地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。まだ作品は少なくブログ自体の体裁も整っておりませんが、細々ながら書き込んでいきますので楽しんで頂ければ幸いに思います。

カテゴリ: 地球防衛軍艦艇史

第二次土星沖会戦の悲劇

 2207年に生じた銀河系中心部の大災害、当初地球防衛軍はヤマトを派遣しその調査にあたらせたのだが、そのヤマトが謎の敵対勢力(それがディンギル帝国とわかったのは第二次冥王星会戦の直前である)の攻撃を受け大破、自動航行で地球に帰還してきた。
 加えて、水惑星アクエリアスが謎のワープを開始し、僅か15日にして地球に迫るという非常事態が発生、これを受けた連邦政府は地球人類を一時的に宇宙コロニーや他の惑星、およびその衛星の基地に避難させる措置をとることにした。水惑星の水害による被害は恐らく尋常ではないだろうが、この時点では「水が引けばまた復興すればよい」という楽観的な見方が強かったのは否めない。

 しかも、ヤマトを攻撃した敵対勢力については「注意が必要」という認識はされたものの、艦隊は当面地球近辺に主力を配備し、避難の第一陣として土星タイタン基地および周辺の宇宙コロニーに出発した船団に護衛艦をつけなかったことは、地球防衛軍にとって取り返しのつかない失態になった。

 そして、その「ヤマトを攻撃した謎の敵対勢力」が太陽系に攻撃を仕掛けてくるということなど全く想定外で、外惑星の各基地には戦力にならない程度の艦艇しか残存していなかったため、たちまち11番惑星基地と冥王星基地が謎の大艦隊(以降はディンギル軍と記す)によって制圧されてしまった。この事態は、連邦政府や防衛会議、地球防衛軍の参謀本部にとってまるで考えの及ばない状況であった。
 上層部に話を通す暇はない、と判断した藤堂平九郎防衛軍統括司令長官の独断により、土星に向かっていた避難船団を掩護すべく、直ちに地球防衛軍の主力艦隊が発進した。このとき完成していたB型戦艦15隻のうち、テスト航海中に爆雷波動砲を最大出力で発射したカイパーベルトD宙域会戦以来、機関の不調に悩まされていた「マサチューセッツ」以外の14隻全艦がこの主力艦隊の中核戦力として出撃している。

 しかし、この「第二次土星沖会戦」と呼ばれる戦いは無残なものだった。避難船団は救援が間に合わずに全滅、そして避難船団を防衛すべしと急いでいた防衛艦隊は隊列が乱れており、戦場にたどり着いた第一陣のB型戦艦は、まずは敵艦隊の殲滅をと拡大波動砲の速射を行った。
 だが、その拡大波動砲の発射のタイミングに敵艦隊が戦術上の要件で(波動砲を回避するためのものではなかった、と後に判明した)ワープを行い、発射した拡大波動砲は回避されてしまう。しかも敵は強力なハイパー放射ミサイルを搭載した水雷艇部隊を既に発進させており、隊列を整えておらず満足な防空網を張ることができない状態でいた地球防衛艦隊に左側面から襲い掛かってきた。

 結局、側面を取られた状態からハイパー放射ミサイルによる飽和攻撃を受ける……奇しくも内惑星警備艦隊司令長官が鳴らした警鐘とほぼ同じ状況になった地球防衛軍の新鋭主力艦隊は、それでも防空駆逐艦であるC型駆逐艦の奮戦で相応の敵水雷艇とミサイルを撃墜はしたものの、その数に抗しきれず壊滅的な損害を出した。
 この会戦で失われたB型戦艦は12隻、生き残ったのは艦隊後方で損傷が中破に留まり、大勢が決した後に戦場を離脱した「スラヴァ」と、戦闘で大破して土星の衛星エンケラドゥスに不時着した「伊勢」のみだった。

 主力艦隊の壊滅、そしてアクエリアス接近まであと2週間。更に地球本土に行われた空襲で更なる艦艇と脱出用の輸送船の多くを破壊され宇宙への脱出も不可能、人類は絶体絶命の危機に追い込まれることとなった。


第二次冥王星会戦

 危機的状況に連邦政府と防衛軍はパニック状態に陥ったが、それでも藤堂長官を始めとする防衛軍の一部は諦めていなかった。殆ど戦時の状況を利用した独断の措置ばかりだったが、とにかく太陽系からのディンギル帝国軍の駆逐、水惑星アクエリアスのワープ阻止のため彼らは準備を始めた。

 まず、月基地および内惑星に温存されていた戦闘能力の低い艦、あるいは旧式艦をかき集めて護衛艦隊を編成。更にヤマトや「スラヴァ」「マサチューセッツ」といった修理が必要な艦に戦闘航海に支障がない程度の最低限の修理を施し、艦隊を編成して出撃させることが決定された。

 大まかだが、このとき準備された三つの艦隊の編成を挙げておく。

 第一遊撃部隊

 A3型戦艦「薩摩」(旗艦)
 A2型戦艦「カイオ・デュイリオ」
 改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」
 B型戦艦「マサチューセッツ」
     「スラヴァ」
 A2型巡洋艦4隻
 B型巡洋艦3隻
 C1型駆逐艦2隻
 A2型駆逐艦18隻

 第一陽動部隊

 A4型戦艦「ネルソン」
 改C1型駆逐艦10隻
 (防空は海王星基地戦闘機隊が担当)

 第二陽動部隊

 戦艦「ヤマト」
 B型巡洋艦「矢矧」
 改C1型駆逐艦8隻
 (防空は第64飛行隊(ヤマト搭載戦闘機隊)が担当)

 二つの陽動部隊の任務は、敵部隊、特に水雷戦隊を引き付け、敵艦隊の主要基地である機動要塞を破壊すべき第一遊撃部隊の突入を掩護することだった。そして波動砲発射が可能な戦艦を集中配備した第一遊撃部隊は、波動砲戦を以て敵艦隊および機動要塞の撃滅を行うことが期待されていた。
(なお、この第一遊撃部隊を率いていたのは、皮肉にも現状の軍備に警鐘を鳴らした内惑星警備艦隊司令長官であった)

 しかし、地球側にとって思わぬ事態が発生する。敵の残存する水雷艇部隊が事前の想定を上回っていたため、第一、第二陽動部隊に水雷戦隊を引き付けること自体は成功したものの、この両部隊のうち第一陽動部隊は文字通り全滅、第二陽動部隊もヤマトと駆逐艦1隻しか生き残ることができなかった上に、水雷戦隊の一部が第一遊撃部隊にも向かってきたのである。

 そのため、主力である第一遊撃部隊も過酷な戦闘を強いられることになった。向かってきた水雷艇の数は陽動部隊のそれに規模で劣ったが、大型艦の多さからたちまち主力部隊と察知され、敵艦隊の集中攻撃を受けることになったのだ。
 幸い、敵水雷艇にはガトランティス戦役以来の快速駆逐艦であるA2型駆逐艦によって対処できたが、それ以上の不幸は、時にワープを繰り返して通常航行時の速力の遅さを補う戦法を取るディンギル艦隊相手に早期の波動砲戦はほぼ不可能だったため(後にヤマトが波動砲戦を行って成功させたときは、小惑星帯での戦闘だったためディンギル軍はワープ戦法を有効利用できなかった)、敵に数で劣るにも関わらず通常の砲雷撃戦で対処するしかなかったことだった。

 このため、第一遊撃部隊司令長官は戦艦部隊の砲撃戦とA2型駆逐艦による機動戦を用いて何とか敵艦隊を一か所に集めさせ、強引に波動砲戦に持ち込みこれを壊滅させることに成功したが、犠牲はあまりに大きかった。第一遊撃部隊も旗艦「薩摩」と「ドレッドノート(Ⅱ)」、B型戦艦では「マサチューセッツ」が生き残ったものの、先の戦いで損傷していた「スラヴァ」は損害拡大のため放棄、戦闘終了後に自沈させる措置を取らざるを得なかった。また、残存艦および護衛艦も大半が失われるか例外なく大破しているという状況であり、今後の作戦行動が不可能となっていた。

 そして、最後に敵機動要塞および都市衛星ウルクを撃破し、更に自らを犠牲にして地球を救ったのはヤマトだった。そして戦役後、ヤマトに対してやむを得なかったとはいえ何も掩護ができなかったこと、自らの指揮で多くの将兵を死なせた悔恨も込めて、第一遊撃部隊司令長官は上層部に再び意見を具申した。

 「波動砲に依存しなければならない艦隊は実効戦力として意味がなく、今後一切必要ない。その上で、もし戦艦を建造するという選択肢があるならば、それは例え少数でも必ずヤマトに匹敵、あるいはそれ以上の攻防性能と機動力を、波動砲を問題とせずに持たせなければならない」

 今度のこの意見を、無視できる防衛軍首脳部の人間は存在しなかった。


B型戦艦の現状とその未来

 ディンギル戦役終結後、B型戦艦は生き残った「マサチューセッツ」と、エンケラドゥスから浮揚、復旧された「伊勢」。そしてディンギル軍の空襲を免れて完工した「ロドネー」「日向」(「アイオワ」はディンギル軍の空襲で受けた損傷が大きく、建造が中止された)の4隻で第一戦艦戦隊を編成した。

 そして年も改まり、これまで「地球の守護神」として親しまれてきたヤマトを失い、連邦政府と地球防衛軍は市民から激しい非難を浴びた。そしてディンギル戦役における惨敗を招いた原因となる軍備を推進し、その結果として「地球防衛軍の象徴」たるヤマトを自沈に追い込んだ参謀本部は、艦隊に所属する将兵から激しい憎悪を向けられていた。
 そうした対立の結果、とうとう先日発生した「政略派(波動砲艦隊推進派)」と通称される勢力のクーデター事件を招くことになった。そして、このクーデターが失敗に終わったことで、波動砲艦隊を推進していた派閥の関係者は防衛軍から一掃され、新たに防衛軍統括司令長官に就任した山南修宙将の元、地球防衛軍は新たな軍備を行うことに決定した。

 それは、極力小型化した波動魚雷を搭載する運動性に優れた新型駆逐艦と、波動ミサイルを搭載した新型コスモタイガーⅡ(五三型と称される)を配備した航空隊を決戦兵力とする新たな編成で、その中でB型戦艦は「戦況が許せば波動砲を使用するが、主任務はその火力と防御力によって艦隊戦列の中核を維持すること」という、A型戦艦の初期案に戻った構想で運用されることになった。
 もちろん、現状B型戦艦は新鋭艦であり、駆逐艦や航空機の数が揃うまでは貴重な防衛戦力と認識されているため、ディンギル戦役の戦訓を取り入れて、また自軍に配備された波動弾頭を有する実弾兵器に対する防御方策も考慮され、限定的ながら改装工事が行われている。

 前期型というべき「マサチューセッツ」「伊勢」は修理時に、後期型とも呼べる「ロドネー」「日向」は建造工事中に以下の改装が加えられた(なお便宜上、本文では前期型と後期型に分けたが、A型戦艦と異なり防衛軍はB型戦艦を前期型と後期型に区分してはいないので注意されたい)。

 ・舷側装甲を二重化し、間に緩衝材を充填(20世紀のイタリア戦艦「ヴィットリオ・ヴェネト」級の装甲の構造に類似する)。これによりハイパー放射ミサイルおよび波動弾頭の爆発を装甲の外側で吸収する構造に変更
 ・艦内隔壁の強化
 ・艦尾上方のアンテナを艦尾下方に移設
 ・「マサチューセッツ」のみ、不調の機関を建造中止となった「アイオワ」用に準備されたものに換装

 この工事で防御力は限定的ながら向上したとされ、戦艦としては相応に有力と判定されることになった。だが、防衛軍の中にあって戦艦の存在感そのものが低下しており、また新鋭艦であるにも関わらず、ヤマトがこれまで担ってきた任務を完全に代替することができないB型戦艦に不満を持つ者は少なくなかった。そのためB型戦艦は「これ以上の追加建造は行わない」と決定され、以後はヤマトを始祖とする「汎用戦艦」の系譜を引き継ぐC型戦艦のみを少数建造し、A型、およびB型戦艦の系譜である「主力戦艦」は、建造そのものが当面ストップされることになった。

 今後すぐ、B型戦艦が地球防衛軍にとって「戦力とならない」と判断されることはないだろうし、その能力は例え行動可能な範囲が限られたとしても、敵に対する抑止力として十分に期待できる。しかし「曲がりなりにも新鋭艦である」ということが枷になってしまい、今後大改装が順次行われるA型戦艦の残存艦(こちらは旧式ゆえに「使いつぶしが効く」)のような積極的運用は難しいと思われるからか、あくまで噂だが「何隻かモスボールされる可能性がある」という極端な話まで聞こえてくる。それは極論としても、艦艇研究者としての筆者は戦争を望むところではないので、B型戦艦に地球防衛の戦力として期待しつつも、退役までその出番が来ないことを望む次第である。


おわりに

 B型戦艦は「強力な爆雷波動砲を搭載するためだけに」建造された艦であり、もしこれを諦めていればA型戦艦の拡大型として、あるいはヤマトの安価量産型としてバランスの取れた標準的な主力戦艦として世に出たかもしれない。
 とはいえ、B型戦艦は「砲塔型副砲がなく中距離での対空力に欠ける」という欠点はあったがそれ以外の完成度は十分に高く、そしてその問題に関しては本来、護衛艦である巡洋艦や駆逐艦が補うべきことであって、本艦の罪ではない。筆者としては、真に責任を負うべきは内惑星警備艦隊司令長官が指摘したように、B型戦艦にまるで合わせるように巡洋艦を大型化したり、運動性に欠ける駆逐艦を量産するなど、諸事情はあろうが十分な護衛兵力や機動戦を行える艦隊を用意しなかった当時の防衛軍参謀本部にあった、と断じるしかないところである。

 不幸なことだが、もし今後何かしらの戦禍が太陽系を脅かすとしたら、再びガトランティス戦役時代のバランスの取れた艦隊を志向し始めた現在の防衛軍なら、このB型戦艦の欠点を補った運用ができるかもしれない。しかし、繰り返すがそれはあくまで不幸とすべき出来事であるから、そうならないことを筆者は望む。だが、同時にそれはB型戦艦がその持ち得る能力を十全に発揮せずに役目を終えるということであり、上層部の思惑によって生み出された「軍備の歪さ」で未だ本当の活躍の場を得ていないB型戦艦は、文字通り「悲運の高性能戦艦である」としか、今の筆者には評する言葉が見当たらないのである。

A型戦艦に続く主力戦艦

 2208年現在、少数ながら地球防衛艦隊の戦艦戦力の中核を担うB型戦艦は、当然ながら防衛軍戦艦史における立ち位置は「A型戦艦に続く地球防衛艦隊の主力戦艦」となる。
 しかし、B型戦艦の建造が計画された経緯を紐解くと、A型戦艦の建造計画、特に当初のそれと明確に異なる点が一つ存在することがわかる。それは、A型戦艦の建造計画はあくまで「大口径陽電子衝撃砲を装備し敵戦艦に対抗可能な艦を建造するためのもの」であったのに対し、後にB型戦艦として実現する新戦艦計画は「完成した新型波動砲を搭載するために、新戦艦を建造する必要が生じたため計画されたもの」ということである。


新型波動砲の開発

 この事情から、まずは本艦が装備した通称「爆雷波動砲」(「拡大波動砲」とも呼ばれるが、混乱を避けるため本文ではこの呼称で統一する)の説明から始める。この部分は「コスモ・ウイングス」第三部第一章に記述されたものを筆者が要約などしたため、あちらも参照していただければ幸いである。

 拡散波動砲の開発中から、防衛軍の一部には「ガミラス戦役の戦訓から、固定目標への破壊力を重視した波動砲を別に開発すべきではないか」という意見は存在していた。しかし最初の波動砲である九九式一型次元波動集束砲(ヤマトが最初に装備した波動砲)より固定目標への威力を追求した波動砲の開発を目指したとしても、当時の地球防衛軍の戦略構想が「太陽系に侵攻してくる敵艦隊の迎撃」に重点を置いていたこと、そして当時から現在に至るまで達成されていない「タキオン式波動砲によって次元爆縮式(と通称されるヤマトの搭載する)波動砲をエネルギー集束率で上回る」という課題の解決に全く目途が立たない状況だったため、結果「一式タキオン波動拡散砲」として拡散波動砲が完成してからは、タキオン式波動砲の研究はその威力増大に目的が絞られて細々と行われる(僅かながら実験用の艦艇が建造されたようだが、詳細は現在不明である)こととなった。

 その結果、拡散波動砲搭載艦が艦隊に配備され始めた当時の防衛軍は「拡散波動砲による敵艦隊撃滅を最優先とし、固定目標には多数の艦による波動砲の一斉射撃によって対処する」と決定した。この時期に建造された戦艦は元より、連合艦隊司令部など実戦部隊の一部から批判されながらも巡洋艦や駆逐艦にすら規模を問わず波動砲が装備されたのはこうした事情によるものである。

 ともあれ、次世代型波動砲の研究自体は継続して行われることとなった。当時の記録を要約すると「集束率の向上も含めて、今後の発展を見越した研究を絶やすわけにいかない」という苦しい状況が伺えるのだが、その研究の中で比較的早期に「集束型と拡散型の波動砲をハイブリッド化してはどうか」という提案がなされている。
 これは、波動砲の威力ではなく汎用性の向上を目指したものだったが、元々予算や人的資源の限られる防衛軍としては、1隻で集束波動砲と拡散波動砲の両方が使用可能な戦艦が建造できる可能性が生じるのは魅力だった。そのためこの提案は採用され、後に「爆雷波動砲」となる新型波動砲の具体的な研究が開始されることとなった。意外なことだが、これはガトランティス戦役勃発前という早い時期に開始された作業である。

 だが、ガトランティス戦役の結果、研究中のハイブリッド式波動砲が内包していた問題点が早期に発覚し、開発陣はその対策に追われることとなる。
 元々、集束波動砲と拡散波動砲はエネルギー集束装置の特性以外に極端な違いはないため、やろうと思えばA型戦艦など拡散波動砲搭載艦が波動砲を集束モードにして発砲することも不可能ではなかったし、実戦でも必要に迫られて何度か行われている。しかし、その戦訓から「既存の拡散波動砲搭載艦を用いて集束モードで発射した場合、元々エネルギーの拡散を前提としている砲を搭載しているため、集束モードの威力に著しい不足がある」と指摘され、更に「現状、集束および拡散波動砲双方において、全般的な威力および射程の不足、エネルギー充填時間の長さなど問題があり、早期の解決を求む」という、ただでさえ新型砲の研究に悪戦苦闘している技術陣にとっては無理難題と言うべき要求も艦隊側から付け加えられていた。
 当時は地球本土にまで被害が及んだ大戦役が終結したばかりの混乱期であり、しかも太陽系外惑星にはガトランティス帝国の残存軍が相当数残っている状況だったから、再び新型波動砲の計画は頓挫するのかと技術本部は焦りを隠せなかったようで、その様子は残された当時の資料からも伺える。

 だが(不謹慎ではあるが)、ここで技術本部にとってある僥倖がもたらされた。ガミラス・イスカンダル危機が勃発し、地球に援軍を要請したガミラスから、それまでガミラス側が秘匿しており地球独力では完成させることができなかった連続ワープ機関の詳細な技術が供与されたのだ。
 結果、研究中だった連続ワープ機関の実用化に目途が立ち、同時に波動機関そのものの出力向上が見込めることとなった。そして、この連続ワープ機関に関連した技術を応用することによって、拡散波動砲の威力を増強するための増幅装置、それもアンドロメダ型戦艦に搭載された大型のものをA型戦艦のそれと同等レベルにまで小型化が可能であると研究で判明したのである。

 これを受けて、技術本部は新型波動砲の改良を開始し、同時に実用テストを兼ねて、建造中の改A3型戦艦「ドレッドノート(Ⅱ)」の集束型波動砲に改造を加えて本格的な集束率の変更を可能とし、同艦から得た戦訓も設計に反映させることを決定した。
 「ドレッドノート(Ⅱ)」はガミラス・イスカンダル危機時は太陽系でガトランティス帝国残存軍との戦闘に従事していたが、戦闘詳報で波動砲の威力と射程にまだ若干の不足がある、およびエネルギー充填時間が向上していないことを問題視する一方で「状況に応じて波動砲の集束率を変更できることは、戦略的にも戦術的にも極めて有効と認める」と報告した。改良が必要とはいえ新型波動砲が有効と判定されたことに技術本部は安堵したが、同時にガミラス・イスカンダル危機における別の戦訓が問題となった。
 それは、新たな敵となった暗黒星団帝国軍が保有する、ウラリア式制圧自動惑星「ゴルバ」との交戦記録だった。このガトランティス都市帝国ほどではないが艦艇に比べれば超大型の兵器には、エネルギー集束率という点で地球の技術陣にとって羨望の的とも言えるデスラー砲すら効果がなかった、というのである。

 後の調査で、デスラー砲が無効化されたのは暗黒星団帝国軍が多用するエネルギー偏向バリアが原因と判明したが、この結論はむしろ「偏向バリアを超越する程度に既存波動砲を強化する必要がある」という要求にも繋がった。そのため新型波動砲を担当する技術者たちは「射程の向上、広範囲かつ効率的なエネルギー拡散、従来のタキオン集束型波動砲を上回る破壊力」という三つの難題に早期に取り組むことを余儀なくされることになったのだ。
 結論から書いてしまうと、自動惑星に対抗する波動砲としては、暗黒星団帝国戦役直前に大改装が行われたヤマトの波動砲を改造した通称「新波動砲」が担うことになったが、本題からは外れるのでここでは触れない。ただ、もちろん新波動砲とは異なる「開発中の別の新型波動砲」の集束モードの強化は極めて重要と考えられていたし、射程および拡散モードの威力の向上も必要であることに変わりはなかった。

 結局、技術本部は力技と言うべき方法でこの問題の解決を図ることになる。新技術で可能とされた波動砲エネルギー増幅装置の小型化を放棄し、アンドロメダ型戦艦のそれと同等の規模を維持する代わりに性能を大幅に向上させ、三つの難題すべてを一気に解消することにしたのだ。
 暗黒星団帝国戦役の勃発で試作砲の制作が中断する事態も発生したが、戦役終結後に技術陣は今度は暗黒星団帝国軍の戦艦「グロテーズ」級に搭載されていた無限β砲をも参考にして威力、射程を強化した試作砲を完成させ、試験に供した。結果は集束、拡散モード双方で威力と射程が向上、エネルギー充填時間の大幅短縮という満足すべきものに終わり、これを受けた防衛軍はこの新型波動砲を制式兵器として採用し「四式タキオン波動集束可変砲」の名称を付与した。
 (なお、このとき制作された試作砲は当時建造中だった汎用戦艦「アリゾナ」に転用されている)

 しかし、この新型波動砲の完成には大きな代償が伴った。それは、エネルギー増幅装置の規模をアンドロメダ型戦艦と同程度にしたため、既存のA型戦艦と同大の艦には搭載が不可能となったのである。そして、これらの現有戦艦に改装を行う、あるいはA型戦艦を再び量産して新開発の波動砲が搭載することができないなら、この砲をどのように活用すべきなのか。
 申し訳程度の議論が行われたが、結局「新型戦艦を設計し、A型戦艦に替わる主力戦艦として整備する」という結論を防衛軍首脳部が出すのに、さほど時間はかからなかった。


爆雷波動砲のための新戦艦

 開発が終了した四式タキオン波動集束可変砲には、現在「爆雷波動砲」あるいは「拡大波動砲」という通称がつけられている。この「爆雷」というのは水上艦艇が対潜用に装備した爆雷が「爆発する深度が調整できる(後述の爆雷モードではエネルギー拡散地点の精密な調整が可能である)」ことにちなんで名づけられたという説もあるが、事実かどうかは判然としない。繰り返すが混乱を防ぐため、前述の通り本文では「爆雷波動砲」で統一する。
 ただ、実験の過程で既存の集束、拡散いずれの波動砲とも弾道特性が異なることが判明したため、開発当初に予定された「集束モード/拡散モード」という区分けが、最終的に「拡大モード/爆雷モード」に変更されたのは間違いなく、現在も発射時のヒューマンエラーを防ぐため、拡大モードでの発砲時は「拡大波動砲」、爆雷モードの際は「爆雷波動砲」と艦隊内で呼び分けているのも確かである。

 さて、爆雷波動砲の搭載を前提とした新戦艦の設計要求は、ただちに参謀本部から艦政本部へと持ち込まれた。しかし艦隊戦力が激減している状況での参謀本部の焦りを反映するかのように、この要求は「四式タキオン波動集束可変砲を搭載し、同時に戦艦としての任務が遂行可能な艦を設計せよ」という、かなり大まかなものであったようだ。
 これにはさすがに艦政本部も困惑したようだが、まず爆雷波動砲を搭載すると船体規模がどの程度になるか試算が行われた。その結果「全長340m程度、重量は最低でも9万トン近くになる」との結論が出たが、従来の主力戦艦であるA型戦艦どころかヤマトすら僅かながらも上回る大型艦になるというこの試算に、今度は参謀本部のほうが面食らったといくつかの資料が伝えている。
 とはいえ、どのみち爆雷波動砲を搭載するために新戦艦を建造するのだから、この大型化は避けられないと参謀本部は割り切るしかなかった。もちろん、これでは建造費が高騰しA型戦艦ほど数量が揃えられないのは明白だったが、最終的には艦隊側からの「予算の都合で量的確保が難しければ、最低でもプレアデス級戦艦(暗黒星団帝国の旗艦型戦艦)、可能であればグロテーズ級戦艦に単独で対抗できる戦力を有する艦をできる限り多数建造することを望む」という要求が決め手となり、参謀本部はこれに沿った戦艦の設計を艦政本部に下命した。

 当時の防衛軍の保有戦艦は6隻(ヤマト及び各国で建造中の汎用戦艦は除く)まで減少しており、戦力の補充が急務であること。また、ある程度の試算を事前に行っていたことも幸いして、艦政本部は昼夜兼行で早期に新戦艦の要目を以下のようにまとめ上げた。


全長     346m
全幅     93.8m
船体重量   87,900トン
乗員     165名(戦時最大定数、90名程度で戦時運用は可能)
主機     タキオン式次元波動機関 1基
補機     大型ケルビンインパルス機関 1基(艦底部)
       埋め込み式小型ケルビンインパルス機関 2基(艦後下方両舷バルジ内)
波動砲    四式タキオン波動集束可変砲 1門
主砲     五式48cm三連装収束圧縮型衝撃波砲 3基9門
対空兵装   三式76mm連装パルスレーザー砲 16基32門(艦橋構造物両舷)
       埋め込み式25mm単装パルスレーザー砲(艦各部に多数)
ミサイル兵装 三式大型魚雷発射管 単装2基2門(艦首)
       一式三型魚雷発射管 単装6基6門(艦中央部両舷に後方へ向けて配置)
       九九式二型改一垂直軸ミサイル発射管 単装8基8門(艦底部)
       一式小型魚雷発射管 単装6基6門(艦首)
爆雷兵装   四式八連装波動爆雷投射機1基 8門(後甲板)
搭載機    一式三二型空間艦上戦闘機「コスモタイガーⅡ」12機
       (このうち2機は偵察機仕様)
       九八式汎用輸送機「コスモシーガル」2機
       救命艇2機、その他救命ボートなど


 実に9万トン近い大型艦となったが、参謀本部としても既にこうなることが試算でわかっていた以上、他に選択肢もなかったようである。この設計案は若干の修正を加えられたのみで採用され、このとき「B型戦艦」という名称が付与された。


船体構造

 B型戦艦は任務に関してはA型戦艦の直系にあたるが、技術的な系譜としてはこれまでの地球型戦艦と大きく異なり、本型より先に建造が開始されていたC型駆逐艦で大規模に採用された「箱型ブロックユニット構造」が使用されており、建造期間の短縮と軽量化が同時に図られている。そのため既存の地球防衛軍艦艇に比して曲面部分が少ない船体となっており、1番艦が披露されたときは話題になったと伝えられる。
 装甲厚などは機密のため不明であるが、船体構造がやや脆弱で後に補強を必要としたA型戦艦の反省から、ブロック方式といってもその構造は極めて強固なものとされ、装甲外鈑もA型戦艦より特に主要部が増厚されたようである。この効果があったのか、少なくとも就役当初は艦隊側も「十分な防御性能である」と高く評価している。

 中央部のバルジ形状の部分は、波動砲の速射時における放熱装置と艦載機格納庫のスペースとなっており、発進口は艦底に配置された。なお、本艦はコスモタイガーⅡ12機の搭載が可能であったが、設計の段階で「偵察機と輸送機、救命艇などを除いた固有の戦闘機は搭載せず、基地航空隊の燃料、弾薬の補給地点として格納庫を用いる」とされており、一部の作戦を除いて自艦所属の戦闘機隊を搭載したことはない。
 主砲、艦橋構造物の配置はほぼA型戦艦を踏襲しているが、通信設備の強化のため各所にアンテナが追加されている。ただ三番砲塔後方上部に伸びたアンテナは「三番砲塔の射界を制限する」と問題視され、ディンギル戦役後に残存していた艦と以後の建造艦のみ艦尾下方に配置を変更している。
 艦橋は一見すると背の高い大型のものに映るが、これはレーダーのアンテナ配置によってそう見えるだけで、実際は比較的コンパクトにまとめられている。旗艦としての能力に関しては、当時の防衛軍で最も旗艦能力の高かったA5型戦艦とほぼ同じで、100隻単位の艦艇を一括して指揮するための設備が搭載されていた。

 艦内の居住区は、A型戦艦とほぼ同等のスペースが確保されている恵まれた環境であり、乗員たちからも好評であった。また、ヤマトのようなO.M.C.S(食料合成装置)こそ搭載されなかったが、暗黒星団帝国戦役の戦訓から長期の航海に備え、重要防御区画に糧食庫や真水生成器などの大規模な給糧設備も準備されている。艦内工場についてはヤマトほど大規模なものにはならなかったが、A型戦艦よりは充実した工作設備を有していたとされる。


兵装

 このB型戦艦の存在意義とも言える四式タキオン波動集束可変砲であるが、その性能は爆雷モード(拡散波動砲相当)においては「アンドロメダの波動砲に比して破壊力、射程、有効範囲全てにおいて勝る」と評されている。一方で集束波動砲にあたる拡大モードは「(大改装後のヤマトが搭載した新波動砲こと)九九式二型次元波動集束砲に比して射程は同等だが、やや威力は劣る」と判定されたが、それでも艦隊側が不満を持つほどの威力不足に悩まされたという例はなく、むしろ就役時はその速射性能を高く評価されている。

 波動砲以外の兵装だが、本艦は四式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)が採用されてから初めて建造された戦艦であり、その使用が最初から決定されていた。そのため主砲には当初、当時のヤマトと同じ九八式三型48cm陽電子衝撃砲が予定されたが、設計中に砲塔を小型化するためにヤマトでは砲塔内に装備されていた陽電子収束器を砲身巻き付け型に改造した「五式48cm収束圧縮型衝撃波砲」が採用された。主砲の性能自体は九八式三型48cm陽電子衝撃砲と殆ど違いはないとされており、砲塔の旋回速度も砲塔小型化の効果もあって(対空砲兼用とされていた)A型戦艦より若干速い旋回性能を有していたとされる。
 また、四式波動徹甲弾、および三式融合弾用の弾庫も本艦では比較的大規模に準備されており、1門あて10発分程度の容積が確保されていたが、希少金属を多用する砲弾の生産が間に合わず、定数を装備して出撃したという記録は現状見つかっていない。

 また、A型戦艦と同様に本型も砲塔型副砲は採用されなかったが、これもA型戦艦と同じく主砲で対空射撃および軽艦艇にも問題なく対処可能と判断されたからだった。だが、後述するがこの措置が本型の運命に大きな影響を与えることになる。

 対空パルスレーザー砲は、A型戦艦やアンドロメダの対空砲不足が問題視された反省から、新型の三式76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて8基装備するという重装備になった。これは40mm砲塔や25mm砲塔を混載するヤマトに門数では劣ってもほぼ同等の近接対空火力と評価され、以後の地球防衛軍の戦艦の標準になったとも言われる。また、艦の各部に対空埋め込み式パルスレーザー砲を多数装備しているのは従来の戦艦と変わらないが、具体的な門数は不明である。

 一方で魚雷、ミサイル兵装は若干犠牲にされており、小型艦への対処用の魚雷発射管や艦底部防御用の垂直軸ミサイル、後方への通常型魚雷発射管など、就役時は特に見るべきところはない標準的な雷装と言えるだろう。爆雷兵装は大改装後のヤマトと同様、後部上甲板に八連装波動爆雷投射機が1基装備されている。


機関

 本型の主機関には艦政本部が新たに開発した新型波動機関が採用されており、小型軽量ながら出力はアンドロメダの主機(ただし、アンドロメダの主機は波動炉心3基によって構成されているので純粋な比較は難しい)にほぼ匹敵すると評価されている。また、連続ワープも可能である。
 補機はA型戦艦が搭載したものを改良した大型ケルビンインパルス機関を艦底部中心線上に1基、それと小型の同機関をバルジ収納型として両舷に1基ずつ装備した。また出力に余裕があることから旋回スラスターもA型戦艦より数が増やされており、艦隊側は「速力、直進安定性、旋回性能いずれも大型艦としては優秀」と肯定的な判定を下しており、この方面は就役後も特に問題は生じなかった。


建造計画の頓挫と急速量産

 こうして設計が纏められたB型戦艦は、ガトランティス戦役以来、波動砲への傾斜を深める地球防衛軍、特に参謀本部に大いに期待される存在となっていた。そのため建造は速やかに行われるはずであったが、2206年に発生した太陽の核融合異常増進による人類移住計画がこれに歯止めをかけることになる。人類を第二の地球に移住させるための輸送船団の建造が最優先とされたため、戦闘用艦艇に関しては必要最小限、それも一部兵装を省略して移民船の代用として使える艦のみに絞ると決定されたのである(この結果、一部武装を撤去して居住施設などを充実させた改C1型駆逐艦などが少数ながら建造されている)。

 そのため、資材を大量に消費するB型戦艦は真っ先に建造中止の対象とされ、地球および太陽系基地で当時建造されていたB型戦艦15隻のうち、ガルマン帝国とボラー連邦の紛争に巻き込まれた事情を考慮して、最も建造が進展していた「ダンケルク」「マサチューセッツ」の2隻のみ工事が続行されたものの、残りは全て建造作業が停止された。このためB型戦艦の1番艦は「ダンケルク」ということになり、これが本艦型の命名の由来となっている。
 「ダンケルク」は完成後、地球から最後に出発する探査船団の護衛艦として第二の地球探査に参加、ボラー連邦の小艦隊と数度交戦したが、相手の艦隊の規模が小さかったことも幸いして、その火力によって一方的に撃退している。また、銀河系中央部戦役末期に完成した「マサチューセッツ」はテスト航海中に「カイパーベルトD宙域会戦」に参加、爆雷波動砲を以てボラー連邦の大艦隊に壊滅的打撃を与えるなど、その優秀性を証明した。

 これによってB型戦艦に自信を深めた参謀本部は、太陽の核融合異常増進が治まると同時に、停止されていたB型戦艦の建造を一斉に再開した。この時期の参謀本部の入れ込み具合は相当なもので、当初15隻だったB型戦艦の計画も、政府との折衝で24隻(追加された9隻のうち、実際に起工されたのは3隻)まで増やすことに成功するなどして、並行して建造が開始されたB型巡洋艦も含めて、参謀本部の目指す「波動砲艦隊」は実現一歩手前まで来ていた。

 しかし、順調に竣工していったB型戦艦を待ち受けていた運命は過酷だった。そしてそれは、よりによって味方からそれを予言されるという悲しい宿命を背負っていた事実を、この時点で知る者は誰もいなかった。


無視された警鐘

 ここで、2207年に勃発したディンギル戦役勃発前に完成していたB型戦艦を一覧にしておきたい。

 BBB-01 「ダンケルク」
 BBB-02 「マサチューセッツ」
 BBB-03 「レトウィザン」
 BBB-04 「扶桑」
 BBB-05 「ロイヤル・オーク」
 BBB-06 「ケーニヒ」
 BBB-07 「マジェスティック」
 BBB-08 「コロラド」
 BBB-09 「カイオ・ジュリオ・チェーザレ」
 BBB-10 「ノルマンディー」
 BBB-11 「アイダホ」
 BBB-12 「スラヴァ」
 BBB-13 「ヴェストファーレン」
 BBB-14 「インペロ」
 BBB-15 「伊勢」

 (ディンギル戦役勃発時、建造中だった艦)
 BBB-16 「ロドネー」
 BBB-17 「アイオワ」
 BBB-18 「日向」


 ディンギル戦役におけるB型戦艦に関しては後に述べるが、実はB型戦艦、正確には本艦型を中心とする「波動砲艦隊」に重大な欠陥があることを、ディンギル戦役前に行われたある演習が明らかにしていたのである。
 それは、二線級戦力としての維持が決定したA型戦艦の生き残りを中心とした内惑星警備艦隊との演習時のことだった。当時の内惑星警備艦隊司令長官は艦隊派の中でもあまり波動砲に大きな期待を寄せる提督ではなかったのだが、その彼から「A型戦艦、A型巡洋艦、A型駆逐艦(全てガトランティス戦役時の主力艦艇)を中心とする我が艦隊に、是非最新鋭艦で編成された部隊との演習を許可してほしい」との申請があったのだ。

 元々、この提督に好意的とは言えなかった参謀本部は、これを新生波動砲艦隊のお披露目にはちょうど良い機会と判断し、結果、互いに戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦8という編成で、内惑星警備艦隊と防衛軍第一艦隊から抽出した最新鋭艦部隊が実戦演習を行ったのである。

 結果は、しかし最新鋭艦隊にとっては惨憺たると言うべきものだった。

 内惑星警備艦隊は、最初から相手が波動砲による先制攻撃を行うと読んで機動戦に転じ、大型艦揃いで直進速度はともかく運動性に問題のあるC型駆逐艦やB型巡洋艦の包囲網を軽々と突破、B型戦艦に対して駆逐艦部隊が近接雷撃戦を敢行したのである。
 B型戦艦の防御力、および当時の魚雷の威力不足から撃沈判定にまで至った艦は存在しなかったが、内惑星警備艦隊の機動戦に散々振り回された新鋭艦隊は最終的に勝利判定こそ取ったものの、特に波動砲艦としては防御力不足、巡洋艦としては大きすぎたB型巡洋艦は3隻が撃沈判定されるなど、旧式艦で揃えられた内惑星警備艦隊に対して許容範囲を超える大損害を出していた。

 演習の直後、内惑星警備艦隊司令長官から意見の具申があった。

 「現状の主力艦隊は、戦艦が大型化し防御力が強化されたのはよいが、小型艦に近接されると砲塔型副砲を搭載していないため対処が遅れる傾向がある。また、機動副砲の役割を果たすべき駆逐艦は大型に過ぎ、搭載砲の門数が不足している。巡洋艦に至っては戦艦とも巡洋艦ともつかぬ中途半端さがあり、現状使い道を見出すことは困難としか言いようがない」

 つまり、B型戦艦はまだましなほうで、その周囲を固めるべき護衛艦艇の建造計画や配備に問題があると指摘したのである。そして、内惑星警備艦隊司令長官の意見具申はこう締めくくられていた。

 「ガミラス戦役当時のような、機動戦を得意とする相手に宙雷戦を仕掛けられた場合、C型駆逐艦の防空力を以てしても全て食い止めるのは困難を極め、艦隊が大損害を被る可能性が高い。想定される敵水雷戦隊の攻撃に対処すべく、既存小型艦艇の有効活用、および護衛艦として運動性能に優れる小型艦を新規に建造すべきである」

 ここで抜粋した指摘に限らず、軍備全体をもう一度見直すべきという内惑星警備艦隊からのこの意見は、しかし参謀本部に無視された。何より同艦隊の司令長官が上層部から受けが悪かったのもあったが、自分たちが決定し整備した「波動砲艦隊」を問題視されたことで参謀本部の人間の多くが感情的になってしまったのが問題だった。そのため、この演習の結果は「乗員の練度の差によるもの」とされ、参謀本部は内惑星警備艦隊から下士官兵の1/3ほどを主力艦隊に転属させるという方法で問題をうやむやにしてしまったのである。

 だが、例え結果として本格的な対処を行う時間がなかったとはいえ、この味方からの警鐘を無視したの愚行だった。それが取り返しのつかない事態を招くのだが、その事態、ディンギル戦役におけるB型戦艦について触れるのは次項に譲りたい。

地球型波動機関の研究と完成

 2199年、ヤマト発進。このことで「これで地球は救われる」と市民レベルではそうした雰囲気も散見されたが、当時の国連宇宙軍にとっては「新たな戦いの始まり」でしかなかった。
 元々「メ2号作戦(ガミラス冥王星基地攻略作戦)」はヤマト計画の一部に組み込まれてはいたが優先度が低く、太陽系に残留するガミラス軍への対処は、基本的にはメ号作戦で残存する艦隊戦力の大半を消耗した国連宇宙軍の役目だったからである。そして彼らには、少なくとも地球本土への直接攻撃を防ぐ、またヤマトの帰路を確保するために、冥王星基地を壊滅させられずとも太陽系ガミラス軍の戦力を可能な限り漸減することが求められていた。

 2198年にイスカンダル王国から波動機関の設計図がもたらされる以前から、地球でもガミラスの鹵獲艦を用いた波動機関の研究と試験が行われていた。特にガミラス軍と国連宇宙軍との絶望的とも言える艦艇の性能差は波動機関の有無であることは明白だったから、技術本部としては何としても波動機関の製造、量産にこぎ着けるため最大限の努力が払われていた。
 しかし、設計図を入手するまでは、文字通り地球にとってオーバーテクノロジーであった波動機関を地球で量産するなど夢物語にすぎず、図面を得たことで研究自体は加速したものの、まず波動機関に必要な希少金属の調達、そして波動コアのコピーに全く見通しが立たない以上、波動機関搭載艦の量産など途方もないことだった。そして、当然のことながらこの時期は「ヤマト計画」のための宇宙戦艦「ヤマト」の完成が最優先であり、2199年のヤマト発進まで、地球型波動機関の研究は実質停止に近い状況であったと伝えられる。

 しかし、ヤマトが出撃した以上、地球には波動機関を搭載した艦は一隻も存在しない。そして波動機関を搭載していない艦も、メ号作戦を生き残った戦艦「キリシマ」の他は僅かな巡洋艦と駆逐艦のみで、これらだけではガミラス艦隊の一分隊すらまともに相手にできる見込みはなく、ヤマトが土星圏を脱出した直後、国連宇宙軍首脳部はある決断を下すことになる。

 「鹵獲したクリピテラ級駆逐艦の機関を流用し、新造艦を一隻建造する。これを以て護衛艦とし調査船団を編成、木星圏のガミラス基地跡地と土星衛星エンケラドゥスを調査、技術調査と希少金属、物質の採取を行う」

 この「新造艦」は、後に「A型駆逐艦」と呼ばれるグループの原型となる小型艦だったが、鹵獲品ながらも波動機関を搭載することによって、ヤマトの副砲として採用が検討されていた(実際にはより大口径の試製九九式20cm陽電子衝撃砲が採用されていた)九八式15.5cm陽電子衝撃砲の連装砲を2基搭載することが可能になっていた。これなら計算上、ガイデロール級戦艦はともかくデストリア級重巡洋艦までなら何とか対抗可能と判断されていたから、もし敵艦隊に遭遇しても船団の護衛任務は十分に果たせると考えられていた。

 この新型艦は当面駆逐艦として扱われることになり、建造はヤマト建造の際にいくらか物資の余剰が発生していた極東地区(日本)が担当した。艦名は乗り組み予定の乗員たちから公募され「神風」。まさに国連宇宙軍極東地域の乗組員たちが命がけだったことが伺える。
 そして「神風」を護衛艦とした船団は、途中数度にわたってガミラスの小艦隊と交戦したものの「神風」の奮闘でこれを乗り切り、ヤマトの波動砲で破壊された木星のガミラス浮遊大陸の残骸調査とエンケラドゥスにおいてコスモナイト90、そして太陽系内に浮遊する様々な物質を最大限採取することに成功した。
 (なお、この船団による作戦は後に「エンケラドゥス急行」と呼ばれることになる)

 木星の浮遊大陸の調査は、波動砲による破壊の度合いが大きく調査の成果は殆どなかったが、エンケラドゥスにおいてコスモナイト90を一定量確保できたことに加え、たまたま発見されたエンケラドゥスにて放棄されていたガミラス基地(ヤマトはこれを発見できていなかった)で見つかった資料から、太陽系内に散らばる物質のいくつかを加工および合成すれば、イスカンダル製のオリジナルコアほどではなくても、ガミラスのそれと同等あるいはそれを上回る程度の波動コアの生成が可能だということが判明したのである。
 (木星の浮遊大陸やエンケラドゥスの基地などをガミラスが設けようとしたのも、これらの要素を研究するためだと現在は推測されている)

 この朗報は国連宇宙軍首脳部を狂喜させたが、既に調査船団の各船はもちろん「神風」も土星軌道までの航海で機関の疲弊が著しく、とても太陽系内の物質収集に使える状態ではなかった。そのため、この「たった一回の調査船団がかき集めた」使える物資すべてを投入し、国連宇宙軍は太陽系の宙域回復、並びにヤマトの帰路確保のために必要な艦艇の建造を決定した。

 これでは極めて少数の波動機関装備艦しか建造できないのは明白だったが、ヤマトがメ2号作戦を決行した結果、ガミラス冥王星基地が壊滅したことがこの時点で報告されていたため、例え少数でも波動機関、そしてその機関が可能とする砲塔型陽電子衝撃砲を装備した艦艇を揃えれば、残りわずかと思われる太陽系内のガミラス戦力の排除は可能である、と判断されたのである。
 (なお、この時点で「キリシマ」を始めとする既存の艦艇に波動機関を搭載することが放棄されたのは、万一地球オリジナルの波動機関が失敗した場合、機関換装工事を行った従来艦まで戦力として機能しなくなることを恐れたからとされている)


「レコンキスタ」作戦

 国連宇宙軍の号令一下、各地域の突貫工事によって以下の艦艇が建造された。

 試製A型巡洋艦 「エムデン」
 試製A型駆逐艦 「神風」(機関を地球仕様に換装)
         「ジョンストン」
         「グローウォーム」
         「グレミャーシチイ」

(この「試製」とは「後にその艦型のベースとなったため」に筆者がつけたもので、当時そう呼ばれていたわけではないのでご注意頂きたい)

 この5隻の艦隊によって、冥王星基地壊滅後にまだ太陽系に残っていたガミラス戦力(もっとも補給の問題で多くは既に脱出済みであったが)の掃討が決定され、作戦名は「レコンキスタ」(8世紀から15世紀に行われたスペインの国土回復運動にちなんだもの)と名付けられた。

 しかし、作戦こそ開始されたものの、まずこの艦隊は戦闘以前に、未だ熟成されていない、そして波動理論の習得もそこそこの機関科員が扱う地球型波動機関の不調に悩まされることになる。
 波動理論自体は、地球がこれまで持つ核融合反応などの理論と極端な違いがあるわけではないから知識として覚えることに大きな困難はなかった。しかしその運用となると話は別で、不安定、かつしばしば急停止や暴走を繰り返す試作段階の地球型波動機関の不調は目に余るものがあり、唯一、ガミラス型の波動機関を扱ったことのある「神風」の乗組員は他艦の機関不調の度に呼び出されることになった。このため「神風」の乗組員たちは後に「自分たちの艦はいつから工作艦になったのやら」と苦笑めいた回想を残すことになる。

 しかし、苦闘を重ねながら開発、運用された地球型波動機関は、イスカンダル製のコアを用いたオリジナルに劣るとはいえ強力だった。

 何より、これまでは現在の波動砲のような決戦用、あるいは限定的な運用しかできなかった陽電子衝撃砲が柔軟な使用に耐えうる汎用兵器に変化したことは、この作戦に参加した各艦の乗組員たちを大いに驚かせた。ある戦闘では他艦を偵察に出したため「エムデン」「ジョンストン」の2隻のみでデストリア級重巡洋艦5隻と交戦するという、かつての国連宇宙軍にとっては絶望的とも言える状況であっても、見事に返り討ちにしたこともある。こうした小規模な戦闘を重ねつつ、徐々に「レコンキスタ」作戦の参加艦の乗組員たちは自信を深めていった。
 そして、彼らの艦隊は最終的に11番惑星に存在したガミラス物資集積基地を破壊することによって「レコンキスタ」を完遂、太陽系宙域の回復とヤマトの帰路確保に成功。地球人類の滅亡を防ぐことに大きな貢献を果たしたのだった。


 こうして地球型波動機関の開発と「エンケラドゥス急行」「レコンキスタ」の成功により、国連宇宙軍、すなわち後の地球防衛軍はヤマトの航海と同様に波動機関とその理論を学び、今後の軍備に生かすことになるのだが、それらの詳細に関しては「地球防衛軍艦艇史」において各艦型を解説する際に譲ることとしたい。


(筆者追記 本文中の「レコンキスタ」作戦は猫又滋郎氏の「地球防衛軍駆逐艦史」の記述を作者が膨らませたものです。氏に感謝したく思います。また「我が家の地球防衛艦隊」様の影響を受けている部分もありますので(極力被らないように注意はしましたが)、同じくお礼申し上げます)

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