白色彗星帝国戦役時におけるA型戦艦

 A2型戦艦から本格的に量産、配備が開始されたA型戦艦であるが、就役後に艦隊側からはバランスのとれた攻防性能と機動力、居住性について概ね良好な評価を得ている。

 ただ、主砲である一式40cm衝撃波砲に関しては度重なる改良にも関わらず、散布界は未だに大きいこと。それと艦橋砲として装備した零式15.5cm六連装砲は戦闘訓練で連続発砲した場合、艦橋への振動など影響が大きく実用性がないという点が問題として指摘されていた。
 しかし、参謀本部や艦政本部は艦橋砲は特殊砲弾を用いる以外は使用停止にすればよく、主砲についても複数艦の射撃によって弾幕を形成する際には、むしろある程度の広さをもつ散布界が必要ではないかと考えており、更なる散布界縮小を目指した根本的な改善は行われなかった。

 A型戦艦の前期生産型である38隻のうち、地球の工廠に係留されていた「ドレッドノート」と輸送船団護衛の任務に従事していた「ボロディノ」を除く36隻が、土星宙域におけるバルゼー艦隊との戦闘に参加した。
 この会戦でA型戦艦各艦は当初期待された波動砲艦、および艦隊の中核を成す戦列艦として十分な働きを見せたのだが、戦後に各艦隊から提出された戦闘詳報によって、A型戦艦が内包していた重要な問題点がこの会戦で噴出したことが示されている。

 それらに曰く、

・主砲の散布界が遠距離砲戦において著しく過大。これが原因で有効命中弾数が過少となり、敵艦隊をアウトレンジした場合においても敵戦力を早期に減少させることが難しい。特に艦隊内の戦艦数が少なく濃密な弾幕を形成できない場合においてこの傾向が顕著である(なお、この散布界問題は土星会戦における第6艦隊壊滅の一因とされている)
・主要火器を管制コンピュータによって艦橋から指揮するため、艦橋に損害を被ると即座に戦闘不能となる場合があり、その復旧を戦闘中に行うことが困難。また砲塔内に要員が配置できず照準機構も搭載されていないため、非常時に砲側照準による射撃を行うことが不可能である
・近接対空火力が不足し、敵航空機およびミサイルに対して有効な迎撃手段を有していない
・全般的な防御性能は十分であるが(砲塔の構造に起因して)砲塔天蓋の防御力が不足。また船体構造の強度に不安があり、非主要防御区画への被弾が衝撃として船体を伝わり装備機器に悪影響を与える場合がある

 また、会戦の最終段階で連合艦隊は彗星都市帝国の攻撃によって壊滅的な被害を受けたのだが、この戦闘における波動砲についての所見が残っている。
 それによると「拡散波動砲は対艦戦闘においてその破壊力は極めて大なるも、要塞など大型の固定目標に対しては集束型波動砲に比して明確に威力が劣る。対艦戦闘に特化した結果として、その他の目標に対する攻撃能力が不十分である」とし、艦隊に配備された波動砲艦が拡散波動砲搭載の戦艦と、威力の低い集束型波動砲しか持たない巡洋艦しかなかったことを悔いる記述がなされている。

 これらの戦訓はさっそく参謀本部でも検討されたが、結果、波動砲に関しては当時開発中だったエネルギー集束率の変更が可能な新型砲(後の爆雷波動砲)の実用化を促進させるとし、主砲の散布界過大については貫通力と射程の減少を忍んで初速を低下させ集弾性の確保を行うことになった。

 この決定は彗星帝国戦役終結直後に各部からの承認を受け、戦役を生き残った前期生産型の各艦に施された改装と、続いて建造されることになった後期生産型にも反映されている。前期生産型の残存艦と後期生産型については別項で触れることにしたい。


暗黒星団帝国戦役直前までのA型戦艦残存艦の動向

 彗星帝国超巨大戦艦の撃沈によって区切りとされる白色彗星帝国戦役であるが、その時点で残存していたA型戦艦は以下の通り。

A2型:「カイオ・デュイリオ」
改A2型:「テネシー」
A3型:「薩摩」「ストラスブール」

 この他に当時の防衛軍が保有していた戦艦はヤマト1隻で、太陽系内に彗星帝国の残存軍が存在する状況においては艦隊戦力の不足が否めず、しかも建造工廠の多くが彗星帝国の攻撃によって破壊されたため、新規に多数の艦を建造することもままならなかった。
 ただ同時に、太陽系内で多くの戦闘が行われた結果、撃沈された艦の残骸などから希少金属を調達するのが比較的容易であり、また内惑星基地の被害はほぼ皆無だったので、これらの要素から既存艦の修理と小規模な新規建造は可能という見通しも存在していた。そのため、この時期の防衛軍は主に彗星帝国残存軍との戦闘を前提として、艦艇の修理と少数ながら新造艦の建造を行っている。

 新規建造艦については次項に譲り、ここでは残存していたA型戦艦各艦について追っていく。

 「テネシー」は白色彗星帝国戦役時の損傷が大きく、彗星帝国残存軍との戦闘には参加していない。残る3隻は優先的に修理が施され、後述する後期生産型と共に戦艦戦隊を構成して活躍、損失なしで残存軍との戦いを終えた。また、同時期に発生したイスカンダル戦役では「ストラスブール」に限定的な連続ワープ(無人艦による先行誘導が必要となる)を可能とするべく機関の改装を行い、ヤマト以下によって編成されたイスカンダル救援艦隊に所属し暗黒星団帝国軍との戦闘に参加、大きな損害もなく帰還している。
 これら一連の戦役が終結した後、A型戦艦にはそれ以前に収集された戦訓に対応する改装工事が行われることになった。ただ、この時期は艦隊戦力および人員の不足を無人艦隊の整備によって補うという状況だったため、行われた改装は艦によって微妙に異なるものとなっている。ここでは個艦ごとに取り上げることとし、共通する改装の項目については重複することをご容赦いただきたい。


「カイオ・デュイリオ」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造(一式40cm衝撃波砲の初速を低下させ散布界を改善したもの、代償に貫通力と射程が減少)
・艦底部に九九式垂直軸ミサイル発射管を2門追加(配置はA3型と同様)
・電探と通信機器を改A3型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 改装は比較的小規模だった模様で、工事完了後の本艦は外惑星練習艦隊の旗艦として活動している。

「テネシー」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造
・無人艦で編成される中規模程度の艦隊を統制するため旗艦設備を更新
・電探と通信機器を改A2型パトロール巡洋艦の後期生産型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 本艦の改装は白色彗星帝国戦役時の損傷修理と並行して行われているが、前線復帰が急がれたため改装自体の規模は小さい。工事完了は彗星帝国残存軍との戦闘が終了した直後で、イスカンダル戦役終結後は冥王星に配備された太陽系外周無人艦隊の旗艦となっている。
 ちなみに本艦と「カイオ・デュイリオ」はA3型以降の艦と異なり完成時から艦橋砲を装備していたが、機材の撤去が行われたという記録が存在しないため、実戦での実弾射撃を停止する措置が取られたのみと判断される。

「薩摩」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造
・主砲塔内を改造し、砲側照準による射撃を可能とするための設備を追加
・砲塔天蓋の防御力改善のため、主砲砲身基部に増加装甲を装備(これに伴い最大仰角が若干減少している)
・両舷側の九九式短魚雷発射管を全門撤去、同所に対空砲座を新設し零式76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて4基装備
・機関を「ストラスブール」と同様の限定的な連続ワープに対応可能なものへと改造
・戦隊旗艦設備の更新
・電探と通信機器を改A3型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 「薩摩」の改装はイスカンダル戦役が終結した直後に開始されており、他艦より比較的規模の大きいものとなった。改装工事の完了は暗黒星団帝国戦役開始の直前で、この状態で戦役勃発を迎えたものと考えられる。

「ストラスブール」

 イスカンダルから帰還後、本艦も「薩摩」改装の終了と入れ替わりに改装を行う予定であったが、暗黒星団帝国戦役勃発のため実施されていない。内容は機関を除き概ね「薩摩」と同様とされている。

 なお、改装された各艦に共通する主砲の改造と船体構造の補強、電探その他の装備更新は「その効果は大と認める」と評価された。特にA型戦艦を悩ましてきた主砲の散布界問題はこの工事によって大幅な改善が見られ、懸念された貫通力と射程の減少も最低限に収められていたため、艦隊側からは大いに歓迎されている。


後期生産型の建造

 前述したとおり、白色彗星帝国戦役後の地球防衛軍に残された戦艦は5隻に過ぎず、加えて彗星帝国残存軍が太陽系外周に存在している状況であり、艦隊戦力の整備は必要不可欠であった。
 このため防衛軍は既存艦の修理と巡洋艦と駆逐艦の追加建造、および無人艦隊の整備に注力することにしたが、彗星帝国残存軍に戦艦など大型艦が多数含まれる模様であること、無人艦隊はまだ研究が終わったばかりで実戦で確実に戦力として期待できるかが不透明という問題もあり、最低限ながら戦艦の追加建造も行うことが決定された。この段階で建造が決まったのがA型戦艦の「後期生産型」で、予算は未成に終わったA3型、A4型戦艦のものが転用されている。

 この後期生産型は戦時急造型と言うべきもので、その建造にあたってはあらゆる方面で省力化が図られており、特に兵器などの艤装関連は製造能力や設計時間の不足から既存品の流用によって賄われた部分が多いのが特徴である。なお未成艦の船体モジュールも再利用されたが、前期生産型各艦が後日の改装で行った船体構造の補強は建造中に実施されている。

 6隻が建造された後期生産型は二つのタイプに分類される。以下で紹介したい。


改A3型(主砲換装型、後期生産型・甲)「ドレッドノート(Ⅱ)」「山城」「ネヴァダ」

 後期生産型の最初のタイプ。一番艦「ドレッドノート(Ⅱ)」の艦名が引き継ぎなのは、地球の工廠で全損となり解体された先代から多くの部品が流用されたことに由来する。

 この改A3型の最大の特徴は、主砲がそれまでのA型戦艦とは異なる九九式二型46cm連装砲塔3基に変更されていることだが、この決定に至った事情は以下の通りである。
 建造が決まったA型戦艦の後期生産型だが、当面の問題として「一式40cm砲の砲身不足」というものがあった。これは彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃により地球各所の工廠が大きな損害を受け、同時に既存艦向けの予備として用意されていた一式40cm砲の砲身の多くも炎上して使用不能となり、結果として深刻な砲身の不足が発生したのである。無事な在庫は当然かき集められたが、既存艦の修理のため、あるいは予備部品として使う必要も生じていたため、新造艦に向けて供給できる砲身が3隻分しか確保できない見通しとなった。
 (余談だが、この砲身不足問題に対処するため、当時残存していたA型航空母艦から主砲の砲身が撤去され他艦への供給に回されている。ディンギル戦役終結までA型航空母艦各艦が予備艦として実質放置されていたのは搭載機不足が最大の理由だが、この砲身転用も一因であったようだ)

 このため艦政本部は対策を迫られたのだが、ここで技術本部から「ヤマトが搭載している九九式二型46cm衝撃波砲の砲身であれば、研究用として用意されたものが一定数存在している」と知らせがあった。
 これを受けた艦政本部は、早速A型戦艦への九九式二型46cm衝撃波砲の搭載を検討した。結果、砲口径が大型化するため連装砲塔による搭載で忍ばざるを得ないが、幸い46cm連装砲塔の設計はかつて巡洋艦拡大の戦艦試案の際に行われていて、それを流用することも可能であり実現性は十分と判定され、この改A3型戦艦へ同砲が装備されることになった。
 (ただ、40cm三連装砲塔と46cm連装砲塔はバーベット径が異なるため、改設計と建造工事の際には相応の手間を要したと伝えられている)。

 艦隊側の一部から主砲6門では不足が生じるのではないかとの指摘もあったが、九九式二型46cm衝撃波砲は白色彗星帝国戦役の戦訓から良好な命中率と威力が高く評価されていたため戦艦の火力としては十分と判断されており、その後の実戦でも大きな問題は生じていない。また、本型が搭載した46cm連装砲塔はヤマトの三連装砲塔を縮小した設計だったため当初から砲塔内に照準機構が装備されており、この点は好評であったようだ。

 波動砲に関しては、それまでのA型戦艦に搭載された一式タキオン波動拡散砲を集束型に改造した「一式一型改タキオン波動集束砲」の搭載が決定された。既存の波動砲を用いながら完全な流用にならなかったのは、今後彗星帝国の都市衛星のような巨大移動要塞と遭遇した場合、拡散波動砲装備艦が多くを占める現状の戦艦戦力では対抗が難しく、一定数の集束型波動砲搭載戦艦を整備しておきたいという思惑からであった。
 なお「山城」と「ネヴァダ」は予定通り一式改一型タキオン波動集束砲を搭載したが、「ドレッドノート(Ⅱ)」は技術本部から「次期主力戦艦に装備予定の爆雷波動砲を新造戦艦1隻に試験的に搭載したい」との提案がもたらされたことにより、建造中に搭載済みの波動砲を爆雷波動砲に改造して完成している。
 (ただし「ドレッドノート(Ⅱ)」が装備した爆雷波動砲は制式兵器である「二式タキオン波動集束可変砲」とは仕様が異なり、各種機材が小型化されていたため戦闘詳報で威力不足とエネルギー充填時間が想定より長いことが問題視されているが、船体規模の小ささから改善はできなかった模様である)

 これら以前のA型戦艦とは相違点のある改A3型戦艦だが、他は電探などが最新型に更新された程度で、ほとんどの装備は未成に終わったA3型戦艦用に準備されたものがそのまま使用され、艦橋構造物に含まれる艦橋砲も同じく特殊砲弾発射用に限定されたものが搭載されている。

 同じ後期建造型であるA5型戦艦より起工が早かった本型は、完成後直ちに彗星帝国残存軍との戦闘に参加し活躍したが、11番惑星宙域での会戦において「山城」が敵駆逐艦の体当たり攻撃を受けて大破、総員退去後に爆沈し、彗星帝国残存軍との戦闘で唯一失われた戦艦となった。

 残る2隻はイスカンダル戦役終結まで太陽系にて待機していたが、その後の暗黒星団帝国戦役勃発まで大きな改装は行われていない。ただ艦隊側から「(砲塔の設計が旧式なため)主砲の仰角が不足し対空射撃が困難」との指摘があり、これを改善するべく砲塔天蓋装甲を防御に支障がない程度に一部切除し仰角を若干引き上げる小規模な工事が実施されている。


A5型(旗艦戦艦型、後期生産型・乙)「メリーランド」「ネルソン」「金剛」

 後期生産型、ならびにA型戦艦で最後に建造されたタイプ。本型も白色彗星帝国戦役時における軍備計画の影響を強く受けたものとなっている。

 白色彗星帝国戦役の初期に「A型戦艦以上の強力な戦艦を追加建造し艦隊戦力を強化する」目的から、アンドロメダ型戦艦の追加建造が行われることが決定した(一般には10隻が計画され5隻が起工されたと言われる)。そのための資材は用意されたのだが、戦役中盤は量産性で勝るA型戦艦の優先度が高くなり、細々と建造が続けられた艦も最後は彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃により全て失われ、1隻も完成することはなかった。

 このA5型戦艦の主砲と装甲鈑、そして既存のA型戦艦と異なるアンドロメダに類似した艦橋といった装備は、未成に終わったアンドロメダ型戦艦のために用意されたそれを転用したものである。これは既存品の流用という最大の目的もさることながら、比較的規模の大きい艦隊を統率する能力を有する戦艦を、新規に装備を製造せず建造できるという点に防衛軍が魅力を感じたこともあったようだ。機関も重量増加への対策が考慮された結果、建造中止となったA4型戦艦用に準備された3隻分の波動機関をそのまま搭載している。

 波動砲は、船体規模の違いからアンドロメダ型のものを流用できなかったため「零式一型改タキオン波動連装集束砲」と呼称される、使用停止措置に伴い損傷修理時などに撤去、あるいは製造されたが余剰となっていたA型巡洋艦用の波動砲を連装に改造したものが搭載されることになった。しかし実際には連装砲への改造に手間取り、各艦とも彗星帝国残存軍との戦闘への参加が急がれた関係で、完成時は船体構造に含まれる砲身を除いた波動砲関連の機材を省略して工事を終え、発射口に装甲鈑を装着した状態で艦隊に編入されている。
 (余談だが、波動砲発射口に装甲鈑を装着した状態の本型の映像が流布した際、いくつかの専門誌に「波動砲未搭載の新型戦艦」として紹介されたことがある。これと波動砲搭載後の本型が混同されたりもして「防御が強化されたA型戦艦(俗に「後期生産型・丙」と通称される)が別に存在する」という誤解が生じていた時期がある)

 以上のようにありあわせの部品をかき集めて建造されたA5型戦艦であるが、実戦ではアンドロメダ型譲りの装甲防御と既存A型戦艦より優れた指揮能力、重量が以前の同型艦より増大したにも関わらず機動力も維持されていた点が高く評価された(ただ機関については「扱いが難しい」とする記録が存在する)。彗星帝国残存軍との戦闘においても指揮戦艦として活躍し、損失なしでイスカンダル戦役までを終えている。

 暗黒星団帝国戦役勃発前の改装は、予定されていた波動砲の装備と主砲の一式一型改40cm衝撃波砲への改造が全艦に行われたのみであった。ちなみに波動砲装備後の本タイプは艦首の波動砲身が他のA型戦艦より幅広で重く「前トリムの傾向が強く、特に大気圏内での操艦が難しい」と評されたと伝わる。

 なお、A型戦艦はイスカンダル戦役後に追加建造が検討された形跡がある。詳細は不明だが、仮に計画として具体化されてもB型戦艦の建造開始と暗黒星団帝国戦役が勃発した時期から考えて、恐らく実現しなかったものと推定される。