地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

(筆者より:こちらは現状、オリジナル全シリーズ(復活編除く)とPSゲーム版シリーズ、リメイク版3199の1章までを参考にし、そこに筆者の独自設定の世界観を混ぜた「書きかけ」の文章です。これ自体が作品というよりお話の種になればよいと考えて制作したものですので、色々と抜けているところがあるかもしれません。何かありましたらコメントなどご意見いただければ幸いです)


ガトランティス戦役終結後の軍備計画

 2203年、ガトランティス戦役が終結したのを受けた地球防衛軍は『地球の規模に見合った軍備の最適化』という、いささか控えめな方針の下で新たな軍備計画を開始することになる。これは未だガトランティス帝国軍の残存部隊が太陽系外周に跳梁しているとはいえ、その本軍および本拠地たる都市帝国を壊滅させたことによって多少なりとも戦時体制の緩和が可能になったことが影響しているが、同時に『波動砲艦隊』と呼ばれた大型艦偏重の急速かつ大規模な軍備が地球連邦に多大な影響を与えた反省から、一時的に軍主導で軍備、特に艦艇の建造に一定の節度を設けることで市民および政府の支持を取り付けるという側面もあったと思われる。そのためこの頃の軍備を『軍主導による軍縮の時代』と評する識者も存在している。
 (ただ、戦役によって大量に失われた人的資源の確保については防衛軍内でも特に優先的に予算が回されており、こちらに関しては軍の規模拡大を言われていた時期であることを留意する必要はある)

 そうした事情から、防衛軍はガトランティス戦役で損失した艦艇の補充に関しては既存の艦そのまま、あるいはさほど大規模ではない改設計を施した艦艇を、それもガトランティス残存軍に対応可能な最低限の建造数で軍備を整えることとなった。これにはまず第一に「艦を多数建造しても、それに配備すべき乗員が存在しない」という苦しい事情があったが、当然のこと予算や資材などの不足も勘案すべきであることは言うまでもない。つまるところ、2204年中頃まで続いたガトランティス残存軍との交戦時期においては、防衛軍は「何もかも不足している」状況での軍備を迫られていたということになると言えるだろう。

 その後、太陽系内における戦時下が終結を見た2204年後半から2205年初頭にかけて、地球防衛軍は改めて『地球の規模に見合った軍備の最適化』という方針はそのままに、新たな軍備計画の検討を開始する。
 このときの『新たな軍備計画』は、それまでの戦役で得られた戦訓の多くを取り込んだ新たな艦艇増産計画が中心となっており、その中で当然、既存艦艇の大幅な改設計はもちろんのこと、艦隊側の一部から代替を検討すべきという主張があった中小型艦艇(これらはガトランティス帝国軍との交戦において「敵艦に比して艦型が小型なため戦闘力が不足している」と指摘されていた)を中心に新たに設計された新型艦を増備するなどの抜本的な改正が行われる予定だったことが、当時の資料を読み解くとある程度伺うことができる。

 だが、2205年になってこの防衛軍の軍備計画を一変させる事態が勃発する。それは同盟国であるガミラス帝国によるガルマン星の占領とそれに伴うボラー連邦との戦争状態への突入、そして同時期に勃発した、デザリアム帝国による『イスカンダル事変』である。


新たな仮想敵に対応する軍備の再検討

 2205年に生じたこれら事象の結果、同時に2つの星間国家(ガミラスからの情報がある程度期待できたボラー連邦に対して、デザリアム帝国のほうはまだ不明瞭な点のほうが多かったが)を仮想敵として抱えることになった地球連邦および防衛軍の衝撃は決して小さくなかったと推測できるが、当然、この状況に対応する必要が生じたのは言うまでもない。そのため防衛軍内で検討中であった再軍備計画はいったん廃案となり、改めて2206年度から『二国標準』と俗に呼ばれることとなる、想定されたボラー連邦およびデザリアム帝国の侵攻に対応する軍備計画の立案が開始された。

 この俗称『二国標準』計画における、特に新鋭艦によって編成されることが予定されていた艦隊の大まかな骨子は以下の通りである。

 ・実際問題として、現在(2206年時)の地球に星間国家二ヵ国と互角の軍備を整える国力はない
 ・上記の前提から、可能な限り既存技術の改良によって保有する兵器を強化、特に波動砲の威力増大により敵大規模艦隊ないし大型移動要塞を確実に掃討することが可能な艦隊を整備する
 ・戦艦部隊を掩護すべき巡洋艦、駆逐艦については、最大限の大型化を視野に入れ他国同種艦に優る戦闘力を付与する
 ・これら新型艦艇によって編成された艦隊には、可能な限り太陽系より外縁、可能であればカイパーベルトより外の宙域で敵艦隊を迎撃、撃滅を可能とする外洋(参考資料の原文ママ)航行能力を与える
 ・現有艦艇の同型艦ないし改良型は順次建造を続行するが、可能な限り早期に新型艦艇の建造へと移行する。なお新艦隊整備の完了後に既存艦艇は二線級戦力とし、主に太陽系内の防衛任務に充当する
 ・将来的には、ガトランティス戦役時における連合艦隊(総数200隻程度)規模の新艦艇配備を目標とする

 結果論からすればいかにも無理のある計画と言うしかないのだが、当時の防衛軍、ひいては地球連邦政府にとってボラー連邦と戦争状態に突入すること、あるいはデザリアム帝国がイスカンダル事変の報復として侵攻してくるのは最大限警戒するべきであり、最悪、これら両国が同時に侵略行動を開始する可能性も想定しなければならなかった以上、このような軍備計画が真剣に議論されたのも無理からぬことと筆者も考える次第である。
 ともあれ、後にB型戦艦、B型巡洋艦、C型駆逐艦(※筆者注:いずれもオリジナル完結編に登場する艦艇のこと)となる、ディンギル戦役前に配備が開始された艦艇の原案については、この軍備計画に基づいて艦政本部で早期に検討が開始された。だが、これら新艦艇の設計案が完成する前に、再びその計画を狂わせる事態が勃発することになるのである。


デザリアム戦役による粛軍と派閥抗争

 2207年、グランドリバースシステムを利用したデザリアム帝国軍の奇襲に対し、防衛軍は相応に対応策を用意していたものの、内通者の存在もあって地球そのものが占拠されるという非常事態に発展した。更にこのデザリアム戦役の勃発に加え、様々な要因からボラー連邦とも戦争状態に突入することとなってしまった地球連邦および防衛軍は、ガトランティス戦役と同等レベルの人類存亡の危機に立たされることとなってしまう。
 結果として、地球はこの戦役を乗り越えることに成功し、ボラー連邦との慢性的な戦争状態という問題は残ったものの、人類滅亡の危機からは何とか逃れることができた。しかし人類の内部、特に防衛軍首脳部や軍に関わる軍需企業の中からデザリアム帝国への内通者を出したことにより、防衛軍は軍備計画以前にその組織の大幅な改変を迫られることとなった。

 そのため、後に「2208年の大粛軍」と呼ばれる綱紀粛正が防衛軍内で行われた。この粛軍の影響は多岐に渡り、結果として防衛軍は多くの軍人、軍属を退役させざるを得なくなり、軍需企業もかなりの数が(国防兵力維持のため、ある程度の年限は設けられたものの)軍の発注から締め出されるという異常事態に立ち至ることとなる。
 もちろん、デザリアム戦役前には開始の段階に至っていた『二国標準軍備』はこれによって実行がほぼ不可能となったのだが、戦役の被害を勘案、また軍内部で大きな粛正が行われた結果として再度軍備計画の大幅な路線変更を行うこともまた難しくなっており、やむを得ず防衛軍首脳部は艦政本部に新艦艇の設計のみならず、艦艇数の調整や実際の建造に必要な権限を追放された軍需産業から移管する方策を採ることとなった。

 この措置は当時どうしても避けられないものだったと筆者も認識しているが、これによって今まで様々な部署が分担して行っていた艦艇の建造に関する権限が文字通り艦政本部によってほぼ完全に集約されたため、その『強化された艦政本部の権限を利用して』どのような軍備を行うかについて防衛軍内部で派閥抗争が勃発してしまう。
 ここで言う『派閥抗争』とは主に兵科ごとに分かれた士官たち、それも各兵科の強硬派と言うべき者らが、極論すれば『自説の優位性について空理空論を並べ立て、不毛な議論を繰り返す』といったものであった。何人か調停を試みる将官も存在したが、地球防衛軍の創設以来、全軍の調停役として機能していた藤堂平九郎防衛軍統括司令長官が、身内からデザリアムとの内通者を出していたために当時その権限を十全に用いるのが困難になっていたことがあり、各派閥を融和させる努力はほぼ無に帰してしまった。

 それでも、派閥抗争の主役となった各兵科の強硬派の士官たちがあまりに近視眼的なものであったことを危惧する士官も多く存在しており、特にこの時期に艦政本部長を務めて各派閥の調停に尽力した高石範義宙将や、自身の属する宙雷閥のみならず、かつて教官時代に培った人脈を生かして若い士官たちに自制を促した堀田真司宙将補、歴戦の士官として全軍の抑え役となり時に厳格な態度を示した山南修宙将らの努力が目立った。そして藤堂長官もまた防衛軍内部に対する調停工作、あるいは一部強硬派士官の予備役編入など硬軟織り交ぜた対応で派閥抗争に対処する姿勢を見せたことで、2209年度初頭には一応ではあったものの、防衛軍内部におけるこうした派閥抗争は沈静化することとなった。

 この事態収拾は後の地球防衛軍における『再びの一致団結』への布石として重要な要素を占めるのだが、当面は新型艦による軍備の遅延、あるいは実施された軍備の歪さといった悪影響のほうが目立つことになる。ともあれ2208年の大粛軍を経て実施段階に入った地球防衛軍の新艦隊整備は、2209年度中頃には規模こそ『二国標準』の予定よりはかなり小規模であったものの、ある程度軌道に乗って新鋭艦が続々と艦隊に配備されるようになったのである。


『新艦隊の戦力発揮に不安あり』

 だが新型艦艇の設計が急速に具体化していく中で、当初の『二国標準計画』で謳われた「新型波動砲の威力によって敵艦隊を殲滅する」という前提で整備された新艦隊に疑問を持つ士官が現れるようになる。

 その代表は先述した堀田宙将補で、彼は戦艦戦力については「ほぼ問題ない」という立場だったものの、設計の段階で『不足する波動砲艦戦力を補うべく建造する』とされたB型巡洋艦については「D級戦艦に総合的な能力、特に防御で劣るB型巡洋艦に戦艦級の代替は困難ではないか?」と、B型巡洋艦の設計中に指摘している。だが、この頃は防衛軍内部の派閥抗争がまだ続いている状態だったため、堀田の意見は砲術科士官の強硬派によって封殺されてしまう。
 また、堀田はやはり設計中のC型駆逐艦に関して「駆逐艦によって護衛すべき艦艇を多数抱えた艦隊内で、駆逐艦の重要な役割である機動副砲として用いるには相応の数量を揃える必要がある。それを鑑みるとC型駆逐艦は艦型が大きく量産性に不安があり、十全な数量を確保することが可能か疑問がある」との指摘も行ったが、こちらも「外洋航行能力を確保するために必要である」として容れられることはなかった。

 そして、続々と竣工した新型艦が艦隊に配備され始めていた当時、堀田は内惑星警備艦隊司令長官の職にあった。この艦隊は二線級とされたガトランティス戦役前後に建造された中小型艦を中心に編成されていたが、新艦艇に一抹の不安を覚えた堀田は、自身が率いる艦隊と新艦艇で編成された小部隊との『訓練』を行い、その中で自説の正否を確かめることにしたのである。
 新たに創設された地球防衛艦隊(連合艦隊ではない)の首脳部としても、新鋭艦のお披露目にはちょうどいいという判断があったのだろう。早速、互いに戦艦2、巡洋艦4、駆逐艦8の編成で金星宙域において戦闘訓練が行われた。

 しかし、最終的な勝敗判定こそ新艦艇部隊の勝利に終わったこの演習は、実は新鋭艦たちにとっては想定外の苦戦の連続だった。内惑星艦隊を率いる堀田がガミラス大戦以来の熟練した宙雷士官だったことを割り引いても、小型軽快なB型駆逐艦(※筆者注:オリジナルさらば、2駆逐艦)部隊にしばしば戦線の突破を許して隊列の維持が困難になり、その隙に旧式となっていたD級戦艦や巡洋艦戦隊の砲撃に晒されるという失態を演じてしまったのである。
 この演習で特に問題とされたのは、艦隊全体の防空に当たるC型駆逐艦の搭載砲過小によって生じた敵への対応能力の不足と、艦隊戦力全体を下支えするべき巡洋艦がこの時はすべて『戦艦』に類似した運動をすることで「防御力に劣る戦艦として動いてしまっている」という点だった。これを受けて、堀田は改めて防衛軍首脳部に意見具申をしている。

 「現状の新鋭艦による艦隊は、戦艦、巡洋艦の大型化による被弾面積の増加、護衛の駆逐艦の砲門数不足といった問題から、特に敵軽快部隊に接近戦を挑まれた場合においてその十全たる戦力発揮に不安がある。対処法としては機動副砲の役目を果たすべき駆逐艦の砲を現在の大口径砲から中口径砲に換装し、それとは別に外洋航行能力を維持しつつ小型化した高速高機動な駆逐艦を可能な限り揃えることが最善と考えられる」

 この意見は防衛軍首脳部でかなり真剣に検討されたようだが、当時の資料によるとC型駆逐艦の主砲を中口径砲へと換装する再設計を行う以外は今回も容れられることはなかった。これは度重なる戦役を経てその都度復興してきた地球にとって、想定外のものも含めて様々な状況に対応できるような艦隊を整備するのは、予算や資材の確保、粛軍の影響で規模が縮小された設計部門の多忙さなどから重荷となっていたのが大きな要因と考えられる。
 (なお堀田は「新造が難しければ既存小型艦艇の有効活用を考慮しては」とも進言しているが、こちらは乗員の不足を理由に却下されている)

 結局、敵軽快部隊への新艦隊の対処としては、C型駆逐艦が形成する速射砲による弾幕と、当時ようやく再建の目途がついた航空隊が共同して担当することとなった。こうして「拡大波動砲の威力を以て侵攻してくる敵戦力の大半を撃破、しかる後に通常兵器で残敵を掃討する」戦術を基本とした『新・波動砲艦隊』と一部で呼ばれることになる新鋭艦隊を一定数整備したところで、地球は2210年のディンギル戦役を迎えることになるのである。

D級戦艦の問題点と土星会戦

 いわゆる『カラクルム落下事件』から始まったとされるガトランティス戦役開始の前後に量産、配備が本格化したD級戦艦の前期生産型(この項では中期生産型と呼ばれるA3型戦艦もこれに含む)であるが、艦隊側からは「戦艦として攻防性能と速力、運動性は十分であり、艦隊戦列の中核を成すに申し分ない性能を有する」と高く評価されている。
 ただ、防衛軍が抱える慢性的な人員不足というやむを得ない事情があったとはいえ、艦各部において重要箇所の運用を相当にAIに依存していること、機関および兵装の制御を中央コンピュータによって一括して行うというシステムについては「コンピュータに何かしらの損傷が発生した状況において、艦の戦闘、航行能力の発揮について多大なリスクを伴うのではないか?」と不安視されていた。

 更に重大な問題とされたのは、D級戦艦が搭載している一式41cm集束圧縮型陽電子衝撃砲の散布界に関してだった。これは艦隊に十分な数の戦艦が配備されていれば問題は少ないとされていたが、一個戦隊(3隻)のみによって主砲の一斉射撃を行った場合、特に遠距離砲戦における散布界は許容範囲を超えており、敵艦に対して有効な射撃が困難であると評価されていたようである。
 A3型戦艦から装備され、それ以前に建造された艦にも追加された主砲の発砲遅延装置は散布界問題への対処の一環だったが、同装置を搭載してもなお「D級戦艦の主砲散布界問題は解決したとは言えない」と艦隊側は考えていた。そのため艦政本部および技術本部は更なる主砲射撃管制用AI並びにコンピュータの改良を継続して行うこととし、艦隊側のほうも、戦況に応じて主砲を一斉打方ではなく独立打方(D級戦艦の場合、三連装砲の右砲ないし左砲から0.2秒程度の間隔を開けて射撃することを指す)による射撃を行い、これによってエネルギー弾発射時の衝撃波の相互干渉を抑制する工夫を行っている。

 だが、D級戦艦に付きまとうこれら問題点については、ガトランティス帝国との交戦が本格化した戦時下ということもあり、抜本的な対策は行えないままとなっていた。こうした状況で、地球防衛軍はその歴史においても最大級となった艦隊戦である土星会戦を迎えることとなる。

 会戦勃発時、D級戦艦は地球防衛艦隊に各タイプ総計で42隻が配備されており、このうちほぼ同時期に十一番惑星宙域において生起した艦隊戦に参加した『出羽』以下の5隻と、土星基地から地球へと後送される輸送船団護衛の任に当たった『ボロディノ』を除く36隻が、土星本星宙域における決戦に参加した。
 土星宙域での艦隊戦において、D級戦艦は当初期待されていた艦隊の中核を成す戦列艦、並びに波動砲艦として存分な働きを見せたのだが、戦後に各艦隊から提出された戦闘詳報から、先述したD級戦艦の問題点がこの会戦において様々な方面から噴出したことが伺える。

 それらに曰く、

 ・主砲の散布界が、特に遠距離砲戦において著しく過大。そのため有効命中弾数が過少となり、仮にアウトレンジ射撃を行った場合においても敵艦を短時間で撃破することが困難。特に艦隊の戦艦数が少なく、濃密な弾幕を形成できない場合においてこの傾向が顕著である(なお、この問題は土星会戦における第6艦隊(ヒペリオン艦隊)の早期壊滅の原因の一つとされている)
 ・主要火器および機関を中央コンピュータによって一括して艦橋から管制するため、艦橋ないしコンピュータに損害を被ると即座に戦闘不能となる状況が発生し、その復旧を戦闘中に行うことがほぼ不可能。また、砲塔内に要員が配置できず照準機構も搭載されていないため、非常時に砲側照準による射撃を行うことができない
 ・近接対空火力の不足により、敵航空機およびミサイルに対する有効な迎撃手段が十分とは言い難い
 ・砲塔の構造に起因する問題として、特に天蓋の防御力が不十分

 また、会戦の最終段階で連合艦隊はガトランティス都市帝国の攻撃によって壊滅的な被害を受けたのだが、このときの戦闘に関する波動砲の運用についての所見が残っている。それには「拡散波動砲は対艦戦闘における破壊力は極めて大なるも、集束モードに変更して射撃を行った場合、要塞など大型の固定目標に対しては次元波動爆縮放射機(ヤマトに搭載されたの波動砲のこと)に比して威力が劣る。対艦戦闘に特化した結果として、その他の目標に対する攻撃能力が不十分である」と記述され、艦隊に所属していた波動砲艦の総力が、拡散波動砲を搭載した戦艦と威力の低い集束型波動砲しか持たない巡洋艦であったことを悔いるような表現がされている。

 筆者としては、さすがにガトランティス都市帝国のような大規模な移動要塞が襲来してくるとこの時点で想定するのは極めて困難と判断するしかなく、当時の軍備に不備があったとは言い難いように思う。なお、これらの戦訓は当然、その後の防衛軍の軍備に大きな影響を与えることになるのだが、詳細は以降その他の記述に譲ることとしたい。


損傷修理および戦訓への対応工事

 ガトランティス戦役終結時、残存していたD級戦艦(この時点で戦艦籍から除かれていた艦は含めない)は以下の通りである。

 A1型d 『出羽』
 A2型   『ドイッチュラント』『デラウェア』『デュプレスク』
 改A2型a『リヴェンジ』
 改A2型b『相模』
 A3型   『薩摩』『エマニュエレ・フィリベルト』

 (他にA2型戦艦『河内』とA3型戦艦『オルデンブルク』が土星周辺の衛星にそれぞれ擱座していたが、この2隻は防衛軍が土星宙域を回復した後の調査で復旧不能と判断されたため、解体された)

 戦役に参加したD級戦艦が34隻もの損失を生じ、戦艦戦力が激減したという事実は、他にヤマト及びD級戦艦に近い火力を持つ航空母艦3隻も残っていたとはいえ、土星以遠の太陽系宙域にガトランティス残存軍が跳梁している状況下とあっては、地球防衛軍の焦燥を駆り立てるには十分な苦境だった。
 そうした事情から、また生き残った8隻のD級戦艦も大半は大規模な修理が必要だったこともあり、防衛軍は戦力補充のためD級戦艦の『後期生産型』となる新造艦の建造に着手することを決定する。後期生産型の詳細は後に譲ることとするが、同時期に残存するD級戦艦への修理と共に、ガトランティス戦役の戦訓へと対応させるための改装工事が行われている。

 艦によって改装の規模や詳細は異なるのだが、共通する点として主砲散布界の減少、中央コンピュータ損傷時におけるリスク分散、対空兵装の増強などを目的とする工事が行われた。一例として『薩摩』の改装状況を以下に挙げる。

 ・主砲を一式一型改41cm集束圧縮型陽電子衝撃砲に改造、発射時の衝撃波を減圧して散布界の向上を図る
 ・砲側照準を行うため主砲塔内に小型レーダーおよび測距儀を搭載、要員の座席も配置
 ・主砲以外の各種兵装および機関も、非常時に乗員の操作によって制御可能なように改修
 ・中央コンピュータ室の装甲および隔壁を強化
 ・両舷側の九八式短魚雷発射管を全門撤去し、同所に砲座を設け76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて4基装備
 ・主砲塔天蓋に増加装甲を追加

 これらの工事には主砲の射程および貫通力の低下、雷撃戦能力の減少、主砲最大仰角の低下など代償を伴ったが、ガトランティス戦役における戦訓への対応としては十分なものと評価されることになる。特に主砲の改造によってD級戦艦の主砲散布界の問題はほぼ解消されており、このことは艦隊側からも大いに歓迎された。
 なお、残存艦で唯一48cm陽電子衝撃砲を搭載していた『相模』の散布界は特に問題ないとされていたが、修理の際に発射速度向上のため、主砲を当時のヤマトと同じ九八式二型48cm陽電子衝撃砲へと換装している。

 一方で「規模に優る敵艦隊に対処するため、艦隊内に一定数必要である」とされた拡散波動砲搭載艦について、防衛軍はD級戦艦の前期生産型をもってこれに充てるとし、対要塞砲として集束モードを強化した波動砲の搭載は後期生産型の艦へと行われることに決定された。そのため改装された前期生産型の各艦はこの時点で就役時に搭載していた拡散波動砲を継続して搭載しており、波動砲関連の目立った改造は行われていないようである。

 更にこの時期、後続の後期生産型を含めてD級戦艦は一部で塗装の変更が行われている。特に火星基地に配備された赤色塗装の艦や月面基地(本国艦隊)所属艦の青色塗装などが知られるが、就役時の灰紫色塗装を継続して使用した艦もあるなど必ずしも防衛軍全体で統一された規格は存在していないようで、これらのバリエーションについては今後の調査が待たれるところと言えるだろう。


後期生産型の計画と建造

 広義において『D級戦艦の後期生産型』とは、その派生型であるヒュウガ級戦闘空母やアスカ級補給母艦・強襲揚陸艦も含むのだが、これらは当初から想定された任務が戦艦とは異なるし、後に別のクラスとして分類され直されたものなのでここでは扱わない。あくまで『戦艦として』建造された後期生産型について記述していきたいと思う。

 後期生産型の計画、設計にあたって、要点となったのは以下の通りである。

 ・減少した戦艦戦力の早急なる補充により、仮想敵が有する大型艦への対処
 ・対要塞砲として集束型波動砲の搭載、ないし艦隊最前衛を担うべく防御力の大幅向上を視野に入れた波動砲の撤去
 ・多用途の任務に対応させるべく艦型、装備の再検討(この項目がヒュウガ級戦闘空母やアスカ級補給母艦・強襲揚陸艦の建造に繋がっている)
 ・今後の新型戦艦量産を踏まえた実験的要素、特に開発中の新型波動砲(後の拡大波動砲)を最優先とした新型装備の追加、実用試験

 これらを踏まえ、D級戦艦の後期型は地球防衛軍が標榜するところの『地球の規模に見合った軍備の最適化』を目指す新たな軍備の代表としてその建造計画が立案されている。なお、これらD級戦艦の後期建造型の予算については、土星会戦後に様々な理由から建造中止となっていたA3型戦艦の予算と準備された資材の一部を転用して行われることとなった。

 当時の防衛軍の仮想敵はあくまでガトランティス残存軍であり、かつてのガミラスあるいはガトランティス帝国ほど強大なものとは判断されていなかったことが当時の資料から伺える。そのため(一応)戦時下とはいえガトランティス戦役開始直後におけるA3型戦艦の急造ほどは後期生産型の増備は急がれておらず、戦艦戦力補充のため先行して起工された各種タイプ9隻(戦闘空母型や補給母艦・強襲揚陸艦型は含まない)を除いた艦の建造はやや遅れて開始された。これは時間的余裕があるという理由もあったようだが、地球周辺などに浮遊していたガトランティス帝国軍の艦艇の残骸から希少金属を再利用しての建造が予定されていたため、それらの回収に期間を要したという側面もあると考えられている。

 戦艦として建造されたD級戦艦の後期生産型は4タイプ、17隻からなるが、その詳細については次項に譲りたく思う。

量産性向上と戦訓に応じた改設計

 A型駆逐艦の量産性向上について、艦政本部が早期に出した結論は「武装の削減」というものだった。これは単に建造のための工数を減らすこともあったが、船体規模に対して過大気味だったA型駆逐艦の武装を削減することで、艦隊側が問題視した運動性や継戦能力の低さを改善することも目標としていた。
 まず真っ先に、艦政本部は波動砲とそれに関連する機材の撤去を提案している。船体の半分ほどの面積を占有する波動砲の撤去は量産性向上のため確実な方法だったが、当然のこと波動砲搭載艦の建造を推進していた防衛軍首脳部は難色を示した。だが艦隊側、特に連合艦隊司令部がA型駆逐艦を波動砲艦として有効利用することの難しさを強硬に進言したこともあって、改設計初期の段階で波動砲の撤去が決まることになる。

 波動砲以外の武装については極力、A型駆逐艦に搭載されたものを維持するという方針が立てられたが、製造能力に限界があって量産のためには不足をきたしていた主砲塔も、1隻あたりの使用数を減少させるため上甲板にある2番砲塔が撤去された。なお、これら武装の削減に対応する形で雷装は艦隊側からの要望もあって強化されることになり、三連装だった324mm宇宙魚雷発射管は四連装に変更、艦首下部の53cm宇宙魚雷発射管も倍の4門に強化された。
 また、撤去された2番砲塔跡の甲板上に亜空間爆雷投射器が8門装備され、対空兵装は改設計された艦橋側面に13mm連装対空パルスレーザー砲が片舷あて2基搭載された。これと同時に、艦橋構造物の容積が減少されたことに伴って四連装対空ミサイル発射管が代償として撤去されている。

 その他の装備については、A型駆逐艦で搭載された波動砲発射のための探知機器が多く降ろされており、これら波動砲関連の機材を撤去した空きスペースは予備魚雷の追加搭載と居住スペースの拡大に用いられた。同時に艦橋もより小型のものへと変更され、その後方の大型アンテナも撤去されている。また、艦首の波動砲口跡には亜空間用ソナーと波動防壁発生装置がコーン状のキャップ内に搭載され、特に後者はA型駆逐艦で不足とされた防御力を補う装備として重宝されたようだ。

 こうしてまとめられた設計案は防衛軍に承認され、この際に『B型駆逐艦』という制式名称が与えられた。なお本型はA型『護衛』駆逐艦のように任務が制式名称には組み込まれなかったが、既にA型駆逐艦が実戦において護衛のみならず艦隊型駆逐艦として幅広い任務に従事していたこと、一部艦隊士官たちが「任務を制式名称に組み込むと、実戦において運用が硬直化する可能性が高くなる」と意見したこともあって、見送られたようである。


B型駆逐艦の特徴と評価

 ここで、改設計されたB型駆逐艦の諸元を示す。


全長    113.8m
全幅    18.5m

主砲    Mk.42 12.7cm連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 2基4門

その他兵装 Mk.33 76mm連装パルスレーザー砲 4基8門(艦尾全周)
      Mk.32 324mm宇宙魚雷四連装発射管 4基(艦前部全周)
      零式53cm宇宙魚雷発射管 4基4門(艦首下部)
      九九式13mm連装対空パルスレーザー砲 4基8門(艦橋側面)
      零式四連装対艦グレネード投射機 2基(対空兼務 船体側面)
      零式亜空間爆雷投射器 8門(上甲板)

主機    艦本式次元波動機関 1基

搭載機   一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』1機
      (連絡、偵察用。戦闘装備での搭載は不可)
      救命ボート複数

乗員    40名(戦時定数 33名程度で戦時運用が可能)


 波動砲とその関連機器、一部兵装の増減などが目を引くが、船体構造や搭載兵器など大まかな仕様はA型駆逐艦とほぼ共通していた。
 そして艦政本部の思惑通り、波動砲の撤去は量産性と機動性の向上双方に大きく寄与し、この点はA型駆逐艦の問題をほぼ解消していた。一方で波動砲と主砲1基の削減による火力低下は一部艦隊士官から懸念の声もあったが、設計当初のB型駆逐艦は単独ではなく艦隊での運用が前提となっていたことからか、実戦で特に大きな問題は発生しなかったとされる。

 一方で雷装の強化は艦隊側、特に宙雷閥の士官からは大いに歓迎され、一部の士官からは『B型駆逐艦は磯風型駆逐艦の後継として理想の突撃駆逐艦である』との声も上がったという。反面、A型駆逐艦に続いて対空兵装に関しては(対空砲兼務の主砲が削減されたこともあって)更なる強化が求められたものの、こちらも単艦ではなく艦隊内で護衛艦として用いるに大きな不足ないと判断され、少なくとも建造開始当時はさほど重大な欠陥とはされなかったようだ。

 総じて艦隊側のB型駆逐艦に対する評価は『機動性と雷装強化による継戦能力の向上により、全般として駆逐艦の任務を全うするにふさわしい艦となった』というものであり、防衛軍首脳部がこだわっていた波動砲が撤去されたことについての批判はそれほど起こらなかったらしい。だがガトランティス帝国軍との戦闘が拡大していく中で量産が開始されたB型駆逐艦は、再び防衛軍首脳部と宙雷閥との間の論争に巻き込まれることとなるのである。


質か量か

 B型駆逐艦の初期量産は、A型駆逐艦建造の中心となっていた北米管区ではなく、この当時比較的建造能力に余裕があった極東管区が担当することになった(北米管区規格の兵器は極東管区へ供給が行われることとなっていた。なお、量産が本格化した後は極東管区が提供した設計図を基に各管区がそれぞれ兵装などを製造して艦の建造を行っている)。そのため極東管区で完成した一番艦『綾波』がクラス名になったが、極東管区でB型駆逐艦が10隻ほど完成した頃、地球連邦を震撼させる事件が勃発する。いわゆる『カラクルム落下事件』である。
 この事件の結果、地球はその座標をガトランティス帝国に露呈することとなった。そのため太陽系が直接その侵攻を受ける可能性が高まり、それに対応すべく防衛軍はD級戦艦など大型艦の追加建造を決定することになる。

 そのため、当初相応に確保されていた中小型艦、特に駆逐艦はその予算を削られることになってしまう。また予算の制約がある中で、防衛軍首脳部の多くは再びA型駆逐艦の量産を行うことを考えるようになった。これは一にも二にもA型駆逐艦に波動砲が搭載されているということに起因していたが、今後太陽系にカラクルム級戦艦を含む大型艦が襲来した際に対応するためという意味では、この考えにも大義名分はあったといえる。
 一方、先述した通り宙雷閥の強硬派はB型駆逐艦を理想の突撃駆逐艦であると考えていたから、防衛軍首脳部の考えに真っ向から反対した。そのため戦時にも関わらず再び不毛とも言える論争に発展する危機が生じたのだが、大規模な議論に発展する前に、連合艦隊司令部の意見具申がこの問題に決着をつけた。

 『現状、護衛艦としての駆逐艦の不足を補うことが喫緊であり、それにはB型駆逐艦の量産で対応するのが最善である。波動砲艦についてはD級戦艦、そして運用によって補うことを前提にA型巡洋艦、あるいは波動砲を追加装備した金剛型宇宙戦艦の現有兵力で事足りる』

 当時の連合艦隊司令長官である土方竜宙将が特に強く主張した意見だったと伝わるこの具申は、防衛軍首脳部のみならず突撃戦法に固執していた宙雷閥の強硬派をも黙らせる効果があった。波動砲を搭載することによって量産性を落としているA型駆逐艦の建造に固執する防衛軍首脳部、B型駆逐艦を護衛艦ではなく突撃駆逐艦として『のみ』用いることを考えていた宙雷閥の強硬派の双方が『量産性に優れたB型駆逐艦を汎用性のある駆逐艦』として幅広く運用するなど考えていなかったのである。
 この両者の近視眼的な視野は後年、更なる問題を引き起こすのだが、ここでは本題から外れるので触れない。ともあれB型駆逐艦は極東管区のみならず他の管区でも建造体制に入り、ガトランティス帝国の太陽系侵攻に備えた量産が行われることになった。


必要を満たせなかった建造数

 だが、B型駆逐艦の登場はわずかに『間に合わなかった』ものかもしれなかった。それは太陽系に舞台を移したガトランティス戦役初期、外惑星での小規模な戦闘に参加したある高級士官の言葉からもうかがえる。

 「適切な兵力配備をしようにも、艦の不足でできない状況になっている」

 この『艦の不足』という問題はこの士官のみならず多くの艦隊士官が痛感していたようで、前線において敵艦隊に即応できる機動力のある、また兵站線を確保するべく輸送船団を護衛すべき艦艇が必要であるのに、各基地および艦隊に配備されたA型、B型駆逐艦の不足は相変わらずで、必要とされる数量は満たせないままであった。
 D級戦艦の増勢のために一度は予算をそちらに振り分けた防衛軍首脳部であったが、さすがにこの事態を看過することもできず、艦艇増勢のために準備された戦時予算の大半をB型駆逐艦の量産に集中投入する措置を取った(D級戦艦の中期生産型であるA3型戦艦の建造数が18隻に縮小したのは様々な要因があるが、この予算振り分けの変更も一因である)。

 だが、予算の問題を解決しても、建造ドックや兵装など装備の確保を行う時間はこの時期の地球には残念ながらそれほど残されておらず、結果的にガトランティス戦役における最大の艦隊戦となった土星沖会戦においても、宙雷戦隊の中核、および艦隊主力の護衛艦という任務を担ったB型駆逐艦(少数だが、基地駐留艦隊に配備されていたA型駆逐艦も参加している)は100隻を少し超える程度にとどまっている。

 ガトランティス戦役におけるA型、B型駆逐艦の戦歴については、次項で触れたいと思う。

波動砲搭載を要求された駆逐艦

 艦政本部から提出された新型護衛駆逐艦の試案には、将来の発展を見込んで小型ながらも設計に相応の余裕があったとされる。だが、当時波動砲艦隊の整備に邁進していた防衛軍首脳部は「艦内の余剰空間を整理し、確保したスペースに既存の波動砲を小型化して搭載すべし」という命令を下したのである。
 当時の技術力であっても、量産が開始されたばかりのA型巡洋艦が搭載していた集束型波動砲を小型化して搭載することはさほど困難ではなかった。だが波動砲を搭載すれば当然のこと、その関連設備に限られた容量しかない駆逐艦用の小型波動機関のリソースを振り分けねばならなくなる。それでは防御面で波動防壁への依存が大きくなることを避けられない駆逐艦の防御力が不足するのではないか。そして、そのようなリスクを冒してまで駆逐艦にまで波動砲を搭載することに意味があるのか、という意見も艦隊側から出されていた。

 この問題は、それまで新型駆逐艦の建造について対立していた防衛軍首脳部と宙雷閥の強硬派の士官たちのみならず、宙雷閥の穏健派やその他の兵科の士官まで巻き込んだ論争に発展した。新型駆逐艦への波動砲搭載を反対する士官たちは、こうした決戦兵器を搭載することによって運用側が護衛艦としての本分を忘れて波動砲使用に傾斜することを恐れていたようである。
 だが最終的にこの議論は、防衛軍首脳部の「敵カラクルム級戦艦に対して有効な打撃を与えるため、小型であっても波動砲は必要である」という主張に押し切られる形となった。実際、艦隊側もガトランティス帝国軍のカラクルム級戦艦に難渋している現状、それに対抗するために必要だと言われれば、反論も困難になり沈黙を余儀なくされたのだった。
 (それでも一部の宙雷閥の士官や艦隊士官たちは「護衛艦への波動砲搭載は運用の硬直に繋がる」と主張していたが、最終的にこれらの意見は無視される形となった)

 2201年末、波動砲を搭載した新型『護衛』駆逐艦の設計が以下のようにまとめられた。なお、今回の護衛駆逐艦の量産、および搭載兵装の供給については北米管区が中心になって行うことが早期に決まっており、それに伴い、これ以前に建造された多くの艦艇が極東管区(日本)で整備された兵装を装備していたのに比して、北米管区が設計、製造した兵器の搭載が増えているのが特徴と言える。


全長    113.3m
全幅    18.5m

波動砲   零式タキオン波動集束砲改一型 1門
主砲    Mk.42 12.7cm連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 3基6門

その他兵装 Mk.33 76mm連装パルスレーザー砲 4基8門(艦尾全周)
      Mk.32 324mm宇宙魚雷三連装発射管 4基(艦前部全周)
      零式53cm宇宙魚雷発射管 2基2門(艦首下部)
      一式四連装対空ミサイル発射管 2基(艦橋基部側面)
      零式四連装対艦グレネード投射機 2基(対空兼務 船体側面)

主機    艦本式次元波動機関 1基

搭載機   一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』1機
      (連絡、偵察用。戦闘装備での搭載は不可)
      救命ボート複数

乗員    44名(戦時定数 35名程度で戦時運用が可能)


 波動砲を搭載すべきか否かで論争があった新型駆逐艦ではあったが、波動砲以外の兵装は「村雨型と同等の戦力を維持する」という当初の要求を概ね満たすもので、艦の規模に対して相当な重武装艦としてまとめられた。他方、特に前方に集中した主砲と魚雷兵装は防衛軍首脳部と艦政本部、そして宙雷閥との妥協の産物と言うべきもので、突撃戦法を考慮したものと(少なくとも表向きは)説明された。これを受けて、宙雷閥の士官たちもいったんはその不満を鎮静化させることになったのである。


A型駆逐艦の特徴

 設計がまとめられた後、この新型駆逐艦には『A型護衛駆逐艦』という制式名称が付与された。その一番艦は北米管区で建造された『フレッチャー』だったため、クラス名は『フレッチャー級』とされたのだが、本稿では『A型駆逐艦』の名称で通すことをご了承いただきたい。

 A型駆逐艦はタイプシップとなった『神風』型駆逐艦と同様の紡錘形船体を持ち、武装の配置は主砲塔が一基増えた以外はほぼ共通していた。ただ『神風』型は対空能力が不足しているという評価があったため、A型駆逐艦ではヤマトに装備された12.7cmパルスレーザー砲を集束圧縮型陽電子衝撃砲に改設計したMk.42 12.7cm連装砲が搭載された。この砲の特徴はその長砲身であり、貫通力と発射速度を重視しそのエネルギー弾の総量で敵艦を圧倒することを主眼に置いていた。もちろん原型がパルスレーザー砲ということもあって、対空兼用の両用砲としても高く評価されている。また補助砲(副砲と対空砲を兼務するもの)として76mm連装パルスレーザー砲を装備して艦後方への備えとした。

 魚雷兵装は、波動砲を装備したことにより大型魚雷の搭載スペースが減少したため、北米管区が開発したMk.32 324mm宇宙魚雷の三連装発射管が4基装備された。この魚雷はガミラス大戦末期に開発された零式53cm宇宙魚雷より威力で劣ったが、敵軽艦艇に対抗するには十分な威力があると判断され、対空ミサイルと兼用という形で採用が決まった(なお、大型艦艇については艦首下部に装備された53cm魚雷で対応することとされた)。また、対艦グレネードおよび小型の対空ミサイルも必要最低限の装備が施されている。

 波動砲は、当時A型巡洋艦が装備していた波動砲を小口径化した「零式タキオン波動集束砲改一型」が搭載されている。この砲の威力は1門の斉射ではカラクルム級1隻の撃破までは困難とされる程度だったが、代わりに当時の波動砲としてはエネルギーチャージの時間がやや短く、また一個駆逐隊(3~4隻)の一斉射撃であればカラクルム級1隻を確実に撃破できると判断されたため、艦隊単位の波動砲戦においてはその火力が期待されていたことが当時の記録からもうかがえる。また波動砲搭載艦ならではの特徴として、このクラスの小型艦としては波動砲射撃時の測距などに必要な探知機器が比較的充実していたことも挙げられる。

 なお、本艦は連絡機としてコスモタイガーⅡを1機搭載することができたが、格納庫のスペースが不足し戦闘状態での搭載は不可能で、またコスモタイガーⅡの慢性的不足から、連絡機としては他の旧式の機材を搭載したり、任務によっては救命ボート以外の搭載機を有さないことのほうが多かったようである。


量産、実戦投入と問題点の発覚

 設計が完了、承認されて間もなく、A型駆逐艦は北米管区を中心とした各地の管区で量産体制に入った。いかに威力が劣るとはいえ、防衛軍首脳部が「絶対数が不足している」としていた波動砲搭載艦ではあったから、A型戦艦やA型巡洋艦を護衛する、あるいは波動砲艦としてそれらを補完する戦力として、このA型駆逐艦にかけられた期待は、少なくともこの時点では決して小さなものではなかった。

 そうして量産されたA型駆逐艦群は続々と完成し、逐次ガトランティス帝国軍との戦闘に投入されたのだが、ここでA型駆逐艦は艦隊側から猛烈な批判にさらされることになった。以下にその一部を抜粋する。

 ・新鋭駆逐艦であるにもかかわらず、機動力が村雨改型巡洋艦に対して大きく優越しておらず、敵巡洋艦および駆逐艦を機動力で圧倒できない。総じて運動性が駆逐艦としては低いと言える
 ・波動砲艦としては明確に防御力が不足しており、他艦に比して短いチャージ時間の間すら持ち堪えるのが困難。また、通常戦闘時においても波動防壁の耐久時間が短すぎる
 ・波動砲を搭載したことで予備魚雷を配置するスペースが不足し、継戦能力に問題がある

 こうした問題から、いったんはその不満を収めた宙雷閥の強硬派からも「この艦で突撃戦法を行うのは困難を極めるため、至急の改善を望む」という声も上がり、再び防衛軍首脳と宙雷閥との間で緊張状態が生じることとなってしまった。
 (ただし、一部の宙雷士官はA型駆逐艦について「戦機を見るに敏である必要があるが、状況が許せば本艦の性能があれば突撃戦法は不可能ではない」という評価を下していたという)

 また、こうした実戦面での問題に加え、A型駆逐艦の波動砲を含めた重武装についても問題になっていた。小型の船体に最大限の武装を施すというコンセプトを採用したことにより、建造費用が駆逐艦という艦種としては高価なものとなってしまっていたのである。また多数の武装を採用したことにより、駆逐艦として必要な隻数を揃えるための武装の生産も間に合わず、A型戦艦やA型巡洋艦に建造枠や予算が圧迫されたこともあり(これは当時の防衛軍首脳部がいかに波動砲搭載の大型艦を重視していたかがわかる話と言えよう)、艦隊側からは「性能の問題を忍ぶとしても、現状まずは純粋に艦の数が足りない」という声が上がるようになっていた。

 (筆者は2202年中期の艦隊内におけるA型駆逐艦の充足率に関する資料を目にしたことがあるが、数字に多少の変動があるとはいえ、概ね必要な隻数のおよそ5割程度しか満たせていなかったようである)

 純粋に駆逐艦の数が足りないということに関しては、正直なところ、波動砲艦隊の建造に注力していた当時の防衛軍首脳部の多くがどれだけ深刻にとらえていたか疑わしいもののように思う。だが一部の首脳たち、特に2202年になって設立された地球防衛軍連合艦隊司令部がこの事態を重く見たこともあって、さすがに防衛軍首脳部の総意としても、何らかの対策が必要と判断するに至った。

 ガトランティス帝国軍という敵と交戦中の現在、彼らが出した結論は「より戦時に適応させた、量産性の高い駆逐艦を建造、配備する」というものであった。

磯風型駆逐艦の後継艦

 A型護衛駆逐艦フレッチャー級、およびB型駆逐艦綾波型は、特に前者は『護衛』という任務をクラス名に冠しているとはいえ、ガミラス大戦時に量産された磯風型突撃宇宙駆逐艦の後継と見るべき艦艇である。
 しかし厳密に言えば、波動機関への更新による性能向上に限界があり、早期に艦隊戦列の第一線から退いた磯風改型駆逐艦の代替として配備が決まったものではなく、特にその建造開始に至るまでに、波動砲艦隊を推進したい防衛軍首脳部と、艦隊側、特にガミラス大戦時における磯風型駆逐艦の大量生産によって拡大した突撃戦法を重視する宙雷閥との確執に巻き込まれたこともあって、なかなかに難産となった艦としても知られている。

 本稿ではその数奇な誕生から多彩な戦歴まで可能な限り、フレッチャー級および綾波型について紹介していければと思うので、お付き合い頂ければ幸いである。


神風型駆逐艦とガミラス大戦後の磯風型駆逐艦

 本題に入る前に、先に建造が開始されたフレッチャー級護衛駆逐艦のタイプシップとなった、神風型駆逐艦について少々語っておくことにする。

 その一番艦『神風』はガミラス大戦末期、ヤマトが竣工する直前から極秘裏に建造が開始された艦で、当初は『駆逐艦A』と呼ばれていた(『神風』という艦名は乗員の公募によって非公式に命名されたもので、星還作戦(ヤマトの帰路確保と太陽系宙域の奪還を目的とした作戦)の開始直前に司令部から追認された)。艦の形状はフレッチャー級より後に設計された綾波型のほうに酷似していたが、最終的にガミラス大戦終結までに同型艦3隻が追加建造され、この4隻の駆逐隊は新たに装備された中口径ショックカノンと空間魚雷の威力をもって、星還作戦の成功に大きく貢献したのである。
 だが、この神風型駆逐艦は大戦末期における戦時急造のため設計が未成熟で運用に難しい面があり、同時に星還作戦における酷使で船体各部を大きく消耗させたことも手伝い、4隻とも戦後の戦力としては用いられず、各々特務艦などに艦種類別が変更されて第一線を退いた。

 また、戦中において突撃戦法による戦果の代償として大損害を出した磯風型駆逐艦も、大戦を潜り抜けた僅かな艦が残存してはいたが、こちらも戦時急造に伴う粗製乱造のため第一線任務に耐えられる艦は限られており、一部に波動機関への換装工事が施された以外はやはり予備役ないし後方任務への転属を余儀なくされている。(波動機関を搭載し)新たに量産、配備して再編成されると目されていた宙雷戦隊の中核に、という声も上がったのだが、磯風改型駆逐艦(波動機関を搭載した磯風型駆逐艦は任務、用途を問わずこのクラス名で総称されている)では攻防性能の不足から再び艦隊戦力に組み込むのは困難と防衛軍首脳部は判断したようで、磯風改型駆逐艦は後日、拠点防衛用の雷撃艇やレーダーピケット艦に改設計された艦が追加建造されたにとどまり、金剛改型戦艦や村雨改型巡洋艦ほど多数の追加建造が行われることはなかった。


防衛軍首脳部と宙雷閥の対立

 2201年夏、この時期の防衛軍首脳部は新型戦艦(後のD級戦艦)の計画が控えていたことなどから、新戦艦の量産が軌道に乗り次第、金剛改型戦艦を巡洋艦相当、村雨改型巡洋艦を駆逐艦相当にそれぞれ格下げさせることを考えていたとされる。これによって金剛改型戦艦を旗艦とする村雨改型巡洋艦によって「波動機関を搭載した艦によって構成される」宙雷戦隊が編成されることが構想されたのだが、この構想自体が一部の艦隊側士官には「防衛軍首脳部が艦隊型駆逐艦の整備を放棄した」と映ったもののようである。

 そのため、特に艦隊士官の中で宙雷閥に属する者たちの一部が、首脳部の決定に強い不満を抱くことになった。先にも述べたが、地球防衛艦隊の宙雷閥というものは、ガミラス大戦時における磯風型駆逐艦の大量投入とその魚雷、ミサイルなどの実弾攻撃によって相応の戦果を残したことで拡大した派閥であったから、新たな艦隊型駆逐艦を整備して新鋭の宙雷戦隊を編成すべしと考えていたのだ。

 一方で防衛軍首脳部、あるいはその上にある連邦政府上層部としては、まず波動砲艦たる戦艦の兵力を充足させることで、当時交戦中だったガトランティス帝国、あるいは同盟国であるガミラスに互する艦隊戦力を整備したいという軍事的、政治的双方の思惑があったから、正直なところ限られた造船資源を用いて新たな艦隊型駆逐艦を整備することに意味を感じていなかった。もちろん、先のガミラス大戦において突撃駆逐艦部隊が大損害を出したということも、人的資源が極度に不足していた当時の地球にとっては無視できる要素ではなく、新たな艦隊型駆逐艦(宙雷閥が求めた新型突撃駆逐艦、と言ったほうが適切かもしれない)を整備するのに二の足を踏む理由も十分にあった。

 この時期、防衛軍首脳部と宙雷閥の士官たちによる議論は、後者に属さない艦隊士官たちも交えて継続して行われていたのだが、その主張は平行線のままで一向に進展しなかった。双方の思惑が異なりすぎるため無理からぬことであったのだが、結局、このまとまる気配のない議論に決着をつけたのは、ガトランティス帝国軍と交戦中の前線からもたらされた村雨改型巡洋艦の問題点の指摘、そしてその解決を目指して整備が決定された新型巡洋艦(後のA型巡洋艦)の計画によってもたらされた状況の変化だった。


急遽決定された新型『護衛』駆逐艦の整備

 村雨改型巡洋艦の前線における問題点を一言で言ってしまえば、それは「搭載する兵装の数量と威力の不足」というものだった。これらは、もともと20cm砲という比較的小口径の短砲身ショックカノンや搭載数の限られた宇宙魚雷を装備していた村雨改型においては避けられない問題であり、ガトランティス帝国軍のラスコー級巡洋艦やククルカン級駆逐艦に対してはほぼ単独で対抗可能だったものの、それ以上の戦艦級の艦艇と交戦すると一個戦隊(この時期は通常4隻編成)をもってしても対処がほぼ不可能になるというのは、さすがに艦隊戦力の一翼を担うべき艦として力量不足が過ぎるという見方が、防衛軍首脳部および艦隊側双方から強いものがあった。
 (この問題への対処として武装強化改装を受けた村雨改型巡洋艦も一定数存在していたが、必要な費用や工数に対して効果が限定的とされ、一部の艦への施工にとどまっている)

 そうしたこともあり、防衛軍は既に就役していたパトロール巡洋艦の武装を強化したA型巡洋艦の建造を決定した。この新鋭巡洋艦は艦隊全体の戦力底上げを図ると同時に、当時D級戦艦を建造、運用する能力を持たなかった中小国家にとっても宇宙艦隊の基幹戦力になると期待されていたのだが、こうした構想が具体化する過程で別の問題が生じたのである。

 それは、A型巡洋艦を中心とする艦隊の外周を固めるべき適当な艦種が、当時の地球防衛軍には存在していなかったことだった。この任務に村雨改型巡洋艦を充てる、ということも考慮されたようだが、A型巡洋艦の予定建造費よりは安価な村雨改型とはいえ、一定規模の艦隊を編成するところまで量産するための工数その他はA型巡洋艦に比してさほど軽くなるとは言えず、費用対効果が悪いと判断されるに至ったのだ。
 こうしたことから、地球連邦を構成する主に中小国から防衛軍に、A型巡洋艦と共に艦隊を構成することが可能な小型艦艇の建造が要望された。そして、それに乗じる形で防衛軍内部の宙雷閥も新たな小型艦(当然のこと、彼らが建造を想定していたのは「新型駆逐艦」だった)の建造計画発案に動き「新たに小型軽快なる艦艇を設計、即時量産すべき」という意見が日々高まることとなった。

 防衛軍首脳部の多くはこの提案に乗り気ではなかったようだが、国家レベルの要望を無下にするというわけにもいかなかったし、宙雷閥を別にしても艦隊士官の多くから「現有艦艇で艦隊を構成する場合、その質的あるいは量的にも不足は否めない」という意見が出されている現状からも、やはり何らかの対策が必要との最終結論に至ったようである。そのため、A型巡洋艦の設計を終えた艦政本部に対して、ただちに「新型『護衛』駆逐艦の設計を行うべし」との下命があった。

 この『護衛』という、任務を限定した文言が要求に組み入れられたことに関しては、現在に至るまで謎が多く真相は諸説あって定かではない。ただ筆者の推測になるが、防衛軍首脳部の考えるところの新型駆逐艦は「A型巡洋艦(もしくはD級戦艦)の護衛艦」であって、宙雷閥が要求した突撃駆逐艦ではないことを明確にしたかったのではないかと思われる。実際、この『護衛』という文言を組み込むことに宙雷閥の士官の多くは反対を示していたことから、信憑性はそれなりにある説だろうと考える次第である。

 さておき、新型護衛駆逐艦建造を命ぜられた艦政本部だが「最低でも村雨改型巡洋艦に匹敵する戦闘力を維持すること」という防衛軍からの難題に直面しつつも、先に述べたガミラス大戦末期に建造された『神風』をタイプシップとして選定したことにより、その設計を比較的早期にまとめ上げることに成功した。
 だが、設計案が提出された段階で防衛軍首脳部から「ある要求」が付け加えられたことにより、この護衛駆逐艦の建造は直前になって再びいくつかの派閥を巻き込んだ論争を招くことになったのだが、そのあたりは次項にて説明していきたいと思う。

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