暗黒星団帝国戦役から銀河系中央部戦役まで

 重核子爆弾の投入という奇襲攻撃によって始まった暗黒星団帝国戦役に、当初地球防衛軍はほとんど有効な対処を取れなかった。この戦役の特に初期は防衛軍にとって計算外の事態が多発したのだが、その大きなものの一つに「太陽系への侵略に対すべき迎撃戦力が、外惑星基地の要員が全滅し機能しなかった」ということがある。

 もちろん、これは艦隊にとっても極めて重要な問題であった。A型戦艦に限定すると、外惑星基地に配備されていた「カイオ・デュイリオ」「テネシー」「ドレッドノート(Ⅱ)」「ネルソン」は全乗員を失って戦闘力を喪失、その後の戦局に全く寄与できなかった。
 また、改装あるいは整備のため地球の工廠に待機していた「ストラスブール」「ネヴァダ」「メリーランド」は、侵攻してきた暗黒星団帝国軍に拿捕されるのを防ぐため主要部を爆破する措置を取らざるを得ず、いずれも戦役後に修復不能と判定され解体されている。

 重核子爆弾襲来の直前に演習のため金星基地へと移動していた「金剛」は無事であったが、地球本土が占領されている状況で金星から動くことができず、ヤマト隊によるデザリアム星攻撃が成功するまで行動していない。その後の暗黒星団帝国地球残存勢力に対する作戦には参加しているが、敵艦隊の多くがヤマト隊追撃に出払っていたため大きな戦果は残せなかった。

 唯一、戦役勃発前にシリウス星系へ派遣された練習艦隊に参加していた「薩摩」がヤマトとの合流に成功し、デザリアム星到達までに発生した艦隊戦で相応の戦果を挙げた。ただ本艦が搭載していた連続ワープ機関は限定的な改造に留められていたため艦隊への追従にいくらか不自由が生じており(ヤマト隊は無人艦との混成部隊だったため、致命的なものではなかった模様)、特に最終盤のデザリアム星崩壊時の脱出の際に連続ワープが成功したのは「全くの幸運でしかない」と戦闘詳報に記載されている。

 暗黒星団帝国戦役終結後、防衛軍は戦役によって生じた損害を補うための軍備拡張を計画した。しかし今回の戦役では艦艇以上に人的損失が大きく、また地球本土そのものの被害が甚大であったことから、既存艦艇に対する改装は予算の確保が難しくなり、A型戦艦に関しては当時の公式文書のいくつかから判断すると「極力規模の小さい改装を行い、他艦艇と性能を均衡化する」という観点で改装されることになったようだ。
 改装の内容については、B型戦艦の量産が決定される前に作成されたと思われる「現有A型戦艦への改装に関して」と題する資料が残っているため、そこから要約する。

・波動砲の換装(この資料には新波動砲と爆雷波動砲のどちらを用いるかは明記されていない)
・主砲を換装し二式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)に対応させる(主砲の換装については「二式波動徹甲弾への対応のため」と資料内で明記されているが、全艦を40cm砲ないし46cm砲に統一することが検討されたかははっきりしない)
・主砲塔内部に砲側照準による射撃を行うための設備を追加(装備済みの「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」は除く)
・パルスレーザー砲の追加および換装により対空兵装を強化
・ミサイル兵装の更新
・機関を単艦で連続ワープが可能なものへと改造

 規模を最小限にしつつ、暗黒星団帝国戦役の戦訓も反映させる改装になるはずだったが、ここでA型戦艦の置かれている状況に大きな変化が生じた。A型戦艦の後継として計画が進められていたB型戦艦の量産が決定されたのである。
 このため、現存するA型戦艦は「B型戦艦の充足まで、現状艦隊の主力として欠かすことができない」「B型戦艦を量産する以上、現有の戦艦に改装を加える意味は薄い」という双方の事情が考慮され、その結果「当面は工事を行うことが難しい」と判断されて改装はいったん棚上げされることになった。ただし「ドレッドノート(Ⅱ)」のみは量産が決まったB型戦艦と同じ爆雷波動砲と46cm衝撃波砲を搭載していたことから、砲術練習艦として用いるため主砲を九九式三型46cm衝撃波砲(暗黒星団帝国戦役時のヤマトの主砲。二式波動徹甲弾に対応済み)に換装、少数ながら二式波動徹甲弾の配備も行われている。
 (なお、以降のA型戦艦各艦に共通する問題として「船体規模が小さく二式波動徹甲弾を搭載する弾庫が確保できない」というものがあり、「ドレッドノート(Ⅱ)」では即応分の1砲塔あて2発を砲塔内に搭載することで対応したが「砲塔被弾の際に誘爆の恐れがあり、装填作業の一部に人力を要するため乗員への負担が大きく作業自体も危険」と艦首脳部が指摘した文書が存在する)

 しかし短期間に再び状況が変化し、今度は太陽の核融合異常増進と第二の地球探査、それに伴ってガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦の紛争に巻き込まれる事態に陥った。もちろん人類移住のための移民船を確保するのが最優先と防衛軍は認識していたが、同時に船団を護衛する戦力として艦隊が必要と考えられたこと、大規模な星間国家同士の紛争に板挟みとなっている現状から移住開始前に太陽系が侵略される可能性も考慮され、結果、A型戦艦の改装について防衛軍は「最前線に戦力として配備しつつ、状況が許せば可能な限り性能改善工事を行う」という、中途半端ながらやむを得ない決断を下すこととなった。

 銀河系中央部戦役終結までのA型戦艦各艦がどのような状況であったか、個別に追っていくこととする。なお、同戦役最後の戦いとなった太陽周辺での会戦はボラー艦隊の長距離ワープによる奇襲という形で開始されたため、この時期ボラー連邦の侵攻に備えて太陽系外周に配備されていたA型戦艦はいずれも参加できなかった。


「カイオ・デュイリオ」

 本艦は引き続き外惑星練習艦隊の旗艦任務に充当されており、遅くとも戦役中盤までに対空兵装の追加工事(内容は「薩摩」と同じで、装備された火器も旧来のもの)と主砲砲身基部への増加装甲の追加が行われている。なお、戦役中に敵艦隊との交戦機会はなかった。

「テネシー」

 太陽系外周無人艦隊旗艦の任を解かれた後、ケンタウルス座のアルファ星第4惑星に駐留する警備艦隊の旗艦として派遣された。戦役中にアルファ星系がガルマン・ガミラス軍の攻撃を受けた際はドック内で整備中で、そこを攻撃され大破炎上し艦歴を終えた。ただ一部の火器は現在も使用可能であり、同地にて防空砲台として用いられている。
 なお、本艦はイスカンダル戦役終結以降、無人艦隊旗艦として必要な司令部施設の整備が続行して行われたが、その他の装備は喪失までほぼ変化はなかったようだ。

「薩摩」

 艦底部のミサイル兵装を九九式二型垂直軸ミサイル発射管(発射速度向上)に換装する工事が行われている。完了後は乗員の訓練に従事し、戦役後半にはカイパーベルト宙域に進出しボラー連邦艦隊との小規模な戦闘のいくつかに参加した。

「ドレッドノート(Ⅱ)」

 「カイオ・デュイリオ」と同様の対空兵装強化が行われた。戦役開始時は砲術練習艦として活動していたが、戦役後半に「薩摩」と共にカイパーベルト宙域での艦隊戦に参加している。
 なお、砲塔の形式が他のA型戦艦と異なる本艦は砲塔天蓋への増加装甲は不要と判定され、追加工事は実施されなかった。

「ネルソン」「金剛」

 この2隻はB型戦艦充足まで戦艦戦力の中核と見なされていたため太陽系内で温存されており、戦役最終盤に冥王星基地へ移動した以外は特に戦歴はない。改装は戦役初期に「カイオ・デュイリオ」と同じ対空兵装強化と、二式波動徹甲弾に対応する「一式二型40cm衝撃波砲」への換装と主砲砲身基部への増加装甲追加、および「薩摩」と同様にミサイル装備を更新、主砲に砲側照準による射撃を可能とするための装備が追加されている。ただ「ドレッドノート(Ⅱ)」と異なり両艦に二式波動徹甲弾が配備された記録は現在に至るまで見つかっていない。
 (筆者の推定だが、この時期の二式波動徹甲弾の生産は46cm砲弾に絞られており、その影響で配備できなかったものと考えられる)

 ちなみに、A型戦艦各艦が第二の地球探査に派遣された調査船団に参加しなかったのは、元々の設計に起因する「無寄港で長期間の航海を行うには他艦の支援が必要である」点が問題となり、検討の結果「運用に労力が多く船団の足手まといになる可能性が高い」と判断され、護衛艦リストから外されたことが公式文書により判明している。
 また、この時期の大口径衝撃波砲に共通するボラー連邦艦艇に対するエネルギー通常弾の威力不足問題については「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」の戦闘詳報に「至急の対応が必要である」との記載があり、特に二式波動徹甲弾に未対応だった「薩摩」が戦闘で難渋したと伝わる。


ディンギル戦役

 銀河系中央部戦役が終結して程なく、移民船建造のため縮小されていたB型戦艦の量産も順次再開され、続々と新造艦が竣工していった。この時期は白色彗星帝国戦役以前よりなお参謀本部が波動砲搭載戦艦に大きな期待を寄せていたから、B型戦艦の建造ペースは当時の状況から考えても相当に早いものとなっていた。

 それに伴い、A型戦艦各艦は順次第一線を退いて二線級戦力として維持される方針が決定された。これは過去の戦役から得た戦訓を考慮した場合、艦齢が比較的若いとはいえA型戦艦の性能が少なからず陳腐化しているのは否めなかったからである。特に参謀本部はB型戦艦に波動砲の性能で大きく劣るのが最大の問題としていたことが資料からもうかがえる。
(なお艦隊側も、この時期の戦闘演習に関する所見で「A型戦艦は全般的にB型戦艦に比して性能が劣り、実効戦力としての価値に疑問がある」と述べている)
 この問題を改善するため大規模な改装を行うべきという意見もあったが、そうした改装を実施したとしても、新造のB型戦艦に伍して戦える艦とするのは極めて難しいと考えられた。そのためか、少なくとも前期生産型の2隻については代艦としてB型戦艦を追加建造するべく予算の折衝が行われるところであったようだ。

 その状況で発生したのがディンギル戦役である。

 当時、B型戦艦は15隻が完成しており、この全艦が木星圏でディンギル侵攻艦隊と交戦した。しかし有力なハイパー放射ミサイルを用いた敵艦隊の攻勢を支えきれず、B型戦艦を主力とした地球防衛艦隊はこの一戦で壊滅的な被害を受けた。

 A型戦艦各艦はこの時点では予備兵力扱いであり、木星会戦には参加せず地球および内惑星基地に待機していた。しかし主力艦隊が壊滅し、未だ冥王星宙域には機動要塞を始めとする多数の敵戦力が存在する、同時に水惑星アクエリアスのワープ阻止を行わなければ人類の滅亡は避けられない。この非常事態に防衛軍は残存する艦艇をかき集め、修理が必要な艦にも最低限の修理を施して戦線に投入するという決断を下した。
 この決定と前後して地球本土にディンギル軍の空襲が行われ、そのとき「金剛」が主機関に大きな損傷を被り作戦への参加が不可能になった。そして「第二次冥王星会戦」と呼ばれるディンギル太陽系侵攻軍との戦闘には「カイオ・デュイリオ」「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」「ネルソン」が参戦し、このうち「ネルソン」は防空を担当するC1型駆逐艦10隻と艦隊を編成して囮部隊の一翼を担い、他の3隻は本作戦の主力と目される第一遊撃部隊にB型戦艦の残存艦「マサチューセッツ」「スラヴァ」と共に編入された。

 しかし、最終的には敵機動要塞を撃破し会戦に勝利した防衛軍であったが、ディンギル軍の攻撃により「ネルソン」と「カイオ・デュイリオ」が撃沈され、残る2隻も大破してその後の戦闘継続が不可能となった。これはB型戦艦を始めとする他の艦も概ね同様の状況であり、敵の本拠地である都市衛星ウルクに突入したのがヤマト1隻となったのはこの会戦の損害が大きかったことによる。

 第二次冥王星会戦におけるA型戦艦については、戦闘詳報において性能全般の不足、および改装が統一されていなかったため各艦の性能が不均衡で運用に支障が生じている、と指摘された。また一方で「かかる状況において、性能で劣るとはいえ艦隊内に戦艦が存在していたのは幸いであった」という記述も残されている。


A型戦艦の現状と今後

 ここからは、2204年現在および今後のA型戦艦について、僅かではあるが触れてくことにする。

 現存する「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」「金剛」は、編成上は第二戦艦戦隊の所属となっているが、実際に3隻揃って行動したという記録は今のところ見つかっていない。これは建造時期や改装の内容が異なるため、性能が均一化されておらず戦隊の構成に不利と見なされているからと思われる。

 理由は様々だが、ディンギル戦役後の地球防衛軍は水雷戦隊が用いる波動魚雷と、航空隊が装備する波動ミサイルに多くを期待していて、現状の軍備はそれらに重点が置かれている。
 そのため戦艦の価値は相対的に低下を余儀なくされているが、地球防衛軍の戦力が絶対的に少ない現状としては、既存艦を全て捨てて新しい軍備にというわけにもいかないようで、A型戦艦も性能不足を指摘されながら未だ第一線の現役艦として就役を続けることが決定された。

 最近公表された艦隊編成によると、A型戦艦各艦は艦隊戦力の次期主力と目される水雷戦隊(編成はC3型嚮導駆逐艦1隻とD型駆逐艦9隻)に1隻ずつ付属することが判明している。これは戦艦としての火力と抗鍛性を発揮し、水雷戦隊の雷撃戦を掩護することが想定されていると思われる。
 同時に、既存艦より高速化された駆逐艦群で構成される水雷戦隊に追従するためには性能、特に速力とワープ能力に難があるA型戦艦であるため、来年一番艦が就役すると発表されたヤマト後継の新型戦艦が艦隊に編入され次第、順次想定された任務に必要とされる改装が行われることになった。

 現状、防衛軍から発表されている改装内容を以下に示す。

 ・波動砲を全艦、二式二型タキオン波動集束可変砲に換装(同砲はB型戦艦に搭載された爆雷波動砲の簡易型で、当初はB型巡洋艦の後期建造艦に搭載が予定されていた)
 ・主機関をB型巡洋艦と同様のものに換装し、連続ワープを可能とする
 ・補助機関を換装し、主機関と共に出力を強化し速力を向上させる
 ・三番砲塔後方に爆雷投射装置を追加し、戦闘機用格納庫の一部を爆雷搭載庫に改造(これにより戦闘機仕様のコスモタイガーⅡの運用が不可能となる)
 ・ミサイル兵装および対空パルスレーザー砲を全門、新型に換装
 ・電探、通信機器の更新

 これらの改装により艦容は相応に変化すると思われるが、特に現在搭載している波動砲が連装砲である「金剛」はこの工事で船体ラインが「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」と同様のA型戦艦オリジナルのものになるとされている。
 そして、この改装が終了すれば、太陽系外周までという運用の制限はあるにせよ、A型戦艦は地球防衛軍の戦力の一角として再生できると見てよく、更に今後の動向が注目されると言えよう。

 防衛軍内での価値が低下したとはいえ、侵略者からの視点に立てば「相手に戦艦が存在する」という事実は抑止力として大きいと推測される以上、戦艦の存在そのものにはまだ多少なりとも意味があるだろう。再度の改装工事が決定したことによってA型戦艦もしばらくは現役の戦艦として艦隊の一翼を担うことになりそうであるし、いつか退役するその日まで、A型戦艦に対して太陽系防衛の戦力としての期待を込めて、この項の終わりとさせていただきたいと思う。


おわりに

 長々と書き連ねたが、A型戦艦の一番艦「ドレッドノート(初代)」が完成してから3年ほどしか経過していない。多くの兵器がそうであるように、当初は様々な欠陥を抱えて誕生した本型ではあるが、研究と戦訓を重ねて熟成されていき、時に外的要因で紆余曲折が生じたこともあったが、地球防衛軍の戦艦戦力の中心として量産が行われ、数多くの戦役を主力艦として戦い抜いたのは評価するべきだろう。
 また技術面においても、多くの試行錯誤を重ねながら高い戦闘力を維持し、後に続く戦艦のみならず、多くの艦艇に与えた影響も無視することはできない。

 同時代にヤマトやアンドロメダといった武勲艦が存在するがゆえに地味な存在となることが多い本型だが、地球防衛軍の軍備について語るときには決して欠かせない存在であり、現在もなお限定的ながら主要戦力として防衛軍の一翼を担い続けているA型戦艦は、文字通り地球防衛軍の「主力戦艦」と呼ぶにふさわしい存在ではないかと、筆者は考えるのである。