(筆者注 本作はpixivに投稿した、原作版宇宙戦艦ヤマトおよびPS2ゲーム版までを考慮して書かれたもので、リメイク版の要素を含んでいません。後者を含んだものが現在継続中のD級戦艦の文章となりますので、こちらはあくまで「旧作の『主力戦艦』について書かれたもの」としてお読みいただければと思います)

地球防衛軍の戦艦計画

 イスカンダルより波動機関およびそれに関連する技術がもたらされて以降、地球防衛軍の軍備計画に「戦艦」の文字が最初に登場したのは、ガミラス戦役の末期にあたる2200年の初頭とされる。
 (なお、ヤマトは「人類脱出に用いる特務艦」として計画、建造されたため、軍備計画で「戦艦」として扱われるようになったのはガミラス戦役終結後である)

 この時期の防衛軍は、

・地球本土およびその周辺の制宙権を死守する
・ヤマトの帰路を確保するため、太陽系内のガミラス戦力を漸減ないし撃滅する

 といった任務を果たすための戦力整備を目標にしていたが、この時期における生産力の低下と希少金属の不足は深刻で、この目的に沿って艦艇を建造し艦隊を編成することは、例え最小限のそれに絞ったとしても極めて困難であると考えられた。
 ただ幸いなことに、対ガミラス艦用の兵器として開発された九九式46cm衝撃波砲(ヤマトの主砲)の威力が期待以上であり、同時に小口径衝撃波砲(試製零式15.5cm衝撃波砲。ヤマトに副砲として装備)も一応は実用の目処が立っていたから、波動機関を生産するための希少金属を確保することができれば、多数の艦艇を建造することなく地球周辺の制宙権維持に必要な戦力は揃えられるのではないか、という見通しもあった。

 2199年末、防衛軍は鹵獲したガミラス・デストロイヤーの機関を転用して建造したA型駆逐艦による物資輸送作戦、いわゆる「タイタン急行」を敢行し、波動機関製造に必要なコスモナイトなどの希少金属を一定量確保することに成功した。
 これにより、少数ながら波動機関搭載艦によって構成された艦隊を整備することが可能になったのだが、このとき艦隊側は防衛軍の兵器局に対して「九九式46cm衝撃波砲を搭載した超大型戦艦の建造」に関する要望を出しており、これが最初に記述した「防衛軍の軍備計画における初の戦艦」にあたる。

 この要望における「超大型戦艦」とは、詳細は不明だがヤマトより若干縮小されたものと考えられている。そして、その想定されていた任務の第一は「ガミラス超弩級戦艦の駆逐、あるいは撃破」であった。

 ガミラスの超弩級戦艦とは、現在の地球では「シュルツ艦」という通称で知られているガミラス軍の旗艦型戦艦を指しているのだが、地球防衛軍は過去に数度この艦と対戦した経験があり、最初の交戦時には当時防衛軍きっての精鋭と言われていた北米第三艦隊をこの一艦のためにほぼ壊滅させられるという惨敗を喫していた。
 そのため、地球本土の防衛、および太陽系内の制宙権回復にはこの敵戦艦が極めて脅威になると考えられており、防衛軍はそれに対抗可能な戦艦を必要としていたのである。

 この戦艦、特に仕様において最も重要なのは「九九式46cm衝撃波砲を搭載し、敵戦艦に対抗可能な攻防性能を有する艦が要望された」ことであり、建造期間短縮と資材節約の観点から波動砲の搭載が全く考慮されていなかった事実は注目に値する。
 ところが、艦隊側が要望した戦艦建造は生産力と希少金属の不足が解決されず、兵器局から「全く不可能である」と回答されてしまっている。実際、ガミラス戦役終結時までに「レコンキスタ」と呼ばれる太陽系宙域回復作戦に使用できる戦力として整備できた艦艇は、A型巡洋艦1隻とA型駆逐艦8隻に過ぎなかった。この結果を踏まえると、戦艦の建造が当時の状況では無理があったのは致し方なかったと言えるだろう。

 地球にとって幸運なことに、ガミラス冥王星基地に配備されていた超弩級戦艦は1隻のみで、それは10番小惑星帯におけるヤマトとの交戦で撃沈されていたから、巡洋艦と駆逐艦で構成された防衛軍艦隊は「レコンキスタ」において敵戦艦と交戦する機会がなく、作戦は無事に成功している。


 ガミラス戦役終結後、地球連邦の成立に伴って地球防衛軍の組織は大きく様変わりし、その中に艦艇の設計、建造および各種審査を行う部局として新たに「艦政本部」が設けられた。

 組織化直後の艦政本部は、まず既存のA型巡洋艦とA型駆逐艦の整備と改良に忙殺されることになり、新規の戦艦計画には手をつけていなかった。これは当時、艦隊戦力を構成できると判断された波動機関搭載艦が極めて少数だったため、まずは短期間に量産が可能な巡洋艦や駆逐艦を一定数揃えることが優先されたからである。
 それでもガミラス戦役における戦訓から、巡洋艦や駆逐艦が搭載する中小口径の衝撃波砲は威力に限界があること、巡洋艦に設置可能な規模の司令部施設では指揮下の艦艇を統制する能力が不足するのも明白だったから、いずれは艦隊の中核を成す戦列艦として、また巡洋艦以下の艦艇で編成された艦隊を指揮するための戦艦が必要であるとの認識は、艦隊側も参謀本部も等しく有していた。

 そうしたことから、防衛軍は改めて艦政本部に戦艦試案の検討を下命したが、この時点で防衛軍が想定していた「戦艦」の任務は以下のようなものであった。

・大口径衝撃波砲と強固な装甲を有することで艦隊戦列の中核を成し、特に敵の重装甲艦に対抗する
・数十隻単位の艦艇で編成された艦隊を指揮統率する旗艦として用いる
・波動砲を搭載し、必要に応じてその大なる火力を発揮し戦況を優位足らしめる

 ここで始めて、新たに一定数の建造が計画されることになった戦艦にも、ヤマトと同じく波動砲の搭載が求められている。
 しかし、当時はまだ九九式タキオン波動集束砲(ヤマト搭載の波動砲)を艦隊戦においてどう運用するか確固たる方針が存在しておらず、そもそも当時はガミラス戦役でのヤマトの戦訓から対艦戦闘に波動砲は不向きとの見方が強かったため、その搭載はあくまで「戦況によって使用する機会が生じる可能性を考慮する」という要素が濃いものとなっていた。
 つまり、この時点の「戦艦」に求められた任務の第一義は、大口径衝撃波砲の威力を発揮して敵の重装甲艦、すなわち戦艦を撃破することであった。そのため、新規設計の戦艦はこれを優先した艦として検討が開始されている。

 当時の艦政本部が設計した戦艦試案のいくつかが残っており、中でもこの頃量産が開始されたA2型巡洋艦を拡大して九九式46cm衝撃波砲8門、九九式タキオン波動集束砲1門を搭載した設計案は性能やコストのバランスもよく、参謀本部も一時期真剣に採用を考えた節がある。

 そうした既定の方針が大きく変化したのは、防衛軍の技術本部によってある兵器の実用化に目処が立ったことによるものであった。


拡散波動砲搭載の新戦艦構想

 新戦艦の検討作業が続いていたこの時期、それとほぼ並行して技術本部による「艦隊戦に威力を発揮し得る新型波動砲」の試作が進んでいた。

 この新型波動砲はガミラス戦役におけるヤマトの戦訓から、集束型波動砲は着弾地点付近への威力は極めて大きいものの、その影響が広範囲に及ばないことから分散している艦隊には効果が低いと判断されたことで開発が決まったものだった。事実、高速襲撃を得意としたガミラス艦隊に対して、ヤマトは波動砲を発射する機会に恵まれていなかった。

 地球防衛軍にとって最大の任務は、太陽系に侵攻してくる侵略者を地球より可能な限り遠い地点で迎撃、これを撃滅することである。しかもガミラス戦役の戦訓から、敵艦隊と対峙する防衛艦隊は数的、あるいは実効戦力において劣勢を強いられる可能性が高いと考えられており、それを跳ね返す兵器として防衛軍、特に参謀本部は波動砲に大きな期待をかけていた。そのため、対艦戦闘には不向きと判断された波動砲を艦隊戦に適応させるべく改良を行うことにしたのである。
 詳しい開発経緯については本題から外れるので省くが、ちょうど巡洋艦拡大の戦艦試案が提出された時期と前後して、この新型波動砲、すなわち「拡散波動砲」の実験が技術本部によって行われ成功したことから、今後新造される艦艇に拡散波動砲を搭載することが構想された。

 だが、この拡散波動砲はある技術的な問題を抱えていた。それは、この波動砲を搭載する艦には広範囲の目標を確実に破壊できるエネルギーを確保するため、またその拡散を効率よく行うため、波動エネルギー増幅装置と集束型波動砲より大口径の砲身が必要とされていたのである。
 (ちなみに、増幅装置と大口径砲身を使用しない拡散波動砲は試験の結果「九九式タキオン波動集束砲に比して威力の低下が著しく、有効範囲も不十分」と判定されている)
 巡洋艦拡大の戦艦試案は、ヤマトと同じ九九式タキオン波動集束砲の搭載を前提に設計されていた。そのため艦政本部は拡散波動砲搭載のための再設計を施そうとしたが、巡洋艦と同じ紡錘型船体を拡大した構造を持つこの試案では、装備が必要な増幅装置と大口径砲身を艦内部に収めることが不可能であった。

 船体規模が大きいはずの新戦艦に拡散波動砲が搭載できない以上、もちろん巡洋艦以下の艦艇に装備するのも無理である。艦隊戦力の数的不利を拡散波動砲の威力によって埋めるつもりでいた参謀本部としてはこの事態を放置しておくわけにはいかず、そのため新戦艦とは別に「波動砲艦」と呼称すべき、拡散波動砲の使用に特化した艦を建造することも検討されている。
 だが、艦隊側から「用途を波動砲の発射のみに限定した場合、波動砲が使用不能となった状況において戦闘力を完全に喪失することになり、戦力として期待できない」との意見が出されたため、この案は具体的な設計作業に入ることなく立ち消えとなった。

 以上の経緯から、巡洋艦拡大の新戦艦案は不採用となり、完成した拡散波動砲こと「一式タキオン波動拡散砲」の搭載を前提とした新戦艦の設計が、再び艦政本部に下命されることになったのである。