地球防衛軍艦艇史とヤマト外伝戦記(宇宙戦艦ヤマト二次創作)

アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイクは問いません)に登場する艦艇および艦隊戦に関する二次創作を行うために作成したブログです。色々と書き込んでおりますが、楽しんで頂ければ幸いに思います。

このブログは、筆者ことA-140が、アニメ「宇宙戦艦ヤマト」(旧作、リメイク版は問いません)の二次創作として制作しているヤマト世界の地球防衛軍の艦艇史、および本編で描かれていない、あるいはもっと盛り込んだほうが面白いと思われる艦隊戦について創作を行うために開設しました。

筆者はリアルタイムで旧作を見たファンというわけではない(厳密には3歳のときに映画館で完結編を見たようですが)ですが、幼児期からヤマトに親しみ、それが嵩じて軍艦ファンになって現在に至った人間です。そのためヤマト世界に主に1945年以前の海軍史(知識の関係上、日本海軍に関係したものが多くなりそうです)を持ち込んで色々考えながら創作を行っています。

もしヤマトという作品に出合わなければ、人間関係など私の人生は大きく違ったものになったはずで、色々な意味でこの作品には感謝し切れません。その気持ちを大事にして、自分なりのヤマト世界を広げて楽しませていただき、同時にこのブログを訪れた読者の皆様にも楽しんでいただければ幸いに思います。

なお、旧作リメイク問わず本編の設定を自分の考えで弄ったり、両方を混ぜて新しい設定を作るなど行うこともありますが、筆者はどの本編であろうと否定するつもりは一切なく、単に「ヤマトが好きだから、自分でその世界を描いてみたい」というスタンスで創作を行っています。特定個人や組織、作品に対して批判や不満などは一切持ち込まずに創作を行っていますので、その点はご了承いただければ幸いです。

遅筆にてどのくらいの頻度で更新できるかわかりかねる部分はありますが、どうぞよろしくお願いいたします。

なお、表示の関係で記事を個別に読むと前後編などの場合、後編から読むことになるようです。カテゴリーからは順番に読めるよう設定してありますので、左のカテゴリーから各記事をお読み頂ければと思います。

(※筆者注 本文内のD級戦艦のスペックに関しては、あくまで筆者の二次創作として原作『さらば』『2』に登場する『主力戦艦』も含めて考慮した独自のものとなっており、原作およびリメイク版『2202』の公式設定とは全く関係ないものとなっていますので、その点はご了承ください)

仕様決定と量産の開始

 四管区による試作艦建造とその試験を経て、最終的には『ドレッドノート(Ⅰ)』の船体に『出羽』の機関を搭載する、という決着を見た新型量産戦艦の仕様だったが、その他、細かい箇所の再検討などが再び艦政本部で行われ、2201年10月、その決定により新戦艦は以下の性能にまとめられ、防衛軍首脳部はこれを承認した。

全長 280m
全幅 69.8m
全高 99.7m

波動砲 一式タキオン波動拡散砲(通称・拡散波動砲)1門
主砲  一式41cm三連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 3基9門

その他武装
    九九式短15.5cm六連装陽電子衝撃砲 1基(司令塔頂部)
    零式四連装対艦グレネード投射機(対空兼務 前甲板両側面)
    一式亜空間魚雷発射管 単装4門(艦首両舷)
    零式小型魚雷発射管 単装8基(艦首両舷)
    九八式対空迎撃ミサイル発射管 単装8基(艦底部)
    九八式短魚雷発射管 単装12門(片舷あて6門)
    一式多連装小型ミサイル発射管 16門(片舷あて8門)
    司令塔防護用ショックフィールド砲 3基(司令塔前部および基部)
    零式短砲身六連装光線投射砲 2基(司令塔基部側面)
    九九式40mm連装対空パルスレーザー砲 2基
    一式76mm三連装拡散型対空パルスレーザー砲 2基
    その他、艦の全周各部に埋め込み式対空パルスレーザー砲多数(門数不明)

主機  艦本式次元波動機関 1基
補機  ケルビンインパルス機関 2基
    懸架式亜空間航行用機関 2基

搭載機 一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』10機(うち2機は偵察機仕様)
    九八式汎用輸送機『コスモシーガル』2機
    救命艇2機
    その他救命ボートなど

 武装の特徴として、ヤマトに比して対空兵装が大幅に削減されたことがまず目につくと思われる。これは拡散型パルスレーザー砲の採用で十分な弾幕が形成できると判断されたこと、また主砲塔が大仰角を取れるように設計されており対空砲として使用可能なことが考慮された結果だが、後にこれが問題を引き起こす原因になった。ただ、その詳細については先に譲りたい。
 また本艦の搭載機についてだが、ヤマトと同様に艦載機運用にいささか不自由があったこと、後に本級を改造した航空母艦の建造が決定されたこと、原則として艦隊での運用が常であり単艦で行動することがほとんどなかったこと、そもそも搭載すべき戦闘機が搭乗員も含めて不足していたなどの理由が重なり、偵察機を除いた戦闘機を搭載して作戦行動を行ったという記録は現状見つかっていない。

 なお、本艦の補給、給糧設備に関しては『ヤマトほどの長期航海は前提としない』『長期航海を行う場合は補給艦の随伴を検討する』『状況が許せば、ガミラス基地からの補給も求める』などが考慮された結果、ヤマトのようO.M.C.S(食料合成装置)や大規模な艦内工場、慰安、給糧施設は省略されており、その代わり乗員一人当たりの居住スペースを拡大することで居住性の向上が図られていた。ただ、自艦の修理および弾薬の補給に必要な工場設備、乗員用の物資保管のスペースは必要と想定された状況に応じて十分に準備されている。

 設計完了後『波動砲艦隊』の早期実現を望む防衛軍首脳部と、カラクルム級という現有艦艇では対抗困難な強敵を抱えていた艦隊側の双方から早急な新戦艦を望まれたこともあり、ただちに量産計画が立てられた。防衛軍にとってはもちろん、地球連邦政府にとってもガミラス大戦からの復興期に、それもヤマトを除けばかつてない大型戦艦の量産は難行に違いなかったのだが、ガトランティスという目前の敵の存在、そしてガミラスとの政治的駆け引きを考慮すれば、躊躇する余地はなかったものと思われる。

 2202年度の予算要求で、D級戦艦(本来はA型戦艦と呼ぶべきだが、D級という通称が広く知られており、後のアンドロメダ級の通称『A級』と紛らわしいことから、以降は必要のない限りこの表記を用いる)はまず18隻分の予算が求められた。
 これは、当時の地球防衛軍の戦艦戦隊が4隻編成だったため、4個戦隊と予備艦2隻分の要求だったのだが、防衛軍士官学校において行われた、波動砲戦を含めた戦艦戦隊の戦闘要領の研究結果として『戦艦戦隊は3隻編成とし、2隻が波動砲発射体勢に入った際に1隻がこれを支援するのが最適』との意見が出されたこと、また当時の防衛軍に新造戦艦を予備として遊ばせておく余裕もなかったため、6個戦隊分に編成替えされている。
 (ただし、実戦部隊において4隻編成による戦隊が構成されたことも多々あり、少なくともガトランティス戦役当時においては、まだ3隻編成が完全に一般化していたわけではないようである)

 前例を見ない大型艦の大量、かつ急速建造であり、予算の折衝も難航すると思われたのだが、前述した通り『波動砲艦隊』を目指す連邦政府首脳と、ガミラス大戦による戦禍によって『自国の軍備が弱いことで何が起こるか』を理解せざるを得なかった多くの市民から支持を受け、予算案はすぐに成立。早速、防衛軍が立案した計画に従って建造作業が各地のドックで開始された。
 当初は一番艦が『ドレッドノート(Ⅰ)』ということもあり、艦名の頭文字のアルファベットをDに揃えることがイギリスから提案されたようだが『旧来の伝統ある艦名を継承できない』と多くの国から反発を受け、断念されている。以下は艦名を示しつつ、ガトランティス戦役終結までに量産されたD級戦艦をタイプ別に紹介したいと思う。


A2型(前期生産型)
『ドレーク』『デヴァステーション』『ダンカン』
『ドイッチュラント』『ヘッセン』『バーデン』
『デラウェア』『ノース・ダコタ』『サウス・カロライナ』
『デュプレスク』『デュケーヌ』『ド・グラース』
『ドヴィエナザット・アポストロフ』『ペトロパブロフスク』『セヴァストーポリ』
『山城』『河内』『摂津』

 当初の予算案による18隻枠で建造された、D級戦艦最初の量産艦である。

 機関のみ『出羽』のそれが用いられた以外は、概ね『ドレッドノート(Ⅰ)』に準じて設計されたが、先述した旗艦設備の強化と、旋回性能の不足が指摘されたことから船体各部にスラスターが増設されるなどの改良が行われている。
 強化された旗艦設備は、戦艦戦隊旗艦から分艦隊(当時の地球防衛艦隊では30隻程度が想定されていた)旗艦まで問題なく務めることが可能とされ、当面は十分なものとされた。ただ、ガトランティス戦役が本格的に開始された頃に更なる旗艦設備強化の要望が艦隊側から出された関係で『バーデン』『サウス・カロライナ』『デュケーヌ』『ペトロパブロフスク』『河内』に小規模な改造工事が行われている。この5隻の艦橋構造物後方には艦隊司令部専用の通信アンテナが追加されているため、未改造艦との識別は容易である。

 また、当初から戦時定数150名程度、最低90名程度での戦時運用が要求されていたD級戦艦だったが、当時の深刻な人員不足は90名の乗員を確保することすら難しかったため、試作艦のそれ以上にAIなどを用いた自動化、省力化が推進された。これはこの時期の判断としてはやむを得ないものであったが、当時も艦隊士官の一部から『十全たる戦力発揮に不安あり』との指摘も存在しており、後のガトランティス帝国との戦いにおいても問題となっている。

 ともあれ、このA2型戦艦はガトランティス帝国が太陽系に侵攻してきた際は、文字通り艦隊の『主力戦艦』として第一線を担ったクラスだったと言える。それだけに損耗も多大なものとなったのだが、戦歴については今後紹介するタイプも含めて、別項にて記述したいと思う。


改A2型a(電探強化型 パトロール戦艦)
『テネシー』『リヴェンジ』

 2201年後半に追加建造が決まった4隻のD級戦艦のうちの2隻である。この頃はまだガトランティスとの本格的戦闘は始まっていなかったが、前線から『カラクルム級との遭遇機会が増えており、今後、敵に大規模な作戦を行う気配が感じられる』という報告があったため、一部の金剛改型、村雨改型の建造予算を転用する形でD級の追加建造が決まったのである。

 本型はその最初のものだったが、量産中のA2型戦艦とは運用目的が異なっていた。当初、本型は電探ならびに通信施設を強化することで、100隻を超えた大艦隊(当時、土星会戦における地球艦隊の総数200隻前後の艦隊編成は考慮されていなかったようだ)を指揮、統制するために建造が計画された。
 だが、実際には強化するとはいえ、D級程度の艦の規模で100隻以上の大艦隊を指揮するのは荷が重く、この判断が『戦略指揮戦艦』たるアンドロメダ建造の契機となる。そして、浮いた形になったこの2隻の戦艦枠に関しては、電探、通信能力の強化はそのままに、遊撃部隊として敵侵攻軍(当然、その仮想敵はガトランティス帝国軍である)の後背で破壊活動を行うべく編成が構想された第三艦隊に配備するための戦艦として計画が変更され、起工された。

 ところが建造開始直後、連合艦隊司令部から、その第三艦隊にD級戦艦に近い火力とより優れた航空機運用能力を有する空母(戦闘空母、としたほうが適切と思われる)の配備が構想され、これが防衛軍首脳部も認めるところとなったため、再びこの両艦が宙に浮くこととなった。
 とはいえ、搭載すべき武装や電探、通信整備は既に用意されていたため建造中止にすることもできず、艦政本部は再びこの両艦に若干の改設計を加え、今度は地球防衛軍にとって最前線と言うべき冥王星、海王星基地に配備される警備艦隊の旗艦用戦艦として建造が続行されることとなった。

 ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点は以下の通りである。

・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・改A2型パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もパトロール巡洋艦より更に強化して搭載
・代償重量として艦底部の九八式対空迎撃ミサイル発射管8門を撤去。ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力通信機器に対応した専用アンテナを艦各所に追加

 この改造により、一見すると後に建造された『アンドロメダ』のようなアンテナ類が林立する特徴的な外見を持つこととなった。なお本艦の評価としては「通常型に比して機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」というものが伝わっているが、兵装は概ね維持されていたし、また旗艦能力や探知、通信機能が非常に高かったため、実際に運用した冥王星、海王星の警備艦隊からは概ね好評だったようだ。

 本型は警備艦隊以外の運用は考慮されていなかった、という説もあるようだが、実際は平時における哨戒活動の他に、警備艦隊を率いて第一、第二外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時においては警備艦隊と共に連合艦隊の戦列に加わることが既定事実となっていたようである。
 そのため、地球防衛軍において最大の艦隊決戦となる『土星会戦』にもこの両艦は参加しているのだが、その際の状況については別項に譲りたいと思う。


改A2型b(主砲換装タイプ前期型)
『相模』『コンテ・ディ・カヴール』

 改A2型a戦艦と同時に計画された艦だが、この両艦は誕生の経緯が少々特殊なものだった。

 詳細は後に譲るが、この時期のD級戦艦はいわゆる『一式41cm砲の散布界問題』に悩まされていた。そのため各種の解決法が艦政本部や技術本部で議論、実験されていたのだが、その中でこのような提案がなされていた。

 『ヤマトが搭載した九八式48サンチ陽電子衝撃砲を、D級戦艦に搭載することは可能だろうか?』

 確かに九八式48サンチ陽電子衝撃砲は、戦時下でそれが許されなかったという事情があったとはいえ、散布界過大など致命的な欠陥が発生しないよう、極めて堅実な性能で纏められた艦砲だった。そのためイスカンダルへの航海においても大きな問題は発生しなかったのだが、この砲をD級戦艦に搭載しようというのである。
 だが、この『九八式48サンチ陽電子衝撃砲を搭載したD級戦艦』は、既にロシア管区が建造した『ボロディノ』で試みられ、船体の大型化によって量産艦としては不採用になったという経緯がある。それを踏まえてのこの提案には、当然のこと『ボロディノ』とは違う特徴があった。

 『バーベット径の拡大を防ぐため、連装砲塔にて搭載してはどうか?』

 実はヤマトの設計案において、九八式48サンチ陽電子衝撃砲の連装砲案が存在しており、連装砲塔の設計も完了していた。これを流用すれば、D級の船体に対して最低限の改造を施せば、九八式48サンチ砲を簡易に搭載する目途があったのだ。
 そのためこの案は採用されたが、当時既に九八式48サンチ陽電子衝撃砲は砲身の生産が行われておらず、その建造にはガミラス大戦末期にヤマトの予備用として製造された砲身を転用するしかなかった。それでも、一隻でもD級戦艦の数が欲しい防衛軍首脳部と艦隊側の思惑が一致したこともあり、この改A2型b戦艦の建造は行われることになった。

 そうして実際に完成した改A2型b戦艦であったが、実際に運用した艦隊側は『主砲威力の向上、および散布界問題の解消は歓迎できるが、発射速度の遅さに大きな問題がある。可能であれば九八式二型48cm陽電子衝撃砲(2202年大改装後のヤマトが搭載した48cm砲)への換装を望む』と評価した。
 しかし、この提案が検討される前にガトランティス戦役が本格化、太陽系への攻撃が始まったため、両艦とも既存の主砲のまま戦役に参加している。


A3型(中期生産型)
『クイーン・エリザベス』『バーラム』『ヴァリアント』
『ノース・カロライナ』『ワシントン』『アラバマ』
『薩摩』『周防』『丹後』
『レジーナ・マルゲリータ』『エマニュエレ・フィリベルト』『サルディーニャ』
『ナッサウ』『ヘルゴラント』『オルデンブルク』
『ペレスヴェート』『シノープ』『ポペーダ』

 当初は2202年前半に、前期生産型各艦が戦闘によって損耗することを見越して9隻の整備が決まったものだったが、いわゆる『カラクルム落下事件』(当時はそう呼ばれず、単なる事故として扱われていたが)によって地球の座標がガトランティス側に露呈したのを受けて『可及的速やかに、かつ可能な限り多数を量産する』ことが決定され、戦時予算による更なる追加建造が決まったグループである。
 前期生産型であるA2型からは、以下の改良が施されていた。

・艦各部の簡易化(これは戦時下のためというより、量産による経験の蓄積から過剰と判断された部分を削った、と言うべきものである)
・艦内構造の一部変更、防御隔壁の強化
・電探、通信設備。並びに各種AI機器の更新
・散布界問題に悩まされていた主砲に、新型の発砲遅延装置を装備(本タイプ以前の艦にも逐次装備されている)
・中規模艦隊(50隻程度)向けの旗艦設備を標準装備

 特に艦内構造の変更は『ガイデロール級をモデルシップにした』本型にとっては大きな変更点であり、地球がガイデロール級を基礎にしつつ、独自の大型艦設計を行う契機となったと言えるだろう。

 戦時下ということで本タイプの量産は急がれ、ここに艦名を挙げた18隻はいずれも土星会戦に最新鋭艦として参加している。なお、艦隊側の運用評価はA2型戦艦とほぼ変わるところはなかったが、発砲遅延装置の搭載とAIの改良にも関わらず、相変わらず散布界問題が解決していないことが問題視されている。これは土星会戦においても大きな問題を引き起こしているのだが、詳細は別項にて触れたい。

 なお予定艦名が不明なため省略したが、A3型戦艦はこの18隻以降も追加建造が行われるはずだった。しかし太陽系に敵勢力が侵入する状況下で、連合艦隊司令部から『戦艦以上に、それを護衛する巡洋艦や駆逐艦の不足が深刻である』と強硬な要望があったことや、土星会戦後の太陽系各惑星および地球本土への攻撃によって工廠ごと失われた艦も多く、戦後はD級戦艦の建造が後期生産型へと移行したこともあって、最終的なA3型戦艦の整備は18隻で終了している。

暗黒星団帝国戦役から銀河系中央部戦役まで

 重核子爆弾の投入という奇襲攻撃によって始まった暗黒星団帝国戦役に、当初地球防衛軍はほとんど有効な対処を取れなかった。この戦役の特に初期は防衛軍にとって計算外の事態が多発したのだが、その大きなものの一つに「太陽系への侵略に対すべき迎撃戦力が、外惑星基地の要員が全滅し機能しなかった」ということがある。

 もちろん、これは艦隊にとっても極めて重要な問題であった。A型戦艦に限定すると、外惑星基地に配備されていた「カイオ・デュイリオ」「テネシー」「ドレッドノート(Ⅱ)」「ネルソン」は全乗員を失って戦闘力を喪失、その後の戦局に全く寄与できなかった。
 また、改装あるいは整備のため地球の工廠に待機していた「ストラスブール」「ネヴァダ」「メリーランド」は、侵攻してきた暗黒星団帝国軍に拿捕されるのを防ぐため主要部を爆破する措置を取らざるを得ず、いずれも戦役後に修復不能と判定され解体されている。

 重核子爆弾襲来の直前に演習のため金星基地へと移動していた「金剛」は無事であったが、地球本土が占領されている状況で金星から動くことができず、ヤマト隊によるデザリアム星攻撃が成功するまで行動していない。その後の暗黒星団帝国地球残存勢力に対する作戦には参加しているが、敵艦隊の多くがヤマト隊追撃に出払っていたため大きな戦果は残せなかった。

 唯一、戦役勃発前にシリウス星系へ派遣された練習艦隊に参加していた「薩摩」がヤマトとの合流に成功し、デザリアム星到達までに発生した艦隊戦で相応の戦果を挙げた。ただ本艦が搭載していた連続ワープ機関は限定的な改造に留められていたため艦隊への追従にいくらか不自由が生じており(ヤマト隊は無人艦との混成部隊だったため、致命的なものではなかった模様)、特に最終盤のデザリアム星崩壊時の脱出の際に連続ワープが成功したのは「全くの幸運でしかない」と戦闘詳報に記載されている。

 暗黒星団帝国戦役終結後、防衛軍は戦役によって生じた損害を補うための軍備拡張を計画した。しかし今回の戦役では艦艇以上に人的損失が大きく、また地球本土そのものの被害が甚大であったことから、既存艦艇に対する改装は予算の確保が難しくなり、A型戦艦に関しては当時の公式文書のいくつかから判断すると「極力規模の小さい改装を行い、他艦艇と性能を均衡化する」という観点で改装されることになったようだ。
 改装の内容については、B型戦艦の量産が決定される前に作成されたと思われる「現有A型戦艦への改装に関して」と題する資料が残っているため、そこから要約する。

・波動砲の換装(この資料には新波動砲と爆雷波動砲のどちらを用いるかは明記されていない)
・主砲を換装し二式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)に対応させる(主砲の換装については「二式波動徹甲弾への対応のため」と資料内で明記されているが、全艦を40cm砲ないし46cm砲に統一することが検討されたかははっきりしない)
・主砲塔内部に砲側照準による射撃を行うための設備を追加(装備済みの「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」は除く)
・パルスレーザー砲の追加および換装により対空兵装を強化
・ミサイル兵装の更新
・機関を単艦で連続ワープが可能なものへと改造

 規模を最小限にしつつ、暗黒星団帝国戦役の戦訓も反映させる改装になるはずだったが、ここでA型戦艦の置かれている状況に大きな変化が生じた。A型戦艦の後継として計画が進められていたB型戦艦の量産が決定されたのである。
 このため、現存するA型戦艦は「B型戦艦の充足まで、現状艦隊の主力として欠かすことができない」「B型戦艦を量産する以上、現有の戦艦に改装を加える意味は薄い」という双方の事情が考慮され、その結果「当面は工事を行うことが難しい」と判断されて改装はいったん棚上げされることになった。ただし「ドレッドノート(Ⅱ)」のみは量産が決まったB型戦艦と同じ爆雷波動砲と46cm衝撃波砲を搭載していたことから、砲術練習艦として用いるため主砲を九九式三型46cm衝撃波砲(暗黒星団帝国戦役時のヤマトの主砲。二式波動徹甲弾に対応済み)に換装、少数ながら二式波動徹甲弾の配備も行われている。
 (なお、以降のA型戦艦各艦に共通する問題として「船体規模が小さく二式波動徹甲弾を搭載する弾庫が確保できない」というものがあり、「ドレッドノート(Ⅱ)」では即応分の1砲塔あて2発を砲塔内に搭載することで対応したが「砲塔被弾の際に誘爆の恐れがあり、装填作業の一部に人力を要するため乗員への負担が大きく作業自体も危険」と艦首脳部が指摘した文書が存在する)

 しかし短期間に再び状況が変化し、今度は太陽の核融合異常増進と第二の地球探査、それに伴ってガルマン・ガミラス帝国とボラー連邦の紛争に巻き込まれる事態に陥った。もちろん人類移住のための移民船を確保するのが最優先と防衛軍は認識していたが、同時に船団を護衛する戦力として艦隊が必要と考えられたこと、大規模な星間国家同士の紛争に板挟みとなっている現状から移住開始前に太陽系が侵略される可能性も考慮され、結果、A型戦艦の改装について防衛軍は「最前線に戦力として配備しつつ、状況が許せば可能な限り性能改善工事を行う」という、中途半端ながらやむを得ない決断を下すこととなった。

 銀河系中央部戦役終結までのA型戦艦各艦がどのような状況であったか、個別に追っていくこととする。なお、同戦役最後の戦いとなった太陽周辺での会戦はボラー艦隊の長距離ワープによる奇襲という形で開始されたため、この時期ボラー連邦の侵攻に備えて太陽系外周に配備されていたA型戦艦はいずれも参加できなかった。


「カイオ・デュイリオ」

 本艦は引き続き外惑星練習艦隊の旗艦任務に充当されており、遅くとも戦役中盤までに対空兵装の追加工事(内容は「薩摩」と同じで、装備された火器も旧来のもの)と主砲砲身基部への増加装甲の追加が行われている。なお、戦役中に敵艦隊との交戦機会はなかった。

「テネシー」

 太陽系外周無人艦隊旗艦の任を解かれた後、ケンタウルス座のアルファ星第4惑星に駐留する警備艦隊の旗艦として派遣された。戦役中にアルファ星系がガルマン・ガミラス軍の攻撃を受けた際はドック内で整備中で、そこを攻撃され大破炎上し艦歴を終えた。ただ一部の火器は現在も使用可能であり、同地にて防空砲台として用いられている。
 なお、本艦はイスカンダル戦役終結以降、無人艦隊旗艦として必要な司令部施設の整備が続行して行われたが、その他の装備は喪失までほぼ変化はなかったようだ。

「薩摩」

 艦底部のミサイル兵装を九九式二型垂直軸ミサイル発射管(発射速度向上)に換装する工事が行われている。完了後は乗員の訓練に従事し、戦役後半にはカイパーベルト宙域に進出しボラー連邦艦隊との小規模な戦闘のいくつかに参加した。

「ドレッドノート(Ⅱ)」

 「カイオ・デュイリオ」と同様の対空兵装強化が行われた。戦役開始時は砲術練習艦として活動していたが、戦役後半に「薩摩」と共にカイパーベルト宙域での艦隊戦に参加している。
 なお、砲塔の形式が他のA型戦艦と異なる本艦は砲塔天蓋への増加装甲は不要と判定され、追加工事は実施されなかった。

「ネルソン」「金剛」

 この2隻はB型戦艦充足まで戦艦戦力の中核と見なされていたため太陽系内で温存されており、戦役最終盤に冥王星基地へ移動した以外は特に戦歴はない。改装は戦役初期に「カイオ・デュイリオ」と同じ対空兵装強化と、二式波動徹甲弾に対応する「一式二型40cm衝撃波砲」への換装と主砲砲身基部への増加装甲追加、および「薩摩」と同様にミサイル装備を更新、主砲に砲側照準による射撃を可能とするための装備が追加されている。ただ「ドレッドノート(Ⅱ)」と異なり両艦に二式波動徹甲弾が配備された記録は現在に至るまで見つかっていない。
 (筆者の推定だが、この時期の二式波動徹甲弾の生産は46cm砲弾に絞られており、その影響で配備できなかったものと考えられる)

 ちなみに、A型戦艦各艦が第二の地球探査に派遣された調査船団に参加しなかったのは、元々の設計に起因する「無寄港で長期間の航海を行うには他艦の支援が必要である」点が問題となり、検討の結果「運用に労力が多く船団の足手まといになる可能性が高い」と判断され、護衛艦リストから外されたことが公式文書により判明している。
 また、この時期の大口径衝撃波砲に共通するボラー連邦艦艇に対するエネルギー通常弾の威力不足問題については「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」の戦闘詳報に「至急の対応が必要である」との記載があり、特に二式波動徹甲弾に未対応だった「薩摩」が戦闘で難渋したと伝わる。


ディンギル戦役

 銀河系中央部戦役が終結して程なく、移民船建造のため縮小されていたB型戦艦の量産も順次再開され、続々と新造艦が竣工していった。この時期は白色彗星帝国戦役以前よりなお参謀本部が波動砲搭載戦艦に大きな期待を寄せていたから、B型戦艦の建造ペースは当時の状況から考えても相当に早いものとなっていた。

 それに伴い、A型戦艦各艦は順次第一線を退いて二線級戦力として維持される方針が決定された。これは過去の戦役から得た戦訓を考慮した場合、艦齢が比較的若いとはいえA型戦艦の性能が少なからず陳腐化しているのは否めなかったからである。特に参謀本部はB型戦艦に波動砲の性能で大きく劣るのが最大の問題としていたことが資料からもうかがえる。
(なお艦隊側も、この時期の戦闘演習に関する所見で「A型戦艦は全般的にB型戦艦に比して性能が劣り、実効戦力としての価値に疑問がある」と述べている)
 この問題を改善するため大規模な改装を行うべきという意見もあったが、そうした改装を実施したとしても、新造のB型戦艦に伍して戦える艦とするのは極めて難しいと考えられた。そのためか、少なくとも前期生産型の2隻については代艦としてB型戦艦を追加建造するべく予算の折衝が行われるところであったようだ。

 その状況で発生したのがディンギル戦役である。

 当時、B型戦艦は15隻が完成しており、この全艦が木星圏でディンギル侵攻艦隊と交戦した。しかし有力なハイパー放射ミサイルを用いた敵艦隊の攻勢を支えきれず、B型戦艦を主力とした地球防衛艦隊はこの一戦で壊滅的な被害を受けた。

 A型戦艦各艦はこの時点では予備兵力扱いであり、木星会戦には参加せず地球および内惑星基地に待機していた。しかし主力艦隊が壊滅し、未だ冥王星宙域には機動要塞を始めとする多数の敵戦力が存在する、同時に水惑星アクエリアスのワープ阻止を行わなければ人類の滅亡は避けられない。この非常事態に防衛軍は残存する艦艇をかき集め、修理が必要な艦にも最低限の修理を施して戦線に投入するという決断を下した。
 この決定と前後して地球本土にディンギル軍の空襲が行われ、そのとき「金剛」が主機関に大きな損傷を被り作戦への参加が不可能になった。そして「第二次冥王星会戦」と呼ばれるディンギル太陽系侵攻軍との戦闘には「カイオ・デュイリオ」「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」「ネルソン」が参戦し、このうち「ネルソン」は防空を担当するC1型駆逐艦10隻と艦隊を編成して囮部隊の一翼を担い、他の3隻は本作戦の主力と目される第一遊撃部隊にB型戦艦の残存艦「マサチューセッツ」「スラヴァ」と共に編入された。

 しかし、最終的には敵機動要塞を撃破し会戦に勝利した防衛軍であったが、ディンギル軍の攻撃により「ネルソン」と「カイオ・デュイリオ」が撃沈され、残る2隻も大破してその後の戦闘継続が不可能となった。これはB型戦艦を始めとする他の艦も概ね同様の状況であり、敵の本拠地である都市衛星ウルクに突入したのがヤマト1隻となったのはこの会戦の損害が大きかったことによる。

 第二次冥王星会戦におけるA型戦艦については、戦闘詳報において性能全般の不足、および改装が統一されていなかったため各艦の性能が不均衡で運用に支障が生じている、と指摘された。また一方で「かかる状況において、性能で劣るとはいえ艦隊内に戦艦が存在していたのは幸いであった」という記述も残されている。


A型戦艦の現状と今後

 ここからは、2204年現在および今後のA型戦艦について、僅かではあるが触れてくことにする。

 現存する「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」「金剛」は、編成上は第二戦艦戦隊の所属となっているが、実際に3隻揃って行動したという記録は今のところ見つかっていない。これは建造時期や改装の内容が異なるため、性能が均一化されておらず戦隊の構成に不利と見なされているからと思われる。

 理由は様々だが、ディンギル戦役後の地球防衛軍は水雷戦隊が用いる波動魚雷と、航空隊が装備する波動ミサイルに多くを期待していて、現状の軍備はそれらに重点が置かれている。
 そのため戦艦の価値は相対的に低下を余儀なくされているが、地球防衛軍の戦力が絶対的に少ない現状としては、既存艦を全て捨てて新しい軍備にというわけにもいかないようで、A型戦艦も性能不足を指摘されながら未だ第一線の現役艦として就役を続けることが決定された。

 最近公表された艦隊編成によると、A型戦艦各艦は艦隊戦力の次期主力と目される水雷戦隊(編成はC3型嚮導駆逐艦1隻とD型駆逐艦9隻)に1隻ずつ付属することが判明している。これは戦艦としての火力と抗鍛性を発揮し、水雷戦隊の雷撃戦を掩護することが想定されていると思われる。
 同時に、既存艦より高速化された駆逐艦群で構成される水雷戦隊に追従するためには性能、特に速力とワープ能力に難があるA型戦艦であるため、来年一番艦が就役すると発表されたヤマト後継の新型戦艦が艦隊に編入され次第、順次想定された任務に必要とされる改装が行われることになった。

 現状、防衛軍から発表されている改装内容を以下に示す。

 ・波動砲を全艦、二式二型タキオン波動集束可変砲に換装(同砲はB型戦艦に搭載された爆雷波動砲の簡易型で、当初はB型巡洋艦の後期建造艦に搭載が予定されていた)
 ・主機関をB型巡洋艦と同様のものに換装し、連続ワープを可能とする
 ・補助機関を換装し、主機関と共に出力を強化し速力を向上させる
 ・三番砲塔後方に爆雷投射装置を追加し、戦闘機用格納庫の一部を爆雷搭載庫に改造(これにより戦闘機仕様のコスモタイガーⅡの運用が不可能となる)
 ・ミサイル兵装および対空パルスレーザー砲を全門、新型に換装
 ・電探、通信機器の更新

 これらの改装により艦容は相応に変化すると思われるが、特に現在搭載している波動砲が連装砲である「金剛」はこの工事で船体ラインが「薩摩」「ドレッドノート(Ⅱ)」と同様のA型戦艦オリジナルのものになるとされている。
 そして、この改装が終了すれば、太陽系外周までという運用の制限はあるにせよ、A型戦艦は地球防衛軍の戦力の一角として再生できると見てよく、更に今後の動向が注目されると言えよう。

 防衛軍内での価値が低下したとはいえ、侵略者からの視点に立てば「相手に戦艦が存在する」という事実は抑止力として大きいと推測される以上、戦艦の存在そのものにはまだ多少なりとも意味があるだろう。再度の改装工事が決定したことによってA型戦艦もしばらくは現役の戦艦として艦隊の一翼を担うことになりそうであるし、いつか退役するその日まで、A型戦艦に対して太陽系防衛の戦力としての期待を込めて、この項の終わりとさせていただきたいと思う。


おわりに

 長々と書き連ねたが、A型戦艦の一番艦「ドレッドノート(初代)」が完成してから3年ほどしか経過していない。多くの兵器がそうであるように、当初は様々な欠陥を抱えて誕生した本型ではあるが、研究と戦訓を重ねて熟成されていき、時に外的要因で紆余曲折が生じたこともあったが、地球防衛軍の戦艦戦力の中心として量産が行われ、数多くの戦役を主力艦として戦い抜いたのは評価するべきだろう。
 また技術面においても、多くの試行錯誤を重ねながら高い戦闘力を維持し、後に続く戦艦のみならず、多くの艦艇に与えた影響も無視することはできない。

 同時代にヤマトやアンドロメダといった武勲艦が存在するがゆえに地味な存在となることが多い本型だが、地球防衛軍の軍備について語るときには決して欠かせない存在であり、現在もなお限定的ながら主要戦力として防衛軍の一翼を担い続けているA型戦艦は、文字通り地球防衛軍の「主力戦艦」と呼ぶにふさわしい存在ではないかと、筆者は考えるのである。

白色彗星帝国戦役時におけるA型戦艦

 A2型戦艦から本格的に量産、配備が開始されたA型戦艦であるが、就役後に艦隊側からはバランスのとれた攻防性能と機動力、居住性について概ね良好な評価を得ている。

 ただ、主砲である一式40cm衝撃波砲に関しては度重なる改良にも関わらず、散布界は未だに大きいこと。それと艦橋砲として装備した零式15.5cm六連装砲は戦闘訓練で連続発砲した場合、艦橋への振動など影響が大きく実用性がないという点が問題として指摘されていた。
 しかし、参謀本部や艦政本部は艦橋砲は特殊砲弾を用いる以外は使用停止にすればよく、主砲についても複数艦の射撃によって弾幕を形成する際には、むしろある程度の広さをもつ散布界が必要ではないかと考えており、更なる散布界縮小を目指した根本的な改善は行われなかった。

 A型戦艦の前期生産型である38隻のうち、地球の工廠に係留されていた「ドレッドノート」と輸送船団護衛の任務に従事していた「ボロディノ」を除く36隻が、土星宙域におけるバルゼー艦隊との戦闘に参加した。
 この会戦でA型戦艦各艦は当初期待された波動砲艦、および艦隊の中核を成す戦列艦として十分な働きを見せたのだが、戦後に各艦隊から提出された戦闘詳報によって、A型戦艦が内包していた重要な問題点がこの会戦で噴出したことが示されている。

 それらに曰く、

・主砲の散布界が遠距離砲戦において著しく過大。これが原因で有効命中弾数が過少となり、敵艦隊をアウトレンジした場合においても敵戦力を早期に減少させることが難しい。特に艦隊内の戦艦数が少なく濃密な弾幕を形成できない場合においてこの傾向が顕著である(なお、この散布界問題は土星会戦における第6艦隊壊滅の一因とされている)
・主要火器を管制コンピュータによって艦橋から指揮するため、艦橋に損害を被ると即座に戦闘不能となる場合があり、その復旧を戦闘中に行うことが困難。また砲塔内に要員が配置できず照準機構も搭載されていないため、非常時に砲側照準による射撃を行うことが不可能である
・近接対空火力が不足し、敵航空機およびミサイルに対して有効な迎撃手段を有していない
・全般的な防御性能は十分であるが(砲塔の構造に起因して)砲塔天蓋の防御力が不足。また船体構造の強度に不安があり、非主要防御区画への被弾が衝撃として船体を伝わり装備機器に悪影響を与える場合がある

 また、会戦の最終段階で連合艦隊は彗星都市帝国の攻撃によって壊滅的な被害を受けたのだが、この戦闘における波動砲についての所見が残っている。
 それによると「拡散波動砲は対艦戦闘においてその破壊力は極めて大なるも、要塞など大型の固定目標に対しては集束型波動砲に比して明確に威力が劣る。対艦戦闘に特化した結果として、その他の目標に対する攻撃能力が不十分である」とし、艦隊に配備された波動砲艦が拡散波動砲搭載の戦艦と、威力の低い集束型波動砲しか持たない巡洋艦しかなかったことを悔いる記述がなされている。

 これらの戦訓はさっそく参謀本部でも検討されたが、結果、波動砲に関しては当時開発中だったエネルギー集束率の変更が可能な新型砲(後の爆雷波動砲)の実用化を促進させるとし、主砲の散布界過大については貫通力と射程の減少を忍んで初速を低下させ集弾性の確保を行うことになった。

 この決定は彗星帝国戦役終結直後に各部からの承認を受け、戦役を生き残った前期生産型の各艦に施された改装と、続いて建造されることになった後期生産型にも反映されている。前期生産型の残存艦と後期生産型については別項で触れることにしたい。


暗黒星団帝国戦役直前までのA型戦艦残存艦の動向

 彗星帝国超巨大戦艦の撃沈によって区切りとされる白色彗星帝国戦役であるが、その時点で残存していたA型戦艦は以下の通り。

A2型:「カイオ・デュイリオ」
改A2型:「テネシー」
A3型:「薩摩」「ストラスブール」

 この他に当時の防衛軍が保有していた戦艦はヤマト1隻で、太陽系内に彗星帝国の残存軍が存在する状況においては艦隊戦力の不足が否めず、しかも建造工廠の多くが彗星帝国の攻撃によって破壊されたため、新規に多数の艦を建造することもままならなかった。
 ただ同時に、太陽系内で多くの戦闘が行われた結果、撃沈された艦の残骸などから希少金属を調達するのが比較的容易であり、また内惑星基地の被害はほぼ皆無だったので、これらの要素から既存艦の修理と小規模な新規建造は可能という見通しも存在していた。そのため、この時期の防衛軍は主に彗星帝国残存軍との戦闘を前提として、艦艇の修理と少数ながら新造艦の建造を行っている。

 新規建造艦については次項に譲り、ここでは残存していたA型戦艦各艦について追っていく。

 「テネシー」は白色彗星帝国戦役時の損傷が大きく、彗星帝国残存軍との戦闘には参加していない。残る3隻は優先的に修理が施され、後述する後期生産型と共に戦艦戦隊を構成して活躍、損失なしで残存軍との戦いを終えた。また、同時期に発生したイスカンダル戦役では「ストラスブール」に限定的な連続ワープ(無人艦による先行誘導が必要となる)を可能とするべく機関の改装を行い、ヤマト以下によって編成されたイスカンダル救援艦隊に所属し暗黒星団帝国軍との戦闘に参加、大きな損害もなく帰還している。
 これら一連の戦役が終結した後、A型戦艦にはそれ以前に収集された戦訓に対応する改装工事が行われることになった。ただ、この時期は艦隊戦力および人員の不足を無人艦隊の整備によって補うという状況だったため、行われた改装は艦によって微妙に異なるものとなっている。ここでは個艦ごとに取り上げることとし、共通する改装の項目については重複することをご容赦いただきたい。


「カイオ・デュイリオ」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造(一式40cm衝撃波砲の初速を低下させ散布界を改善したもの、代償に貫通力と射程が減少)
・艦底部に九九式垂直軸ミサイル発射管を2門追加(配置はA3型と同様)
・電探と通信機器を改A3型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 改装は比較的小規模だった模様で、工事完了後の本艦は外惑星練習艦隊の旗艦として活動している。

「テネシー」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造
・無人艦で編成される中規模程度の艦隊を統制するため旗艦設備を更新
・電探と通信機器を改A2型パトロール巡洋艦の後期生産型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 本艦の改装は白色彗星帝国戦役時の損傷修理と並行して行われているが、前線復帰が急がれたため改装自体の規模は小さい。工事完了は彗星帝国残存軍との戦闘が終了した直後で、イスカンダル戦役終結後は冥王星に配備された太陽系外周無人艦隊の旗艦となっている。
 ちなみに本艦と「カイオ・デュイリオ」はA3型以降の艦と異なり完成時から艦橋砲を装備していたが、機材の撤去が行われたという記録が存在しないため、実戦での実弾射撃を停止する措置が取られたのみと判断される。

「薩摩」

・主砲を一式一型改40cm衝撃波砲に改造
・主砲塔内を改造し、砲側照準による射撃を可能とするための設備を追加
・砲塔天蓋の防御力改善のため、主砲砲身基部に増加装甲を装備(これに伴い最大仰角が若干減少している)
・両舷側の九九式短魚雷発射管を全門撤去、同所に対空砲座を新設し零式76mm連装パルスレーザー砲を片舷あて4基装備
・機関を「ストラスブール」と同様の限定的な連続ワープに対応可能なものへと改造
・戦隊旗艦設備の更新
・電探と通信機器を改A3型と同じものに換装
・非重要防御区画を中心に船体構造を一部補強

 「薩摩」の改装はイスカンダル戦役が終結した直後に開始されており、他艦より比較的規模の大きいものとなった。改装工事の完了は暗黒星団帝国戦役開始の直前で、この状態で戦役勃発を迎えたものと考えられる。

「ストラスブール」

 イスカンダルから帰還後、本艦も「薩摩」改装の終了と入れ替わりに改装を行う予定であったが、暗黒星団帝国戦役勃発のため実施されていない。内容は機関を除き概ね「薩摩」と同様とされている。

 なお、改装された各艦に共通する主砲の改造と船体構造の補強、電探その他の装備更新は「その効果は大と認める」と評価された。特にA型戦艦を悩ましてきた主砲の散布界問題はこの工事によって大幅な改善が見られ、懸念された貫通力と射程の減少も最低限に収められていたため、艦隊側からは大いに歓迎されている。


後期生産型の建造

 前述したとおり、白色彗星帝国戦役後の地球防衛軍に残された戦艦は5隻に過ぎず、加えて彗星帝国残存軍が太陽系外周に存在している状況であり、艦隊戦力の整備は必要不可欠であった。
 このため防衛軍は既存艦の修理と巡洋艦と駆逐艦の追加建造、および無人艦隊の整備に注力することにしたが、彗星帝国残存軍に戦艦など大型艦が多数含まれる模様であること、無人艦隊はまだ研究が終わったばかりで実戦で確実に戦力として期待できるかが不透明という問題もあり、最低限ながら戦艦の追加建造も行うことが決定された。この段階で建造が決まったのがA型戦艦の「後期生産型」で、予算は未成に終わったA3型、A4型戦艦のものが転用されている。

 この後期生産型は戦時急造型と言うべきもので、その建造にあたってはあらゆる方面で省力化が図られており、特に兵器などの艤装関連は製造能力や設計時間の不足から既存品の流用によって賄われた部分が多いのが特徴である。なお未成艦の船体モジュールも再利用されたが、前期生産型各艦が後日の改装で行った船体構造の補強は建造中に実施されている。

 6隻が建造された後期生産型は二つのタイプに分類される。以下で紹介したい。


改A3型(主砲換装型、後期生産型・甲)「ドレッドノート(Ⅱ)」「山城」「ネヴァダ」

 後期生産型の最初のタイプ。一番艦「ドレッドノート(Ⅱ)」の艦名が引き継ぎなのは、地球の工廠で全損となり解体された先代から多くの部品が流用されたことに由来する。

 この改A3型の最大の特徴は、主砲がそれまでのA型戦艦とは異なる九九式二型46cm連装砲塔3基に変更されていることだが、この決定に至った事情は以下の通りである。
 建造が決まったA型戦艦の後期生産型だが、当面の問題として「一式40cm砲の砲身不足」というものがあった。これは彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃により地球各所の工廠が大きな損害を受け、同時に既存艦向けの予備として用意されていた一式40cm砲の砲身の多くも炎上して使用不能となり、結果として深刻な砲身の不足が発生したのである。無事な在庫は当然かき集められたが、既存艦の修理のため、あるいは予備部品として使う必要も生じていたため、新造艦に向けて供給できる砲身が3隻分しか確保できない見通しとなった。
 (余談だが、この砲身不足問題に対処するため、当時残存していたA型航空母艦から主砲の砲身が撤去され他艦への供給に回されている。ディンギル戦役終結までA型航空母艦各艦が予備艦として実質放置されていたのは搭載機不足が最大の理由だが、この砲身転用も一因であったようだ)

 このため艦政本部は対策を迫られたのだが、ここで技術本部から「ヤマトが搭載している九九式二型46cm衝撃波砲の砲身であれば、研究用として用意されたものが一定数存在している」と知らせがあった。
 これを受けた艦政本部は、早速A型戦艦への九九式二型46cm衝撃波砲の搭載を検討した。結果、砲口径が大型化するため連装砲塔による搭載で忍ばざるを得ないが、幸い46cm連装砲塔の設計はかつて巡洋艦拡大の戦艦試案の際に行われていて、それを流用することも可能であり実現性は十分と判定され、この改A3型戦艦へ同砲が装備されることになった。
 (ただ、40cm三連装砲塔と46cm連装砲塔はバーベット径が異なるため、改設計と建造工事の際には相応の手間を要したと伝えられている)。

 艦隊側の一部から主砲6門では不足が生じるのではないかとの指摘もあったが、九九式二型46cm衝撃波砲は白色彗星帝国戦役の戦訓から良好な命中率と威力が高く評価されていたため戦艦の火力としては十分と判断されており、その後の実戦でも大きな問題は生じていない。また、本型が搭載した46cm連装砲塔はヤマトの三連装砲塔を縮小した設計だったため当初から砲塔内に照準機構が装備されており、この点は好評であったようだ。

 波動砲に関しては、それまでのA型戦艦に搭載された一式タキオン波動拡散砲を集束型に改造した「一式一型改タキオン波動集束砲」の搭載が決定された。既存の波動砲を用いながら完全な流用にならなかったのは、今後彗星帝国の都市衛星のような巨大移動要塞と遭遇した場合、拡散波動砲装備艦が多くを占める現状の戦艦戦力では対抗が難しく、一定数の集束型波動砲搭載戦艦を整備しておきたいという思惑からであった。
 なお「山城」と「ネヴァダ」は予定通り一式改一型タキオン波動集束砲を搭載したが、「ドレッドノート(Ⅱ)」は技術本部から「次期主力戦艦に装備予定の爆雷波動砲を新造戦艦1隻に試験的に搭載したい」との提案がもたらされたことにより、建造中に搭載済みの波動砲を爆雷波動砲に改造して完成している。
 (ただし「ドレッドノート(Ⅱ)」が装備した爆雷波動砲は制式兵器である「二式タキオン波動集束可変砲」とは仕様が異なり、各種機材が小型化されていたため戦闘詳報で威力不足とエネルギー充填時間が想定より長いことが問題視されているが、船体規模の小ささから改善はできなかった模様である)

 これら以前のA型戦艦とは相違点のある改A3型戦艦だが、他は電探などが最新型に更新された程度で、ほとんどの装備は未成に終わったA3型戦艦用に準備されたものがそのまま使用され、艦橋構造物に含まれる艦橋砲も同じく特殊砲弾発射用に限定されたものが搭載されている。

 同じ後期建造型であるA5型戦艦より起工が早かった本型は、完成後直ちに彗星帝国残存軍との戦闘に参加し活躍したが、11番惑星宙域での会戦において「山城」が敵駆逐艦の体当たり攻撃を受けて大破、総員退去後に爆沈し、彗星帝国残存軍との戦闘で唯一失われた戦艦となった。

 残る2隻はイスカンダル戦役終結まで太陽系にて待機していたが、その後の暗黒星団帝国戦役勃発まで大きな改装は行われていない。ただ艦隊側から「(砲塔の設計が旧式なため)主砲の仰角が不足し対空射撃が困難」との指摘があり、これを改善するべく砲塔天蓋装甲を防御に支障がない程度に一部切除し仰角を若干引き上げる小規模な工事が実施されている。


A5型(旗艦戦艦型、後期生産型・乙)「メリーランド」「ネルソン」「金剛」

 後期生産型、ならびにA型戦艦で最後に建造されたタイプ。本型も白色彗星帝国戦役時における軍備計画の影響を強く受けたものとなっている。

 白色彗星帝国戦役の初期に「A型戦艦以上の強力な戦艦を追加建造し艦隊戦力を強化する」目的から、アンドロメダ型戦艦の追加建造が行われることが決定した(一般には10隻が計画され5隻が起工されたと言われる)。そのための資材は用意されたのだが、戦役中盤は量産性で勝るA型戦艦の優先度が高くなり、細々と建造が続けられた艦も最後は彗星帝国の超巨大戦艦の砲撃により全て失われ、1隻も完成することはなかった。

 このA5型戦艦の主砲と装甲鈑、そして既存のA型戦艦と異なるアンドロメダに類似した艦橋といった装備は、未成に終わったアンドロメダ型戦艦のために用意されたそれを転用したものである。これは既存品の流用という最大の目的もさることながら、比較的規模の大きい艦隊を統率する能力を有する戦艦を、新規に装備を製造せず建造できるという点に防衛軍が魅力を感じたこともあったようだ。機関も重量増加への対策が考慮された結果、建造中止となったA4型戦艦用に準備された3隻分の波動機関をそのまま搭載している。

 波動砲は、船体規模の違いからアンドロメダ型のものを流用できなかったため「零式一型改タキオン波動連装集束砲」と呼称される、使用停止措置に伴い損傷修理時などに撤去、あるいは製造されたが余剰となっていたA型巡洋艦用の波動砲を連装に改造したものが搭載されることになった。しかし実際には連装砲への改造に手間取り、各艦とも彗星帝国残存軍との戦闘への参加が急がれた関係で、完成時は船体構造に含まれる砲身を除いた波動砲関連の機材を省略して工事を終え、発射口に装甲鈑を装着した状態で艦隊に編入されている。
 (余談だが、波動砲発射口に装甲鈑を装着した状態の本型の映像が流布した際、いくつかの専門誌に「波動砲未搭載の新型戦艦」として紹介されたことがある。これと波動砲搭載後の本型が混同されたりもして「防御が強化されたA型戦艦(俗に「後期生産型・丙」と通称される)が別に存在する」という誤解が生じていた時期がある)

 以上のようにありあわせの部品をかき集めて建造されたA5型戦艦であるが、実戦ではアンドロメダ型譲りの装甲防御と既存A型戦艦より優れた指揮能力、重量が以前の同型艦より増大したにも関わらず機動力も維持されていた点が高く評価された(ただ機関については「扱いが難しい」とする記録が存在する)。彗星帝国残存軍との戦闘においても指揮戦艦として活躍し、損失なしでイスカンダル戦役までを終えている。

 暗黒星団帝国戦役勃発前の改装は、予定されていた波動砲の装備と主砲の一式一型改40cm衝撃波砲への改造が全艦に行われたのみであった。ちなみに波動砲装備後の本タイプは艦首の波動砲身が他のA型戦艦より幅広で重く「前トリムの傾向が強く、特に大気圏内での操艦が難しい」と評されたと伝わる。

 なお、A型戦艦はイスカンダル戦役後に追加建造が検討された形跡がある。詳細は不明だが、仮に計画として具体化されてもB型戦艦の建造開始と暗黒星団帝国戦役が勃発した時期から考えて、恐らく実現しなかったものと推定される。

新戦艦の設計と試作

 増幅装置を含む拡散波動砲関連の機材、および大口径の波動砲身を搭載することが要求されたため、艦政本部は艦の前半部をヤマトに類似した箱型とし、それに直径の大きい円筒形の構造を持つ後半部を組み合わせた船体を新戦艦に採用した。これでは紡錘型船型と比較して建造の手間が増すことは避けられなかったが、極力規模を小さくしつつも内部の容積を増加させ、求められた機材を搭載するためには必要と判断されたのだ。
 ただ、様々な特殊任務を前提として建造されたヤマトほどの船体強度は求められなかったから、建造期間短縮のため駆逐艦、巡洋艦の量産によって培われたブロック建造方式の活用や各部のモジュール化が最大限行われている。

 装甲防御に関しては、当初参謀本部は拡散波動砲の発射ユニットとしてこの戦艦を見ていたため近接して敵艦と交戦する機会は少ないと判断し、建造費と工期を圧縮するため必要最小限の防御に止めるつもりだった。しかし艦隊側から「それでは波動砲発射に用途を限定するしかなく、戦艦としての任務を遂行することが不可能になる」と猛反発され、設計当事者たる艦政本部も難色を示した事から、通常兵器を用いた対艦戦闘において必要とされる防御力を付与することが決定されている。
 ただ、工期短縮および費用縮減の観点から船体の軽量化は重要とされたため、防御配置はヤマトを参考にしつつ一部変更が加えられ、装甲鈑には製造が容易かつ軽量な新素材を多用、ガミラス戦役時の戦訓からヤマトで過剰と判断された部分の装甲については装甲厚の削減が実施されている。
 これらの処置によって戦艦としての防御力が低下したと指摘する資料も散見されるが、防御配置の変更と新素材の多用は直接防御の強化にも寄与しており、完成時のヤマトでは不十分とされた光学系装甲の大幅な見直しも行われていたため、後に使用した艦隊側は本型の防御力について「概ね十分である」と評価している。

 波動砲以外の兵装であるが、参謀本部から新戦艦の主要任務として「拡散波動砲の使用により遠距離の敵艦隊を撃滅する」ことが追加されたため、設計開始後の早い段階で新型の一式40cm衝撃波砲(正確な砲口直径は40.6cm)の搭載が決定、これを三連装砲塔に収めて3基装備することになった。この砲は既存の波動砲より射程距離が向上した一式タキオン波動拡散砲に対応した衝撃波砲で、ヤマトが装備した九九式46cm砲に比して大幅な射程延伸を実現していたものである。
 本型用に新たに設計された三連装砲塔は大仰角が取れるようになっており、発射速度および砲塔の旋回速度に関しても性能向上が図られた。それに伴ってヤマトには搭載された砲塔型副砲が廃止されているが、これは主砲で軽艦艇にも対応できると判断されたことと、甲板上の構造物を削減して重量や占有面積を減らしたい意図があったことが影響している。

 また、衝撃波砲という兵器が確実性のあるものとして認識されていなかった時期に建造されたヤマトでは、万一の失敗に備えてミサイル、魚雷発射管が多数装備されたが、本型はそれが大幅に削減された。同じく対空用パルスレーザー砲も、改良により既存の砲に比して発射速度が大幅に強化されていたし、同じく発射速度と仰角が向上した新型主砲を装備することで防空力も充分に確保できると判断され、こちらもヤマトより門数が減少した。

 艦内の格納庫であるが、当初はヤマトと同等の搭載能力を確保することが考えられたが、実行すると船体の大型化が避けられず、また設計開始後ほどなく航空母艦の建造が計画されたため、救命艇や内火艇などの他には当時の公式文書から引用すると「開発中の新型艦上戦闘機(のちのコスモタイガーⅡ)5機程度の搭載を予定」という小規模なものとされた。なお、本型は主に搭載するべき機材が不足していたことから実戦で戦闘機の運用を行ったことはなく、任務によって偵察機として1~2機のコスモタイガーⅡを搭載したのみである。
 加えて、想定された任務が太陽系内もしくは外縁における敵艦隊の迎撃であったため、極端な長期間にわたって基地などへ寄港せず航海を行うことも考えられず、ヤマトでは大規模に設けられた慰安、給糧施設は削減され、代わりに艦内居住区を拡大して乗員一人あたりの居住スペース増加を図っている。更に艦内工場についてもヤマトほどではなく、自艦の応急修理やミサイル等の弾薬を補充するのに用いる程度という比較的規模の小さいものとなった。

 これら艦内設備の見直しは艦の軽量、小型化と工数削減、そして居住性の向上に大きく寄与し、参謀本部も艦隊側もこの点については概ね良好な評価を下している。

 2200年末、拡散波動砲を搭載した新型戦艦の基本設計が以下のようにまとめられた。

全長:242m
全幅:45.8m
船体重量:53,400トン
乗員:80名(戦時定数、任務により増減あり)
波動砲:一式タキオン波動拡散砲 1門
主砲:一式40cm三連装衝撃波砲 3基9門
対空兵装:零式40mm三連装パルスレーザー砲 2基6門 
零式25mm連装パルスレーザー砲 2基4門
ミサイル兵装:九九式垂直軸ミサイル発射管 単装4基4門(艦底部)
九九式短魚雷発射管 単装8基8門(両舷側に各4基)

 この原案がまとまった直後、近接火力強化のため艦橋構造物頂上に零式短15.5cm六連装衝撃波砲が1基搭載されることが決まった。この短15.5cm砲はガミラス戦役末期にM-21881式突撃駆逐艦の火力を強化するために開発されたものだが、実際に搭載した艦が1隻も完成しなかったため、余剰となった在庫品が六連装化され本型へ流用されることになったのである。

 ところで、本型はヤマトと異なり主砲塔に砲術科の乗員を配置せず、波動砲を始めとする全火器の統制は艦橋に装備された射撃指揮統制コンピュータを介し一括して行われることとなり、船体や機関部のメンテナンスも大幅に自動化された。これはガミラス戦役後の人員拡充が始まったばかりで、人的資源の限られた防衛軍が節約できる乗組員は極力減らそうと考えたことによる。
 ただ、これは後に建造されたアンドロメダ型戦艦にも言えるのだが、基本的には多くを自動化するという方針はあったものの、乗員を一定数確保した戦艦として設計、建造され、実際の運用でも自動による作業と乗員による処置が並行して行われた事例が多々あることを踏まえると、必ずしも本型は自動化に徹し切った艦とは言い難い面があるように思われる。ただその一方、これら乗員数削減のための配慮が、後に発生した様々な問題の原因になったのも確かな事実といえる。

 こうして順調に進んでいった新型戦艦の設計であるが、主機関の選定に関しては非常に難航することとなった。

 参謀本部と艦政本部、そして実際に運用する艦隊側が様々な議論を重ねた結果、候補として二つの機関が残った。まず第一は、南部重工が新型戦艦用として新たに設計した波動機関。もう一つは艦政本部がヤマトに搭載された波動機関を改良した機関である。
 どちらを搭載したとしても、主兵装たる拡散波動砲の威力は殆ど差がないとされていた。そのため推進力が問題になったのだが、前者の新型機関はその大出力から巡洋艦に匹敵する速度性能を得ることが期待できたし、後者はそこまでの高速は期待出来なかったものの、ガミラス戦役におけるヤマトの経験を充分に反映させた上で改良を施していたため、信頼性が非常に高いという利点があった。
 結局、双方に長所があることからなかなか結論は出ず、また本型は防衛軍にとってヤマト以来、そして量産型としては初めての戦艦建造でもあったから、最終的に候補に上がった二つの機関をそれぞれ搭載する艦を1隻ずつ建造することで決着を見た。こうして建造した2隻を試験し様々な問題点を早期に洗い出して、それを解決してから量産を行うことにしたのである。

 試作艦の建造が決定した時点で、この新型戦艦には「A型戦艦」という名称が付与された。最終的にA型戦艦は各型合わせて44隻という多数が建造され、広く一般に「主力戦艦」と呼ばれるようになるのだが、詳細に関しては今後別項にて説明したいと思う。

前期生産型


 44隻の量産が行われたA型戦艦であるから、基本設計はさておき武装や機関、各種搭載機器に関しては様々なバリエーションが存在する。そのため防衛軍も公式文書において各艦を主に建造時期で分けて扱っており、特に白色彗星帝国戦役終結前に完成した38隻を「前期生産型」とし、その後追加建造された6隻を「後期生産型」として区別するのはよく知られている。
 まずは前期生産型の各種タイプから解説していくことにするが、本稿には波動砲や衝撃波砲、波動機関など、現在の防衛軍にとっても機密となる部分が多く含まれるため、それらに関する言及が不十分となる場合があるのをあらかじめご了承いただきたい。

 なお、各タイプ名は公式文書に拠る制式名称だが、続くカッコ内の名称は研究書籍などにおいて付与された通称であることにご注意いただけると幸いである。


A1型a(試作型a、試作型甲)「ドレッドノート(初代)」

 A型戦艦で最初に建造された艦で、一般的には後述の「ボロディノ」と共にA1型と呼称されることが多いが、ここでは個別に取り上げることにする。本艦が搭載した機関は南部重工製の新型波動機関である。

 建造の進展が「ボロディノ」より早かったため、本艦は公試運転の際に新型機関のテストはもちろん、拡散波動砲など全装備火器の試射、新たに搭載した射撃統制コンピュータの試験に供されることとなった。
 ところが、この試験中に大小様々な問題が発生したため、結果、公試そのものが終了前に中止されている。

 直後にまとめられた問題点は次のようなものだった。

・主砲である一式40cm衝撃波砲の散布界が過大なため、命中率が全自動射撃、手動照準射撃の双方において極めて低い
・新型波動機関のエネルギー伝導管が、設計ミスにより過熱し熔解する箇所が存在する
・ヤマトに比して通信設備を削減した結果、艦隊および戦隊旗艦としての通信能力に不安がある
・探知能力、特に艦底方向へのそれが充分でない
・急速旋回用スラスターの不足、および配置が不適切なため、旋回性能がヤマトより劣る
・艦橋内部が狭隘なため、戦隊あるいは小規模艦隊の旗艦として使用するのが困難

 結局、本艦はこれらの問題に対処するため建造ドックへ逆戻りすることになった。そして続いて完成した「ボロディノ」の試験結果も踏まえて改装が行われたものの、エネルギー伝導管を中心に大規模な再設計を施したにも関わらず、機関の過熱と伝導管の熔解問題はどうしても解決することが出来なかった。
 この機関に関する問題は相当に深刻で、防衛軍の中で最も熟練した機関員を揃えた試験も行われたが、最終的に「本艦の機関は戦闘艦艇用として実戦に耐えうるものではない」と結論付けられている。

 こうした事情から、本艦は最後の機関テストが終了した後、艦種類別を「特務艦」に変更(この処置は予算上の戦艦建造枠の都合によるものらしい)した上で地球の工廠に地上実験艦として係留されることが決定され、以後は除籍まで宇宙空間への航行を行っていない。そして引き続き新型機関の実用化および最新兵装の実験に用いられたのだが、これらは後にアンドロメダとA5型戦艦に搭載された機関や、散布界過大に悩まされた一式40cm砲の改良型を実現させる基礎となった。

 白色彗星帝国戦役が勃発した直後、防衛軍は本艦を戦艦として現役復帰させるべく、機関の換装ないし大幅な改造、兵装を中心とした装備を量産型各艦と同じものに変更する改装を計画したが、実行されずに終わっている。そして戦役末期、係留されていた工廠が彗星帝国超巨大戦艦の砲撃を受け、これによって大破した本艦は全損と判定されて程なく解体され、その廃材や使用可能とされた部品は既存艦の修理や新造艦の建造に転用された。

 なお「ドレッドノート」の艦名は、本艦の除籍後に完成した改A3型の一隻に引き継がれているので、混同されないようご注意頂きたい。


A1型b(試作型b、試作型乙)「ボロディノ」

 前述した「ドレッドノート」と同時に建造された試作艦で、機関はヤマトと同型の波動機関に艦政本部が改良を施したものを搭載している。

 完工したのは「ドレッドノート」より遅かったのだが、「ドレッドノート」が前述した各種問題の発生により公試未了のままドックへ逆戻りしたため、結果として書類上の竣工、防衛軍への引き渡しはこの「ボロディノ」のほうが先になった。
 そうした経緯から、通常「ドレッドノート型」と称されるA型戦艦だが、一部の公式文書および既刊の資料において「ボロディノ型」と表記されることもある。

 本艦は波動機関の過熱問題こそ生じなかったものの、それ以外の問題は「ドレッドノート」と同じく存在しており、また機関の最大出力が劣ることから加速性能の不足が指摘され、更なる能力向上も求められた。
 しかし、試作型2隻の試験結果を取り入れた増加試作型として改A1型戦艦が建造されることとなったため、本艦への根本的な改装は見送られている。そのため「ボロディノ」は実験終了後も外・内周艦隊および基地艦隊には配備されず、主砲に発砲遅延装置、艦橋構造物に各種電探を追加する改装を行った後、外惑星練習艦隊の旗艦として主に土星基地やアステロイドベルト基地周辺で行動した。

 本艦は白色彗星帝国戦役が勃発する直前、2番砲塔の撤去と訓練生用居住区画の拡大などを行い、本格的な練習戦艦へと改装することが検討されている。これは具体的な設計に入る前に戦役が勃発したため実現せずに終わり、今度は先の「ドレッドノート」と同様の量産型に準じた装備を施す工事が計画されたが、結局こちらも実行されなかった。

 土星会戦の直前、本艦は他の練習、警備艦隊所属艦の一部と共に、土星より地球へと後送される輸送船団を護衛して一旦地球へと帰還した。ところが、その土星会戦で防衛艦隊主力の大半が失なわれたため、防衛軍は彗星都市帝国を攻撃すべく、残存艦艇をかき集めて艦隊を編成することとした。これに参加すべく、地球で待機していた同艦も艦隊の集結地点である金星へと出撃している。(詳細は「コスモ・ウイングス」第二部四章をご参照頂きたい)
 そして、A型航空母艦3隻と共に第1空母戦隊を臨時編成した「ボロディノ」は地球軌道上で都市帝国直衛艦隊と交戦。その際、集中砲火を受けながら衝角戦術を仕掛けてきた敵戦艦と激突、大爆発を起こして敵艦もろとも轟沈し、艦歴に幕を閉じた。


改A1型(増加試作型、試作型c、試作型丙)「ジャン・パール」

 試作艦として建造された「ドレッドノート」「ボロディノ」の公試時に判明した問題点を根本的に解決すべく、急遽A2型巡洋艦2隻分の予算と資材を転用して建造された艦である。

 主な改良点は以下に示す。

・散布界の広さから命中率低下を招いている一式40cm衝撃波砲に、新開発の発砲遅延装置を装備
・主機関は信頼性に勝る「ボロディノ」と同じとし、出力を向上させた改良型補助機関を搭載
・旋回用スラスターの新設、および配置を見直し。出力も増強し旋回性能を向上させる
・通信能力改善のため各部アンテナを大型化、機器も増強
・艦底部に探知機器を搭載した大型ポッド2基を懸吊し、特に艦下方における探知能力を強化する
・艦橋構造物を大型化し、数個戦隊の指揮が可能な旗艦設備を整備

 これらの改装によって原設計より重量が1,500トンほど増加した(重量54,900トン)が、補助機関の出力強化によって発揮速度と加速性能は「ボロディノ」より向上している。また、旋回用スラスターの改良により運動性も良好と判定された。

 完成した「ジャン・パール」の公試成績は防衛軍にとってほぼ満足すべきものであり、主砲に関しては散布界の問題から射撃指揮統制コンピュータの更なる改良と調整が必要とされたものの、それ以外のA1型戦艦で生じた問題は概ね解消されていた。
 そのため、この改A1型戦艦を基礎とした戦艦を量産すれば、防衛軍が望んだ波動砲搭載戦艦の大量整備が問題なく実現できると結論付けられることとなった。

 公試終了後「ジャン・パール」は編成されたばかりの第1外周艦隊、ついで第4外周艦隊の旗艦を務めたが、この間に発砲遅延装置と射撃指揮統制コンピュータを量産型であるA2型戦艦と同じものに換装している。また艦隊での運用結果からA型戦艦は艦隊旗艦設備の更なる増強が求められたのだが、これは本艦にではなく後続のA2型戦艦の一部の艦に必要な工事が施された。
 白色彗星帝国戦役勃発時の本艦は、武装その他の装備や性能に多少の相違こそあるものの、全体の仕様はほぼ後続のA2型戦艦と同様だったようで、専用の艦隊旗艦設備がないため比較的規模の小さい天王星基地駐留艦隊の旗艦として配備されていた。
 そして、土星会戦前に「ジャン・パール」も連合艦隊へと編入され、同じく基地艦隊の旗艦を務めていた改A2型戦艦「リヴェンジ」「テネシー」と共に第12戦艦戦隊を臨時編成、土星の衛星ヒペリオンを基地とする前衛偵察部隊である第6艦隊の基幹戦力を構成することになった。

 バルゼー艦隊との決戦時、敵の前衛部隊を第1艦隊の正面に誘導、拡散波動砲編隊射撃による撃滅に貢献した第6艦隊だったが、その後襲来したバルゼー第2艦隊の猛攻によって艦隊は壊滅。「ジャン・パール」もそのときの戦闘で失われている。


A2型(初期量産型)「ロイヤル・ソヴリン」「レゾリューション」「ラミリーズ」「ワイオミング」「ニューヨーク」「テキサス」「河内」「摂津」「土佐」「コンテ・ディ・カヴール」「カイオ・デュイリオ」「アンドレア・ドリア」「ブルターニュ」「プロヴァンス」「ロレーヌ」

 改A1型戦艦の成功によって建造が決定した、A型戦艦最初の、同時に地球防衛軍にとって初めての波動機関を搭載する量産型戦艦である。

 一部の艦内配置を除いた船体と武装、機関は改A1型戦艦と同じで、完成時の外見から区別するのは極めて困難である。戦隊旗艦設備は全艦に設けられており、主砲の発砲遅延装置および射撃指揮統制コンピュータは更に改良されたものを搭載している。
 また「河内」「コンテ・ディ・カブール」「ブルターニュ」は完成時から、「ロイヤル・ソヴリン」「ワイオミング」は後日の改装で、各外周艦隊旗艦および戦時編成時の艦隊旗艦を務めるための設備が追加された。この5隻には艦橋構造物後方に艦隊司令部専用の通信アンテナが装備されており、他艦との識別は容易である。

 続々と建造された本型は3隻編成の戦艦戦隊を構成して各太陽系外周艦隊に配備、その主戦力となった。また、艦隊旗艦として改装された5隻は続くA3型戦艦で同じ装備を施された艦が建造されなかったため、平時は各外周艦隊の旗艦として活動している。
 なお、当初A2型戦艦は27隻の建造が予定されていたが、戦闘演習の結果、艦橋に装備された零式短15.5cm六連装衝撃波砲の連続射撃時に発生する振動が原因で各武装の照準や操艦に支障を来たす、と艦隊側から指摘があったため、これを中心に各部へ改良を加えたA3型戦艦に量産を切り替えることが決定、15隻で建造は打ち切られた。

 余談になるが、防衛軍にとって最初の空母となったA1型航空母艦は本型をベースとし、船体後半部を改設計して航空艤装を加えたものである。

 白色彗星帝国戦役勃発時、A2型戦艦の各艦は第1、第2外周艦隊の主要戦力を構成していたが、連合艦隊編成時に各戦隊は第2、第4、第5艦隊に分散配備されている。これは完成が遅く乗員の練成が不十分とされたA3型戦艦を第1艦隊に集中配備したためであった。
 「ロイヤル・ソヴリン」が第2艦隊、「コンテ・ディ・カヴール」が第4艦隊、そして「河内」が第5艦隊の旗艦を務めた土星会戦であったが、バルゼー艦隊および都市帝国との交戦において「ワイオミング」「カイオ・デュイリオ」の2隻を除いた全艦が撃沈されている。
 また、艦隊戦で損傷しタイタン基地に退避した「ワイオミング」も、直後に基地が彗星帝国軍に爆撃された際に大破、全損とされ戦役後に解体されたため、白色彗星帝国戦役を生き残ったのは「カイオ・デュイリオ」1隻だった。

 「カイオ・デュイリオ」のその後については、別項に譲らせていただくことにする。


改A2型(電探強化型、パトロール戦艦)「リヴェンジ」「テネシー」

 A2型戦艦をベースとし、各部に改造を行ったタイプである。

 本型は当初、電探および通信施設を強化することで、A2型戦艦以下によって構成された中~大規模の艦隊を統率するために建造が構想されたものだった。つまり、後にアンドロメダとして結実する旗艦型戦艦の役割を果たすことが目的だったのだが、設計段階で大規模艦隊の旗艦として用いるには艦の規模が小さいと指摘され、遊撃部隊として敵侵攻軍の後背で破壊活動を行う第三艦隊に配備するための戦艦へと計画が変更、2隻が起工された。

 ところが建造中、連合艦隊司令部から第三艦隊にA型戦艦に近い火力を持つA型航空母艦を配備することが提案され、これが採用されたため第三艦隊専用に戦艦を建造する意義が低下した。そのため本型は再度の設計変更が行われ、今度は地球防衛軍の重要拠点となる冥王星、海王星基地に所属する警備艦隊の旗艦用戦艦として建造を続行する事になった。

 ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点を以下に挙げる。

・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もより強力なものへと換装
・艦底部垂直軸ミサイル発射管を全門撤去、ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力電探および通信機に対応した専用アンテナを艦各所に追加

 この改造によって、艦隊側からは「機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」と評されたが、波動砲や主砲を始めとした戦闘力は維持されており、また警備艦隊旗艦としての能力は非常に高かったため、戦艦としての評価は概ね良好であったようだ。

 本型は警備艦隊以外での使用は考慮されていなかったとされることが多いが、実際には平時における哨戒活動の他にも、警備艦隊を率いて第1、第2外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時において警備艦隊の一部と共に連合艦隊の戦列に加わることが想定されていたようである。
 実際、白色彗星帝国戦役勃発後に2隻はいずれも連合艦隊に加えられ、偵察行動と拡散波動砲編隊射撃の弾着観測を任務とした第6艦隊に編入。土星会戦の緒戦で敵艦隊の動向調査や敵前衛艦隊への拡散波動砲一斉射撃の支援を行い、その強力な探知能力を存分に発揮している。

 しかしその後、行動中の第6艦隊はバルゼー第2艦隊の襲撃を受け、艦隊旗艦を務めていた「リヴェンジ」が沈没、「テネシー」は大破落伍して木星ガニメデ基地へと離脱し、そこで修理中に戦役が終結したため以後の戦闘には参加できなかった。

 なお「テネシー」の後日に関しては別項で記述させていただく。

A3型(中期量産型)「クイーン・エリザベス」「バーラム」「ヴァリアント」「ノース・カロライナ」「ワシントン」「アラバマ」「薩摩」「安芸」「紀伊」「リシュリュー」「ストラスブール」「ガスコーニュ」「ナッソー」「ヘルゴラント」「バイエルン」「ツェザレヴィッチ」「ガングート」「ペトロパブロフスク」

 戦艦戦力の更なる増強を図った防衛軍が、A2型戦艦の使用実績を取り入れて整備したタイプ。最終的な建造数は18隻で、A型戦艦の中で最も多数が建造された形式となる。

 A2型戦艦との相違点は次の通り。

・15.5cm六連装艦橋砲の機材を一部撤去し、反重力感応機用砲弾など特殊砲弾の発射専用とする
・艦底部に九九式垂直軸ミサイル発射管を2門追加(合計6門)
・量産性向上のため、艦内の構造を一部見直し
・戦隊旗艦施設を強化し、小規模艦隊向けの指揮能力を標準装備

 この他の武装や防御、電探や機関などはA2型戦艦と同じであった。A2型戦艦との識別は完成時の艦底部ミサイル発射管のハッチ数により可能だが、映像のアングルなどによっては非常に困難である。

 本型が就役を始めたのは白色彗星帝国戦役が始まる直前で、戦役勃発後はただちに各外周、内周艦隊に配備されて乗員の訓練が行われている。なお、この訓練課程を満たすことが優先され工事に充てる期間がなかったため、A2型戦艦の一部に施された艦隊旗艦設備の追加は実施されなかった。
 土星会戦直前においてもA3型戦艦各艦の練成は未だ不十分と見られており、また艦隊旗艦設備も未装備であることから、完成、就役していた18隻は第1艦隊に集中配備された。これは第1艦隊の主任務が拡散波動砲による先制攻撃と衝撃波砲を用いた各艦隊への火力支援と想定されていたためで、一定の艦隊機動が行える練度が確保されていれば十分にその戦力を発揮できると連合艦隊司令部が判断したためである。

 第1艦隊所属のA3型戦艦は、拡散波動砲編隊射撃による敵前衛部隊への先制攻撃、そしてカッシーニの隙間における砲撃戦でその威力を発揮しバルゼー艦隊の撃滅に貢献したが、最終的には艦隊戦で損傷落伍した「薩摩」「ストラスブール」を除く全艦が、敵艦隊および都市帝国の攻撃によって撃沈されている。また、生き残った両艦も損傷が大きかったため、その後の都市帝国直衛艦隊との戦闘にも参加できなかった。

 なお、白色彗星帝国戦役勃発後にA3型戦艦は12隻の追加建造が計画され6隻起工(残り6隻はA4型戦艦に変更)されたが、これらの多くは彗星都市帝国や超巨大戦艦の攻撃によって建造ドック内で破壊され、無事だった船体の一部と準備された資材などは後期生産型が建造される際に転用されている。

 「薩摩」と「ストラスブール」のその後については別項に譲りたいと思う。

A4型(高速戦艦型)計画のみ

 白色彗星帝国戦役に伴う戦時計画で、A3型戦艦として建造が決定した12隻のうち、後期の6隻は改設計を加えた別タイプの艦に変更されることになった。計画変更の理由は戦役勃発直後、波動砲を装備した改A2型パトロール巡洋艦およびB2型護衛駆逐艦で構成された第11護衛艦隊が、カイパーベルト外縁において彗星帝国軍ナスカ艦隊の一部と交戦した際の出来事に求めることができる。

 この戦闘で、波動砲による編隊射撃を敢行しようとした第11護衛艦隊はエネルギーチャージ中に敵艦隊の反撃を受け、防御力が脆弱な巡洋艦、駆逐艦で構成された同艦隊は動くこともできないまま、ほぼ戦果なく壊滅させられてしまったのである。
 後に提出された戦闘詳報において、艦隊側は「現状、巡洋艦以下の艦艇に装備されている波動砲は、装備艦の防御力不足によりエネルギー充填中の敵からの反撃に対する抗鍛性が不十分なため、戦場での有効な活用が極めて困難」という所見を提出。更に「今後、水雷戦隊に追従し敵艦隊に波動砲、および大口径衝撃波砲による火力支援を行える戦艦が必要と考えられる」との意見も添えられていた。

 これらを検討した結果、防衛軍はA型巡洋艦およびB2型駆逐艦の波動砲に大幅な使用制限を加える(直後、更に使用停止の措置が取られている)こととし、将来的にはこれらの艦から波動砲そのものを撤去すると決定した。これに伴い、艦隊側から要望があった「水雷戦隊を掩護するための高速戦艦」を整備し波動砲艦としての巡洋艦の任務を代替させることになり、このA4型戦艦の建造が計画された。

 このA4型戦艦は船体や武装に関してはA3型戦艦と同じものを用いることになっていたが、機関にはA1型戦艦「ドレッドノート」のそれを基礎とし大幅な改良を施した機関(補足すると、アンドロメダ型戦艦に搭載された主機関と同じもの)を採用し、発揮速度と加速性能の大幅向上を狙っていた。
 機関の換装が決定されたのは、巡洋艦と駆逐艦で構成された水雷戦隊に追従するための速度性能が求められたからであるが、この時期地球に係留されていた「ドレッドノート」を用いた試験、およびアンドロメダにおける運用の結果、改良を加えた新型機関は「ドレッドノート」に搭載されたオリジナルよりは若干劣るものの、他のA型戦艦が装備する機関に比べて出力が向上していること。そしてある程度の熟練した機関員が必要ではあるが、実用性の向上した機関として使用できる目処が立ったことによる。

 機関の製造に若干の時間を必要としたため、防衛軍は最初に3隻を建造して、戦時編成において水雷戦隊を中心に編成される第2艦隊へ配備することとし、続いて建造する3隻は同じく高速艦が多数所属する第4艦隊に配属させる予定であった。

 しかし各艦の起工と前後して土星会戦が戦われ、そのとき各々2個水雷戦隊を率いた第2、第4艦隊のA2型戦艦は水雷戦隊の足手まといになることもなく、A4型戦艦の任務として想定されていた波動砲および主砲による火力支援に多大な威力を発揮するなど活躍した。
 この結果から「通常型戦艦の機動性をある程度高い水準に保てれば、専用の高速戦艦は不要ではないか」という意見が参謀本部から提出されたこと。そして地球および各惑星基地の建造工廠の多くが彗星帝国の攻撃により大きな被害を出したため、戦役終結までA4型戦艦は1隻も完成せずに終わっている。

 それでも、彗星帝国残存軍に対する兵力として予定通り3隻のA4型戦艦を建造することも考えられたが、先の戦役の戦訓から防衛軍の戦術に再検討が加えられ、A型戦艦もそれに伴う改設計を受けることが決定された。そうした要素もあり、このA4型戦艦は結果的に計画のみの存在として終焉を向かえることになった。

 なお白色彗星帝国戦役終結時、3隻分製造された本型用の機関は戦火を潜り抜けて残存していたが、これらは後に建造されたA5型戦艦へと転用されている。

(筆者注 本作はpixivに投稿した、原作版宇宙戦艦ヤマトおよびPS2ゲーム版までを考慮して書かれたもので、リメイク版の要素を含んでいません。後者を含んだものが現在継続中のD級戦艦の文章となりますので、こちらはあくまで「旧作の『主力戦艦』について書かれたもの」としてお読みいただければと思います)

地球防衛軍の戦艦計画

 イスカンダルより波動機関およびそれに関連する技術がもたらされて以降、地球防衛軍の軍備計画に「戦艦」の文字が最初に登場したのは、ガミラス戦役の末期にあたる2200年の初頭とされる。
 (なお、ヤマトは「人類脱出に用いる特務艦」として計画、建造されたため、軍備計画で「戦艦」として扱われるようになったのはガミラス戦役終結後である)

 この時期の防衛軍は、

・地球本土およびその周辺の制宙権を死守する
・ヤマトの帰路を確保するため、太陽系内のガミラス戦力を漸減ないし撃滅する

 といった任務を果たすための戦力整備を目標にしていたが、この時期における生産力の低下と希少金属の不足は深刻で、この目的に沿って艦艇を建造し艦隊を編成することは、例え最小限のそれに絞ったとしても極めて困難であると考えられた。
 ただ幸いなことに、対ガミラス艦用の兵器として開発された九九式46cm衝撃波砲(ヤマトの主砲)の威力が期待以上であり、同時に小口径衝撃波砲(試製零式15.5cm衝撃波砲。ヤマトに副砲として装備)も一応は実用の目処が立っていたから、波動機関を生産するための希少金属を確保することができれば、多数の艦艇を建造することなく地球周辺の制宙権維持に必要な戦力は揃えられるのではないか、という見通しもあった。

 2199年末、防衛軍は鹵獲したガミラス・デストロイヤーの機関を転用して建造したA型駆逐艦による物資輸送作戦、いわゆる「タイタン急行」を敢行し、波動機関製造に必要なコスモナイトなどの希少金属を一定量確保することに成功した。
 これにより、少数ながら波動機関搭載艦によって構成された艦隊を整備することが可能になったのだが、このとき艦隊側は防衛軍の兵器局に対して「九九式46cm衝撃波砲を搭載した超大型戦艦の建造」に関する要望を出しており、これが最初に記述した「防衛軍の軍備計画における初の戦艦」にあたる。

 この要望における「超大型戦艦」とは、詳細は不明だがヤマトより若干縮小されたものと考えられている。そして、その想定されていた任務の第一は「ガミラス超弩級戦艦の駆逐、あるいは撃破」であった。

 ガミラスの超弩級戦艦とは、現在の地球では「シュルツ艦」という通称で知られているガミラス軍の旗艦型戦艦を指しているのだが、地球防衛軍は過去に数度この艦と対戦した経験があり、最初の交戦時には当時防衛軍きっての精鋭と言われていた北米第三艦隊をこの一艦のためにほぼ壊滅させられるという惨敗を喫していた。
 そのため、地球本土の防衛、および太陽系内の制宙権回復にはこの敵戦艦が極めて脅威になると考えられており、防衛軍はそれに対抗可能な戦艦を必要としていたのである。

 この戦艦、特に仕様において最も重要なのは「九九式46cm衝撃波砲を搭載し、敵戦艦に対抗可能な攻防性能を有する艦が要望された」ことであり、建造期間短縮と資材節約の観点から波動砲の搭載が全く考慮されていなかった事実は注目に値する。
 ところが、艦隊側が要望した戦艦建造は生産力と希少金属の不足が解決されず、兵器局から「全く不可能である」と回答されてしまっている。実際、ガミラス戦役終結時までに「レコンキスタ」と呼ばれる太陽系宙域回復作戦に使用できる戦力として整備できた艦艇は、A型巡洋艦1隻とA型駆逐艦8隻に過ぎなかった。この結果を踏まえると、戦艦の建造が当時の状況では無理があったのは致し方なかったと言えるだろう。

 地球にとって幸運なことに、ガミラス冥王星基地に配備されていた超弩級戦艦は1隻のみで、それは10番小惑星帯におけるヤマトとの交戦で撃沈されていたから、巡洋艦と駆逐艦で構成された防衛軍艦隊は「レコンキスタ」において敵戦艦と交戦する機会がなく、作戦は無事に成功している。


 ガミラス戦役終結後、地球連邦の成立に伴って地球防衛軍の組織は大きく様変わりし、その中に艦艇の設計、建造および各種審査を行う部局として新たに「艦政本部」が設けられた。

 組織化直後の艦政本部は、まず既存のA型巡洋艦とA型駆逐艦の整備と改良に忙殺されることになり、新規の戦艦計画には手をつけていなかった。これは当時、艦隊戦力を構成できると判断された波動機関搭載艦が極めて少数だったため、まずは短期間に量産が可能な巡洋艦や駆逐艦を一定数揃えることが優先されたからである。
 それでもガミラス戦役における戦訓から、巡洋艦や駆逐艦が搭載する中小口径の衝撃波砲は威力に限界があること、巡洋艦に設置可能な規模の司令部施設では指揮下の艦艇を統制する能力が不足するのも明白だったから、いずれは艦隊の中核を成す戦列艦として、また巡洋艦以下の艦艇で編成された艦隊を指揮するための戦艦が必要であるとの認識は、艦隊側も参謀本部も等しく有していた。

 そうしたことから、防衛軍は改めて艦政本部に戦艦試案の検討を下命したが、この時点で防衛軍が想定していた「戦艦」の任務は以下のようなものであった。

・大口径衝撃波砲と強固な装甲を有することで艦隊戦列の中核を成し、特に敵の重装甲艦に対抗する
・数十隻単位の艦艇で編成された艦隊を指揮統率する旗艦として用いる
・波動砲を搭載し、必要に応じてその大なる火力を発揮し戦況を優位足らしめる

 ここで始めて、新たに一定数の建造が計画されることになった戦艦にも、ヤマトと同じく波動砲の搭載が求められている。
 しかし、当時はまだ九九式タキオン波動集束砲(ヤマト搭載の波動砲)を艦隊戦においてどう運用するか確固たる方針が存在しておらず、そもそも当時はガミラス戦役でのヤマトの戦訓から対艦戦闘に波動砲は不向きとの見方が強かったため、その搭載はあくまで「戦況によって使用する機会が生じる可能性を考慮する」という要素が濃いものとなっていた。
 つまり、この時点の「戦艦」に求められた任務の第一義は、大口径衝撃波砲の威力を発揮して敵の重装甲艦、すなわち戦艦を撃破することであった。そのため、新規設計の戦艦はこれを優先した艦として検討が開始されている。

 当時の艦政本部が設計した戦艦試案のいくつかが残っており、中でもこの頃量産が開始されたA2型巡洋艦を拡大して九九式46cm衝撃波砲8門、九九式タキオン波動集束砲1門を搭載した設計案は性能やコストのバランスもよく、参謀本部も一時期真剣に採用を考えた節がある。

 そうした既定の方針が大きく変化したのは、防衛軍の技術本部によってある兵器の実用化に目処が立ったことによるものであった。


拡散波動砲搭載の新戦艦構想

 新戦艦の検討作業が続いていたこの時期、それとほぼ並行して技術本部による「艦隊戦に威力を発揮し得る新型波動砲」の試作が進んでいた。

 この新型波動砲はガミラス戦役におけるヤマトの戦訓から、集束型波動砲は着弾地点付近への威力は極めて大きいものの、その影響が広範囲に及ばないことから分散している艦隊には効果が低いと判断されたことで開発が決まったものだった。事実、高速襲撃を得意としたガミラス艦隊に対して、ヤマトは波動砲を発射する機会に恵まれていなかった。

 地球防衛軍にとって最大の任務は、太陽系に侵攻してくる侵略者を地球より可能な限り遠い地点で迎撃、これを撃滅することである。しかもガミラス戦役の戦訓から、敵艦隊と対峙する防衛艦隊は数的、あるいは実効戦力において劣勢を強いられる可能性が高いと考えられており、それを跳ね返す兵器として防衛軍、特に参謀本部は波動砲に大きな期待をかけていた。そのため、対艦戦闘には不向きと判断された波動砲を艦隊戦に適応させるべく改良を行うことにしたのである。
 詳しい開発経緯については本題から外れるので省くが、ちょうど巡洋艦拡大の戦艦試案が提出された時期と前後して、この新型波動砲、すなわち「拡散波動砲」の実験が技術本部によって行われ成功したことから、今後新造される艦艇に拡散波動砲を搭載することが構想された。

 だが、この拡散波動砲はある技術的な問題を抱えていた。それは、この波動砲を搭載する艦には広範囲の目標を確実に破壊できるエネルギーを確保するため、またその拡散を効率よく行うため、波動エネルギー増幅装置と集束型波動砲より大口径の砲身が必要とされていたのである。
 (ちなみに、増幅装置と大口径砲身を使用しない拡散波動砲は試験の結果「九九式タキオン波動集束砲に比して威力の低下が著しく、有効範囲も不十分」と判定されている)
 巡洋艦拡大の戦艦試案は、ヤマトと同じ九九式タキオン波動集束砲の搭載を前提に設計されていた。そのため艦政本部は拡散波動砲搭載のための再設計を施そうとしたが、巡洋艦と同じ紡錘型船体を拡大した構造を持つこの試案では、装備が必要な増幅装置と大口径砲身を艦内部に収めることが不可能であった。

 船体規模が大きいはずの新戦艦に拡散波動砲が搭載できない以上、もちろん巡洋艦以下の艦艇に装備するのも無理である。艦隊戦力の数的不利を拡散波動砲の威力によって埋めるつもりでいた参謀本部としてはこの事態を放置しておくわけにはいかず、そのため新戦艦とは別に「波動砲艦」と呼称すべき、拡散波動砲の使用に特化した艦を建造することも検討されている。
 だが、艦隊側から「用途を波動砲の発射のみに限定した場合、波動砲が使用不能となった状況において戦闘力を完全に喪失することになり、戦力として期待できない」との意見が出されたため、この案は具体的な設計作業に入ることなく立ち消えとなった。

 以上の経緯から、巡洋艦拡大の新戦艦案は不採用となり、完成した拡散波動砲こと「一式タキオン波動拡散砲」の搭載を前提とした新戦艦の設計が、再び艦政本部に下命されることになったのである。

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