をしているのである。

 「教官、お願いがあります」

 そう切り出した永峰の顔が、引きつっているように思えた。

 「あいつに……早紀にこれから何があっても、教官は早紀の味方でいてあげてもらえませんか? あいつが士官学校でやってこれたのも、教官が誰も見向きしてくれなかった早紀の研究に協力してくれたからです。だから」
 「永峰君」

 静かな、堀田の声だった。

 「別に藤堂君に限ったことではないと断っておくが、私は教え子に閉ざす扉を持ち合わせてはいないつもりだ。今は職場も違うし何もできることはないだろうが、何かあれば堀田真司という個人は決して悪いようにはしない。それだけは約束させてもらう」
 「……その言葉を聞けただけで、少なくとも俺には十分です。ありがとうございました」

 少しだけほっとしたような表情を見せた永峰に、こちらは表情を消したままだったが堀田もやや安心したのだった。
 時間を取らせて申し訳ありません、と告げて去った永峰の背中を見送りながら、堀田はしかし考え込んでいた。

 (所詮、防衛軍全体としては一士官の死など、小さい出来事だろう。だが、今度のことは避けられた事態ではなかったのか。それはよく考えるべきだが、そうしたことができる人間が、今の防衛軍の上層部に果たしてどれだけいるものか……)

 そこが心もとないだけに、堀田は自分の無力さもまた痛感していたのである。

 (やはり、あの人に戻ってきてもらうしかないのか)

 これまでは、正直なところ嫌がっている人間に強要するのも気が引けて、堀田は土方に本腰を入れて「防衛軍の全艦隊を率いてください」と言ってこなかったように思う。しかし、こうして自分の縁ある人々が死に、そして苦しんでいる姿を見て、自らの甘さというものを改めて思い知らされたような気がした。

 「本気でやってみよう。こうなれば、土方さんと刺し違えるくらいの覚悟をしてだ」

 古流剣術の心得がある堀田はこのとき、そう心に決めたのだった。

自分の記事としてはお久しぶりです。地球防衛軍艦艇史も「とある士官と戦艦と地球防衛軍」も止まった状態で「新作?」と思われるかと存じますが、この両方に関わりのあるお話になります(その意味では、厳密には「新作」とは言えないかもしれません)。

題名は「とある士官と戦艦と地球防衛軍 2202」となります。

現在、このシリーズはガミラス戦役の部分で話が止まっていますが、ガミラス戦役の地球関連は原作にヤマト以外のシーンの描写がないためほぼ一からの創作になり、難易度が高くなっていること。また、話の後半に大規模な(といってもガトランティス戦ほどではないですが)艦隊戦を挿入した結果、それに関連して他の方とあるプロジェクトを進めることが決まったため、文章で表現する設定を超えたものを準備する必要も生じました。このため腰を据えてかからないとならず、現状申し訳ないのですが手に負えなくなっています。

そのため、このたびヤマト2202が完結し、それでガトランティス戦役を私なりにどういった方向で創作するか大よそ決まった(これに関しては後述します)ので、とりあえず取り掛かれるこの作品を書くことにしました。これは私が旧作で特に2を好んでいるという理由もあります。

気分屋で申し訳ないのですが、しがない二次創作者ということで、ご容赦頂ければ幸いに存じます。なお、第一話は土曜夜に公開予定ですので、あまり期待せずに、それでも楽しみだと思ってくださる方はお待ちいただければありがたく思います。

なお余談ですが、題名が「2202」なのに、第一話は2201年から始まる予定です。いきなりおかしいではないかと思われるでしょうが、見逃していただければと(笑)


一部独自設定の説明

簡単に「とある士官と戦艦と地球防衛軍 2202」の基礎設定というか、ある種の「前提」についてお話させていただきます。これがないと何でこんな描写になるかわからない、それどころか急にどうしてこんな話に?ということにもなりかねませんので、この説明を設けます。「それでもわからない」ということが万一ありましたら、コメントかツイッターにて質問を頂ければと思います。

・ベースは「旧作2」とし、そこに「2202」の要素を加える

これは「筆者は基本は艦艇マニアである」「人間ドラマに関しては2202以上のものは書けそうもない」というのが理由です。旧作2はヤマトシリーズにしては珍しく、比較的艦隊戦(土星会戦)が戦前の駆け引きから詳しい(ヤマト以外の)戦闘の描写があることから、これを膨らませてみるのが面白いと判断したこともあります。筆者のツイッターを読んでいただいている方には、前から「この方向でいきたい」とツイートしていますので、今更という感はあるかと思いますが一応お話しておきます。

・筆者の脳内設定と他の方の二次創作の設定は有効に利用する

「とある士官と戦艦と地球防衛軍」のガミラス戦の部分については、書ける状態ではありませんが筆者の頭の中にはどんな流れになるかおよそ固まっています。そのため作中ではこの頭の中の設定を(多少ぼかして)使うことが多々ありますので、主人公を始めとしてキャラたちが「こういうことをガミラス戦ではしていたんだな…」と想像して読んでいただければと思います。現状、筆者としましてはこの部分で致命的な破綻は生じないだろうと考えております。

また、ツイッターのDMにおいて筆者が参加しているヤマト二次創作の集まりでは、アイディアを出し合って様々な創作が行われ、私もいささか感想やご意見など差し上げたりもしています。
そんなこともあり、他の方が作られた二次創作の設定のうち(もちろん作者様のご許可はいただきます)、使える部分は使わせていただくことにしたいと思います。また、作中にてどの方のどの作品を参考にさせて頂いたかは、その都度後書きなどで明記させていただきます。

他に現状、少し細かいことで決まっていることを列記すると、

・本作の世界には時間断層が存在しません。そのため艦艇数は概ね「さらば」「2」準拠となります
・ガミラス戦役とその後の設定は「2199」「2202」のものを用います。そのため地球はガミラスと共にガトランティスと戦争中です
・本格的な戦役勃発前に、アンドロメダ級の量産は行われません。これは拙作の地球防衛軍艦艇史「アンドロメダ その1」に準じます(空母型が出てくるかはかなり怪しいです)。また、アンドロメダと主力戦艦(D級前衛戦列艦)のサイズを独自設定に変更しています。ヤマトのサイズに関しては2199設定の333mです
・重力子スプレッドですが、万能すぎるので創作では扱い切れない(本作の後で対戦するはずの敵に対しても有効性が高すぎる)ため、省略します。のみならず他の一部兵器も2202の設定を「なかったことにする」場合がありますが、ご了承ください

今のところはこんなところかと思います。このあたりの設定は動かすと作品全体を練り直すことになりかねませんので、動かし難くなりそうですが他の決まってないことに関しては様々な可能性を探りながら創作していこうと考えています

地球防衛艦隊再編計画

ガトランティス戦役後、地球に何よりも求められたのは、同戦役で失った戦力の補充であった。何しろ主戦力をほぼ全て失い、更にはそれらを指揮する優秀な人材も同時に失っていた為、戦力再編は正に苦難の道であった。艦艇数の絶対的な不足、慢性的な人員不足、ガミラス戦役よりこの二つの問題に散々悩まされて来た地球防衛軍が出した解決策とは、徹底的な人員削減、及びそれを補う為の機械化であった。

機械化を推し進める為の第一段階として、まずはガトランティ戦役時に実験的に建造した無人艦の増産と配備促進をより推し進めていった。
上記のように、ガトランティス戦役時にも無人艦は一定数配備されていた。しかしそれは既存のアンドロメダ級やドレットノート級の艦体を流用した暫定的な物にすぎず、またプログラムの未発達により運用には有人艦の引率が不可欠で、更に肝心の戦闘能力も有人艦よりは大きく劣るものであった。

そこで地球防衛軍上層部は、有人艦を無人艦に改造するよりも始めから無人艦として建造してしまった方がより性能の良い艦を建造できると判断し、直ちに艦政本部に設計を指示した。これが後に地球防衛軍の艦船史に大きく名前を残すこととなる、エクスカリバー級自動超弩級戦艦となるのであった。

しかし、ここに来て大きな問題が一つ立ちはだかった。エクスカリバー級の全長は三百メートルを超える。勿論それだけ巨大な艦体なのだから、当然設計では自律型の指揮装置が搭載され、艦を人間が一切関わることなく動かすことが可能になるとされていた。だが、自律型指揮装置のプログラム開発チームは「この艦が完全に自動で動けるようなプログラムを製作するには、最低でも十年はかかる。」と断言した。これは非常に大きな問題であった。いくら外側が完成していても、肝心の艦を動かすプログラムが完成しないのであれば“また”有人艦に引率してもらう必要が生じるからであった。

「有人艦に引率されるのに変わりがないのであれば、結局は従来の有人艦に合わせた運用しかできなくなってしまう。それならば、従来艦を改造した無人艦で十分なのでは?」無人兵器反対派はそう言って攻勢を強めた。彼らも無人兵器の必要性は十分承知していたが、かといってこれ以上配備を推し進める必要はないと感じていたのである。
これに対し推進派は「では“無人艦の全能力を引き出せるような有人艦”を新たに建造すれば良い。」と考え、艦政本部に開発を指示した。これが後に地球防衛軍の中で最大級の戦艦を生み出すきっかけとなったのであるが、この時点ではまだ誰もがそのようなことは予見していなかった。


飛躍する要求、拡大する性能

当初艦政本部は「エクスカリバー級の有人艦仕様を建造し、それに無人艦の指揮統制装置を搭載すれば良い。」として、エクスカリバー級の有人艦仕様の建造を上層部に提案した。上層部はこの提案を承認し、運用側もアンドロメダ級と同等の砲戦能力を持つエクスカリバー級には大きな期待を寄せていたのでこの決定を支持した。
しかし、それはしばらくして無理があると判明した。エクスカリバー級の有人艦仕様自体は技術的には十分に可能であった。問題は「いかにして無人艦の指揮統制装置を搭載するか?」であった。というのもエクスカリバー級クラスの大型戦艦を複数統制できる指揮統制装置の大きさは、そのエクスカリバー級にすら収まりきらないほど巨大だったのである(実際、この指揮統制装置の多くは艦船ではなく地上に配備されている。)

そして、この指揮統制装置を搭載してなおかつ無人艦の高機動に随伴できるような艦を設計した場合、必要不可欠であると言われた艦の全長は五百メートル、地球防衛軍最大の戦艦であるアンドロメダ級を二回りほど上回る巨大な艦であった。その為運用側から「これなら鹵獲したカラクルム級にこの指揮統制装置を載せた方が早いのではないか?」と言われる始末であった。地球の技術力の限界を見た艦政本部はエクスカリバー級の有人艦仕様を指揮統制艦にする計画を破棄、同時に巨大な指揮統制装置を搭載する為新規設計で新たな艦を建造することを決定した。

設計の基礎となるのは、ガトランティス戦役時に計画されたものの結局建造されることはなかった“A-260型戦略指揮戦艦”と呼ばれる艦であった。これはアンドロメダ級の拡大発展版と言えるような艦で、戦時中に計画された艦ということもあってか徹底的な簡略化がなされていた。艦体や主砲はアンドロメダ級の流用であり、単純にアンドロメダ級の指揮統制能力や総合戦闘能力を強化したような艦であった。設計案はA案からT案までの二十種類、中には全ての主砲を艦首側に集中したN案や、実弾の装填機構を廃止した砲塔を十基も搭載するM案、更には波動実験艦銀河の艦橋を流用し探査型としたK案など、純粋に戦闘能力を強化した艦から本来の目的を外れたような設計の艦まで、実に多種多様であった。

しかし、単純に昔の設計図通りに作ればよいというわけではなかった。元よりアンドロメダ級の艦体では新型の指揮統制装置を搭載することは不可能だと判明しており(アンドロメダ級にも指揮統制装置が搭載されたことはあったが、それは大戦中に無理やり搭載された一時的なものであり、今問題となっている新型指揮統制装置とは直接統制可能な艦艇数だけでも四倍の差があった)どうしても艦体は新規で建造するしかなかったからである。

そしてその新型指揮統制装置を搭載するにあたって、全長は五百メートル、重量は三十万トンと定められた。そして武装については、当初は戦闘を随伴の無人艦に任せれば良いと思われていたので、最低限度の自衛兵装以外は搭載しないこととなっていた。しかしここで連邦政府が「これだけ巨大な艦なのに、何故武装がほとんど付いていないのか?君達は巨額の国家予算を投入して、地球一高価な標的艦を作るつもりなのか?」と追及して来た。この追及は一部の運用側からも寄せられていた。そこで艦政本部はこの追及を回避する為、武装の大幅な強化を行った。主砲の口径拡大及び門数の増加、波動砲の装備、更には艦載機運用能力の付与まで行われた。そして艦政本部は「この艦をアンドロメダに代わる新たな地球防衛軍の象徴としてしまおう。」と提案した。地球防衛軍上層部や連邦政府も、再建された地球艦隊の象徴的な艦は欲しかったので、この提案に乗っかった。

こうして建造は始まった。建造自体は月面基地の工廠で行われ、資材は第十一番惑星や土星などに浮遊しているガトランティス艦を解体したものを流用した。建造は2203年から始まり、約2年をかけて完成まで持ち込むことが出来た。(経験したことのない大型艦であるにもかかわらず建造期間が異様に短い理由については、本艦が新規設計とはいえアンドロメダ級より多くの物を流用できたこと、ガトランティス軍の残党撃滅と地球復興の為戦時生産体制を維持し続けていたこと、ガミラス製高性能作業機械の大量導入などがあげられる)そして紆余曲折を経た末に完成した艦は、これまで地球が全く保有したこともないような大型艦となった。


アンドロメダ改級超弩級戦略指揮戦艦 春蘭(しゅんらん) 諸元

全長:508メートル
艦体重量:33.4万トン
機関:
兵装:四式次元波動爆縮放射器(クラスター型波動砲)3基3門
二式51サンチ4連装収束圧縮型陽電子衝撃砲 6基24門
   一式41サンチ3連装収束圧縮型陽電子衝撃砲 3基9門
   二式大型対艦砲(艦橋砲) 1基6門
重力子スプレッド発射機 連装4基8門
   零式4連装対艦グレネード投射機 2基8門
   二式速射魚雷発射管 単装4基4門
   一式亜空間魚雷発射管 連装4基8門
   一式多連装ミサイル発射管 16門
   九八式二型短魚雷発射管 16門
   九九式二型垂直軸ミサイル発射管 単装10基10門
搭載機:各種空間艦上戦闘攻撃機 48機
    各種汎用輸送機 8機
    各種救命艇 4機


これらの性能表から読み取れることとして、まず圧倒的な砲撃力があげられる。主砲の51サンチ砲の砲門数は24門、これはアンドロメダ級の二倍の数であり、単純計算で春蘭はアンドロメダ級の二倍の砲戦能力を持っていることとなる。更に、これらに加えて9門の41サンチ砲も装備されていることから、総合的な砲戦能力は二倍以上であろう。
なお主砲として51サンチ砲が搭載されている理由は、単に新しい砲を開発する時間が無かったこと、弾薬の共通化、エクスカリバー級やアンドロメダ級と統制砲撃戦を行う為、などとされている。

次に宙雷兵装であるが、これはアンドロメダ級と大差がないどころかむしろ減らされている。というのも、巨大な指揮統制装置や合計9基もの陽電子衝撃砲、更に後述の艦載機の搭載区画まで設置するとなると、いかに春蘭の巨大な艦体といえども目一杯であり、そのしわ寄せとして宙雷兵装が減らされたといういきさつがあった。
そして春蘭の航空設備であるが、これにもかなりのスペースが割かれた。随伴予定のエクスカリバー級には航空機の運用能力がほぼ無かった(エクスカリバー級を改造した航空母艦の計画もあったが、無人艦載機の調達数削減の影響に伴って開発が中止されていた。)ことが理由である。その為春蘭には、合計で60機もの艦載機が搭載可能であった。

搭載可能な航空機であるが、基本的には地球防衛軍が保有している全ての艦上機を運用可能であった。主力となる戦闘攻撃機は、九九式空間艦上戦闘攻撃機“コスモファルコン”や零式空間艦上戦闘機“コスモゼロ”に一式空間艦上戦闘攻撃機“コスモタイガーⅡ”、更には四式自律型空間艦上戦闘攻撃機“コスモライトニング”も運用可能であった。(後の近代化改修で一八式空間艦上戦闘攻撃機“コスモパルサー”の運用能力も付与されている)そして輸送機は、九七式空間汎用輸送機“コスモシーガル”や後継機の五式空間汎用輸送機“コスモハウンド”も運用可能であった。(ただしコスモハウンドは機体サイズの関係上、搭載可能機数が4機のみな上に艦首エレベーターでの運用は不可能である)

なお肝心の無人艦の指揮統制能力であるが、最新鋭の五式指揮統制装置を搭載した為、同時管制可能艦数はアンドロメダ級の4隻をはるかに上回る16隻となっている。これは勿論防衛軍艦艇の中では最大数であった。更にエクスカリバー級の両舷にウェポン級を外付けしたブースター運用を行うことで、運用方法は限定されるが同時管制可能艦数を48隻に増やすことも勿論可能であった。(余談であるが、ブースター運用とはガトランティス戦役時に指揮統制装置の能力不足に悩まされた防衛軍が、同時管制可能艦数を可能な限り増やす為に実施した苦肉の策ともいえるべき代物である。戦艦クラスの無人艦の両舷に駆逐艦クラスの無人艦を重力アンカーにて接続することによって、泥縄式ではあるが同時管制可能艦数を3倍に増やすことが可能となった。今では無人艦の標準的な運用方法として定着している)
春蘭とその同型艦

アンドロメダ改級改め春蘭型超弩級戦略指揮戦艦には、当初は合計で6隻もの建造計画があった。そして半数の3隻が実際に竣工したものの、全く同じ形状の艦がいないという稀有な艦でもある。以下は春蘭とその同型艦が、どのような姿で生まれ、そしてどのような末路をたどったかの記述である。


春蘭型超弩級戦略指揮戦艦 同型艦一覧

一番艦:春蘭(しゅんらん)
二番艦:リヴァイアサン(Leviathan)
三番艦:ヴォルケンクラッツァー(Wolkenkratzer)
四番艦:未竣工(仮称あまてらす)
五番艦:未竣工(仮称インビンシブル)
六番艦:未竣工(仮称あらはばき)

一番艦:春蘭

その名の通り春蘭型のネームシップであり、そして唯一純粋な戦艦型として建造された艦である。西暦2205年に竣工して以来、デザリアム戦役を初陣にさまざまな戦闘に参加している。西暦2220年、第二次移民船団を護衛中にSUS連合軍の攻撃を受け戦没。

二番艦:リヴァイアサン

春蘭型の二番艦、建造途中に暗黒星団帝国軍の攻撃を受け、艦体後部が大きく破損する。それをきっかけに航空戦艦に改装される。その為後部主砲2基を撤去し、空いたスペースに格納庫と飛行甲板を増設した航空戦艦として竣工した。なおこの改造によってリヴァイアサンは、実に120機(6個飛行隊108機+予備機12機)を搭載可能となった。これは後継艦のブルーノアが就役するまで防衛軍艦艇の中では最大の搭載数であった。西暦2207年に竣工、直後に発生したディンギル戦役においてはその広大な搭載数を生かして大量の避難民を輸送する。その後2220年には第二次移民船団護衛艦隊に参加、同船団護衛戦にて戦没する。

三番艦:ヴォルケンクラッツァー

この艦は建造中に暗黒星団帝国、そしてディンギル帝国の攻撃に計二回晒され、その結果艦体は大きく損傷した。一時は廃艦処分も検討されたが、旧式化した波動実験艦銀河の後継艦としてこの艦を波動実験艦に改造することとなる。改造には建造中止となった四番艦アマテラスの資材も流用され、西暦2212年に竣工する。西暦2220年、銀河中心部にて突如発生した移動型ブラックホールの調査の為、銀河中心部へと派遣されるも一か月後に消息を絶つ。

*各艦の詳細なエピソードについては次巻の“運用・戦歴編”を参考にされたし。


春蘭、竣工

紆余曲折はあったものの、春蘭は遂に西暦2205年3月2日に竣工した。竣工と同時に春蘭は直ちに地球防衛軍第七艦隊へと配備され、初代艦長には第七艦隊司令官も兼任している山南修宙将が就任した。そして春蘭を旗艦に据えた第七艦隊は、シリウス星系にて演習を行う為慌ただしく月面基地を出港していった。最後に春蘭就役時に地球連邦大統領が述べた演説から一部を抜粋し、この文章を終わらせたいと思う。

「五年前のガミラス戦役、そして二年前のガトランティス戦役、この数年の間に、人類はこれまでに経験したことが無い大規模な戦争を二回も経験してきました。この戦争で、親しい人を無くされた方も多いでしょう。しかし、人類は幾度となく滅亡の危機に晒されようとも、その度に這い上がって来ました。ご覧ください。今地球は再び蘇り、そして新たな力を手に入れました。皆様の、そして地球と宇宙に平和と安寧をもたらす新しい力です。私はここに、地球連邦政府を代表して宣誓します。もう二度と、皆さまを戦争の惨禍に巻き込まないことを。もう二度と、親しい人、愛する人を失う恐怖を味あわせないことを。」


次巻“運用・戦歴編”へ続く

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