地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

カテゴリ:地球防衛軍艦艇史 > D級(ドレッドノート級)戦艦

2200年当時の地球防衛艦隊の状況

 ガミラス大戦が終結して程ない2200年初頭、地球防衛軍はその艦隊戦力の大半を喪失している状況であり、しかも僅かな残存艦の大半が「陳腐化が激しく員数合わせにもならない」と酷評された核融合炉機関搭載の旧式艦であった。

 この当時、防衛軍が有する波動機関搭載艦としてはヤマトの他に、ヤマトの帰路確保と太陽系宙域回復のため実行された『星還作戦』に投入された新鋭艦が少数存在していたが、前者はイスカンダルへの長期航海を終えたばかりで大規模な整備が必要、後者は大戦末期に急造された、それ自体が『試作艦』と評すべき艦の集まりであり、しかも工業力低下の影響と戦時急造による粗製乱造、更には戦場での酷使による影響から艦の状態が極めて悪く、とても現状において艦隊の主力を担わせるのは不可能であった。
 事実、星還作戦に投入された艦の多くは、大戦終結後に予備艦に編入されたり、艦種類別が変更されて特務艦あるいは実験艦になったりして、早期に第一線から離れていた。また、原設計そのものにも戦時急造ゆえの不備が多数あったようで、例えば星還作戦における一連の戦闘で活躍した駆逐艦として知られる『神風』(この艦をベースに、後にフレッチャー級護衛駆逐艦が設計、建造されている)に代表される新鋭艦の設計を熟成あるいは発展させた新型の巡洋艦、駆逐艦の建造が開始されるまで、これより更なる時間が必要となったのである。

 唯一、幸いだったのは、大戦の終結によりガミラスとの同盟が成立し、その技術供与と地球独自の研究の融合により波動コアの大量生産が地球においても可能となり、結果、波動機関を搭載した艦をある程度量産する目途が立っていたことだった。
 そのため、地球防衛軍は当面、ガミラス大戦において艦隊の主力を担った金剛型宇宙戦艦、村雨型宇宙巡洋艦に波動機関を搭載、それによって生じた余剰スペースに装備の追加を行う、更に波動機関によって強化された出力を利用しての武装強化、並びに波動防壁の設備を追加するなどの改良を施し、この両クラスの量産を以て当面の艦隊戦力の増強を行うことに決定した。この判断については、大戦末期にガミラス軍の攻撃により工廠が破壊されるなどして修理不能となり保管されていた金剛型や村雨型の残存艦を再利用できる、という目算があったことも影響している。

 (なお、波動機関の装備による性能向上に関しては、金剛型や村雨型と同時期に建造されていた磯風型駆逐艦においても検討されている。だが、艦が小型に過ぎ波動機関への換装を行っても戦力の強化が限定されること、ワープ機関の搭載が不可能で太陽系内でしか使用できないという問題があり、宙雷艇あるいはレーダーピケット艦などに用いるものに波動機関換装の改造、およびある程度の新規建造が行われたが、大規模な量産は見送られた)

 確かに金剛型戦艦も村雨型巡洋艦も、ガミラス大戦勃発より更に前から建造が始まっていた旧式艦ではあったが、まだ地球が大規模な戦争状態に突入していない時期に設計されたため、当初から一定以上の信頼性が確保されていたこと。また旧式であるが故に使用実績が長く、それをフィードバックした改設計がガミラス大戦時においても継続して行われていたことがあり、当面の量産艦としてのベースとして十分に利用価値があった。
 そのため、即時量産の開始が可能な波動機関搭載艦の原型として採用されたわけなのだが、結果として両クラスに波動機関を搭載した恩恵は予想以上に大きく、それぞれが核融合炉機関搭載時とは比較にならないほどの性能向上を遂げていた。金剛型戦艦を例に挙げれば、ガミラス大戦時においてヤマト完成前までは対抗策が極めて限定されていたガミラス軍のデストリア級重巡洋艦と交戦したとしても「単艦同士であれば十分以上に対抗可能」と判断されるほど性能が強化されていたから、いかに波動機関の採用とその副次効果が大きく、そして、それを搭載した艦の早期量産が防衛戦力の確保のため極めて重要であったか、この事実だけでもおよそ理解していただけると思う。

 そうして始まった地球防衛艦隊の再整備だが、当時の状況を考えれば、防衛軍首脳が選択したこの施策はほぼベストの選択と見てよかったろう。だが程なく、これら金剛改型戦艦、村雨改型巡洋艦の量産では対応できない事態が、地球防衛軍を悩ますことになるのである。


『新鋭艦を至急に必要とする状況である』

 ガミラス大戦終結後、その交戦相手であったガミラスとの同盟が成立したのは先に述べた通りだが、この同盟にはいくつかの副産物が存在した。そして、その最たるものと言うべきは『ガトランティス帝国という新たな敵を作ることになった』という現実だった。
 無論、イスカンダルからの帰路にあったヤマトがガトランティス軍と交戦していた以上、ガトランティス帝国が少なくとも今後地球にとって仮想敵となることは確実だったのだが、ガミラスとの同盟が成った以上、その相手がガトランティスとの長期的な戦争状態を継続しているのだから、新たに成立した地球連邦政府としても、これに全く関与しないわけにはいかなかった。

 結果、地球防衛軍は太陽系の防衛のみならず、ガトランティス帝国軍に対するガミラスとの共同作戦に限られた戦力の一部を投入することを決定した。反対論もなくはなかったが、政治的、特に同盟に対する信義の問題もあって、選択の余地がなかったのである。
 そのような状況から、専ら中小規模のそれが多かったが、再編半ばの地球防衛艦隊もガトランティス帝国軍との交戦を幾度となく経験することになった。そして当然ながら、その戦力の中核を担ったのは新たに波動機関を搭載した金剛改型戦艦と村雨改型巡洋艦だったのだが、これらはガトランティス軍のラスコー級巡洋艦やククルカン級駆逐艦に対しては十分対抗できる能力を有していると判断されており、実戦でもその通りであった。だが、ガトランティス軍にはこれら既存の艦艇では対応しきれない艦が存在していた。

 元々、ガトランティス軍はガミラス軍に比して大型艦の比率がやや大きめだったことがあり、当時の地球防衛軍には実質存在しなかった戦艦クラスの大型艦との交戦もある程度行われていた。
 このうち、地球への帰途でヤマトも交戦したメダルーサ級火焔直撃砲艦については、確かに火焔直撃砲という強力な兵器を搭載していたものの、それ以外の兵装は必ずしも対応不可能というほどではなく、また火焔直撃砲のユニット自体を含めて防御面に問題があり、機動力もそれほどではなかったため、金剛改型や村雨改型がこれと交戦した場合、局地的な数的優位を確保した上で機動戦に持ち込めば、苦戦はしても対処は困難とまでは判断されなかった。

 問題は、もう一つの戦艦級の敵艦だった。それはこの当時、防衛軍において『大戦艦』と呼ばれていた、ガトランティス軍のカラクルム級戦艦であった。

 この大型戦艦は機動性についてはメダルーサ級とほぼ同等、あるいはいささか劣る程度でしかなく、特筆すべきことはなかった。だがその攻防性能、特に強固な防御力は改良された金剛改型、村雨改型の武装を以てしても、艦隊側の報告から『現状においては不可能と言えるほどに対処が困難』と判定されることになった。いかに威力が大幅に強化されたとはいえ、この両クラスが装備する短砲身ショックカノンでは、カラクルム級の防御を突破して有効打を与えることはまず不可能だったのである。
 もっとも、ガミラス軍が保有する主力戦艦であるガイデロール級戦艦を以てしても、カラクルム級戦艦に打撃を与えることは極めて困難であり、実質、この敵艦に確実に対応できるのはガミラス軍にとっても虎の子の旗艦級戦艦であるゼルグート級戦艦のみとされていたほどだったから、当時の地球防衛軍が保有する艦で対抗するのが限りなく不可能だったのは、確かに無理からぬことではあった。

 (なお、カラクルム級への対策としてヤマトの投入が検討された形跡があるが、当時の同艦は戦略上『太陽系宙域の防衛における決戦兵力』という位置付けであり、また本艦に匹敵する艦が自艦一隻しか存在せず投入時期の判断が難しいこと、運用コストが莫大で当時の地球防衛軍には負担が大きすぎるという理由もあり、早期にこの案は放棄されたようだ)

 しかし、実際にこの強敵と対峙する艦隊側としては『敵にほぼ対処不能な艦が存在する』というのは看過できない状況だった。常に敵に比して数で劣る戦いを前提として戦略、戦術を練る地球防衛軍ではあったが、もし何らかの幸運で一時的な戦力的優位を得たとしても、敵にカラクルム級戦艦が一隻いただけで、その優位が崩れる可能性は非常に高かった。まして、最初から数で劣っていれば、もはや言うべきことはない。
 当時はまだカラクルム級戦艦との交戦自体が少なく、その意味では幸運であったし、見方によっては緊急の対処が不可欠とまで言い切れない面もあった。だが、そもそもガトランティス帝国という勢力自体に謎が多く、今後、どれだけの戦力を投入してくるかなど予想できるはずもなかったし、当然ながら地球が主たる目標とされ攻撃を受ける可能性とて存在していた。だからこそ、むしろ若干ながら余裕があるとも言える現状において、可能な限り早期にカラクルム級戦艦に対抗可能な艦を整備しておくべきではないだろうか。そんな意見が、特に艦隊内において日々強いものになっていた。

 「既存艦艇の力量不足を痛感するものであり、敵大戦艦に対応可能な新鋭艦を、至急に必要とする状況である」

 ある戦闘における詳報のこの記述が、当時の状況のほぼ全てを物語っていた。そして防衛軍首脳部もまた、地球人類を守るために『カラクルムショック』と呼ばれた敵大戦艦への対抗策に取り組む必要性を理解したのである。


波動砲艦か戦艦か

 『カラクルム級戦艦に対応可能な艦を整備する』という一点においては、防衛軍首脳部と艦隊側で意見の相違は存在しなかった。だが、ここで両者の間に一つの論争が発生する。それは、そのカラクルム級という強敵に対してどのような手段で対処するか、という方法論についてであった。

 防衛軍首脳部は、ここで波動砲搭載艦を用いる方策を提案した。元々、防衛軍首脳部、そして連邦政府の中枢はその一部を除き、ヤマト艦長とイスカンダル女王との間で交わされた『今後、二度と波動砲を使用しない』という条約を『個人的な約束』として反故にする気であったから、この機に波動砲搭載艦の大量整備し、後に『波動砲艦隊構想』と呼称されることになる『波動砲の大火力を以て敵艦隊を殲滅する』という思想の実現を狙ったのである。その意味で、既存の兵器で対抗困難な敵艦の存在は、政治的な意味においては都合のよい存在であったことも事実であろう。

 一方、艦隊側は一部の士官がイスカンダルとの条約から波動砲の搭載に猛反対したが、全体としては『新鋭艦に波動砲を搭載することは否定しない』という意見に落ち着いた。だが、波動砲発射に特化した艦の建造については、ほぼ全ての艦隊勤務の士官が強硬に反対している。
 これはガミラス大戦における戦訓が理由であり、その戦訓から艦隊側は波動砲に関して「その大威力は艦隊戦においても評価できるが、発射までにエネルギー充填など時間のかかる兵器は運用への制限が極めて大きく(これは波動機関搭載前のショックカノン搭載艦に同じことが言えた)戦機を逸する危険が大きい。また、もし何らかの理由で波動砲が使用不可能な状況に陥った場合、その艦は艦隊内において戦力として全く機能しなくなる」という意見でおよそ統一されていた。そんな状況だったから、艦隊側としては敵の大型戦艦に対抗すべき艦が、波動砲発射『だけ』に特化した艦として建造されるなど許容できるはずもなかった。

 この論争だが、しかし形ばかりのもので早期に決着がついた。ガミラス大戦の戦訓を検討すれば、艦隊側の主張のほうが妥当であることは言うまでもなかったし、また少数ながら存在した『波動砲搭載艦反対派』の士官たちを極度に刺激しないためにも、波動砲に特化した艦を建造するのは必ずしも適切とは言い難かったのだ。
 そして実のところ、波動砲艦隊に執着がある防衛軍および連邦政府首脳の多くにとっても『新鋭艦に波動砲が搭載される』ことが重要であり、それは必ずしも波動砲特化の艦である必要もなく、通常の戦艦としても用いることができる艦であっても特に気にするべき話とは言えない。筆者の推測ではあるが、そういう一面もあったと思われる。

 しかし、このときの『波動砲艦か戦艦か』という論争は、後に波動砲という兵器の有用性や政治的な意図など様々な思惑が混じり合って複雑化し、長く防衛軍内部において火種として燻り続けるだが、詳しいことはここでは触れない。ただ、今後起こることになる深刻な未来をもたらす対立へと繋がる、その第一歩がこの出来事であったのもまた事実であろうと、筆者としては認識するところである。


新型戦艦の計画開始

 ともあれ、地球防衛軍は『波動砲を搭載した新型戦艦を建造する』という結論に達したのだが、当然ながらヤマトを除き、地球にはガミラスやガトランティスにおいて『戦艦』と呼称されるような大型艦の建造については経験がなかった。
 それでも身近に脅威となる敵艦が存在する以上、設計自体は急ぐ必要があった。そのため何もかも一から設計を開始するだけの時間的余裕があるはずもなく、地球防衛軍内部で新たに発足したばかりであった艦政本部は、まず新戦艦設計のタイプシップとなる艦の選定から開始した。ベースとなる艦が存在すれば、それだけ設計の時間短縮が可能だったからである。

 計画が始まった当時、その候補は三つあった。

 ・ヤマトの設計を簡易化し、量産に対応させる
 ・ゼルグート級戦艦をベースとし、最大限大型の艦を早期に建造することを目標とする
 ・ガイデロール級戦艦の構造を流用し、波動砲の追加など必要な改修を施す

 こうして案だけは出されたのだが、艦政本部として実際に採用できそうなものとなると、正直なところ一つしかなかった。ヤマトのように特殊任務を想定し、その達成のため何も惜しむところなくあらゆる要素を注ぎ込んだ艦を簡易化、量産対応させるなど不可能、あるいは可能であったとしても多大な時間を必要としたし、ゼルグート級戦艦をベースにする案も、ヤマトすら上回る大型艦を簡易化するのも当然ながら難行だったが、そもそもそのような超大型艦の早期建造、かつ量産など、ガミラス大戦の痛手からようやく復興が進んでいる当時の地球にはあまりに荷が重すぎた。

 そのため『ガイデロール級戦艦の構造を流用する』という結論は早期に出されており、ガミラス側にも早々にその旨が打診されたようである。地球側にとって幸いなことに、ガイデロール級戦艦はガミラス軍にとっては秘匿性の低い汎用型戦艦であり、それも旧式艦の部類であったから、この時期においては後継艦の整備が議論されているような状況だった。
 そのためガミラス軍としても、同盟者となった地球がガイデロール級を『地球なりにアレンジする』というのであれば、技術交流によってガイデロール級の後継艦の参考になり得る可能性もあると判断したようで、文字通り『二つ返事で』資料が提供されたと伝えられている。

 こうしてタイプシップも定まり、早速、艦政本部において具体的な設計作業が始まったのだが、開始早々、別の問題が発生して設計作業が停滞する事態に陥ってしまった。

 これは、ガミラス大戦当時に行われていた艦艇整備の方法に原因があった。大戦勃発からしばらくは、まだ地球連邦が成立しておらず国連主導の各国の宇宙艦隊を寄せ集めていた関係で、それぞれの国が自国の規格で艦を建造していたのである。
 当然、これでは非効率ということになり、紆余曲折を経て金剛型戦艦と村雨型巡洋艦、そして磯風型駆逐艦に建造艦を集約して軍備が続けられたのだが、これが決定されて以降、艦艇の設計部門は新型艦の設計を行う機会をほぼ失い、既存艦の改良に忙殺されることになった。例外はヤマトの他に、星還作戦に参加した一部の新鋭艦のみであり、それらすら相当な部分が間に合わせな設計であったことも事実であった。

 そのような経緯があったため、設立にあたっては各国の艦艇設計部門から精鋭を集めたはずの艦政本部であったが、実のところ大型戦艦に関しては無論のこと、そもそも『新鋭の量産艦を設計すること』自体のノウハウが相当に低下してしまっていたのである。先に述べたように、ガミラス大戦末期に建造された新鋭艦の更なる改良が遅れたという事実もあるが、それはこの新規建造艦を設計する作業に関して機能不全が生じていた、という事情が影響していたことは否めなかった。

 急を要する新型戦艦の設計が滞ってしまうという事態に、さすがに防衛軍首脳部は焦りを禁じ得なかった。そのため、防衛軍は艦政本部に対していったん新戦艦の設計を中止させ、新たに別の指示を出した。

 『艦政本部は新戦艦について、ガイデロール級戦艦に波動砲の砲身を搭載、その他の装備を地球仕様に改造した船体部分の基礎のみ設計せよ。その後、その原型に準じた仕様で各地域の軍管区において新戦艦の試作艦を設計、建造し、その中で特に優れたものを量産する新戦艦として採用する』

 つまり、艦政本部のみでは荷が重いと判断された新戦艦の設計を、各地域の軍管区による競作に切り替えたということである。
 無論、ガイデロール級戦艦をタイプシップにすることは既に決定されていたし、一定数の量産が予定されている艦である以上、船型や武装に大きな差異が生じては問題になる。そのため、まず新戦艦に対する要求仕様は防衛軍の中枢で決定し、それに応じて船体の原型となる部分のみ艦政本部が担当、その後のことは各地域の軍管区に任せる。そうした方法に防衛軍首脳部は問題の解決法を見出したのだった。

 この競作には欧州、北米、ロシア、極東の各管区が参加することになったが、これはかつての大国で様々な要素において当時の地球では比較的余裕があったり、極東管区のように大型艦建造(この場合はヤマトがそれにあたる)の経験を有するという理由で選ばれたとされる。
 そして、この四管区による競作をもって新型戦艦、後にD級戦艦となる艦の開発が本格的にスタートしたのだが、その競作の顛末と、この新戦艦の計画と運用が地球防衛軍の艦隊編成のみならず、その軍備全体にどのような影響を与えたか。それらに関しては次項より順々に触れていきたいと思う。

四管区による試作量産型戦艦

 四管区の競作という形で再開されるにあたり、防衛軍首脳と艦政本部が協議して纏めた、いわゆる『要求仕様』の概略は以下のようなものだった。なお、この時点で新型戦艦の制式名称として『A型戦艦』の呼称(よく知られる『D級』の名は通称で制式名称ではないが、公文書においても『D級』と記されることのほうが多かったとされる)が与えられている。

A型戦艦に対する要求仕様(一部抜粋)

全長 300m以下とする

全幅 75mを限度とする

全高 100m程度とする

搭載兵装

1.波動砲
(間もなくの制式採用が予定されていた、通称・拡散波動砲こと)一式タキオン波動拡散砲1門を搭載すること

2.主砲
大口径陽電子衝撃砲を8門以上搭載し、敵カラクルム級戦艦を正面から撃破可能なこと。また、三式融合弾など実弾の発射を可能とすること

3.副砲
主砲の発射速度、並びに砲塔旋回速度の向上が見込まれるため、砲塔型副砲の搭載は必ずしも考慮せずともよい。ただし、司令塔防護用の近接火器は必ず装備すること

4.魚雷、ミサイル兵装
ヤマトの装備を参考に、可能な限り多数を装備すること。ただし、波動砲および主砲の装備に支障を来す場合においては削減も可とする

5.対空火器
対空パルスレーザー砲を可能な限り多数装備すること。ただし、新型の拡散型対空パルスレーザー砲を用いることによる削減は可とする

主機 次元波動機関1基とす。ただし、量産を考慮し生産性と整備性を考慮すること

補機 ケルビンインパルス機関2基以上を装備すること

搭載機 開発中の新型艦上戦闘機(後のコスモタイガーⅡ)を10機以上搭載すること

乗員 150名程度を限度とし、十分な居住性および物資搭載のための設備を確保すること。なお、90名弱程度の乗員での戦時運用を可能とすること


 この要求仕様と同時に、艦政本部が設計した船体の基礎部分に関する設計が各管区に青写真として配布された。結果論になるが、その青写真自体は後にD級戦艦となる量産艦の船体構造および寸法にほぼ準拠したものだったのだが、この時点では要求仕様の範囲内であれば、各管区に対してサイズ変更などの裁量権は与えられており、文字通り『競作』と呼ぶにふさわしい状況を呈することとなる。

 当然のことながら、今回の新戦艦はヤマトのように特殊な任務は想定されておらず、あくまで敵の戦艦、この場合はガトランティス帝国のカラクルム級という明確な仮想敵が存在していたから、まずそれに単艦で対抗し得ること。また、艦隊戦列の中核を成し時には金剛型、村雨型で構成された艦隊の旗艦を務めることが求められていた。
 この仕様要求はその明確な目的に沿ったものであったが、担当した四管区は「この要求が今後の地球防衛軍の『主力戦艦』たる艦を求めている」という点について、その部分はおよそ正確に理解したようである。だが、競作である以上全く同じ艦が出てくるはずもないわけで、四管区はそれぞれ独自色を出した艦を設計することとなる。

 以下では、四管区によって設計、建造された試作艦の概要について説明していきたい。また、ここで建造された4隻の試作艦はそれぞれ数奇な運命をたどることになるのだが、建造後、およびガトランティス戦役中の経歴に関しては基本的に別項を設けたいと思う。


A1型a(欧州管区建造艦)『ドレッドノート(Ⅰ)』

 欧州管区が担当した試作艦。もちろん欧州各国の設計陣による共同設計ではあったが、艦名が示すように建造を主導、実行したのはイギリスであった。
 なお、新型戦艦競作の試作艦としては一番最初に竣工しており、そのため本艦が『新型戦艦の一番艦』とされたことが、後にこのA型戦艦が『ドレッドノート級』、つまり略称D級と呼ばれるようになった理由である。

 実艦は、後に『量産型D級に最も装備が近い』と評されるほど堅実にまとめられており、主砲には新型の長砲身大口径ショックカノンである『一式41cm集束圧縮型衝撃波砲』(この砲はロシア管区以外の全ての試作艦に用いられている)を採用、その他の武装など各種装備も、後に建造される量産艦とほぼ同じものであった。ただ、たった一つと言ってよい量産艦との相違点がこの艦の運命を変えることとなる。
 『後続の量産艦とほぼ同じだった』と評されることの多いこの艦だが、唯一、主機関だけは欧州管区と欧州系軍需企業が共同開発した新型波動機関を搭載していた。これは新型主力戦艦に巡洋艦(新戦艦が量産され次第、金剛型戦艦も巡洋艦として運用されることがこの時点で決まっていた)に限りなく近い機動力を与えることで、波動機関を搭載したことで「巡洋艦や駆逐艦の如き機動力を発揮できる」と評された金剛型や村雨型に問題なく追随し、敵艦隊を機動力で翻弄することを目的にして採用されたものであった。

 (なお、この『高速戦艦案』を強く主張したのは、イギリスに設計、建造の主導権を奪われる格好となったフランスだという説があるが、定かではない。ただ、本艦が装備した機関を製造したのはフランスの企業であったようだ)

 しかし、コンセプト自体は先進的で、後に建造されるD級戦艦の後期生産型にも影響を与えることになる、この『試作高速戦艦』ではあったが、惜しむらくは当時の技術では波動機関の所定の出力発揮こそ可能ではあったものの、代償として機関の信頼性を大きく損ねることになった。

 そのため、竣工後の公試運転ではエネルギー伝導管の設計ミスにより過剰な加熱を招いて熔解事故を起こし、そのままドックへ逆戻りを強いられている。そして、以後も欧州管区および高速戦艦としての本艦に魅力を感じていた艦政本部が協力してこの問題に対処したが、伝導管の熔解の他にも大小問わず問題が多発し、解決の見込みが立たなかった。
 この新型機関に起因する本艦の問題は相当に深刻であったらしく、最終的には国籍を問わず集められた、地球防衛軍の中で最も熟練した機関科員による試験も行われたが、その結果「本艦の機関は戦闘用艦艇のそれとして、とても実戦に耐え得るものではない」という結論に達することとなった。

 このため、艦政本部と協議した防衛軍首脳部は本艦を『そのまま採用する』ことは断念した。だが、他の量産艦に比して機関以外の装備は安定した性能を発揮したことから、機関のみ後述するA1型d戦艦に搭載されたものに換装が決まったが、その他の装備はこのA1型a戦艦のものが新型量産戦艦のそれとして採用されている。その意味で、後に新鋭量産戦艦が『ドレッドノート級ことD級』と呼ばれる端緒を作った艦としての責任は全うされたと言えるだろう。
 なお、本艦そのものにも機関の換装工事が持ち上がっているが、その時期にはもう量産艦の建造が進んでいたため、工数の多さもあって断念された。この決定に至った理由としては、問題が多発した新型機関ではあるものの、防衛軍としても艦隊側としても『巡洋艦戦隊に完全に追随できる高速戦艦』というコンセプトには未練があったため、研究と熟成の材料として本艦の機関はそのままにしておく必要もあった、とも考えられている。

 そのため、ガトランティス帝国と地球との交戦が本格化する直前、本艦は艦種類別を『特務艦』に変更した上で、地球防衛軍司令部(および艦政本部)の所在地である日本に回航、工廠に地上試験艦として係留されることになった。この際、艦名を『プロメテウス』に改名しており、英国戦艦において伝統の艦名たる『ドレッドノート』の名は、ガトランティス戦役終結後に建造された二代目に引き継がれている。


A1型b(ロシア管区建造艦)『ボロディノ』

 ロシア管区が建造した試作戦艦。竣工は『ドレッドノート(Ⅰ)』より遅かったのだが、あちらが機関のトラブルで公試運転直後にドックへ逆戻りを強いられたため、本来は二番艦であるこちらを一番艦とする資料も存在する。D級戦艦が書籍によっては『ボロディノ級』と記されることがあるのは、これに由来する。

 新型主力戦艦の試作建造にあたって、ロシア管区はまず第一に『攻撃力を最大限強化する』ことを目標としたようである。そのため、地球防衛軍首脳部および艦政本部が放棄した『量産型ヤマト』という構想に対して『攻撃力のみ、極限までそれに近づける』という方針を立てて設計を行っている。
 主砲はヤマトと同じ九八式48サンチ三連装陽電子衝撃砲(建造当時は2202年に大改装を終えたヤマトが搭載した九八式二型48cm陽電子衝撃砲は試作中で、搭載できなかった)を三基搭載、更に後の量産艦では搭載されなかった煙突型SAM発射管も搭載するなど、今回の競争試作においては後述するA1型c戦艦と同等以上の重武装を誇っていた。特にミサイル、魚雷兵装が重視されていたのが特徴と言えるだろう。

 だが、この重武装には当然のこと代償が伴った。この、ロシア管区が総力を挙げて設計した『ボロディノ』は、他の管区が建造した試作戦艦より船体が大型化したのである。正確な寸法は現状公表されておらず不明なのだが、要求仕様で許された最大までサイズを拡大して建造されたと伝えられている。
 しかし、この『船体の大型化』がロシア管区にとって致命傷となった。確かにこの『ボロディノ』は攻撃力において他の管区が建造した試作艦の中でも高いバランスが取れており、船体の大型化に伴って防御力も向上していたとされている。その高性能は防衛軍首脳部にとって魅力的だったことは間違いないのだが、最終的に艦政本部、それの艦砲を担当する部門からの意見が、この試作戦艦の運命を決することになった。

 「砲身の生産に関して、量産戦艦のそれとして用いるには現状、安定した供給に目途が立たない」

 確かに今回の新型量産戦艦の競作において、九八式48サンチ衝撃砲を搭載する艦が出てくること自体、艦政本部としては予想外だった。だが、実際にその改良型である九八式二型48cm砲が未完成であるこの時点では、48cm砲の砲身の生産ラインも確保されておらず(元々、九八式48サンチ衝撃砲はヤマトに搭載するための専用砲であり、量産が考慮されていなかった)、まして、こちらは既に完成、制式採用されていた新型砲である一式41cm集束圧縮型衝撃波砲のライン確保との兼ね合いもあり、まだ未完成の新型48cm砲を当てにして、ここで同砲を搭載する艦を量産型戦艦として採用することはできなかった。

 だが、それ以上に問題となったのは『武装強化のため大型化した船体』であった。確かに要求仕様にギリギリ沿ったものではあったが、ヤマトに比して1割程度小型化した程度と伝えられる戦艦を収容できるドックなどの施設は限られており、その運用においては多大な不都合が生じることは明らかだった。また、重武装による弊害として、船体が大型な割に艦内容積が圧迫されており、これが原因で居住性が悪化したことも問題視されている。
 そのため、特に欧州と極東で建造された試作艦が『量産性と運用性を重視して』船体を極力、小型化しながら、十分に居住性と今後の発展性を考慮した余裕のある設計を行ったのと一線を画した、この『ボロディノ』が新型量産戦艦として不採用になったのはやむを得ないことだったと言える。

 こうして、量産型戦艦のベースとしては不採用になった『ボロディノ』ではあったが、その装備はヤマトと共通する部分が多かったため、そのまま単艦で使用することだけならば大きな支障はなかった。そのため『ボロディノ』は各種試験を終えた後、主砲のみ大改装後のヤマトと同じ九八式二型48cm陽電子衝撃砲へと換装したのみで就役し、主に外惑星練習艦隊の旗艦として行動した。
 なお、ガトランティス帝国との本格的戦争状態に突入する直前、本艦には本格的な練習戦艦への改装が考慮されており、具体的な設計も行われている。だが、ガトランティス戦役が勃発したためこの工事は見送られ、特に大きな改装もないまま本艦も同戦役に参加したのだが、その際の戦歴については別項にて触れたいと思う。


A1型c(北米管区建造艦)『アリゾナ(Ⅰ)』

 北米管区が建造した試作量産戦艦。四管区が建造した戦艦の中では三番目に竣工した艦であった。
 本艦も『ボロディノ』と同じく攻撃力強化が重視されていたのだが、特に正面装甲の強固さを誇るカラクルム級を強く意識した結果、北米管区、ことに設計の中心となったアメリカの主張であるところの『正面からカラクルム級を大口径ショックカノンの火力を以て圧倒する』ことが主眼とされていたようである。

 その目的に対する答えが、地球防衛軍の宇宙艦艇にとっては初となる『舷側装備式主砲塔』であった。本艦は甲板上の一番、二番主砲塔の間の両舷に更に主砲塔を装備することで正面に対する火力を極限まで強化し、側面を晒した片舷全力射撃に頼らず、正対した相手に対して他管区が建造した試作戦艦の火力を上回ることを狙ったのである。
 この大火力が最大の強みであった『アリゾナ(Ⅰ)』であったが、それ以外の装備は主砲塔に場所を取られる形でミサイル兵装が減少した以外は、特筆すべき特徴もなく信頼性についても問題はなかったから、北米管区はその採用に大きな自信を持っていたと伝えられている。

 しかし、北米管区の自信作であった、この『アリゾナ(Ⅰ)』が新型量産戦艦として採用されることはなかった。その理由として、艦政本部の本艦に関する報告が残っているので抜粋したい。

・本艦1隻で主砲塔5基を使用することになるが、その製造などを考慮すると、本艦3隻分の主砲塔を用いて通常型戦艦を5隻建造したほうがよい。また本艦を量産艦として選択した場合、現状では砲身のみの供給においても不安がある
・波動防壁を考慮しても、防御の観点から側面装甲にバーベット径に相当する大穴を開けるのは問題がある。現状、この問題への対処法をすぐに用意できないため、新型戦艦の量産が遅れる危険がある
・大気圏内を含めた重力下において、艦前部の重量が過大で前トリムの傾向が甚だしく、操艦が困難を極める

 これらの問題の他に、舷側装備の砲塔の実弾発射が不可能(経験不足から揚弾機構に問題があったと伝えられている)なこと、船体内部の容積が『ボロディノ』同様に圧迫されており居住性に難点もあったことが、不採用に至った理由とされている。

 ただ、北米管区としては『正面攻撃力を強化した戦艦』というコンセプトには執着があったらしく、本艦は不採用および艦隊への就役が見送られることが決定された後、艦種類別を『実験艦』に変更した上で艦名を番号名(具体的な名称は資料の散逸により判明していない)とし、北米管区で艦政本部から指摘された問題点を解決するための研究に用いられ、一度も艦隊に配備されず実戦にも参加しなかった。
 その研究の成果が、後に『たった1隻で強大なボラー連邦軍を震撼させた悲劇の宇宙戦艦』として勇名を残すことになる汎用護衛戦艦『アリゾナ(Ⅱ)』へと結実するのだが、こちらは本題から外れるので別の機会に譲りたいと思う。なお、本艦は後のデザリアム戦役によって修復不能な被害を受けたため、解体処分という形で艦歴を終えている。


A1型d(極東管区建造艦)『出羽』

 極東管区が建造した、四管区による競争試作戦艦としては最後に竣工した艦である。

 本艦の竣工が遅れたのは、極東管区がヤマトの大整備に手間取ったことが原因だった。だが極東管区はその時間を利用して、他管区の建造艦の情報を、極秘裏にある程度収集した上で本艦の改設計および建造を行ったようだ。
 そのため、極東管区(実質的には多くの作業を日本の設計、建造部門が担当している)は他の三管区が特別には考慮しなかった点に目を付けた。それは『艦隊旗艦設備の強化』という点だった。

 これは、将来の地球防衛艦隊の大規模化を見据えたものであると同時に、船体規模から中規模以上の艦隊旗艦として不安があると考えられていた新型量産戦艦の問題点を解消することを目指すための手法であった。そのため旗艦として用いるに不備がないよう、装備全般が信頼性に偏重したとすら言える無難なものが選択されており、竣工後の試験において『新鋭艦としては装備が旧式』と指摘されるほどだった。だが、この信頼性重視の設計が後に本艦に思わぬ運命をもたらすことになる。
 それはさておき、四管区による競争試作において、最終的に『ドレッドノート(Ⅰ)』と、この『出羽』が選考に残った。だが、当時の地球防衛艦隊の規模に対して旗艦設備がやや過剰と評されたことと『ドレッドノート(Ⅰ)』に比して各種装備が旧式に過ぎる面もあり、制式採用は譲ることとなった。

 だが、機関の信頼性において『ドレッドノート(Ⅰ)』より大幅に勝ったことから、それが採用されて『ドレッドノート(Ⅰ)』の船体にそのまま装備され、今後量産する新戦艦も本艦ほどではないが旗艦設備をある程度整えるべく設計変更を加える、という形でこの新戦艦の競作は決着を見た。
 また『専用の旗艦型戦艦の必要性』がこの艦の存在で議論されたことが、後に『戦略指揮戦艦』として設計される『アンドロメダ』に繋がったことを考えると、実質的に採用された『ドレッドノート(Ⅰ)』に劣らず、後の地球防衛軍に大きく貢献する艦となったと言えるだろう。

 なお『出羽』は試験終了後、旧式と評された各種装備の一部を『ドレッドノート(Ⅰ)』と同じものへと換装したのみで艦隊に就役した。これは機関をはじめ各種装備の信頼性に問題がなかったため大規模な工事が必要なかったことと『アンドロメダ』ほどではないが中規模艦隊の旗艦としては十分すぎるほどの設備を有していたから、その有用性が期待されたのである。
 そのため、後に勃発したガトランティス戦役のみならず、以降の戦役においても現役艦として活躍を続ける歴戦の戦艦となるのだが、その戦歴については別項に譲りたいと思う。

(筆者注 本稿の最後に登場する『出羽』は、八八艦隊さん制作の動画『宇宙戦艦ヤマト2202MMD外伝~第十一番惑星沖海戦~』三部作に登場する旗艦型D級戦艦『出羽』を、八八艦隊さんのご許可を頂いてそのまま用いています。ご協力に深く感謝いたします)

(※筆者注 本文内のD級戦艦のスペックに関しては、あくまで筆者の二次創作として原作『さらば』『2』に登場する『主力戦艦』も含めて考慮した独自のものとなっており、原作およびリメイク版『2202』の公式設定とは全く関係ないものとなっていますので、その点はご了承ください)

仕様決定と量産の開始

 四管区による試作艦建造とその試験を経て、最終的には『ドレッドノート(Ⅰ)』の船体に『出羽』の機関を搭載する、という決着を見た新型量産戦艦の仕様だったが、その他、細かい箇所の再検討などが再び艦政本部で行われ、2201年10月、その決定により新戦艦は以下の性能にまとめられ、防衛軍首脳部はこれを承認した。

全長 280m
全幅 69.8m
全高 99.7m

波動砲 一式タキオン波動拡散砲(通称・拡散波動砲)1門
主砲  一式41cm三連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 3基9門

その他武装
    九九式短15.5cm六連装陽電子衝撃砲 1基(司令塔頂部)
    零式四連装対艦グレネード投射機(対空兼務 前甲板両側面)
    一式亜空間魚雷発射管 単装4門(艦首両舷)
    零式小型魚雷発射管 単装8基(艦首両舷)
    九八式対空迎撃ミサイル発射管 単装8基(艦底部)
    九八式短魚雷発射管 単装12門(片舷あて6門)
    一式多連装小型ミサイル発射管 16門(片舷あて8門)
    司令塔防護用ショックフィールド砲 3基(司令塔前部および基部)
    零式短砲身六連装光線投射砲 2基(司令塔基部側面)
    九九式40mm連装対空パルスレーザー砲 2基
    一式76mm三連装拡散型対空パルスレーザー砲 2基
    その他、艦の全周各部に埋め込み式対空パルスレーザー砲多数(門数不明)

主機  艦本式次元波動機関 1基
補機  ケルビンインパルス機関 2基
    懸架式亜空間航行用機関 2基

搭載機 一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』10機(うち2機は偵察機仕様)
    九八式汎用輸送機『コスモシーガル』2機
    救命艇2機
    その他救命ボートなど

 武装の特徴として、ヤマトに比して対空兵装が大幅に削減されたことがまず目につくと思われる。これは拡散型パルスレーザー砲の採用で十分な弾幕が形成できると判断されたこと、また主砲塔が大仰角を取れるように設計されており対空砲として使用可能なことが考慮された結果だが、後にこれが問題を引き起こす原因になった。ただ、その詳細については先に譲りたい。
 また本艦の搭載機についてだが、ヤマトと同様に艦載機運用にいささか不自由があったこと、後に本級を改造した航空母艦の建造が決定されたこと、原則として艦隊での運用が常であり単艦で行動することがほとんどなかったこと、そもそも搭載すべき戦闘機が搭乗員も含めて不足していたなどの理由が重なり、偵察機を除いた戦闘機を搭載して作戦行動を行ったという記録は現状見つかっていない。

 なお、本艦の補給、給糧設備に関しては『ヤマトほどの長期航海は前提としない』『長期航海を行う場合は補給艦の随伴を検討する』『状況が許せば、ガミラス基地からの補給も求める』などが考慮された結果、ヤマトのようO.M.C.S(食料合成装置)や大規模な艦内工場、慰安、給糧施設は省略されており、その代わり乗員一人当たりの居住スペースを拡大することで居住性の向上が図られていた。ただ、自艦の修理および弾薬の補給に必要な工場設備、乗員用の物資保管のスペースは必要と想定された状況に応じて十分に準備されている。

 設計完了後『波動砲艦隊』の早期実現を望む防衛軍首脳部と、カラクルム級という現有艦艇では対抗困難な強敵を抱えていた艦隊側の双方から早急な新戦艦を望まれたこともあり、ただちに量産計画が立てられた。防衛軍にとってはもちろん、地球連邦政府にとってもガミラス大戦からの復興期に、それもヤマトを除けばかつてない大型戦艦の量産は難行に違いなかったのだが、ガトランティスという目前の敵の存在、そしてガミラスとの政治的駆け引きを考慮すれば、躊躇する余地はなかったものと思われる。

 2202年度の予算要求で、D級戦艦(本来はA型戦艦と呼ぶべきだが、D級という通称が広く知られており、後のアンドロメダ級の通称『A級』と紛らわしいことから、以降は必要のない限りこの表記を用いる)はまず18隻分の予算が求められた。
 これは、当時の地球防衛軍の戦艦戦隊が4隻編成だったため、4個戦隊と予備艦2隻分の要求だったのだが、防衛軍士官学校において行われた、波動砲戦を含めた戦艦戦隊の戦闘要領の研究結果として『戦艦戦隊は3隻編成とし、2隻が波動砲発射体勢に入った際に1隻がこれを支援するのが最適』との意見が出されたこと、また当時の防衛軍に新造戦艦を予備として遊ばせておく余裕もなかったため、6個戦隊分に編成替えされている。
 (ただし、実戦部隊において4隻編成による戦隊が構成されたことも多々あり、少なくともガトランティス戦役当時においては、まだ3隻編成が完全に一般化していたわけではないようである)

 前例を見ない大型艦の大量、かつ急速建造であり、予算の折衝も難航すると思われたのだが、前述した通り『波動砲艦隊』を目指す連邦政府首脳と、ガミラス大戦による戦禍によって『自国の軍備が弱いことで何が起こるか』を理解せざるを得なかった多くの市民から支持を受け、予算案はすぐに成立。早速、防衛軍が立案した計画に従って建造作業が各地のドックで開始された。
 当初は一番艦が『ドレッドノート(Ⅰ)』ということもあり、艦名の頭文字のアルファベットをDに揃えることがイギリスから提案されたようだが『旧来の伝統ある艦名を継承できない』と多くの国から反発を受け、断念されている。以下は艦名を示しつつ、ガトランティス戦役終結までに量産されたD級戦艦をタイプ別に紹介したいと思う。


A2型(前期生産型)
『ドレーク』『デヴァステーション』『ダンカン』
『ドイッチュラント』『ヘッセン』『バーデン』
『デラウェア』『ノース・ダコタ』『サウス・カロライナ』
『デュプレスク』『デュケーヌ』『ド・グラース』
『ドヴィエナザット・アポストロフ』『ペトロパブロフスク』『セヴァストーポリ』
『山城』『河内』『摂津』

 当初の予算案による18隻枠で建造された、D級戦艦最初の量産艦である。

 機関のみ『出羽』のそれが用いられた以外は、概ね『ドレッドノート(Ⅰ)』に準じて設計されたが、先述した旗艦設備の強化と、旋回性能の不足が指摘されたことから船体各部にスラスターが増設されるなどの改良が行われている。
 強化された旗艦設備は、戦艦戦隊旗艦から分艦隊(当時の地球防衛艦隊では30隻程度が想定されていた)旗艦まで問題なく務めることが可能とされ、当面は十分なものとされた。ただ、ガトランティス戦役が本格的に開始された頃に更なる旗艦設備強化の要望が艦隊側から出された関係で『バーデン』『サウス・カロライナ』『デュケーヌ』『ペトロパブロフスク』『河内』に小規模な改造工事が行われている。この5隻の艦橋構造物後方には艦隊司令部専用の通信アンテナが追加されているため、未改造艦との識別は容易である。

 また、当初から戦時定数150名程度、最低90名程度での戦時運用が要求されていたD級戦艦だったが、当時の深刻な人員不足は90名の乗員を確保することすら難しかったため、試作艦のそれ以上にAIなどを用いた自動化、省力化が推進された。これはこの時期の判断としてはやむを得ないものであったが、当時も艦隊士官の一部から『十全たる戦力発揮に不安あり』との指摘も存在しており、後のガトランティス帝国との戦いにおいても問題となっている。

 ともあれ、このA2型戦艦はガトランティス帝国が太陽系に侵攻してきた際は、文字通り艦隊の『主力戦艦』として第一線を担ったクラスだったと言える。それだけに損耗も多大なものとなったのだが、戦歴については今後紹介するタイプも含めて、別項にて記述したいと思う。


改A2型a(電探強化型 パトロール戦艦)
『テネシー』『リヴェンジ』

 2201年後半に追加建造が決まった4隻のD級戦艦のうちの2隻である。この頃はまだガトランティスとの本格的戦闘は始まっていなかったが、前線から『カラクルム級との遭遇機会が増えており、今後、敵に大規模な作戦を行う気配が感じられる』という報告があったため、一部の金剛改型、村雨改型の建造予算を転用する形でD級の追加建造が決まったのである。

 本型はその最初のものだったが、量産中のA2型戦艦とは運用目的が異なっていた。当初、本型は電探ならびに通信施設を強化することで、100隻を超えた大艦隊(当時、土星会戦における地球艦隊の総数200隻前後の艦隊編成は考慮されていなかったようだ)を指揮、統制するために建造が計画された。
 だが、実際には強化するとはいえ、D級程度の艦の規模で100隻以上の大艦隊を指揮するのは荷が重く、この判断が『戦略指揮戦艦』たるアンドロメダ建造の契機となる。そして、浮いた形になったこの2隻の戦艦枠に関しては、電探、通信能力の強化はそのままに、遊撃部隊として敵侵攻軍(当然、その仮想敵はガトランティス帝国軍である)の後背で破壊活動を行うべく編成が構想された第三艦隊に配備するための戦艦として計画が変更され、起工された。

 ところが建造開始直後、連合艦隊司令部から、その第三艦隊にD級戦艦に近い火力とより優れた航空機運用能力を有する空母(戦闘空母、としたほうが適切と思われる)の配備が構想され、これが防衛軍首脳部も認めるところとなったため、再びこの両艦が宙に浮くこととなった。
 とはいえ、搭載すべき武装や電探、通信整備は既に用意されていたため建造中止にすることもできず、艦政本部は再びこの両艦に若干の改設計を加え、今度は地球防衛軍にとって最前線と言うべき冥王星、海王星基地に配備される警備艦隊の旗艦用戦艦として建造が続行されることとなった。

 ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点は以下の通りである。

・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・改A2型パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もパトロール巡洋艦より更に強化して搭載
・代償重量として艦底部の九八式対空迎撃ミサイル発射管8門を撤去。ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力通信機器に対応した専用アンテナを艦各所に追加

 この改造により、一見すると後に建造された『アンドロメダ』のようなアンテナ類が林立する特徴的な外見を持つこととなった。なお本艦の評価としては「通常型に比して機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」というものが伝わっているが、兵装は概ね維持されていたし、また旗艦能力や探知、通信機能が非常に高かったため、実際に運用した冥王星、海王星の警備艦隊からは概ね好評だったようだ。

 本型は警備艦隊以外の運用は考慮されていなかった、という説もあるようだが、実際は平時における哨戒活動の他に、警備艦隊を率いて第一、第二外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時においては警備艦隊と共に連合艦隊の戦列に加わることが既定事実となっていたようである。
 そのため、地球防衛軍において最大の艦隊決戦となる『土星会戦』にもこの両艦は参加しているのだが、その際の状況については別項に譲りたいと思う。


改A2型b(主砲換装タイプ前期型)
『相模』『コンテ・ディ・カヴール』

 改A2型a戦艦と同時に計画された艦だが、この両艦は誕生の経緯が少々特殊なものだった。

 詳細は後に譲るが、この時期のD級戦艦はいわゆる『一式41cm砲の散布界問題』に悩まされていた。そのため各種の解決法が艦政本部や技術本部で議論、実験されていたのだが、その中でこのような提案がなされていた。

 『ヤマトが搭載した九八式48サンチ陽電子衝撃砲を、D級戦艦に搭載することは可能だろうか?』

 確かに九八式48サンチ陽電子衝撃砲は、戦時下でそれが許されなかったという事情があったとはいえ、散布界過大など致命的な欠陥が発生しないよう、極めて堅実な性能で纏められた艦砲だった。そのためイスカンダルへの航海においても大きな問題は発生しなかったのだが、この砲をD級戦艦に搭載しようというのである。
 だが、この『九八式48サンチ陽電子衝撃砲を搭載したD級戦艦』は、既にロシア管区が建造した『ボロディノ』で試みられ、船体の大型化によって量産艦としては不採用になったという経緯がある。それを踏まえてのこの提案には、当然のこと『ボロディノ』とは違う特徴があった。

 『バーベット径の拡大を防ぐため、連装砲塔にて搭載してはどうか?』

 実はヤマトの設計案において、九八式48サンチ陽電子衝撃砲の連装砲案が存在しており、連装砲塔の設計も完了していた。これを流用すれば、D級の船体に対して最低限の改造を施せば、九八式48サンチ砲を簡易に搭載する目途があったのだ。
 そのためこの案は採用されたが、当時既に九八式48サンチ陽電子衝撃砲は砲身の生産が行われておらず、その建造にはガミラス大戦末期にヤマトの予備用として製造された砲身を転用するしかなかった。それでも、一隻でもD級戦艦の数が欲しい防衛軍首脳部と艦隊側の思惑が一致したこともあり、この改A2型b戦艦の建造は行われることになった。

 そうして実際に完成した改A2型b戦艦であったが、実際に運用した艦隊側は『主砲威力の向上、および散布界問題の解消は歓迎できるが、発射速度の遅さに大きな問題がある。可能であれば九八式二型48cm陽電子衝撃砲(2202年大改装後のヤマトが搭載した48cm砲)への換装を望む』と評価した。
 しかし、この提案が検討される前にガトランティス戦役が本格化、太陽系への攻撃が始まったため、両艦とも既存の主砲のまま戦役に参加している。


A3型(中期生産型)
『クイーン・エリザベス』『バーラム』『ヴァリアント』
『ノース・カロライナ』『ワシントン』『アラバマ』
『薩摩』『周防』『丹後』
『レジーナ・マルゲリータ』『エマニュエレ・フィリベルト』『サルディーニャ』
『ナッサウ』『ヘルゴラント』『オルデンブルク』
『ペレスヴェート』『シノープ』『ポペーダ』

 当初は2202年前半に、前期生産型各艦が戦闘によって損耗することを見越して9隻の整備が決まったものだったが、いわゆる『カラクルム落下事件』(当時はそう呼ばれず、単なる事故として扱われていたが)によって地球の座標がガトランティス側に露呈したのを受けて『可及的速やかに、かつ可能な限り多数を量産する』ことが決定され、戦時予算による更なる追加建造が決まったグループである。
 前期生産型であるA2型からは、以下の改良が施されていた。

・艦各部の簡易化(これは戦時下のためというより、量産による経験の蓄積から過剰と判断された部分を削った、と言うべきものである)
・艦内構造の一部変更、防御隔壁の強化
・電探、通信設備。並びに各種AI機器の更新
・散布界問題に悩まされていた主砲に、新型の発砲遅延装置を装備(本タイプ以前の艦にも逐次装備されている)
・中規模艦隊(50隻程度)向けの旗艦設備を標準装備

 特に艦内構造の変更は『ガイデロール級をモデルシップにした』本型にとっては大きな変更点であり、地球がガイデロール級を基礎にしつつ、独自の大型艦設計を行う契機となったと言えるだろう。

 戦時下ということで本タイプの量産は急がれ、ここに艦名を挙げた18隻はいずれも土星会戦に最新鋭艦として参加している。なお、艦隊側の運用評価はA2型戦艦とほぼ変わるところはなかったが、発砲遅延装置の搭載とAIの改良にも関わらず、相変わらず散布界問題が解決していないことが問題視されている。これは土星会戦においても大きな問題を引き起こしているのだが、詳細は別項にて触れたい。

 なお予定艦名が不明なため省略したが、A3型戦艦はこの18隻以降も追加建造が行われるはずだった。しかし太陽系に敵勢力が侵入する状況下で、連合艦隊司令部から『戦艦以上に、それを護衛する巡洋艦や駆逐艦の不足が深刻である』と強硬な要望があったことや、土星会戦後の太陽系各惑星および地球本土への攻撃によって工廠ごと失われた艦も多く、戦後はD級戦艦の建造が後期生産型へと移行したこともあって、最終的なA3型戦艦の整備は18隻で終了している。

D級戦艦の問題点と土星会戦

 いわゆる『カラクルム落下事件』から始まったとされるガトランティス戦役開始の前後に量産、配備が本格化したD級戦艦の前期生産型(この項では中期生産型と呼ばれるA3型戦艦もこれに含む)であるが、艦隊側からは「戦艦として攻防性能と速力、運動性は十分であり、艦隊戦列の中核を成すに申し分ない性能を有する」と高く評価されている。
 ただ、防衛軍が抱える慢性的な人員不足というやむを得ない事情があったとはいえ、艦各部において重要箇所の運用を相当にAIに依存していること、機関および兵装の制御を中央コンピュータによって一括して行うというシステムについては「コンピュータに何かしらの損傷が発生した状況において、艦の戦闘、航行能力の発揮について多大なリスクを伴うのではないか?」と不安視されていた。

 更に重大な問題とされたのは、D級戦艦が搭載している一式41cm集束圧縮型陽電子衝撃砲の散布界に関してだった。これは艦隊に十分な数の戦艦が配備されていれば問題は少ないとされていたが、一個戦隊(3隻)のみによって主砲の一斉射撃を行った場合、特に遠距離砲戦における散布界は許容範囲を超えており、敵艦に対して有効な射撃が困難であると評価されていたようである。
 A3型戦艦から装備され、それ以前に建造された艦にも追加された主砲の発砲遅延装置は散布界問題への対処の一環だったが、同装置を搭載してもなお「D級戦艦の主砲散布界問題は解決したとは言えない」と艦隊側は考えていた。そのため艦政本部および技術本部は更なる主砲射撃管制用AI並びにコンピュータの改良を継続して行うこととし、艦隊側のほうも、戦況に応じて主砲を一斉打方ではなく独立打方(D級戦艦の場合、三連装砲の右砲ないし左砲から0.2秒程度の間隔を開けて射撃することを指す)による射撃を行い、これによってエネルギー弾発射時の衝撃波の相互干渉を抑制する工夫を行っている。

 だが、D級戦艦に付きまとうこれら問題点については、ガトランティス帝国との交戦が本格化した戦時下ということもあり、抜本的な対策は行えないままとなっていた。こうした状況で、地球防衛軍はその歴史においても最大級となった艦隊戦である土星会戦を迎えることとなる。

 会戦勃発時、D級戦艦は地球防衛艦隊に各タイプ総計で42隻が配備されており、このうちほぼ同時期に十一番惑星宙域において生起した艦隊戦に参加した『出羽』以下の5隻と、土星基地から地球へと後送される輸送船団護衛の任に当たった『ボロディノ』を除く36隻が、土星本星宙域における決戦に参加した。
 土星宙域での艦隊戦において、D級戦艦は当初期待されていた艦隊の中核を成す戦列艦、並びに波動砲艦として存分な働きを見せたのだが、戦後に各艦隊から提出された戦闘詳報から、先述したD級戦艦の問題点がこの会戦において様々な方面から噴出したことが伺える。

 それらに曰く、

 ・主砲の散布界が、特に遠距離砲戦において著しく過大。そのため有効命中弾数が過少となり、仮にアウトレンジ射撃を行った場合においても敵艦を短時間で撃破することが困難。特に艦隊の戦艦数が少なく、濃密な弾幕を形成できない場合においてこの傾向が顕著である(なお、この問題は土星会戦における第6艦隊(ヒペリオン艦隊)の早期壊滅の原因の一つとされている)
 ・主要火器および機関を中央コンピュータによって一括して艦橋から管制するため、艦橋ないしコンピュータに損害を被ると即座に戦闘不能となる状況が発生し、その復旧を戦闘中に行うことがほぼ不可能。また、砲塔内に要員が配置できず照準機構も搭載されていないため、非常時に砲側照準による射撃を行うことができない
 ・近接対空火力の不足により、敵航空機およびミサイルに対する有効な迎撃手段が十分とは言い難い
 ・砲塔の構造に起因する問題として、特に天蓋の防御力が不十分

 また、会戦の最終段階で連合艦隊はガトランティス都市帝国の攻撃によって壊滅的な被害を受けたのだが、このときの戦闘に関する波動砲の運用についての所見が残っている。それには「拡散波動砲は対艦戦闘における破壊力は極めて大なるも、集束モードに変更して射撃を行った場合、要塞など大型の固定目標に対しては次元波動爆縮放射機(ヤマトに搭載されたの波動砲のこと)に比して威力が劣る。対艦戦闘に特化した結果として、その他の目標に対する攻撃能力が不十分である」と記述され、艦隊に所属していた波動砲艦の総力が、拡散波動砲を搭載した戦艦と威力の低い集束型波動砲しか持たない巡洋艦であったことを悔いるような表現がされている。

 筆者としては、さすがにガトランティス都市帝国のような大規模な移動要塞が襲来してくるとこの時点で想定するのは極めて困難と判断するしかなく、当時の軍備に不備があったとは言い難いように思う。なお、これらの戦訓は当然、その後の防衛軍の軍備に大きな影響を与えることになるのだが、詳細は以降その他の記述に譲ることとしたい。


損傷修理および戦訓への対応工事

 ガトランティス戦役終結時、残存していたD級戦艦(この時点で戦艦籍から除かれていた艦は含めない)は以下の通りである。

 A1型d 『出羽』
 A2型   『ドイッチュラント』『デラウェア』『デュプレスク』
 改A2型a『リヴェンジ』
 改A2型b『相模』
 A3型   『薩摩』『エマニュエレ・フィリベルト』

 (他にA2型戦艦『河内』とA3型戦艦『オルデンブルク』が土星周辺の衛星にそれぞれ擱座していたが、この2隻は防衛軍が土星宙域を回復した後の調査で復旧不能と判断されたため、解体された)

 戦役に参加したD級戦艦が34隻もの損失を生じ、戦艦戦力が激減したという事実は、他にヤマト及びD級戦艦に近い火力を持つ航空母艦3隻も残っていたとはいえ、土星以遠の太陽系宙域にガトランティス残存軍が跳梁している状況下とあっては、地球防衛軍の焦燥を駆り立てるには十分な苦境だった。
 そうした事情から、また生き残った8隻のD級戦艦も大半は大規模な修理が必要だったこともあり、防衛軍は戦力補充のためD級戦艦の『後期生産型』となる新造艦の建造に着手することを決定する。後期生産型の詳細は後に譲ることとするが、同時期に残存するD級戦艦への修理と共に、ガトランティス戦役の戦訓へと対応させるための改装工事が行われている。

 艦によって改装の規模や詳細は異なるのだが、共通する点として主砲散布界の減少、中央コンピュータ損傷時におけるリスク分散、対空兵装の増強などを目的とする工事が行われた。一例として『薩摩』の改装状況を以下に挙げる。

 ・主砲を一式一型改41cm集束圧縮型陽電子衝撃砲に改造、発射時の衝撃波を減圧して散布界の向上を図る
 ・砲側照準を行うため主砲塔内に小型レーダーおよび測距儀を搭載、要員の座席も配置
 ・主砲以外の各種兵装および機関も、非常時に乗員の操作によって制御可能なように改修
 ・中央コンピュータ室の装甲および隔壁を強化
 ・両舷側の九八式短魚雷発射管を全門撤去し、同所に砲座を設け76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて4基装備
 ・主砲塔天蓋に増加装甲を追加

 これらの工事には主砲の射程および貫通力の低下、雷撃戦能力の減少、主砲最大仰角の低下など代償を伴ったが、ガトランティス戦役における戦訓への対応としては十分なものと評価されることになる。特に主砲の改造によってD級戦艦の主砲散布界の問題はほぼ解消されており、このことは艦隊側からも大いに歓迎された。
 なお、残存艦で唯一48cm陽電子衝撃砲を搭載していた『相模』の散布界は特に問題ないとされていたが、修理の際に発射速度向上のため、主砲を当時のヤマトと同じ九八式二型48cm陽電子衝撃砲へと換装している。

 一方で「規模に優る敵艦隊に対処するため、艦隊内に一定数必要である」とされた拡散波動砲搭載艦について、防衛軍はD級戦艦の前期生産型をもってこれに充てるとし、対要塞砲として集束モードを強化した波動砲の搭載は後期生産型の艦へと行われることに決定された。そのため改装された前期生産型の各艦はこの時点で就役時に搭載していた拡散波動砲を継続して搭載しており、波動砲関連の目立った改造は行われていないようである。

 更にこの時期、後続の後期生産型を含めてD級戦艦は一部で塗装の変更が行われている。特に火星基地に配備された赤色塗装の艦や月面基地(本国艦隊)所属艦の青色塗装などが知られるが、就役時の灰紫色塗装を継続して使用した艦もあるなど必ずしも防衛軍全体で統一された規格は存在していないようで、これらのバリエーションについては今後の調査が待たれるところと言えるだろう。


後期生産型の計画と建造

 広義において『D級戦艦の後期生産型』とは、その派生型であるヒュウガ級戦闘空母やアスカ級補給母艦・強襲揚陸艦も含むのだが、これらは当初から想定された任務が戦艦とは異なるし、後に別のクラスとして分類され直されたものなのでここでは扱わない。あくまで『戦艦として』建造された後期生産型について記述していきたいと思う。

 後期生産型の計画、設計にあたって、要点となったのは以下の通りである。

 ・減少した戦艦戦力の早急なる補充により、仮想敵が有する大型艦への対処
 ・対要塞砲として集束型波動砲の搭載、ないし艦隊最前衛を担うべく防御力の大幅向上を視野に入れた波動砲の撤去
 ・多用途の任務に対応させるべく艦型、装備の再検討(この項目がヒュウガ級戦闘空母やアスカ級補給母艦・強襲揚陸艦の建造に繋がっている)
 ・今後の新型戦艦量産を踏まえた実験的要素、特に開発中の新型波動砲(後の拡大波動砲)を最優先とした新型装備の追加、実用試験

 これらを踏まえ、D級戦艦の後期型は地球防衛軍が標榜するところの『地球の規模に見合った軍備の最適化』を目指す新たな軍備の代表としてその建造計画が立案されている。なお、これらD級戦艦の後期建造型の予算については、土星会戦後に様々な理由から建造中止となっていたA3型戦艦の予算と準備された資材の一部を転用して行われることとなった。

 当時の防衛軍の仮想敵はあくまでガトランティス残存軍であり、かつてのガミラスあるいはガトランティス帝国ほど強大なものとは判断されていなかったことが当時の資料から伺える。そのため(一応)戦時下とはいえガトランティス戦役開始直後におけるA3型戦艦の急造ほどは後期生産型の増備は急がれておらず、戦艦戦力補充のため先行して起工された各種タイプ9隻(戦闘空母型や補給母艦・強襲揚陸艦型は含まない)を除いた艦の建造はやや遅れて開始された。これは時間的余裕があるという理由もあったようだが、地球周辺などに浮遊していたガトランティス帝国軍の艦艇の残骸から希少金属を再利用しての建造が予定されていたため、それらの回収に期間を要したという側面もあると考えられている。

 戦艦として建造されたD級戦艦の後期生産型は4タイプ、17隻からなるが、その詳細については次項に譲りたく思う。

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