(この文章は旧作、リメイク版問わず公式とは無関係です。ただ、創作のベースとしては2199と旧作2以降、PSゲーム版を用いています。筆者の趣味と本編内の用語、およびアニメ内の描写から推定して書いておりますので、時に矛盾も生じる可能性もありますが、何かありましたらコメントなどでご指摘頂ければ幸いです)

陽電子衝撃砲と集束圧縮型衝撃波砲

 この二つは性能差が基本的にないので混同されがちなのだが、発射プロセスに相違点がある。それぞれの過程を書き出すと以下のようになる。なお、エネルギー弾として使用される圧縮された陽電子を供給するのが各艦の搭載する主機関(ヤマト以降は波動機関となる)であることは共通している。


陽電子衝撃砲

・機関に直結する陽電子発生装置は砲身尾部に装備されている
・陽電子発生装置によって生成された陽電子塊をレールガンの要領で撃ち出す
・集束圧縮型衝撃波砲に比べ(特に初期のそれは)散布界が小さく、砲身への負担が少なく砲身命数に余裕がある。ただし、全般に必要な機材が大型化しがちで砲塔の小型化が困難という欠点を有する

集束圧縮型衝撃波砲

・陽電子発生装置が砲身尾部に加え、砲身中心部に補助エネルギー発生装置と加速器が追加装備されている
・砲身尾部の発生装置によって形成される陽電子塊は陽電子衝撃砲より小さいが、砲身中央部で形成されたエネルギー塊と撃ち出される途中で融合することにより、陽電子衝撃砲と同等の陽電子塊を撃ち出すことが可能。そのため、威力に関しては砲口径に準じてほぼ同等と評価される
・砲身にエネルギー発生装置を追加したことにより、砲塔内に大規模な機材を置く必要がないため砲塔の小型化が容易。また、改良前の陽電子衝撃砲より発射速度に優れるが、砲身命数が短くなるのと戦闘中の砲身の破損に弱いのが難点。また、初期の集束圧縮型衝撃波砲は高発射速度への対応が不十分で散布界が過大という問題を抱えていた(2207年現在は改善済み)

 以上の違いを踏まえて、ここではヤマト以降に搭載された戦艦級の大口径砲各種について書いていきたい。


九八式48サンチ陽電子衝撃砲の系列砲

九八式48サンチ陽電子衝撃砲→九八式一型48cm陽電子衝撃砲

 竣工時のヤマトが搭載した陽電子衝撃砲。イスカンダル王国から波動機関の技術がもたらされ、旧来の陽電子衝撃砲が現在の波動砲のような決戦兵器ではなく、汎用兵器として使用できる目途が立ったことによりヤマトの主砲用として開発された砲である。
 その威力は絶大で、ガミラスのメルトリア級航宙巡洋戦艦までなら三連装砲塔の一斉射で撃破可能だった。ガミラス戦役中、唯一通用しなかったのはドメル司令が座乗したゼルグート級一等航宙戦艦の正面装甲のみであり、これも側面装甲は容易く貫通できる相手であった。

 また、エネルギー供給が停止した場合に備え、三式融合弾などの実弾の発射が可能となっていたのも特徴の一つであり、この砲弾がガミラス戦役の多くの戦場で有効に活用されたことから、以後の地球防衛軍の大口径衝撃砲は実弾発射を前提に設計されることとなる。

 地球連邦の成立による地球防衛軍の再編、および2201年から開始された大改装でヤマトの主砲が換装されたことにより、砲の完成時の「九八式48サンチ陽電子衝撃砲」から「九八式一型48cm陽電子衝撃砲」に制式名称が変更されたが、ヤマトが主砲を換装したため、制式名称変更後にこの砲を搭載した地球防衛軍の艦艇は存在しない。


九八式二型48cm陽電子衝撃砲

 2202年末に大改装完成したヤマトが装備した改良型陽電子衝撃砲。当初は51cm集束圧縮型衝撃波砲への換装が計画されていたが、51cm砲を搭載するには艦内容積が不足していたため、旧来の一型砲に大幅な改良を加えたこの砲が搭載された。

 元が大口径の陽電子衝撃波砲であることを生かし、新技術を用いて各種機材の出力を強化。集束圧縮型衝撃波砲とほぼ同等の発射速度と従来の48cm陽電子衝撃砲を上回る威力を両立させている。
 2202年当時、この砲を上回る威力を持つと判定されたのはアンドロメダが装備した二式51cm集束圧縮型衝撃波砲のみであり、それはかつて有効打を与えられなかったゼルグート級航宙戦艦の正面装甲にすらダメージを与えられるほど強化されていた(ただし、その際に交戦したゼルグート級がいわゆる「ドメラーズⅢ」と呼ばれるドメル司令の旗艦と同等の防御能力があったかは不明とされる)。また、当初の集束圧縮型衝撃波砲が悩まされていた散布界問題がこの砲には存在しなかったため、艦隊側からもその性能は絶賛されていた。

 ガトランティス戦役後、一式40cm集束圧縮型衝撃波砲の砲身不足問題が発生した際、実験用およびヤマト用の予備として準備されていたこの砲の砲身が改A3型戦艦に転用され連装砲塔に装備、搭載されている。また、時期は不明だが砲のエネルギージェネレーターを強化してアンドロメダの51cm砲に威力を近づける試験が行われた形跡がある(ガトランティス戦役末期のヤマトで実施、実戦投入された説あり)が、砲の各装備への負担が大きすぎるため、最終的にこの試みは放棄されたようだ。


九八式三型48cm陽電子衝撃砲

 九八式二型陽電子衝撃砲をベースとし、新型の四式波動徹甲弾(波動カートリッジ弾)に対応するための改造を行った砲。2204年に完成した第二次改装後のヤマトと、デザリアム戦役後に残存していた改A3型戦艦がこの砲への換装工事を行っている。
 砲の各種機器が改良されエネルギー弾の威力も向上していたが、改造の重点は三式融合弾より大重量な四式波動徹甲弾に対応した揚弾、装填機構を装備することに置かれていた(なおこの砲に限らず、揚弾機構が強化されていない艦で四式波動徹甲弾の運用を行うことは不可能だった)。

 ちなみに、2205年以降に建造が開始されたB型戦艦も初期案ではこの砲が搭載される予定だったが、諸事情により変更されている。


五式48cm集束圧縮型衝撃波砲

 B型戦艦が主砲として装備した砲。分類上は集束圧縮型衝撃波砲であるが、ベースが九八式三型陽電子衝撃砲であるため、こちらに記載する。先述した通り、B型戦艦にも当初は九八式三型陽電子衝撃砲が搭載される予定だったが、砲塔を小型化し船体規模を縮小するために、同砲を集束圧縮型衝撃波砲に改造したこの砲が採用された。
 砲塔内部の機材を小型化し、集束圧縮型衝撃波砲の特徴である砲身部のエネルギー発生装置が追加された以外は九八式三型陽電子衝撃砲との差異はなく、試験の際にも性能は誤差程度の違いしかなかったとされる。現状、華々しい戦果に恵まれていないB型戦艦ではあるが、この砲自体は艦隊側から「概ね十分な性能を有している」と評価されているようだ。

 ただ、2207年現在の仮想敵であるボラー連邦の艦艇は重装甲を誇るため、九八式三型48cm砲も含めて、防衛軍の戦艦が装備する大口径衝撃波砲の威力強化は愁眉の急とされている。そのため、今後どのような改良が施されるか注目したいところである。


集束圧縮型衝撃波砲系列

一式41cm集束圧縮型衝撃波砲→一式一型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 A型(ドレッドノート型)戦艦の前期建造型が主砲として搭載した砲。集束圧縮型衝撃波砲のシステムは先述の48cm砲と異なり、威力不足を補うため砲身中央にエネルギー増幅器を装備していた20.3cm以下の中小口径陽電子衝撃砲のそれを大口径化したため、技術の系譜としては大口径陽電子砲とは差異が認められる。
 エネルギー弾の質量は48cm砲に劣るが、高初速砲ゆえに貫通力に優れ、ガトランティス戦役においてその威力を十分に発揮している。ただ散布界過大が艦隊側から常に指摘されており、発砲遅延装置の搭載など改良が続けられたが、戦役終結まで根本的な解決はできなかった。

 ガトランティス戦役終結直後、この砲は初速を減じる改造が行われたため、後述するように制式名称が変更された。しかし、ガトランティス太陽系残存軍との戦闘に参加したA型戦艦の残存艦も主砲改造を戦闘前に行っていたため、名称変更後にこの砲を搭載して敵と交戦した艦は存在しない。


一式41cm集束圧縮型衝撃波砲(改)→一式一型改41cm集束圧縮型衝撃波砲

 先の一式41cm集束圧縮型衝撃波砲の初速を低下させ、散布界問題の根本的解決を図った砲。貫通力は低下(艦隊側曰く「砲口径なりに」)したが、散布界は劇的に改善され、改A3型戦艦を除く後期建造型のA型戦艦やB型巡洋艦に主砲として搭載された。2207年現在も大改装を控えた一部のA型戦艦や残存するB型巡洋艦に搭載され現役である。


一式二型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 一式一型改41cm砲を四式波動徹甲弾に対応させる改造を行った砲。改造の規模は48cm砲ほど大掛かりではなく、揚弾、装填機構以外の諸元は一式一型改41cm集束圧縮型衝撃波砲と同じである。
 四式波動徹甲弾は希少金属を多用するため生産量の確保が困難で、地球防衛軍はこの砲弾を48cm砲弾中心に生産することに決定したため、本砲を装備した艦はかなり少ない。


一式三型41cm集束圧縮型衝撃波砲

 一式一型41cm集束圧縮型衝撃波砲の砲身を強化(詳細は機密のため不明だが、砲身生成の方法と使用金属が変更されたと言われる)、散布界問題を解決しつつ従来の貫通力に加え、発射速度の大幅強化を図った砲。発射機構も大幅に変更されたため、新たに制式名称が付与されている。
 最初に搭載したのは「防空駆逐艦」と呼ばれたC1型駆逐艦で、発射速度はディンギル戦役における第二次冥王星会戦の映像を見る限り、2秒に1発と推定される。その威力はボラー連邦の重装甲艦にも通用すると高く評価されたが、対空砲としては「威力過剰」と評価され、特にC型駆逐艦の初期建造艦において門数不足が問題になっている。なお、四式波動徹甲弾の運用能力は当初から付与されていない。

 それでも、既存の一式一型改41cm砲と互換性があるため、大改装後は宙雷戦隊の支援任務に充当される予定のA型戦艦の現存艦にも装備される予定である。


二式51cm集束圧縮型衝撃波砲

 これまで「アンドロメダ」のみが装備した、2207年現在の地球防衛軍で最大口径の艦砲。元々は先述したヤマトに装備が検討された砲だったが、搭載不可と判断されたためアンドロメダに転用された。

 エネルギー弾の質量は48cm砲を大きく上回り、集束圧縮型衝撃波砲ゆえに貫通力も高く、文字通り地球防衛軍最強の艦砲と現在も評されている。ただ、同時期の41cm砲ほどではないが散布界の広さが問題になっており、ガトランティス戦役の土星会戦が生起する直前、発砲遅延装置の装備と射撃指揮統制用コンピュータの改良によって散布界を許容範囲にまで収める改造が行われ「概ね解決した」との評価に落ち着いた。

 その後に建造が予定された戦艦にも幅広く搭載すべしという意見もあったが、他の量産艦と規格が異なる大口径砲で運用面に難点が多く、ガトランティス戦役後に建造された自動戦艦用の主砲として装備されたのを除き、有人艦でこの砲を搭載した艦は建造されていない。


 以上が、2207年現在地球防衛軍が運用した大口径衝撃砲となる。なお、ボラー連邦艦艇に対する大口径砲の威力不足の問題は、間もなく就役が予定されているC型戦艦に搭載される新型砲(詳細は不明)で何か動きがあると期待されているのが現状である。