(※筆者注 本文内のD級戦艦のスペックに関しては、あくまで筆者の二次創作として原作『さらば』『2』に登場する『主力戦艦』も含めて考慮した独自のものとなっており、原作およびリメイク版『2202』の公式設定とは全く関係ないものとなっていますので、その点はご了承ください)
仕様決定と量産の開始
四管区による試作艦建造とその試験を経て、最終的には『ドレッドノート(Ⅰ)』の船体に『出羽』の機関を搭載する、という決着を見た新型量産戦艦の仕様だったが、その他、細かい箇所の再検討などが再び艦政本部で行われ、2201年10月、その決定により新戦艦は以下の性能にまとめられ、防衛軍首脳部はこれを承認した。
全長 280m
全幅 69.8m
全高 99.7m
波動砲 一式タキオン波動拡散砲(通称・拡散波動砲)1門
主砲 一式41cm三連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 3基9門
零式四連装対艦グレネード投射機(対空兼務 前甲板両側面)
一式亜空間魚雷発射管 単装4門(艦首両舷)
零式小型魚雷発射管 単装8基(艦首両舷)
九八式対空迎撃ミサイル発射管 単装8基(艦底部)
九八式短魚雷発射管 単装12門(片舷あて6門)
一式多連装小型ミサイル発射管 16門(片舷あて8門)
司令塔防護用ショックフィールド砲 3基(司令塔前部および基部)
零式短砲身六連装光線投射砲 2基(司令塔基部側面)
九九式40mm連装対空パルスレーザー砲 2基
一式76mm三連装拡散型対空パルスレーザー砲 2基
主機 艦本式次元波動機関 1基
補機 ケルビンインパルス機関 2基
懸架式亜空間航行用機関 2基
武装の特徴として、ヤマトに比して対空兵装が大幅に削減されたことがまず目につくと思われる。これは拡散型パルスレーザー砲の採用で十分な弾幕が形成できると判断されたこと、また主砲塔が大仰角を取れるように設計されており対空砲として使用可能なことが考慮された結果だが、後にこれが問題を引き起こす原因になった。ただ、その詳細については先に譲りたい。
また本艦の搭載機についてだが、ヤマトと同様に艦載機運用にいささか不自由があったこと、後に本級を改造した航空母艦の建造が決定されたこと、原則として艦隊での運用が常であり単艦で行動することがほとんどなかったこと、そもそも搭載すべき戦闘機が搭乗員も含めて不足していたなどの理由が重なり、偵察機を除いた戦闘機を搭載して作戦行動を行ったという記録は現状見つかっていない。
なお、本艦の補給、給糧設備に関しては『ヤマトほどの長期航海は前提としない』『長期航海を行う場合は補給艦の随伴を検討する』『状況が許せば、ガミラス基地からの補給も求める』などが考慮された結果、ヤマトのようO.M.C.S(食料合成装置)や大規模な艦内工場、慰安、給糧施設は省略されており、その代わり乗員一人当たりの居住スペースを拡大することで居住性の向上が図られていた。ただ、自艦の修理および弾薬の補給に必要な工場設備、乗員用の物資保管のスペースは必要と想定された状況に応じて十分に準備されている。
設計完了後『波動砲艦隊』の早期実現を望む防衛軍首脳部と、カラクルム級という現有艦艇では対抗困難な強敵を抱えていた艦隊側の双方から早急な新戦艦を望まれたこともあり、ただちに量産計画が立てられた。防衛軍にとってはもちろん、地球連邦政府にとってもガミラス大戦からの復興期に、それもヤマトを除けばかつてない大型戦艦の量産は難行に違いなかったのだが、ガトランティスという目前の敵の存在、そしてガミラスとの政治的駆け引きを考慮すれば、躊躇する余地はなかったものと思われる。
2202年度の予算要求で、D級戦艦(本来はA型戦艦と呼ぶべきだが、D級という通称が広く知られており、後のアンドロメダ級の通称『A級』と紛らわしいことから、以降は必要のない限りこの表記を用いる)はまず18隻分の予算が求められた。
これは、当時の地球防衛軍の戦艦戦隊が4隻編成だったため、4個戦隊と予備艦2隻分の要求だったのだが、防衛軍士官学校において行われた、波動砲戦を含めた戦艦戦隊の戦闘要領の研究結果として『戦艦戦隊は3隻編成とし、2隻が波動砲発射体勢に入った際に1隻がこれを支援するのが最適』との意見が出されたこと、また当時の防衛軍に新造戦艦を予備として遊ばせておく余裕もなかったため、6個戦隊分に編成替えされている。
(ただし、実戦部隊において4隻編成による戦隊が構成されたことも多々あり、少なくともガトランティス戦役当時においては、まだ3隻編成が完全に一般化していたわけではないようである)
前例を見ない大型艦の大量、かつ急速建造であり、予算の折衝も難航すると思われたのだが、前述した通り『波動砲艦隊』を目指す連邦政府首脳と、ガミラス大戦による戦禍によって『自国の軍備が弱いことで何が起こるか』を理解せざるを得なかった多くの市民から支持を受け、予算案はすぐに成立。早速、防衛軍が立案した計画に従って建造作業が各地のドックで開始された。
当初は一番艦が『ドレッドノート(Ⅰ)』ということもあり、艦名の頭文字のアルファベットをDに揃えることがイギリスから提案されたようだが『旧来の伝統ある艦名を継承できない』と多くの国から反発を受け、断念されている。以下は艦名を示しつつ、ガトランティス戦役終結までに量産されたD級戦艦をタイプ別に紹介したいと思う。
A2型(前期生産型)
『ドレーク』『デヴァステーション』『ダンカン』
『ドイッチュラント』『ヘッセン』『バーデン』
『デラウェア』『ノース・ダコタ』『サウス・カロライナ』
『デュプレスク』『デュケーヌ』『ド・グラース』
『ドヴィエナザット・アポストロフ』『ペトロパブロフスク』『セヴァストーポリ』
『山城』『河内』『摂津』
当初の予算案による18隻枠で建造された、D級戦艦最初の量産艦である。
機関のみ『出羽』のそれが用いられた以外は、概ね『ドレッドノート(Ⅰ)』に準じて設計されたが、先述した旗艦設備の強化と、旋回性能の不足が指摘されたことから船体各部にスラスターが増設されるなどの改良が行われている。
強化された旗艦設備は、戦艦戦隊旗艦から分艦隊(当時の地球防衛艦隊では30隻程度が想定されていた)旗艦まで問題なく務めることが可能とされ、当面は十分なものとされた。ただ、ガトランティス戦役が本格的に開始された頃に更なる旗艦設備強化の要望が艦隊側から出された関係で『バーデン』『サウス・カロライナ』『デュケーヌ』『ペトロパブロフスク』『河内』に小規模な改造工事が行われている。この5隻の艦橋構造物後方には艦隊司令部専用の通信アンテナが追加されているため、未改造艦との識別は容易である。
また、当初から戦時定数150名程度、最低90名程度での戦時運用が要求されていたD級戦艦だったが、当時の深刻な人員不足は90名の乗員を確保することすら難しかったため、試作艦のそれ以上にAIなどを用いた自動化、省力化が推進された。これはこの時期の判断としてはやむを得ないものであったが、当時も艦隊士官の一部から『十全たる戦力発揮に不安あり』との指摘も存在しており、後のガトランティス帝国との戦いにおいても問題となっている。
ともあれ、このA2型戦艦はガトランティス帝国が太陽系に侵攻してきた際は、文字通り艦隊の『主力戦艦』として第一線を担ったクラスだったと言える。それだけに損耗も多大なものとなったのだが、戦歴については今後紹介するタイプも含めて、別項にて記述したいと思う。
改A2型a(電探強化型 パトロール戦艦)
『テネシー』『リヴェンジ』
2201年後半に追加建造が決まった4隻のD級戦艦のうちの2隻である。この頃はまだガトランティスとの本格的戦闘は始まっていなかったが、前線から『カラクルム級との遭遇機会が増えており、今後、敵に大規模な作戦を行う気配が感じられる』という報告があったため、一部の金剛改型、村雨改型の建造予算を転用する形でD級の追加建造が決まったのである。
本型はその最初のものだったが、量産中のA2型戦艦とは運用目的が異なっていた。当初、本型は電探ならびに通信施設を強化することで、100隻を超えた大艦隊(当時、土星会戦における地球艦隊の総数200隻前後の艦隊編成は考慮されていなかったようだ)を指揮、統制するために建造が計画された。
だが、実際には強化するとはいえ、D級程度の艦の規模で100隻以上の大艦隊を指揮するのは荷が重く、この判断が『戦略指揮戦艦』たるアンドロメダ建造の契機となる。そして、浮いた形になったこの2隻の戦艦枠に関しては、電探、通信能力の強化はそのままに、遊撃部隊として敵侵攻軍(当然、その仮想敵はガトランティス帝国軍である)の後背で破壊活動を行うべく編成が構想された第三艦隊に配備するための戦艦として計画が変更され、起工された。
ところが建造開始直後、連合艦隊司令部から、その第三艦隊にD級戦艦に近い火力とより優れた航空機運用能力を有する空母(戦闘空母、としたほうが適切と思われる)の配備が構想され、これが防衛軍首脳部も認めるところとなったため、再びこの両艦が宙に浮くこととなった。
とはいえ、搭載すべき武装や電探、通信整備は既に用意されていたため建造中止にすることもできず、艦政本部は再びこの両艦に若干の改設計を加え、今度は地球防衛軍にとって最前線と言うべき冥王星、海王星基地に配備される警備艦隊の旗艦用戦艦として建造が続行されることとなった。
ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点は以下の通りである。
・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・改A2型パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もパトロール巡洋艦より更に強化して搭載
・代償重量として艦底部の九八式対空迎撃ミサイル発射管8門を撤去。ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力通信機器に対応した専用アンテナを艦各所に追加
この改造により、一見すると後に建造された『アンドロメダ』のようなアンテナ類が林立する特徴的な外見を持つこととなった。なお本艦の評価としては「通常型に比して機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」というものが伝わっているが、兵装は概ね維持されていたし、また旗艦能力や探知、通信機能が非常に高かったため、実際に運用した冥王星、海王星の警備艦隊からは概ね好評だったようだ。
本型は警備艦隊以外の運用は考慮されていなかった、という説もあるようだが、実際は平時における哨戒活動の他に、警備艦隊を率いて第一、第二外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時においては警備艦隊と共に連合艦隊の戦列に加わることが既定事実となっていたようである。
そのため、地球防衛軍において最大の艦隊決戦となる『土星会戦』にもこの両艦は参加しているのだが、その際の状況については別項に譲りたいと思う。
改A2型b(主砲換装タイプ前期型)
『相模』『コンテ・ディ・カヴール』
改A2型a戦艦と同時に計画された艦だが、この両艦は誕生の経緯が少々特殊なものだった。
『ヤマトが搭載した九八式48サンチ陽電子衝撃砲を、D級戦艦に搭載することは可能だろうか?』
確かに九八式48サンチ陽電子衝撃砲は、戦時下でそれが許されなかったという事情があったとはいえ、散布界過大など致命的な欠陥が発生しないよう、極めて堅実な性能で纏められた艦砲だった。そのためイスカンダルへの航海においても大きな問題は発生しなかったのだが、この砲をD級戦艦に搭載しようというのである。
だが、この『九八式48サンチ陽電子衝撃砲を搭載したD級戦艦』は、既にロシア管区が建造した『ボロディノ』で試みられ、船体の大型化によって量産艦としては不採用になったという経緯がある。それを踏まえてのこの提案には、当然のこと『ボロディノ』とは違う特徴があった。
『バーベット径の拡大を防ぐため、連装砲塔にて搭載してはどうか?』
実はヤマトの設計案において、九八式48サンチ陽電子衝撃砲の連装砲案が存在しており、連装砲塔の設計も完了していた。これを流用すれば、D級の船体に対して最低限の改造を施せば、九八式48サンチ砲を簡易に搭載する目途があったのだ。
そのためこの案は採用されたが、当時既に九八式48サンチ陽電子衝撃砲は砲身の生産が行われておらず、その建造にはガミラス大戦末期にヤマトの予備用として製造された砲身を転用するしかなかった。それでも、一隻でもD級戦艦の数が欲しい防衛軍首脳部と艦隊側の思惑が一致したこともあり、この改A2型b戦艦の建造は行われることになった。
そうして実際に完成した改A2型b戦艦であったが、実際に運用した艦隊側は『主砲威力の向上、および散布界問題の解消は歓迎できるが、発射速度の遅さに大きな問題がある。可能であれば九八式二型48cm陽電子衝撃砲(2202年大改装後のヤマトが搭載した48cm砲)への換装を望む』と評価した。
しかし、この提案が検討される前にガトランティス戦役が本格化、太陽系への攻撃が始まったため、両艦とも既存の主砲のまま戦役に参加している。
A3型(中期生産型)
『クイーン・エリザベス』『バーラム』『ヴァリアント』
『ノース・カロライナ』『ワシントン』『アラバマ』
『薩摩』『周防』『丹後』
『レジーナ・マルゲリータ』『エマニュエレ・フィリベルト』『サルディーニャ』
『ナッサウ』『ヘルゴラント』『オルデンブルク』
『ペレスヴェート』『シノープ』『ポペーダ』
当初は2202年前半に、前期生産型各艦が戦闘によって損耗することを見越して9隻の整備が決まったものだったが、いわゆる『カラクルム落下事件』(当時はそう呼ばれず、単なる事故として扱われていたが)によって地球の座標がガトランティス側に露呈したのを受けて『可及的速やかに、かつ可能な限り多数を量産する』ことが決定され、戦時予算による更なる追加建造が決まったグループである。
前期生産型であるA2型からは、以下の改良が施されていた。
・艦各部の簡易化(これは戦時下のためというより、量産による経験の蓄積から過剰と判断された部分を削った、と言うべきものである)
・艦内構造の一部変更、防御隔壁の強化
・電探、通信設備。並びに各種AI機器の更新
・散布界問題に悩まされていた主砲に、新型の発砲遅延装置を装備(本タイプ以前の艦にも逐次装備されている)
・中規模艦隊(50隻程度)向けの旗艦設備を標準装備
特に艦内構造の変更は『ガイデロール級をモデルシップにした』本型にとっては大きな変更点であり、地球がガイデロール級を基礎にしつつ、独自の大型艦設計を行う契機となったと言えるだろう。
戦時下ということで本タイプの量産は急がれ、ここに艦名を挙げた18隻はいずれも土星会戦に最新鋭艦として参加している。なお、艦隊側の運用評価はA2型戦艦とほぼ変わるところはなかったが、発砲遅延装置の搭載とAIの改良にも関わらず、相変わらず散布界問題が解決していないことが問題視されている。これは土星会戦においても大きな問題を引き起こしているのだが、詳細は別項にて触れたい。
なお予定艦名が不明なため省略したが、A3型戦艦はこの18隻以降も追加建造が行われるはずだった。しかし太陽系に敵勢力が侵入する状況下で、連合艦隊司令部から『戦艦以上に、それを護衛する巡洋艦や駆逐艦の不足が深刻である』と強硬な要望があったことや、土星会戦後の太陽系各惑星および地球本土への攻撃によって工廠ごと失われた艦も多く、戦後はD級戦艦の建造が後期生産型へと移行したこともあって、最終的なA3型戦艦の整備は18隻で終了している。
仕様決定と量産の開始
四管区による試作艦建造とその試験を経て、最終的には『ドレッドノート(Ⅰ)』の船体に『出羽』の機関を搭載する、という決着を見た新型量産戦艦の仕様だったが、その他、細かい箇所の再検討などが再び艦政本部で行われ、2201年10月、その決定により新戦艦は以下の性能にまとめられ、防衛軍首脳部はこれを承認した。
全長 280m
全幅 69.8m
全高 99.7m
波動砲 一式タキオン波動拡散砲(通称・拡散波動砲)1門
主砲 一式41cm三連装集束圧縮型陽電子衝撃砲 3基9門
その他武装
九九式短15.5cm六連装陽電子衝撃砲 1基(司令塔頂部)零式四連装対艦グレネード投射機(対空兼務 前甲板両側面)
一式亜空間魚雷発射管 単装4門(艦首両舷)
零式小型魚雷発射管 単装8基(艦首両舷)
九八式対空迎撃ミサイル発射管 単装8基(艦底部)
九八式短魚雷発射管 単装12門(片舷あて6門)
一式多連装小型ミサイル発射管 16門(片舷あて8門)
司令塔防護用ショックフィールド砲 3基(司令塔前部および基部)
零式短砲身六連装光線投射砲 2基(司令塔基部側面)
九九式40mm連装対空パルスレーザー砲 2基
一式76mm三連装拡散型対空パルスレーザー砲 2基
その他、艦の全周各部に埋め込み式対空パルスレーザー砲多数(門数不明)
主機 艦本式次元波動機関 1基
補機 ケルビンインパルス機関 2基
懸架式亜空間航行用機関 2基
搭載機 一式一一型艦上戦闘機『コスモタイガーⅡ』10機(うち2機は偵察機仕様)
九八式汎用輸送機『コスモシーガル』2機 救命艇2機
その他救命ボートなど
武装の特徴として、ヤマトに比して対空兵装が大幅に削減されたことがまず目につくと思われる。これは拡散型パルスレーザー砲の採用で十分な弾幕が形成できると判断されたこと、また主砲塔が大仰角を取れるように設計されており対空砲として使用可能なことが考慮された結果だが、後にこれが問題を引き起こす原因になった。ただ、その詳細については先に譲りたい。
また本艦の搭載機についてだが、ヤマトと同様に艦載機運用にいささか不自由があったこと、後に本級を改造した航空母艦の建造が決定されたこと、原則として艦隊での運用が常であり単艦で行動することがほとんどなかったこと、そもそも搭載すべき戦闘機が搭乗員も含めて不足していたなどの理由が重なり、偵察機を除いた戦闘機を搭載して作戦行動を行ったという記録は現状見つかっていない。
なお、本艦の補給、給糧設備に関しては『ヤマトほどの長期航海は前提としない』『長期航海を行う場合は補給艦の随伴を検討する』『状況が許せば、ガミラス基地からの補給も求める』などが考慮された結果、ヤマトのようO.M.C.S(食料合成装置)や大規模な艦内工場、慰安、給糧施設は省略されており、その代わり乗員一人当たりの居住スペースを拡大することで居住性の向上が図られていた。ただ、自艦の修理および弾薬の補給に必要な工場設備、乗員用の物資保管のスペースは必要と想定された状況に応じて十分に準備されている。
設計完了後『波動砲艦隊』の早期実現を望む防衛軍首脳部と、カラクルム級という現有艦艇では対抗困難な強敵を抱えていた艦隊側の双方から早急な新戦艦を望まれたこともあり、ただちに量産計画が立てられた。防衛軍にとってはもちろん、地球連邦政府にとってもガミラス大戦からの復興期に、それもヤマトを除けばかつてない大型戦艦の量産は難行に違いなかったのだが、ガトランティスという目前の敵の存在、そしてガミラスとの政治的駆け引きを考慮すれば、躊躇する余地はなかったものと思われる。
2202年度の予算要求で、D級戦艦(本来はA型戦艦と呼ぶべきだが、D級という通称が広く知られており、後のアンドロメダ級の通称『A級』と紛らわしいことから、以降は必要のない限りこの表記を用いる)はまず18隻分の予算が求められた。
これは、当時の地球防衛軍の戦艦戦隊が4隻編成だったため、4個戦隊と予備艦2隻分の要求だったのだが、防衛軍士官学校において行われた、波動砲戦を含めた戦艦戦隊の戦闘要領の研究結果として『戦艦戦隊は3隻編成とし、2隻が波動砲発射体勢に入った際に1隻がこれを支援するのが最適』との意見が出されたこと、また当時の防衛軍に新造戦艦を予備として遊ばせておく余裕もなかったため、6個戦隊分に編成替えされている。
(ただし、実戦部隊において4隻編成による戦隊が構成されたことも多々あり、少なくともガトランティス戦役当時においては、まだ3隻編成が完全に一般化していたわけではないようである)
前例を見ない大型艦の大量、かつ急速建造であり、予算の折衝も難航すると思われたのだが、前述した通り『波動砲艦隊』を目指す連邦政府首脳と、ガミラス大戦による戦禍によって『自国の軍備が弱いことで何が起こるか』を理解せざるを得なかった多くの市民から支持を受け、予算案はすぐに成立。早速、防衛軍が立案した計画に従って建造作業が各地のドックで開始された。
当初は一番艦が『ドレッドノート(Ⅰ)』ということもあり、艦名の頭文字のアルファベットをDに揃えることがイギリスから提案されたようだが『旧来の伝統ある艦名を継承できない』と多くの国から反発を受け、断念されている。以下は艦名を示しつつ、ガトランティス戦役終結までに量産されたD級戦艦をタイプ別に紹介したいと思う。
A2型(前期生産型)
『ドレーク』『デヴァステーション』『ダンカン』
『ドイッチュラント』『ヘッセン』『バーデン』
『デラウェア』『ノース・ダコタ』『サウス・カロライナ』
『デュプレスク』『デュケーヌ』『ド・グラース』
『ドヴィエナザット・アポストロフ』『ペトロパブロフスク』『セヴァストーポリ』
『山城』『河内』『摂津』
当初の予算案による18隻枠で建造された、D級戦艦最初の量産艦である。
機関のみ『出羽』のそれが用いられた以外は、概ね『ドレッドノート(Ⅰ)』に準じて設計されたが、先述した旗艦設備の強化と、旋回性能の不足が指摘されたことから船体各部にスラスターが増設されるなどの改良が行われている。
強化された旗艦設備は、戦艦戦隊旗艦から分艦隊(当時の地球防衛艦隊では30隻程度が想定されていた)旗艦まで問題なく務めることが可能とされ、当面は十分なものとされた。ただ、ガトランティス戦役が本格的に開始された頃に更なる旗艦設備強化の要望が艦隊側から出された関係で『バーデン』『サウス・カロライナ』『デュケーヌ』『ペトロパブロフスク』『河内』に小規模な改造工事が行われている。この5隻の艦橋構造物後方には艦隊司令部専用の通信アンテナが追加されているため、未改造艦との識別は容易である。
また、当初から戦時定数150名程度、最低90名程度での戦時運用が要求されていたD級戦艦だったが、当時の深刻な人員不足は90名の乗員を確保することすら難しかったため、試作艦のそれ以上にAIなどを用いた自動化、省力化が推進された。これはこの時期の判断としてはやむを得ないものであったが、当時も艦隊士官の一部から『十全たる戦力発揮に不安あり』との指摘も存在しており、後のガトランティス帝国との戦いにおいても問題となっている。
ともあれ、このA2型戦艦はガトランティス帝国が太陽系に侵攻してきた際は、文字通り艦隊の『主力戦艦』として第一線を担ったクラスだったと言える。それだけに損耗も多大なものとなったのだが、戦歴については今後紹介するタイプも含めて、別項にて記述したいと思う。
改A2型a(電探強化型 パトロール戦艦)
『テネシー』『リヴェンジ』
2201年後半に追加建造が決まった4隻のD級戦艦のうちの2隻である。この頃はまだガトランティスとの本格的戦闘は始まっていなかったが、前線から『カラクルム級との遭遇機会が増えており、今後、敵に大規模な作戦を行う気配が感じられる』という報告があったため、一部の金剛改型、村雨改型の建造予算を転用する形でD級の追加建造が決まったのである。
本型はその最初のものだったが、量産中のA2型戦艦とは運用目的が異なっていた。当初、本型は電探ならびに通信施設を強化することで、100隻を超えた大艦隊(当時、土星会戦における地球艦隊の総数200隻前後の艦隊編成は考慮されていなかったようだ)を指揮、統制するために建造が計画された。
だが、実際には強化するとはいえ、D級程度の艦の規模で100隻以上の大艦隊を指揮するのは荷が重く、この判断が『戦略指揮戦艦』たるアンドロメダ建造の契機となる。そして、浮いた形になったこの2隻の戦艦枠に関しては、電探、通信能力の強化はそのままに、遊撃部隊として敵侵攻軍(当然、その仮想敵はガトランティス帝国軍である)の後背で破壊活動を行うべく編成が構想された第三艦隊に配備するための戦艦として計画が変更され、起工された。
ところが建造開始直後、連合艦隊司令部から、その第三艦隊にD級戦艦に近い火力とより優れた航空機運用能力を有する空母(戦闘空母、としたほうが適切と思われる)の配備が構想され、これが防衛軍首脳部も認めるところとなったため、再びこの両艦が宙に浮くこととなった。
とはいえ、搭載すべき武装や電探、通信整備は既に用意されていたため建造中止にすることもできず、艦政本部は再びこの両艦に若干の改設計を加え、今度は地球防衛軍にとって最前線と言うべき冥王星、海王星基地に配備される警備艦隊の旗艦用戦艦として建造が続行されることとなった。
ベースとなったA2型戦艦からの、最終的な改造点は以下の通りである。
・艦隊旗艦用司令部施設と司令部要員用の居住区画を拡大
・改A2型パトロール巡洋艦と同型の大型電探を艦底部に装備、その他の探知機器もパトロール巡洋艦より更に強化して搭載
・代償重量として艦底部の九八式対空迎撃ミサイル発射管8門を撤去。ミサイル弾薬庫を縮小
・大出力通信機器に対応した専用アンテナを艦各所に追加
この改造により、一見すると後に建造された『アンドロメダ』のようなアンテナ類が林立する特徴的な外見を持つこととなった。なお本艦の評価としては「通常型に比して機動性が若干低下し、操艦が難しくなった」というものが伝わっているが、兵装は概ね維持されていたし、また旗艦能力や探知、通信機能が非常に高かったため、実際に運用した冥王星、海王星の警備艦隊からは概ね好評だったようだ。
本型は警備艦隊以外の運用は考慮されていなかった、という説もあるようだが、実際は平時における哨戒活動の他に、警備艦隊を率いて第一、第二外周艦隊との共同戦闘訓練を行っており、戦時においては警備艦隊と共に連合艦隊の戦列に加わることが既定事実となっていたようである。
そのため、地球防衛軍において最大の艦隊決戦となる『土星会戦』にもこの両艦は参加しているのだが、その際の状況については別項に譲りたいと思う。
改A2型b(主砲換装タイプ前期型)
『相模』『コンテ・ディ・カヴール』
改A2型a戦艦と同時に計画された艦だが、この両艦は誕生の経緯が少々特殊なものだった。
詳細は後に譲るが、この時期のD級戦艦はいわゆる『一式41cm砲の散布界問題』に悩まされていた。そのため各種の解決法が艦政本部や技術本部で議論、実験されていたのだが、その中でこのような提案がなされていた。
『ヤマトが搭載した九八式48サンチ陽電子衝撃砲を、D級戦艦に搭載することは可能だろうか?』
確かに九八式48サンチ陽電子衝撃砲は、戦時下でそれが許されなかったという事情があったとはいえ、散布界過大など致命的な欠陥が発生しないよう、極めて堅実な性能で纏められた艦砲だった。そのためイスカンダルへの航海においても大きな問題は発生しなかったのだが、この砲をD級戦艦に搭載しようというのである。
だが、この『九八式48サンチ陽電子衝撃砲を搭載したD級戦艦』は、既にロシア管区が建造した『ボロディノ』で試みられ、船体の大型化によって量産艦としては不採用になったという経緯がある。それを踏まえてのこの提案には、当然のこと『ボロディノ』とは違う特徴があった。
『バーベット径の拡大を防ぐため、連装砲塔にて搭載してはどうか?』
実はヤマトの設計案において、九八式48サンチ陽電子衝撃砲の連装砲案が存在しており、連装砲塔の設計も完了していた。これを流用すれば、D級の船体に対して最低限の改造を施せば、九八式48サンチ砲を簡易に搭載する目途があったのだ。
そのためこの案は採用されたが、当時既に九八式48サンチ陽電子衝撃砲は砲身の生産が行われておらず、その建造にはガミラス大戦末期にヤマトの予備用として製造された砲身を転用するしかなかった。それでも、一隻でもD級戦艦の数が欲しい防衛軍首脳部と艦隊側の思惑が一致したこともあり、この改A2型b戦艦の建造は行われることになった。
そうして実際に完成した改A2型b戦艦であったが、実際に運用した艦隊側は『主砲威力の向上、および散布界問題の解消は歓迎できるが、発射速度の遅さに大きな問題がある。可能であれば九八式二型48cm陽電子衝撃砲(2202年大改装後のヤマトが搭載した48cm砲)への換装を望む』と評価した。
しかし、この提案が検討される前にガトランティス戦役が本格化、太陽系への攻撃が始まったため、両艦とも既存の主砲のまま戦役に参加している。
A3型(中期生産型)
『クイーン・エリザベス』『バーラム』『ヴァリアント』
『ノース・カロライナ』『ワシントン』『アラバマ』
『薩摩』『周防』『丹後』
『レジーナ・マルゲリータ』『エマニュエレ・フィリベルト』『サルディーニャ』
『ナッサウ』『ヘルゴラント』『オルデンブルク』
『ペレスヴェート』『シノープ』『ポペーダ』
当初は2202年前半に、前期生産型各艦が戦闘によって損耗することを見越して9隻の整備が決まったものだったが、いわゆる『カラクルム落下事件』(当時はそう呼ばれず、単なる事故として扱われていたが)によって地球の座標がガトランティス側に露呈したのを受けて『可及的速やかに、かつ可能な限り多数を量産する』ことが決定され、戦時予算による更なる追加建造が決まったグループである。
前期生産型であるA2型からは、以下の改良が施されていた。
・艦各部の簡易化(これは戦時下のためというより、量産による経験の蓄積から過剰と判断された部分を削った、と言うべきものである)
・艦内構造の一部変更、防御隔壁の強化
・電探、通信設備。並びに各種AI機器の更新
・散布界問題に悩まされていた主砲に、新型の発砲遅延装置を装備(本タイプ以前の艦にも逐次装備されている)
・中規模艦隊(50隻程度)向けの旗艦設備を標準装備
特に艦内構造の変更は『ガイデロール級をモデルシップにした』本型にとっては大きな変更点であり、地球がガイデロール級を基礎にしつつ、独自の大型艦設計を行う契機となったと言えるだろう。
戦時下ということで本タイプの量産は急がれ、ここに艦名を挙げた18隻はいずれも土星会戦に最新鋭艦として参加している。なお、艦隊側の運用評価はA2型戦艦とほぼ変わるところはなかったが、発砲遅延装置の搭載とAIの改良にも関わらず、相変わらず散布界問題が解決していないことが問題視されている。これは土星会戦においても大きな問題を引き起こしているのだが、詳細は別項にて触れたい。
なお予定艦名が不明なため省略したが、A3型戦艦はこの18隻以降も追加建造が行われるはずだった。しかし太陽系に敵勢力が侵入する状況下で、連合艦隊司令部から『戦艦以上に、それを護衛する巡洋艦や駆逐艦の不足が深刻である』と強硬な要望があったことや、土星会戦後の太陽系各惑星および地球本土への攻撃によって工廠ごと失われた艦も多く、戦後はD級戦艦の建造が後期生産型へと移行したこともあって、最終的なA3型戦艦の整備は18隻で終了している。