新戦艦の設計と試作

 増幅装置を含む拡散波動砲関連の機材、および大口径の波動砲身を搭載することが要求されたため、艦政本部は艦の前半部をヤマトに類似した箱型とし、それに直径の大きい円筒形の構造を持つ後半部を組み合わせた船体を新戦艦に採用した。これでは紡錘型船型と比較して建造の手間が増すことは避けられなかったが、極力規模を小さくしつつも内部の容積を増加させ、求められた機材を搭載するためには必要と判断されたのだ。
 ただ、様々な特殊任務を前提として建造されたヤマトほどの船体強度は求められなかったから、建造期間短縮のため駆逐艦、巡洋艦の量産によって培われたブロック建造方式の活用や各部のモジュール化が最大限行われている。

 装甲防御に関しては、当初参謀本部は拡散波動砲の発射ユニットとしてこの戦艦を見ていたため近接して敵艦と交戦する機会は少ないと判断し、建造費と工期を圧縮するため必要最小限の防御に止めるつもりだった。しかし艦隊側から「それでは波動砲発射に用途を限定するしかなく、戦艦としての任務を遂行することが不可能になる」と猛反発され、設計当事者たる艦政本部も難色を示した事から、通常兵器を用いた対艦戦闘において必要とされる防御力を付与することが決定されている。
 ただ、工期短縮および費用縮減の観点から船体の軽量化は重要とされたため、防御配置はヤマトを参考にしつつ一部変更が加えられ、装甲鈑には製造が容易かつ軽量な新素材を多用、ガミラス戦役時の戦訓からヤマトで過剰と判断された部分の装甲については装甲厚の削減が実施されている。
 これらの処置によって戦艦としての防御力が低下したと指摘する資料も散見されるが、防御配置の変更と新素材の多用は直接防御の強化にも寄与しており、完成時のヤマトでは不十分とされた光学系装甲の大幅な見直しも行われていたため、後に使用した艦隊側は本型の防御力について「概ね十分である」と評価している。

 波動砲以外の兵装であるが、参謀本部から新戦艦の主要任務として「拡散波動砲の使用により遠距離の敵艦隊を撃滅する」ことが追加されたため、設計開始後の早い段階で新型の一式40cm衝撃波砲(正確な砲口直径は40.6cm)の搭載が決定、これを三連装砲塔に収めて3基装備することになった。この砲は既存の波動砲より射程距離が向上した一式タキオン波動拡散砲に対応した衝撃波砲で、ヤマトが装備した九九式46cm砲に比して大幅な射程延伸を実現していたものである。
 本型用に新たに設計された三連装砲塔は大仰角が取れるようになっており、発射速度および砲塔の旋回速度に関しても性能向上が図られた。それに伴ってヤマトには搭載された砲塔型副砲が廃止されているが、これは主砲で軽艦艇にも対応できると判断されたことと、甲板上の構造物を削減して重量や占有面積を減らしたい意図があったことが影響している。

 また、衝撃波砲という兵器が確実性のあるものとして認識されていなかった時期に建造されたヤマトでは、万一の失敗に備えてミサイル、魚雷発射管が多数装備されたが、本型はそれが大幅に削減された。同じく対空用パルスレーザー砲も、改良により既存の砲に比して発射速度が大幅に強化されていたし、同じく発射速度と仰角が向上した新型主砲を装備することで防空力も充分に確保できると判断され、こちらもヤマトより門数が減少した。

 艦内の格納庫であるが、当初はヤマトと同等の搭載能力を確保することが考えられたが、実行すると船体の大型化が避けられず、また設計開始後ほどなく航空母艦の建造が計画されたため、救命艇や内火艇などの他には当時の公式文書から引用すると「開発中の新型艦上戦闘機(のちのコスモタイガーⅡ)5機程度の搭載を予定」という小規模なものとされた。なお、本型は主に搭載するべき機材が不足していたことから実戦で戦闘機の運用を行ったことはなく、任務によって偵察機として1~2機のコスモタイガーⅡを搭載したのみである。
 加えて、想定された任務が太陽系内もしくは外縁における敵艦隊の迎撃であったため、極端な長期間にわたって基地などへ寄港せず航海を行うことも考えられず、ヤマトでは大規模に設けられた慰安、給糧施設は削減され、代わりに艦内居住区を拡大して乗員一人あたりの居住スペース増加を図っている。更に艦内工場についてもヤマトほどではなく、自艦の応急修理やミサイル等の弾薬を補充するのに用いる程度という比較的規模の小さいものとなった。

 これら艦内設備の見直しは艦の軽量、小型化と工数削減、そして居住性の向上に大きく寄与し、参謀本部も艦隊側もこの点については概ね良好な評価を下している。

 2200年末、拡散波動砲を搭載した新型戦艦の基本設計が以下のようにまとめられた。

全長:242m
全幅:45.8m
船体重量:53,400トン
乗員:80名(戦時定数、任務により増減あり)
波動砲:一式タキオン波動拡散砲 1門
主砲:一式40cm三連装衝撃波砲 3基9門
対空兵装:零式40mm三連装パルスレーザー砲 2基6門 
零式25mm連装パルスレーザー砲 2基4門
ミサイル兵装:九九式垂直軸ミサイル発射管 単装4基4門(艦底部)
九九式短魚雷発射管 単装8基8門(両舷側に各4基)

 この原案がまとまった直後、近接火力強化のため艦橋構造物頂上に零式短15.5cm六連装衝撃波砲が1基搭載されることが決まった。この短15.5cm砲はガミラス戦役末期にM-21881式突撃駆逐艦の火力を強化するために開発されたものだが、実際に搭載した艦が1隻も完成しなかったため、余剰となった在庫品が六連装化され本型へ流用されることになったのである。

 ところで、本型はヤマトと異なり主砲塔に砲術科の乗員を配置せず、波動砲を始めとする全火器の統制は艦橋に装備された射撃指揮統制コンピュータを介し一括して行われることとなり、船体や機関部のメンテナンスも大幅に自動化された。これはガミラス戦役後の人員拡充が始まったばかりで、人的資源の限られた防衛軍が節約できる乗組員は極力減らそうと考えたことによる。
 ただ、これは後に建造されたアンドロメダ型戦艦にも言えるのだが、基本的には多くを自動化するという方針はあったものの、乗員を一定数確保した戦艦として設計、建造され、実際の運用でも自動による作業と乗員による処置が並行して行われた事例が多々あることを踏まえると、必ずしも本型は自動化に徹し切った艦とは言い難い面があるように思われる。ただその一方、これら乗員数削減のための配慮が、後に発生した様々な問題の原因になったのも確かな事実といえる。

 こうして順調に進んでいった新型戦艦の設計であるが、主機関の選定に関しては非常に難航することとなった。

 参謀本部と艦政本部、そして実際に運用する艦隊側が様々な議論を重ねた結果、候補として二つの機関が残った。まず第一は、南部重工が新型戦艦用として新たに設計した波動機関。もう一つは艦政本部がヤマトに搭載された波動機関を改良した機関である。
 どちらを搭載したとしても、主兵装たる拡散波動砲の威力は殆ど差がないとされていた。そのため推進力が問題になったのだが、前者の新型機関はその大出力から巡洋艦に匹敵する速度性能を得ることが期待できたし、後者はそこまでの高速は期待出来なかったものの、ガミラス戦役におけるヤマトの経験を充分に反映させた上で改良を施していたため、信頼性が非常に高いという利点があった。
 結局、双方に長所があることからなかなか結論は出ず、また本型は防衛軍にとってヤマト以来、そして量産型としては初めての戦艦建造でもあったから、最終的に候補に上がった二つの機関をそれぞれ搭載する艦を1隻ずつ建造することで決着を見た。こうして建造した2隻を試験し様々な問題点を早期に洗い出して、それを解決してから量産を行うことにしたのである。

 試作艦の建造が決定した時点で、この新型戦艦には「A型戦艦」という名称が付与された。最終的にA型戦艦は各型合わせて44隻という多数が建造され、広く一般に「主力戦艦」と呼ばれるようになるのだが、詳細に関しては今後別項にて説明したいと思う。

前期生産型


 44隻の量産が行われたA型戦艦であるから、基本設計はさておき武装や機関、各種搭載機器に関しては様々なバリエーションが存在する。そのため防衛軍も公式文書において各艦を主に建造時期で分けて扱っており、特に白色彗星帝国戦役終結前に完成した38隻を「前期生産型」とし、その後追加建造された6隻を「後期生産型」として区別するのはよく知られている。
 まずは前期生産型の各種タイプから解説していくことにするが、本稿には波動砲や衝撃波砲、波動機関など、現在の防衛軍にとっても機密となる部分が多く含まれるため、それらに関する言及が不十分となる場合があるのをあらかじめご了承いただきたい。

 なお、各タイプ名は公式文書に拠る制式名称だが、続くカッコ内の名称は研究書籍などにおいて付与された通称であることにご注意いただけると幸いである。


A1型a(試作型a、試作型甲)「ドレッドノート(初代)」

 A型戦艦で最初に建造された艦で、一般的には後述の「ボロディノ」と共にA1型と呼称されることが多いが、ここでは個別に取り上げることにする。本艦が搭載した機関は南部重工製の新型波動機関である。

 建造の進展が「ボロディノ」より早かったため、本艦は公試運転の際に新型機関のテストはもちろん、拡散波動砲など全装備火器の試射、新たに搭載した射撃統制コンピュータの試験に供されることとなった。
 ところが、この試験中に大小様々な問題が発生したため、結果、公試そのものが終了前に中止されている。

 直後にまとめられた問題点は次のようなものだった。

・主砲である一式40cm衝撃波砲の散布界が過大なため、命中率が全自動射撃、手動照準射撃の双方において極めて低い
・新型波動機関のエネルギー伝導管が、設計ミスにより過熱し熔解する箇所が存在する
・ヤマトに比して通信設備を削減した結果、艦隊および戦隊旗艦としての通信能力に不安がある
・探知能力、特に艦底方向へのそれが充分でない
・急速旋回用スラスターの不足、および配置が不適切なため、旋回性能がヤマトより劣る
・艦橋内部が狭隘なため、戦隊あるいは小規模艦隊の旗艦として使用するのが困難

 結局、本艦はこれらの問題に対処するため建造ドックへ逆戻りすることになった。そして続いて完成した「ボロディノ」の試験結果も踏まえて改装が行われたものの、エネルギー伝導管を中心に大規模な再設計を施したにも関わらず、機関の過熱と伝導管の熔解問題はどうしても解決することが出来なかった。
 この機関に関する問題は相当に深刻で、防衛軍の中で最も熟練した機関員を揃えた試験も行われたが、最終的に「本艦の機関は戦闘艦艇用として実戦に耐えうるものではない」と結論付けられている。

 こうした事情から、本艦は最後の機関テストが終了した後、艦種類別を「特務艦」に変更(この処置は予算上の戦艦建造枠の都合によるものらしい)した上で地球の工廠に地上実験艦として係留されることが決定され、以後は除籍まで宇宙空間への航行を行っていない。そして引き続き新型機関の実用化および最新兵装の実験に用いられたのだが、これらは後にアンドロメダとA5型戦艦に搭載された機関や、散布界過大に悩まされた一式40cm砲の改良型を実現させる基礎となった。

 白色彗星帝国戦役が勃発した直後、防衛軍は本艦を戦艦として現役復帰させるべく、機関の換装ないし大幅な改造、兵装を中心とした装備を量産型各艦と同じものに変更する改装を計画したが、実行されずに終わっている。そして戦役末期、係留されていた工廠が彗星帝国超巨大戦艦の砲撃を受け、これによって大破した本艦は全損と判定されて程なく解体され、その廃材や使用可能とされた部品は既存艦の修理や新造艦の建造に転用された。

 なお「ドレッドノート」の艦名は、本艦の除籍後に完成した改A3型の一隻に引き継がれているので、混同されないようご注意頂きたい。


A1型b(試作型b、試作型乙)「ボロディノ」

 前述した「ドレッドノート」と同時に建造された試作艦で、機関はヤマトと同型の波動機関に艦政本部が改良を施したものを搭載している。

 完工したのは「ドレッドノート」より遅かったのだが、「ドレッドノート」が前述した各種問題の発生により公試未了のままドックへ逆戻りしたため、結果として書類上の竣工、防衛軍への引き渡しはこの「ボロディノ」のほうが先になった。
 そうした経緯から、通常「ドレッドノート型」と称されるA型戦艦だが、一部の公式文書および既刊の資料において「ボロディノ型」と表記されることもある。

 本艦は波動機関の過熱問題こそ生じなかったものの、それ以外の問題は「ドレッドノート」と同じく存在しており、また機関の最大出力が劣ることから加速性能の不足が指摘され、更なる能力向上も求められた。
 しかし、試作型2隻の試験結果を取り入れた増加試作型として改A1型戦艦が建造されることとなったため、本艦への根本的な改装は見送られている。そのため「ボロディノ」は実験終了後も外・内周艦隊および基地艦隊には配備されず、主砲に発砲遅延装置、艦橋構造物に各種電探を追加する改装を行った後、外惑星練習艦隊の旗艦として主に土星基地やアステロイドベルト基地周辺で行動した。

 本艦は白色彗星帝国戦役が勃発する直前、2番砲塔の撤去と訓練生用居住区画の拡大などを行い、本格的な練習戦艦へと改装することが検討されている。これは具体的な設計に入る前に戦役が勃発したため実現せずに終わり、今度は先の「ドレッドノート」と同様の量産型に準じた装備を施す工事が計画されたが、結局こちらも実行されなかった。

 土星会戦の直前、本艦は他の練習、警備艦隊所属艦の一部と共に、土星より地球へと後送される輸送船団を護衛して一旦地球へと帰還した。ところが、その土星会戦で防衛艦隊主力の大半が失なわれたため、防衛軍は彗星都市帝国を攻撃すべく、残存艦艇をかき集めて艦隊を編成することとした。これに参加すべく、地球で待機していた同艦も艦隊の集結地点である金星へと出撃している。(詳細は「コスモ・ウイングス」第二部四章をご参照頂きたい)
 そして、A型航空母艦3隻と共に第1空母戦隊を臨時編成した「ボロディノ」は地球軌道上で都市帝国直衛艦隊と交戦。その際、集中砲火を受けながら衝角戦術を仕掛けてきた敵戦艦と激突、大爆発を起こして敵艦もろとも轟沈し、艦歴に幕を閉じた。


改A1型(増加試作型、試作型c、試作型丙)「ジャン・パール」

 試作艦として建造された「ドレッドノート」「ボロディノ」の公試時に判明した問題点を根本的に解決すべく、急遽A2型巡洋艦2隻分の予算と資材を転用して建造された艦である。

 主な改良点は以下に示す。

・散布界の広さから命中率低下を招いている一式40cm衝撃波砲に、新開発の発砲遅延装置を装備
・主機関は信頼性に勝る「ボロディノ」と同じとし、出力を向上させた改良型補助機関を搭載
・旋回用スラスターの新設、および配置を見直し。出力も増強し旋回性能を向上させる
・通信能力改善のため各部アンテナを大型化、機器も増強
・艦底部に探知機器を搭載した大型ポッド2基を懸吊し、特に艦下方における探知能力を強化する
・艦橋構造物を大型化し、数個戦隊の指揮が可能な旗艦設備を整備

 これらの改装によって原設計より重量が1,500トンほど増加した(重量54,900トン)が、補助機関の出力強化によって発揮速度と加速性能は「ボロディノ」より向上している。また、旋回用スラスターの改良により運動性も良好と判定された。

 完成した「ジャン・パール」の公試成績は防衛軍にとってほぼ満足すべきものであり、主砲に関しては散布界の問題から射撃指揮統制コンピュータの更なる改良と調整が必要とされたものの、それ以外のA1型戦艦で生じた問題は概ね解消されていた。
 そのため、この改A1型戦艦を基礎とした戦艦を量産すれば、防衛軍が望んだ波動砲搭載戦艦の大量整備が問題なく実現できると結論付けられることとなった。

 公試終了後「ジャン・パール」は編成されたばかりの第1外周艦隊、ついで第4外周艦隊の旗艦を務めたが、この間に発砲遅延装置と射撃指揮統制コンピュータを量産型であるA2型戦艦と同じものに換装している。また艦隊での運用結果からA型戦艦は艦隊旗艦設備の更なる増強が求められたのだが、これは本艦にではなく後続のA2型戦艦の一部の艦に必要な工事が施された。
 白色彗星帝国戦役勃発時の本艦は、武装その他の装備や性能に多少の相違こそあるものの、全体の仕様はほぼ後続のA2型戦艦と同様だったようで、専用の艦隊旗艦設備がないため比較的規模の小さい天王星基地駐留艦隊の旗艦として配備されていた。
 そして、土星会戦前に「ジャン・パール」も連合艦隊へと編入され、同じく基地艦隊の旗艦を務めていた改A2型戦艦「リヴェンジ」「テネシー」と共に第12戦艦戦隊を臨時編成、土星の衛星ヒペリオンを基地とする前衛偵察部隊である第6艦隊の基幹戦力を構成することになった。

 バルゼー艦隊との決戦時、敵の前衛部隊を第1艦隊の正面に誘導、拡散波動砲編隊射撃による撃滅に貢献した第6艦隊だったが、その後襲来したバルゼー第2艦隊の猛攻によって艦隊は壊滅。「ジャン・パール」もそのときの戦闘で失われている。


A2型(初期量産型)「ロイヤル・ソヴリン」「レゾリューション」「ラミリーズ」「ワイオミング」「ニューヨーク」「テキサス」「河内」「摂津」「土佐」「コンテ・ディ・カヴール」「カイオ・デュイリオ」「アンドレア・ドリア」「ブルターニュ」「プロヴァンス」「ロレーヌ」

 改A1型戦艦の成功によって建造が決定した、A型戦艦最初の、同時に地球防衛軍にとって初めての波動機関を搭載する量産型戦艦である。

 一部の艦内配置を除いた船体と武装、機関は改A1型戦艦と同じで、完成時の外見から区別するのは極めて困難である。戦隊旗艦設備は全艦に設けられており、主砲の発砲遅延装置および射撃指揮統制コンピュータは更に改良されたものを搭載している。
 また「河内」「コンテ・ディ・カブール」「ブルターニュ」は完成時から、「ロイヤル・ソヴリン」「ワイオミング」は後日の改装で、各外周艦隊旗艦および戦時編成時の艦隊旗艦を務めるための設備が追加された。この5隻には艦橋構造物後方に艦隊司令部専用の通信アンテナが装備されており、他艦との識別は容易である。

 続々と建造された本型は3隻編成の戦艦戦隊を構成して各太陽系外周艦隊に配備、その主戦力となった。また、艦隊旗艦として改装された5隻は続くA3型戦艦で同じ装備を施された艦が建造されなかったため、平時は各外周艦隊の旗艦として活動している。
 なお、当初A2型戦艦は27隻の建造が予定されていたが、戦闘演習の結果、艦橋に装備された零式短15.5cm六連装衝撃波砲の連続射撃時に発生する振動が原因で各武装の照準や操艦に支障を来たす、と艦隊側から指摘があったため、これを中心に各部へ改良を加えたA3型戦艦に量産を切り替えることが決定、15隻で建造は打ち切られた。

 余談になるが、防衛軍にとって最初の空母となったA1型航空母艦は本型をベースとし、船体後半部を改設計して航空艤装を加えたものである。

 白色彗星帝国戦役勃発時、A2型戦艦の各艦は第1、第2外周艦隊の主要戦力を構成していたが、連合艦隊編成時に各戦隊は第2、第4、第5艦隊に分散配備されている。これは完成が遅く乗員の練成が不十分とされたA3型戦艦を第1艦隊に集中配備したためであった。
 「ロイヤル・ソヴリン」が第2艦隊、「コンテ・ディ・カヴール」が第4艦隊、そして「河内」が第5艦隊の旗艦を務めた土星会戦であったが、バルゼー艦隊および都市帝国との交戦において「ワイオミング」「カイオ・デュイリオ」の2隻を除いた全艦が撃沈されている。
 また、艦隊戦で損傷しタイタン基地に退避した「ワイオミング」も、直後に基地が彗星帝国軍に爆撃された際に大破、全損とされ戦役後に解体されたため、白色彗星帝国戦役を生き残ったのは「カイオ・デュイリオ」1隻だった。

 「カイオ・デュイリオ」のその後については、別項に譲らせていただくことにする。


改A2型(電探強化型、パトロール戦艦)「リヴェンジ」「テネシー」

 A2型戦艦をベースとし、各部に改造を行ったタイプである。

 本型は当初、電探および通信施設を強化することで、A2型戦艦以下によって構成された中~大規模の艦隊を統率するために建造が構想されたものだった。つまり、後にアンドロメダとして結実する旗艦型戦艦の役割を果たすことが目的だったのだが、設計段階で大規模艦隊の旗艦として用いるには艦の規模が小さいと指摘され、遊撃部隊として敵侵攻軍の後背で破壊活動を行う第三艦隊に配備するための戦艦へと計画が変更、2隻が起工された。

 ところが建造中、連合艦隊司令部から第三艦隊にA型戦艦に近い火力を持つA型航空母艦を配備することが提案され、これが採用されたため第三艦隊専用に戦艦を建造する意義が低下した。そのため本型は再度の設計変更が行われ、今度は地球防衛軍の重要拠点となる冥王星、海王星基地に所属する警備艦隊の旗艦用戦艦として建造を続行する事になった。

 ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点を以下に挙げる。

・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もより強力なものへと換装
・艦底部垂直軸ミサイル発射管を全門撤去、ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力電探および通信機に対応した専用アンテナを艦各所に追加

 この改造によって、艦隊側からは「機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」と評されたが、波動砲や主砲を始めとした戦闘力は維持されており、また警備艦隊旗艦としての能力は非常に高かったため、戦艦としての評価は概ね良好であったようだ。

 本型は警備艦隊以外での使用は考慮されていなかったとされることが多いが、実際には平時における哨戒活動の他にも、警備艦隊を率いて第1、第2外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時において警備艦隊の一部と共に連合艦隊の戦列に加わることが想定されていたようである。
 実際、白色彗星帝国戦役勃発後に2隻はいずれも連合艦隊に加えられ、偵察行動と拡散波動砲編隊射撃の弾着観測を任務とした第6艦隊に編入。土星会戦の緒戦で敵艦隊の動向調査や敵前衛艦隊への拡散波動砲一斉射撃の支援を行い、その強力な探知能力を存分に発揮している。

 しかしその後、行動中の第6艦隊はバルゼー第2艦隊の襲撃を受け、艦隊旗艦を務めていた「リヴェンジ」が沈没、「テネシー」は大破落伍して木星ガニメデ基地へと離脱し、そこで修理中に戦役が終結したため以後の戦闘には参加できなかった。

 なお「テネシー」の後日に関しては別項で記述させていただく。

A3型(中期量産型)「クイーン・エリザベス」「バーラム」「ヴァリアント」「ノース・カロライナ」「ワシントン」「アラバマ」「薩摩」「安芸」「紀伊」「リシュリュー」「ストラスブール」「ガスコーニュ」「ナッソー」「ヘルゴラント」「バイエルン」「ツェザレヴィッチ」「ガングート」「ペトロパブロフスク」

 戦艦戦力の更なる増強を図った防衛軍が、A2型戦艦の使用実績を取り入れて整備したタイプ。最終的な建造数は18隻で、A型戦艦の中で最も多数が建造された形式となる。

 A2型戦艦との相違点は次の通り。

・15.5cm六連装艦橋砲の機材を一部撤去し、反重力感応機用砲弾など特殊砲弾の発射専用とする
・艦底部に九九式垂直軸ミサイル発射管を2門追加(合計6門)
・量産性向上のため、艦内の構造を一部見直し
・戦隊旗艦施設を強化し、小規模艦隊向けの指揮能力を標準装備

 この他の武装や防御、電探や機関などはA2型戦艦と同じであった。A2型戦艦との識別は完成時の艦底部ミサイル発射管のハッチ数により可能だが、映像のアングルなどによっては非常に困難である。

 本型が就役を始めたのは白色彗星帝国戦役が始まる直前で、戦役勃発後はただちに各外周、内周艦隊に配備されて乗員の訓練が行われている。なお、この訓練課程を満たすことが優先され工事に充てる期間がなかったため、A2型戦艦の一部に施された艦隊旗艦設備の追加は実施されなかった。
 土星会戦直前においてもA3型戦艦各艦の練成は未だ不十分と見られており、また艦隊旗艦設備も未装備であることから、完成、就役していた18隻は第1艦隊に集中配備された。これは第1艦隊の主任務が拡散波動砲による先制攻撃と衝撃波砲を用いた各艦隊への火力支援と想定されていたためで、一定の艦隊機動が行える練度が確保されていれば十分にその戦力を発揮できると連合艦隊司令部が判断したためである。

 第1艦隊所属のA3型戦艦は、拡散波動砲編隊射撃による敵前衛部隊への先制攻撃、そしてカッシーニの隙間における砲撃戦でその威力を発揮しバルゼー艦隊の撃滅に貢献したが、最終的には艦隊戦で損傷落伍した「薩摩」「ストラスブール」を除く全艦が、敵艦隊および都市帝国の攻撃によって撃沈されている。また、生き残った両艦も損傷が大きかったため、その後の都市帝国直衛艦隊との戦闘にも参加できなかった。

 なお、白色彗星帝国戦役勃発後にA3型戦艦は12隻の追加建造が計画され6隻起工(残り6隻はA4型戦艦に変更)されたが、これらの多くは彗星都市帝国や超巨大戦艦の攻撃によって建造ドック内で破壊され、無事だった船体の一部と準備された資材などは後期生産型が建造される際に転用されている。

 「薩摩」と「ストラスブール」のその後については別項に譲りたいと思う。

A4型(高速戦艦型)計画のみ

 白色彗星帝国戦役に伴う戦時計画で、A3型戦艦として建造が決定した12隻のうち、後期の6隻は改設計を加えた別タイプの艦に変更されることになった。計画変更の理由は戦役勃発直後、波動砲を装備した改A2型パトロール巡洋艦およびB2型護衛駆逐艦で構成された第11護衛艦隊が、カイパーベルト外縁において彗星帝国軍ナスカ艦隊の一部と交戦した際の出来事に求めることができる。

 この戦闘で、波動砲による編隊射撃を敢行しようとした第11護衛艦隊はエネルギーチャージ中に敵艦隊の反撃を受け、防御力が脆弱な巡洋艦、駆逐艦で構成された同艦隊は動くこともできないまま、ほぼ戦果なく壊滅させられてしまったのである。
 後に提出された戦闘詳報において、艦隊側は「現状、巡洋艦以下の艦艇に装備されている波動砲は、装備艦の防御力不足によりエネルギー充填中の敵からの反撃に対する抗鍛性が不十分なため、戦場での有効な活用が極めて困難」という所見を提出。更に「今後、水雷戦隊に追従し敵艦隊に波動砲、および大口径衝撃波砲による火力支援を行える戦艦が必要と考えられる」との意見も添えられていた。

 これらを検討した結果、防衛軍はA型巡洋艦およびB2型駆逐艦の波動砲に大幅な使用制限を加える(直後、更に使用停止の措置が取られている)こととし、将来的にはこれらの艦から波動砲そのものを撤去すると決定した。これに伴い、艦隊側から要望があった「水雷戦隊を掩護するための高速戦艦」を整備し波動砲艦としての巡洋艦の任務を代替させることになり、このA4型戦艦の建造が計画された。

 このA4型戦艦は船体や武装に関してはA3型戦艦と同じものを用いることになっていたが、機関にはA1型戦艦「ドレッドノート」のそれを基礎とし大幅な改良を施した機関(補足すると、アンドロメダ型戦艦に搭載された主機関と同じもの)を採用し、発揮速度と加速性能の大幅向上を狙っていた。
 機関の換装が決定されたのは、巡洋艦と駆逐艦で構成された水雷戦隊に追従するための速度性能が求められたからであるが、この時期地球に係留されていた「ドレッドノート」を用いた試験、およびアンドロメダにおける運用の結果、改良を加えた新型機関は「ドレッドノート」に搭載されたオリジナルよりは若干劣るものの、他のA型戦艦が装備する機関に比べて出力が向上していること。そしてある程度の熟練した機関員が必要ではあるが、実用性の向上した機関として使用できる目処が立ったことによる。

 機関の製造に若干の時間を必要としたため、防衛軍は最初に3隻を建造して、戦時編成において水雷戦隊を中心に編成される第2艦隊へ配備することとし、続いて建造する3隻は同じく高速艦が多数所属する第4艦隊に配属させる予定であった。

 しかし各艦の起工と前後して土星会戦が戦われ、そのとき各々2個水雷戦隊を率いた第2、第4艦隊のA2型戦艦は水雷戦隊の足手まといになることもなく、A4型戦艦の任務として想定されていた波動砲および主砲による火力支援に多大な威力を発揮するなど活躍した。
 この結果から「通常型戦艦の機動性をある程度高い水準に保てれば、専用の高速戦艦は不要ではないか」という意見が参謀本部から提出されたこと。そして地球および各惑星基地の建造工廠の多くが彗星帝国の攻撃により大きな被害を出したため、戦役終結までA4型戦艦は1隻も完成せずに終わっている。

 それでも、彗星帝国残存軍に対する兵力として予定通り3隻のA4型戦艦を建造することも考えられたが、先の戦役の戦訓から防衛軍の戦術に再検討が加えられ、A型戦艦もそれに伴う改設計を受けることが決定された。そうした要素もあり、このA4型戦艦は結果的に計画のみの存在として終焉を向かえることになった。

 なお白色彗星帝国戦役終結時、3隻分製造された本型用の機関は戦火を潜り抜けて残存していたが、これらは後に建造されたA5型戦艦へと転用されている。