地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

カテゴリ:投稿小説 > 超弩級戦略指揮戦艦春蘭(しゅんらん)奮闘記(八八艦隊様 作)

地球防衛艦隊再編計画

ガトランティス戦役後、地球に何よりも求められたのは、同戦役で失った戦力の補充であった。何しろ主戦力をほぼ全て失い、更にはそれらを指揮する優秀な人材も同時に失っていた為、戦力再編は正に苦難の道であった。艦艇数の絶対的な不足、慢性的な人員不足、ガミラス戦役よりこの二つの問題に散々悩まされて来た地球防衛軍が出した解決策とは、徹底的な人員削減、及びそれを補う為の機械化であった。

機械化を推し進める為の第一段階として、まずはガトランティ戦役時に実験的に建造した無人艦の増産と配備促進をより推し進めていった。
上記のように、ガトランティス戦役時にも無人艦は一定数配備されていた。しかしそれは既存のアンドロメダ級やドレットノート級の艦体を流用した暫定的な物にすぎず、またプログラムの未発達により運用には有人艦の引率が不可欠で、更に肝心の戦闘能力も有人艦よりは大きく劣るものであった。

そこで地球防衛軍上層部は、有人艦を無人艦に改造するよりも始めから無人艦として建造してしまった方がより性能の良い艦を建造できると判断し、直ちに艦政本部に設計を指示した。これが後に地球防衛軍の艦船史に大きく名前を残すこととなる、エクスカリバー級自動超弩級戦艦となるのであった。

しかし、ここに来て大きな問題が一つ立ちはだかった。エクスカリバー級の全長は三百メートルを超える。勿論それだけ巨大な艦体なのだから、当然設計では自律型の指揮装置が搭載され、艦を人間が一切関わることなく動かすことが可能になるとされていた。だが、自律型指揮装置のプログラム開発チームは「この艦が完全に自動で動けるようなプログラムを製作するには、最低でも十年はかかる。」と断言した。これは非常に大きな問題であった。いくら外側が完成していても、肝心の艦を動かすプログラムが完成しないのであれば“また”有人艦に引率してもらう必要が生じるからであった。

「有人艦に引率されるのに変わりがないのであれば、結局は従来の有人艦に合わせた運用しかできなくなってしまう。それならば、従来艦を改造した無人艦で十分なのでは?」無人兵器反対派はそう言って攻勢を強めた。彼らも無人兵器の必要性は十分承知していたが、かといってこれ以上配備を推し進める必要はないと感じていたのである。
これに対し推進派は「では“無人艦の全能力を引き出せるような有人艦”を新たに建造すれば良い。」と考え、艦政本部に開発を指示した。これが後に地球防衛軍の中で最大級の戦艦を生み出すきっかけとなったのであるが、この時点ではまだ誰もがそのようなことは予見していなかった。


飛躍する要求、拡大する性能

当初艦政本部は「エクスカリバー級の有人艦仕様を建造し、それに無人艦の指揮統制装置を搭載すれば良い。」として、エクスカリバー級の有人艦仕様の建造を上層部に提案した。上層部はこの提案を承認し、運用側もアンドロメダ級と同等の砲戦能力を持つエクスカリバー級には大きな期待を寄せていたのでこの決定を支持した。
しかし、それはしばらくして無理があると判明した。エクスカリバー級の有人艦仕様自体は技術的には十分に可能であった。問題は「いかにして無人艦の指揮統制装置を搭載するか?」であった。というのもエクスカリバー級クラスの大型戦艦を複数統制できる指揮統制装置の大きさは、そのエクスカリバー級にすら収まりきらないほど巨大だったのである(実際、この指揮統制装置の多くは艦船ではなく地上に配備されている。)

そして、この指揮統制装置を搭載してなおかつ無人艦の高機動に随伴できるような艦を設計した場合、必要不可欠であると言われた艦の全長は五百メートル、地球防衛軍最大の戦艦であるアンドロメダ級を二回りほど上回る巨大な艦であった。その為運用側から「これなら鹵獲したカラクルム級にこの指揮統制装置を載せた方が早いのではないか?」と言われる始末であった。地球の技術力の限界を見た艦政本部はエクスカリバー級の有人艦仕様を指揮統制艦にする計画を破棄、同時に巨大な指揮統制装置を搭載する為新規設計で新たな艦を建造することを決定した。

設計の基礎となるのは、ガトランティス戦役時に計画されたものの結局建造されることはなかった“A-260型戦略指揮戦艦”と呼ばれる艦であった。これはアンドロメダ級の拡大発展版と言えるような艦で、戦時中に計画された艦ということもあってか徹底的な簡略化がなされていた。艦体や主砲はアンドロメダ級の流用であり、単純にアンドロメダ級の指揮統制能力や総合戦闘能力を強化したような艦であった。設計案はA案からT案までの二十種類、中には全ての主砲を艦首側に集中したN案や、実弾の装填機構を廃止した砲塔を十基も搭載するM案、更には波動実験艦銀河の艦橋を流用し探査型としたK案など、純粋に戦闘能力を強化した艦から本来の目的を外れたような設計の艦まで、実に多種多様であった。

しかし、単純に昔の設計図通りに作ればよいというわけではなかった。元よりアンドロメダ級の艦体では新型の指揮統制装置を搭載することは不可能だと判明しており(アンドロメダ級にも指揮統制装置が搭載されたことはあったが、それは大戦中に無理やり搭載された一時的なものであり、今問題となっている新型指揮統制装置とは直接統制可能な艦艇数だけでも四倍の差があった)どうしても艦体は新規で建造するしかなかったからである。

そしてその新型指揮統制装置を搭載するにあたって、全長は五百メートル、重量は三十万トンと定められた。そして武装については、当初は戦闘を随伴の無人艦に任せれば良いと思われていたので、最低限度の自衛兵装以外は搭載しないこととなっていた。しかしここで連邦政府が「これだけ巨大な艦なのに、何故武装がほとんど付いていないのか?君達は巨額の国家予算を投入して、地球一高価な標的艦を作るつもりなのか?」と追及して来た。この追及は一部の運用側からも寄せられていた。そこで艦政本部はこの追及を回避する為、武装の大幅な強化を行った。主砲の口径拡大及び門数の増加、波動砲の装備、更には艦載機運用能力の付与まで行われた。そして艦政本部は「この艦をアンドロメダに代わる新たな地球防衛軍の象徴としてしまおう。」と提案した。地球防衛軍上層部や連邦政府も、再建された地球艦隊の象徴的な艦は欲しかったので、この提案に乗っかった。

こうして建造は始まった。建造自体は月面基地の工廠で行われ、資材は第十一番惑星や土星などに浮遊しているガトランティス艦を解体したものを流用した。建造は2203年から始まり、約2年をかけて完成まで持ち込むことが出来た。(経験したことのない大型艦であるにもかかわらず建造期間が異様に短い理由については、本艦が新規設計とはいえアンドロメダ級より多くの物を流用できたこと、ガトランティス軍の残党撃滅と地球復興の為戦時生産体制を維持し続けていたこと、ガミラス製高性能作業機械の大量導入などがあげられる)そして紆余曲折を経た末に完成した艦は、これまで地球が全く保有したこともないような大型艦となった。


アンドロメダ改級超弩級戦略指揮戦艦 春蘭(しゅんらん) 諸元

全長:508メートル
艦体重量:33.4万トン
機関:
兵装:四式次元波動爆縮放射器(クラスター型波動砲)3基3門
二式51サンチ4連装収束圧縮型陽電子衝撃砲 6基24門
   一式41サンチ3連装収束圧縮型陽電子衝撃砲 3基9門
   二式大型対艦砲(艦橋砲) 1基6門
重力子スプレッド発射機 連装4基8門
   零式4連装対艦グレネード投射機 2基8門
   二式速射魚雷発射管 単装4基4門
   一式亜空間魚雷発射管 連装4基8門
   一式多連装ミサイル発射管 16門
   九八式二型短魚雷発射管 16門
   九九式二型垂直軸ミサイル発射管 単装10基10門
搭載機:各種空間艦上戦闘攻撃機 48機
    各種汎用輸送機 8機
    各種救命艇 4機


これらの性能表から読み取れることとして、まず圧倒的な砲撃力があげられる。主砲の51サンチ砲の砲門数は24門、これはアンドロメダ級の二倍の数であり、単純計算で春蘭はアンドロメダ級の二倍の砲戦能力を持っていることとなる。更に、これらに加えて9門の41サンチ砲も装備されていることから、総合的な砲戦能力は二倍以上であろう。
なお主砲として51サンチ砲が搭載されている理由は、単に新しい砲を開発する時間が無かったこと、弾薬の共通化、エクスカリバー級やアンドロメダ級と統制砲撃戦を行う為、などとされている。

次に宙雷兵装であるが、これはアンドロメダ級と大差がないどころかむしろ減らされている。というのも、巨大な指揮統制装置や合計9基もの陽電子衝撃砲、更に後述の艦載機の搭載区画まで設置するとなると、いかに春蘭の巨大な艦体といえども目一杯であり、そのしわ寄せとして宙雷兵装が減らされたといういきさつがあった。
そして春蘭の航空設備であるが、これにもかなりのスペースが割かれた。随伴予定のエクスカリバー級には航空機の運用能力がほぼ無かった(エクスカリバー級を改造した航空母艦の計画もあったが、無人艦載機の調達数削減の影響に伴って開発が中止されていた。)ことが理由である。その為春蘭には、合計で60機もの艦載機が搭載可能であった。

搭載可能な航空機であるが、基本的には地球防衛軍が保有している全ての艦上機を運用可能であった。主力となる戦闘攻撃機は、九九式空間艦上戦闘攻撃機“コスモファルコン”や零式空間艦上戦闘機“コスモゼロ”に一式空間艦上戦闘攻撃機“コスモタイガーⅡ”、更には四式自律型空間艦上戦闘攻撃機“コスモライトニング”も運用可能であった。(後の近代化改修で一八式空間艦上戦闘攻撃機“コスモパルサー”の運用能力も付与されている)そして輸送機は、九七式空間汎用輸送機“コスモシーガル”や後継機の五式空間汎用輸送機“コスモハウンド”も運用可能であった。(ただしコスモハウンドは機体サイズの関係上、搭載可能機数が4機のみな上に艦首エレベーターでの運用は不可能である)

なお肝心の無人艦の指揮統制能力であるが、最新鋭の五式指揮統制装置を搭載した為、同時管制可能艦数はアンドロメダ級の4隻をはるかに上回る16隻となっている。これは勿論防衛軍艦艇の中では最大数であった。更にエクスカリバー級の両舷にウェポン級を外付けしたブースター運用を行うことで、運用方法は限定されるが同時管制可能艦数を48隻に増やすことも勿論可能であった。(余談であるが、ブースター運用とはガトランティス戦役時に指揮統制装置の能力不足に悩まされた防衛軍が、同時管制可能艦数を可能な限り増やす為に実施した苦肉の策ともいえるべき代物である。戦艦クラスの無人艦の両舷に駆逐艦クラスの無人艦を重力アンカーにて接続することによって、泥縄式ではあるが同時管制可能艦数を3倍に増やすことが可能となった。今では無人艦の標準的な運用方法として定着している)
春蘭とその同型艦

アンドロメダ改級改め春蘭型超弩級戦略指揮戦艦には、当初は合計で6隻もの建造計画があった。そして半数の3隻が実際に竣工したものの、全く同じ形状の艦がいないという稀有な艦でもある。以下は春蘭とその同型艦が、どのような姿で生まれ、そしてどのような末路をたどったかの記述である。


春蘭型超弩級戦略指揮戦艦 同型艦一覧

一番艦:春蘭(しゅんらん)
二番艦:リヴァイアサン(Leviathan)
三番艦:ヴォルケンクラッツァー(Wolkenkratzer)
四番艦:未竣工(仮称あまてらす)
五番艦:未竣工(仮称インビンシブル)
六番艦:未竣工(仮称あらはばき)

一番艦:春蘭

その名の通り春蘭型のネームシップであり、そして唯一純粋な戦艦型として建造された艦である。西暦2205年に竣工して以来、デザリアム戦役を初陣にさまざまな戦闘に参加している。西暦2220年、第二次移民船団を護衛中にSUS連合軍の攻撃を受け戦没。

二番艦:リヴァイアサン

春蘭型の二番艦、建造途中に暗黒星団帝国軍の攻撃を受け、艦体後部が大きく破損する。それをきっかけに航空戦艦に改装される。その為後部主砲2基を撤去し、空いたスペースに格納庫と飛行甲板を増設した航空戦艦として竣工した。なおこの改造によってリヴァイアサンは、実に120機(6個飛行隊108機+予備機12機)を搭載可能となった。これは後継艦のブルーノアが就役するまで防衛軍艦艇の中では最大の搭載数であった。西暦2207年に竣工、直後に発生したディンギル戦役においてはその広大な搭載数を生かして大量の避難民を輸送する。その後2220年には第二次移民船団護衛艦隊に参加、同船団護衛戦にて戦没する。

三番艦:ヴォルケンクラッツァー

この艦は建造中に暗黒星団帝国、そしてディンギル帝国の攻撃に計二回晒され、その結果艦体は大きく損傷した。一時は廃艦処分も検討されたが、旧式化した波動実験艦銀河の後継艦としてこの艦を波動実験艦に改造することとなる。改造には建造中止となった四番艦アマテラスの資材も流用され、西暦2212年に竣工する。西暦2220年、銀河中心部にて突如発生した移動型ブラックホールの調査の為、銀河中心部へと派遣されるも一か月後に消息を絶つ。

*各艦の詳細なエピソードについては次巻の“運用・戦歴編”を参考にされたし。


春蘭、竣工

紆余曲折はあったものの、春蘭は遂に西暦2205年3月2日に竣工した。竣工と同時に春蘭は直ちに地球防衛軍第七艦隊へと配備され、初代艦長には第七艦隊司令官も兼任している山南修宙将が就任した。そして春蘭を旗艦に据えた第七艦隊は、シリウス星系にて演習を行う為慌ただしく月面基地を出港していった。最後に春蘭就役時に地球連邦大統領が述べた演説から一部を抜粋し、この文章を終わらせたいと思う。

「五年前のガミラス戦役、そして二年前のガトランティス戦役、この数年の間に、人類はこれまでに経験したことが無い大規模な戦争を二回も経験してきました。この戦争で、親しい人を無くされた方も多いでしょう。しかし、人類は幾度となく滅亡の危機に晒されようとも、その度に這い上がって来ました。ご覧ください。今地球は再び蘇り、そして新たな力を手に入れました。皆様の、そして地球と宇宙に平和と安寧をもたらす新しい力です。私はここに、地球連邦政府を代表して宣誓します。もう二度と、皆さまを戦争の惨禍に巻き込まないことを。もう二度と、親しい人、愛する人を失う恐怖を味あわせないことを。」


次巻“運用・戦歴編”へ続く

初陣

春蘭の初陣としてよく語られるのが、就役して間もなく行われた試験航海の途上で発生した第二次シリウス沖海戦である(これより以前に、極秘裏にイスカンダル動乱に参戦していたという説があるが、具体的な証拠が存在せず、また就役時期との矛盾も生じる為ここでは扱わないものとする)

西暦2205年2月11日、人類領域に突如として襲来した暗黒星団帝国(デザリアム)は、瞬く間に太陽系の要所を無力化した後に地球へと侵攻、これを占領した。ここまで電撃的な侵攻を許した原因として、デザリアムが保有していた重核子爆弾によって各基地の駐留艦隊が迎撃行動を行う前に基地ごと無力化されたことや、唯一重核子爆弾の影響を受けなかった無人艦隊が運用ミスによって本来の実力を発揮しえないまま敗北してしまったことがあげられるが、ここでは詳細には触れないものとする。
当然ではあったが、デザリアムは太陽系のみを攻撃目標としていた訳ではなかった。太陽系外の地球の拠点、そして艦艇なども彼らの攻撃目標であった。そしてその中には、春蘭率いる第七艦隊も含まれていた。

異変を最初に察知したのは、元々防衛艦隊の旗艦として運用されることが想定されており、また無人艦隊の指揮統制も行わなければならないため、防衛軍艦艇の中で最も通信能力の高い春蘭であった。
春蘭の通信機器は、つい一週間ほど前に自分達が停泊していたシリウス星系の防衛軍基地からの通信が途絶したこと。そして太陽系内に謎の勢力が侵入し、現在防衛軍はこれと交戦中であること。この二つの情報と、それを裏付ける通信を傍受した。
これを聞いた第七艦隊司令長官の山南修宙将は、即時試験航海を中断し、艦隊をシリウス星系の防衛軍基地へと帰還させようとした。
しかし、突如として第七艦隊の正面に総数百隻以上もの大艦隊が出現した。そして大艦隊は、何の警告も無しに第七艦隊への攻撃を開始した。最初の攻撃でドレットノート級主力戦艦アイダホと陽炎型突撃宇宙駆逐艦子日が轟沈、また改ドレットノート級主力戦艦・丙型のイリノイと、妙高型宇宙巡洋艦羽黒が被弾した。
この攻撃を受け、山南宙将は所属不明の大艦隊を敵と断定、各艦に自衛戦闘の開始を下命した。
だが、第七艦隊の戦況は芳しくなかった。元々二十隻程度の小規模な艦隊だったことに加え、どの艦も就役してから日が浅く乗組員が艦に習熟していないこともあり、第七艦隊は艦の数を減らしつつ徐々に追い詰められていった。
山南艦長のとっさの機転により何とか小惑星帯の一角に身を隠すことには成功したものの、残存艦は春蘭を含め九隻、しかもどの艦も満身創痍であった。それに隠れられていた時間もそう長くはなかった。敵艦隊は第七艦隊の驚くべき奮戦によって三十隻前後(無傷な艦に絞れば二十隻程度)にまで減らされていたが、もはや戦う力の残っていない第七艦隊からしてみれば、まさに死神にも等しい存在であった。そして、小惑星帯に隠れていたところを遂に敵艦隊に発見され、山南以下第七艦隊の将兵達が覚悟を決めた

その時であった。
イカロス基地から飛び立ち、途中にて雪風改以下二隻を指揮下に置いたヤマトが戦場に到着したのである。ヤマトは敵に察知される可能性があるにも関わらずビーコンを作動させた上に、波動砲によってヤマトと第七艦隊との間に広がっていた小惑星帯を一掃し第七艦隊の退路を作り出した。また敵も第七艦隊を捜索する為に艦隊を分散していたことが災いして、ヤマトを発艦したコスモタイガー隊によって各個撃破されていった。
このようにして、春蘭以下第七艦隊は間一髪のところでヤマトに救われた。春蘭からしてみればいささか不本意な初陣かもしれなかったが、春蘭の乗組員達はそう思っていなかったようである。このことは、この戦いが終了した直後に山南宙将が発したと言われている「かつて俺はヤマトを助けた。今、その時の恩返しをされたってわけか。」との言葉が示している通りである。

だが、春蘭の戦いはまだ始まったばかりであった。
そもそもの混乱の発端は、急に地球から四十万光年も離れた場所まで遠征し、そこにある敵の母性と重核子爆弾の制御装置を破壊するという話になったからである。
これを聞いた生き残りの将兵達の内、主に航海科や主計科の面々から反対の声が多く上がった。
まず航海科の主な反対理由としては、未知の宙域、ましてや敵地でもある場所を手探りで往復八十万光年分も航行するのは危険が大きすぎるというものであった。そして主計科の主な反対理由は、長期間の航海が予想されるにも関わらず途中一切の補給を受けられないということから、艦隊将兵への給仕に責任が持てないというものであった。加えてヤマトなどの一部の艦艇を除き、地球防衛軍の艦艇は基本的には太陽系近辺で使用することを前提として建造されており、長距離航海には必須の装備ともさえ言えるOMCSや艦内工場も装備していない艦がほとんどであった。

しかし、最終的に第七艦隊は往復八十万光年もの遠征を行うことを決定した。これは山南宙将が将兵達に話した演説による効果が大きかったとされているが、詳細はここでは述べない。
そして遠征の準備が始まった。準備とは言っても、地球が占領下にある状況を考えると悠長に進めるというわけにはいかない。まずは戦闘終了後に急いでシリウス星系の防衛軍基地に帰還し、そこで積み込めるだけの水、食料、弾薬、それに補修用の資材などを積み込んだ。
また、基地内の修理施設を最低限度の修理が自動で可能になるようになるまで回復させ、そこに第七艦隊の残存艦艇と基地に停泊中に敵の攻撃を受け損傷した艦船を入渠させた。そして入渠させた艦船には修理が終了次第直ちに出撃し第七艦隊と合流せよ。との命令を下した。
ここまでの準備を行う為にかかった時間は約一日、その間、艦隊将兵各員は往復八十万光年もの大遠征についての期待と不安を胸に抱きながら作業に当たった。
そして準備が整った第七艦隊各艦は、慌ただしく基地を出港し大遠征へと旅立っていった。地球が敵の占領下にあり地球市民全員の命が人質となっている中、艦隊には一刻の猶予もなかったからである。軍楽隊の演奏もなく、見送りは入渠中の艦船の乗組員だけという何とも寂しい出撃であったが、将兵達の士気は高く艦内はこれまでにないほどの覇気で埋め尽くされていたという。

今回の出撃はほとんどの将兵が初めて経験する敵国領内への大規模遠征であり、これまでに防衛軍が何度も経験していた太陽圏内での迎撃戦とは意味合いが異なるものであった。やはり人間というものは“守勢”よりも“攻勢”を好む生き物であった。また、艦隊の中にはこれまで幾度となく地球の危機を救って来たヤマトも含まれており、そのことが将兵達の士気をより一層高めた(既にヤマトが幸運艦だということは防衛軍内では常識となっていた)
この大規模遠征中にて、春蘭はその能力をさまざまなところで発揮し続けた。知将ミヨーズ大佐の罠にかかり波動エンジンを停止して使用する波動砲が使用不可能になった時などは、双発という利点を生かし片方のエンジンで航行しつつもう片方のエンジンで拡散波動砲を充電し発射するという離れ業をやってのけた。
またブラックホール近辺での戦いになった時などは、敵の操舵干渉によって一旦ブラックホールに引きずり込まれるという珍事に見舞われるものの、ヤマトの艦内工場にて急遽製造された瞬間物質輸送機によって無事救出されている(このため、春蘭の乗組員には戦後報道関係者からの取材が殺到したという)

そして敵の母星での戦闘では、母星内部に突入したヤマトと雪風改を援護するべく第七艦隊の指揮を執り敵母星の北極の制宙権確保に専念した。その後ヤマトが敵母星内核の破壊に成功、そこから生じた星団規模の大爆発から逃れるため、春蘭以下の第七艦隊は無差別連続ワープを行った。この為各艦はバラバラの位置にワープアウトしたが、最終的には全艦が春蘭の下に集結した後に地球へと帰還している(この時、春蘭に装備された強力な通信設備が大いに役立ったとされる)
銀河大戦
デザリアム戦役後、春蘭は地球防衛軍聯合艦隊総旗艦となり第一艦隊に配属された。
そして西暦2206年7月30日、ボラー連邦の支援を受けた反ガミラス統治破壊解放軍の星間テロ攻撃(後の7.30事件)によって惑星間弾道弾が太陽に着弾、その結果太陽の核融合反応が異常な程促進されるという、所謂“太陽危機”が発生した。
当初、地球はガルマン・ガミラス帝国とガミラス共和国の二ヶ国に太陽の活動抑制作業への協力を要請、三ヶ国合同の技術団が結成され太陽の活動抑制作業に当たった。だが、太陽の活動抑制作業は失敗した。そして技術団は乗船していた船がプロミネンスの直撃を受け多くが帰らぬ人となった。

これにより、連邦政府は太陽の活動抑制作業を断念、地球防衛軍に所属している艦船の中でも長距離航海に適した艦が選抜され、太陽の暴走によって居住不能になると思われた地球の代わりとなる移民先を探す探査船団の護衛が行われた。
既にビーメラ4など人類の移住に適した惑星はいくつか発見されていたものの、今後またこのような事態になった時のリスク分散という意味合いもあり、移住先は出来るだけ多く見つける必要があった。
当初、デザリアム戦役時に長距離遠征の経験がある春蘭も船団護衛艦隊の編成艦候補となったが、きたるべきボラー連邦軍との決戦の為に春蘭は太陽系内で温存されることとなった。

やがてガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦という二大星間国家による大規模戦争(後の“第一次銀河大戦”)が勃発すると、地球もその惨禍に巻き込まれていくこととなった。旧ガミラス帝国時代からの同盟関係とあっては、ガルマン・ガミラス帝国からの参戦要請は断れなかったのである。
しかし、第一次銀河大戦が始まって以降ボラー連邦が地球領内に本格的な侵攻を仕掛ける事態は起こらず(これは、地球とボラー連邦とが直接国境を接していなかったことが大きかった。)探査船団の護衛艦隊や植民地惑星の守備艦隊、更には義勇軍としてガルマン・ガミラス帝国領内へと派遣されている艦隊から次々とボラー連邦との交戦報告が送られてくる中、春蘭の乗組員は銀河の命運をゆだねた戦いに参戦できない自らの不幸を呪った。
しかし、そんな春蘭にも大きな変化が訪れた。第一次銀河大戦終了間際に発生した“太陽沖海戦”である。


太陽沖海戦

第一次銀河大戦末期、永世中立国であるシャルバート王国から、地球は太陽の活動抑制を可能とするハイドロコスモジェン砲の入手に成功する。そしてハイドロコスモジェン砲を搭載した宇宙戦艦ヤマトが地球に帰還した後、太陽の活動抑制作業が直ちに始まった。
しかし、ボラー連邦がそのような行動を黙って見過ごすはずが無かった。彼らも地球がガルマン・ガミラス帝国にとって重要な同盟国であることは十分承知しており、その地球の国力を大いに低下させられる太陽の核融合異常促進を止めるような行為は、何としても阻止する必要があったからである。(この理由のほかにも、ボラー連邦がこの時期に太陽系への侵攻作戦を行ったのは、ベムラーゼ首相の保身とデスラー総統と決戦を行う為に太陽系に侵攻したという説があるが、ここでは詳細には触れない)

その為、ボラー連邦はベムラーゼ首相自ら機動要塞ゼスパーゼに搭乗し、温存していた親衛打撃艦隊一個を率いて太陽系へと侵攻して来たのであった。
戦いの発端は、太陽の活動抑制作業の準備を行っていたヤマトへ、ワープアウトして来たボラー連邦の部隊が奇襲攻撃を行ったことであった。ヤマトを護衛していた地球防衛軍第一艦隊は直ちに迎撃行動を開始し、ボラー艦隊と戦闘状態に移行した。
当初、戦局が大きく動くことはなかった。第一艦隊は全く戦闘に参加できないヤマトという護衛対象を背負っていたものの、地球防衛軍選りすぐりの艦艇や将兵が配備されている第一艦隊は、艦隊司令長官山南修宙将の巧みな指揮もあり、ボラー連邦の親衛打撃艦隊相手に互角以上の戦闘を繰り広げていた。
一方ボラー側の思惑としては、通常部隊よりも装備の質や将兵の練度で優っている親衛打撃艦隊で奇襲攻撃を仕掛ければ、地球艦隊など鎧袖一触だろうと楽観していた。しかし敵対した地球艦隊が思いのほか強力で、ボラー側としては想定外の苦戦を強いられることとなった。辛うじて物量という利点を生かして何とか均衡状態を保っていたものの、地球側が波動兵器の使用に踏み切れば均衡状態が一気に崩壊し艦隊が壊滅する恐れがあった。

その状況を見かねたベムラーゼ首相は、味方艦隊と敵艦隊が戦闘を行っている宙域にブラックホール砲を発射するよう命令した。このブラックホール砲の発射によって地球側の戦略大量破壊兵器(具体的には波動砲)の使用を封じ、更には味方将兵への示威的な意味も含まれていた。味方艦隊の後方からブラックホール砲を撃ち込むことによって、厭戦気分が蔓延している将兵達の士気を恐怖で今一度鼓舞しようと考えたのであった。
そして、地球艦隊とボラー艦隊との丁度中間地点にブラックホール砲が叩き込まれた。突然出現した人工ブラックホールを前に両軍ともブラックホールへの対処で精いっぱいで、とても戦闘を継続できる状態ではなくなってしまった。
まずブラックホール砲を自艦隊越しに撃ち込まれたボラー親衛打撃艦隊側としては、警告もなしにいきなりブラックホール砲が撃ち込まれたことにより、艦隊の最前列にて戦闘を行っていた艦艇数隻が発生した人工ブラックホールに巻き込まれた。そしてその怒りは後方の機動要塞、ひいては陣頭指揮を執っているベムラーゼ首相に向けられた。厭戦気分は確かに払底された。ただし、心の中での攻撃対象が変わってはいたが。

一方、本当に何も知らなかった地球防衛軍側の状況はもっと悲惨であった。そもそもブラックホール砲自体、初めて使用されたのがこの戦いであり、地球どころか二つのガミラスのデータベースにも載っていなかった兵器であった為、対策の施しようがなかったのである。
まず、敵艦隊に対し近接雷撃戦を挑もうとしていた巡洋艦阿武隈以下第一宙雷戦隊(一宙戦)がもろに直撃弾を食らった。一宙戦は、全艦艇が発生した人工ブラックホールのシュヴァルツヴァルト境界面の内側にいたのである。阿武隈とその配下の八隻の駆逐艦は、全艦が重力の井戸に飲み込まれ艦体が圧壊した。
そしてシュヴァルツヴァルト境界面の外側にいた艦艇も無事では済まなかった。
一宙戦を支援しようと戦隊を前進させていた巡洋艦アストリア以下第六巡洋戦隊の四隻は、人工ブラックホールの重力場に捕まり身動きが出来なくなったところを辛うじて統率を保っていた敵一個戦隊に滅多打ちにされた。四隻の内、旗艦のアストリアとシカゴはボラー艦隊の集中砲火を浴びて轟沈、そしてヴィンセンスとペンサコーラは、機関部を撃ち抜かれたことで出力が低下してブラックホールの重力場に抗えず吸い込まれていった。

こうして、第一艦隊は一瞬のうちに五隻の巡洋艦と八隻の駆逐艦を失ったのであった。ブラックホール砲が撃ち込まれる直前、第一艦隊は一宙戦を先頭に攻勢へと転じようとしていたが、もはや攻勢どころの話ではなかった。各艦ともに自らを守ることで精一杯であり、艦隊の統制力はほぼ失われていた。
そしてボラー艦隊の中で指揮統制が回復した一部の部隊が、人工ブラックホールを迂回して第一艦隊に差し迫って来た。第一艦隊が突破されれば、太陽の活動抑制作業の為全く動けず哀れな標的艦と化したヤマトと、それを支援する支援艦数隻が敵艦隊の門前に晒される。しかし第一艦隊は既に組織的な戦闘行動を行えるような状態ではなく、むざむざボラー艦隊にヤマトを生贄として献上することになろうとしていたその時であった。

突如接近中だった敵艦隊が紅色の閃光に包まれ消滅したのであった。第一艦隊の将兵達は、一体敵艦隊に何が起きたのかを理解できず首を傾げた。「あの閃光はどう見ても“あの兵器”だ。しかし、あれを搭載した艦は僅かだったはず。それに、こんなところまで来るような艦ではないはずだが?」
将兵達の疑問はすぐに解決した。忽然とワープアウトして来た艦隊から第一艦隊宛てに通信文が届いたからである。

《我、ですらー総統配下親衛部隊ナリ。貴艦隊トノ統制げしゅたーる・ばむ戦ヲ希望ス。ガーレガミロン。ガーレテロン。》

出現した艦隊は、ガルマン・ガミラス帝国の総統デスラー直属の親衛艦隊であった。
第一艦隊の将兵達は思わぬ援軍に涙が溢れるほど感謝し、その気持ちをそのまま通信文にして旗艦デウスーラⅢ世に送信した。

《了解、共ニ地ガ連合軍ノ誉ヲ見セン。》

ガルマン・ガミラス帝国軍が到着したことによって、戦局は一気にボラー側にとって不利になった。敵艦隊の編成は、旗艦デウスーラⅢ世以下、デスラー砲搭載の新鋭戦艦三十隻、及び随伴艦約百隻。依然として数ではボラー側が優っているものの、波動砲とほぼ同じ威力を発揮するデスラー砲を搭載した艦艇三十隻が問題であった。現に彼らは、ワープアウト直後に行った一斉射でボラー艦隊の二割前後を消滅させていたからであった(ワープ直後に迅速なデスラー砲発射が行えた原因として、地球側が供与した波動砲チャージャーの存在が大きかった)

再び不利な状況に置かれたボラー側からしてみれば、もはやなりふり構ってはいられなかった。そしてボラー側は、星系内でのブラックホール砲無差別使用という禁断の手段に訴えてしまった。
ベムラーゼ首相の下令と共に、機動要塞ゼスパーゼはその砲口をガルマン・ガミラス帝国艦隊へと向けた。しかしガルマン・ガミラス側の方が、対応が素早かった。波動砲チャージャーによって迅速にデスラー砲のエネルギー充電を完了させたガルマン・ガミラス帝国艦隊は、間髪入れずに第二射をゼスパーゼに向けて放った。
しかし、ゼスパーゼの強力なエネルギー偏向フィールドは、三十発以上のデスラー砲ですら受け付けなかった。お返しと言わんばかりに、ゼスパーゼからブラックホール砲が放たれた。放たれた砲弾はガルマン・ガミラス帝国艦隊の中心部にて炸裂、デスラー砲発射の為に密集隊形をとっていた艦隊は、そのほとんどが発生したブラックホールに吸い込まれていった。

そして何とか生き残った残存艦艇へも、ゼスパーゼは容赦なくブラックホール砲を叩き込んだ。結果として、四つ目のブラックホールが発生した時点でガルマン・ガミラス帝国艦隊は戦力の九割以上を損失しており、生き残りはデウスーラⅢ世以下十数隻だけというありさまであった。
第一艦隊は未だに統制が回復しておらず、頼りになる援軍だったはずのガルマン・ガミラス帝国艦隊は満身創痍、地ガ連合軍の誰もが負けたと思い、ボラー連邦の誰もが勝ったと思っていたが、一人の日本人の提案によって、事態は思わぬ方向へと進んでいくこととなった。

「山南司令、我が艦隊と敵さんとの間に発生したブラックホールを利用してスイングバイを行い、敵要塞に肉薄してみてはいかがでしょうか?」

そう提案して来たのは、一人の日本人戦隊司令官であった。彼は新鋭の夕張型軽巡洋艦二隻を率いており、また当時「宙雷の神様」との異名で呼ばれている堀田真司宙将補の教え子でもあった。そして彼の率いている夕張型二隻には、新型の波動魚雷が搭載されていた。
確かに波動カートリッジ弾よりも波動エネルギー量の多い波動魚雷なら、エネルギー偏向フィールドを無視して敵要塞にダメージを与えられるかもしれない(事実デザリアム戦役時、彼と春蘭自身が波動カートリッジ弾によって暗黒星団帝国のゴルバ型浮遊要塞を撃破していた)しかし、敵要塞の前面に展開している敵艦隊は、数は減っているとはいえ未だに半数は健在である。いかにスイングバイで加速しているとはいえ、たった二隻の軽巡洋艦に突破できるものだろうか?
その疑問に対する答えは、山南自身がすぐに思いついた。今こそ、春蘭の双発エンジンと大火力の見せ所であった。

かくして戦局は新たな局面へと移り変わった。機動要塞への突撃を慣行するのは、夕張型軽巡洋艦の夕張と名張、そしてそれを支援する春蘭と、直掩のエクスカリバー級自動超弩級戦艦二隻(トライデントⅢ&トライデントⅣ)の計五隻、これらで臨時の挺身隊が編成された(他の艦艇は、機関出力が不足しておりブラックホールの重力に対抗できない可能性があったのと、未だに指揮統制が回復しておらず、厳密な艦隊運動が行えないと判断されたので編成から外された)
そして春蘭は、機動要塞前面に展開している敵艦隊を突破する為、片方の波動エンジンで航行しつつもう片方の波動エンジンで拡散波動砲を発射するという離れ業をやってのけた。この戦法自体はデザリアム戦役時に経験済みではあるものの、今回はブラックホールでスイングバイを行った直後の発射であり、危険が大きすぎると警告の声が上がったものの、最終的には山南自身の判断によって実行されることとなった。
スイングバイ直後に発射された拡散波動砲は、狙い通りボラー艦隊のど真ん中で炸裂し、敵艦隊の中央部に大きな風穴を開けた。そして春蘭以下五隻の挺身隊は、一発の敵弾を受けることもなく敵艦隊を突破し、機動要塞へとたどり着いた。ボラー側は、挺身隊の速度があまりにも早すぎて挺身隊の艦船を捕捉することすらできなかった。
機動要塞前面にたどり着いた挺身隊は、まず加速中のエクスカリバー級二隻をそのままブラックホール砲の砲口へと突っ込ませた。全長四百メートル以上の巨大な質量弾頭と化した二隻のエクスカリバー級は“聖剣”の名に恥じぬ威力を発揮した。直撃を受けたブラックホール砲の砲口は一瞬にして崩壊し、その無残な姿を挺身隊の眼前にさらけ出した。

この機を逃すなと言わんばかりに、春蘭、夕張、名張の三隻は機動要塞に対して全面攻撃を開始した。春蘭の五一サンチ砲からは一発辺り二トン以上もの波動カートリッジ弾が、そして夕張型の六式魚雷発射管からは試製七式波動魚雷が発射され、それらすべてが機動要塞に向けて撃ち込まれた。
さしもの機動要塞ゼスパーゼも、連続して叩き込まれる波動カートリッジ弾と波動魚雷を前には抗いきれなかった。要塞各所から火の手が上がり、頼みの綱であったエネルギー偏向フィールドも機能を停止した。その為、通常の波動兵器でもゼスパーゼにダメージを与えることが可能となったのであった。
それを見逃さなかったのが、デスラー総統座乗のデウスーラⅢ世であった。ノイ・デウスーラと同様の複合式ゲシュタム機関を搭載したデウスーラⅢ世は、ブラックホールの重力場から難なく脱出することに成功していた。そして搭載しているハイパーデスラー砲(地球の拡大波動砲とほぼ同じ性能を保有するもの)をゼスパーゼに向けて撃ち込んだ。
既に波動カートリッジ弾と波動魚雷によってかなりの打撃を受けており、エネルギー偏向フィールドも機能しなくなったゼスパーゼにこれを防ぐすべはなく、機動要塞はハイパーデスラー砲のエネルギー奔流によって崩壊し、座乗していたベムラーゼ首相も要塞と運命を共にした。

ボラー連邦にとっては正に決戦兵器と呼ぶにふさわしかった機動要塞ゼスパーゼの損失とベムラーゼ首相の戦死、同時に起こったあまりにも重大すぎる二つの出来事は、ボラー連邦軍将兵達に大きな動揺を与えた。その動揺に乗じて一気に勝敗を決すべく、地ガ連合軍は総攻撃を開始した。両軍共に残存兵力はほぼ無いに等しかったが、挺身隊やデウスーラⅢ世が奮闘している間に何とか指揮統制を回復することに成功し、敵機動要塞を撃破したことによって士気が最高に高まっている第一艦隊とデスラー直属親衛艦隊を止められる者は、ボラー側には存在しえなかった。
地ガ連合軍は縦横無尽の活躍を見せ、遅れて戦闘に参加した他艦隊の強力もあって、統制が失われていたボラー艦隊を完膚なきまでに叩きのめした。逃亡と降伏どちらも含めても、ボラー側で生き残れた艦は二十隻程度であった。戦闘開始前の艦艇数が六百隻であったことを考えると、実に九割五分以上の艦船が沈められたこととなる。それほどまでに、地ガ連合軍は精強であった。

こうして後に“太陽沖海戦”と呼ばれることになる戦いは終結した。地球側は敵の大部隊が領宙内に侵入するという愚を犯してしまったものの、駆け付けたデスラー総統率いるガルマン・ガミラス帝国艦隊と共同して侵入した敵部隊の撃破に成功した。
一方ボラー連邦は、偉大なる指導者と残存していた戦力を一度に失ったことから求心力が一気に低下し、その結果地方の属国が次々とボラー連邦に反旗を翻し独立を宣言した。そして太陽沖海戦から一年後に発生した“銀河交錯事件”がボラー連邦に止めを刺した。一時は銀河の半数以上を支配していた巨大な星間連合国家は、遂にその歩みを止めたのであった。


あとがき

本来は春蘭の就役直後からその最後までを一つにまとめ上げようと考えていたのですが、あまりにも文章が長くなりすぎたのでここで一旦文章を分割しました。
現在は完結編から復活編までの、所謂空白の17年間(この文章の設定元にしているA-140さんの年表を元にしますと空白の12年間になりますが)での春蘭の活躍に関して執筆している最中です。
こちらも完成次第A-140さんのブログに掲載させてもらいますので、どうかもう少しだけ待っていただけると幸いです。
さて、今回は主に“宇宙戦艦ヤマトⅢ”の内容を中心に書かせてもらいました。“ヤマトよ永遠に”時代の春蘭の活躍に関しましてはPS2版にて存分に描かれていますので、私の文章では「PS2版のその後」を中心に書かせていただきました。
とは言っても、中心となったのは宇宙戦艦ヤマトⅢでいう第二十五話に当たるシーンで、本来は書かなければいけない第一次銀河大戦についてはほぼ書けなかったのが少し心残りです。
第一次銀河大戦に関しては今後別の作品でもう少し詳しく書きたいと考えていますので、こちらも気長にお待ちいただければ幸いです。
最後に、この文章を掲載してくださったブログ主のA-140さんと、この文章を読んでくださった読者の皆様に、改めて感謝の意を申し上げます。

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